ちんえもんファイナル  2005年05月05日(木)
ちんえもんさんは、うなぎをぴちぴちと叩き、うむこれは締まりがいいだの悪いだのと、わかったようなことを言うた。それが仇となって、極悪の料理人に絡まれ、ちんえもんさんは全治4週間のけがをした。

「ちんえもん、なんじゃ、やられたか」

「キャベツの芯や、あつい湯で、さんざんにやられたけえ」

ちんえもんさんは病室のベッドで、照れくさそうに笑った。看護婦が、体温を計るふりをして、針でちんえもんさんを刺そうとした。友人がそれを止めた。

「お前は、何かと、色んな職種のものに、絡まれるのう」

「わしは、ただの、ちんえもんなのだがなあ」

回診中の医師がヨードチンキの瓶をしゅっと投げてきたり、別の看護婦が青緑色をした点滴を刺そうとするので、ちんえもんさんは車椅子で逃げ惑った。ちんえもんさんは大変。


「ちんえもんさん、あんた、共感してくれる人は、いないのかい」

「別件で、ちんたろうさんという人が、うちの蛇口を直してくれたりしたなあ」

「それは修理代とか、どうなんだい」

「別件だから、ただでしたのう。わしは、ただの、ちんえもんやさかい」

「そういえば、お前の嫁さん、どうした」

「茶そばを食べたいといって、信州で、うどんを食べておる」

「なんじゃそりゃ。ちがうもん食うとるやないか」

「とみ子は、両極端やからなのう」


ちんえもんさんはからからと寂しそうに笑った。ビールを買ってくるよ、と席を外した間に、興奮した医師にメスでざんざんに切られ、大変な姿になってしまっていた。ちんえもんさんの姿はもんごういかに似ていた。人の攻撃的な劣情を掻き立てるのかもしれない、と、友人は葬儀の場で思った。ちんえもん




My追加
新サイトでアート、珍スポットのレビュー特集中!

★Link『マーでございます』★




writer*マー

★↓729参加・総合リンク↓★

☆テキスト・アート☆

零壱【01】ランキング

☆☆ダークゾーン☆☆

エンピツ