思い出しながら書いてみよう。日記続編。 ●8/10(火) 明日は週に2本の定期航路船『おがさわら丸』が東京へ向けて発つ日。別れる人間もいるので、夜はダイビングショップ主催のお別れ飲み会。ダイブ本数・総計9本の新参者である私も参加する。わーい。酒だ酒だ! 前日の不覚(前日の日記参照)もあって、ログ付け時にインストラクター星野氏からの質問。 「今日はちゃんとクマノミの共生、観れましたか?」 『はい!』 「ユウゼンは何を食べてましたか?」 『岩についた海草だか何だか プランクトンとか』 「そうですねー。珊瑚のポリプ自体を食べてたのかも知れませんね」 『はあ』 (このあたりで隣のテーブルからみんながこっちを見ている。昨日、一緒に潜った人なので、私のダメっぷりは知っている) ちゃんと私が魚を観察できたので、隣のテーブルから拍手。いやあ。集団行動が苦手ですみませんへへへ。 「それじゃ、ブダイが餌を食べてるところは?」 『うっ』 星野氏は海中でタンクをカンカン鳴らし、「こっちに注目」のサインを送っていたらしいのだ。しかし当の私はユウゼンに溺愛していて全く反応できず。ブタイが鳥のような嘴で餌を食ってたらしいのです。 「ダイブ中は周りの状況も常に確認しとかなきゃ、より広い観察は出来ないし、安全行動にも繋がることだからね」 『へい』 ログ付けは無事に終わり、『ナチュラリスト』資格認定ゲット。何気にうれしい。記念写真だ。わー。同じく水中デジカメコースで認定ゲットした鈴木氏と一緒に写る。まさに観光客マインド。うわーい。。 夜7時半から『グリーンペペ』というバーで飲み会。 広間に机、それを囲む椅子。建物奥には大画面があり、海中の様子やウミガメの遊泳が流れ続ける。 ダイブショップのクルーでもある若い女性は、夜はここでスタッフとして働いている。レモン、アップル味のビールを勧められる。りんご味うめえ。 総数30数名ぐらいが集まって飲み会が始まった。みんな近所の人と喋っているが、品が良いせいか、あまり大声を出さないし、綺麗に酔っていく感じだった。 隣の男性が、ちょっと美人の女性にずっと話し掛けている。美女の一人旅は何かと男が寄って来て退屈しないのだなあと思ったので、私もさかんに話しかける。非常に乱れた関西弁で話していると、女性も関西人であることが発覚。異郷の地で聴く関西弁は美しい。ああ。 その純朴そうな中年男性に水を向けてみると彼は良く喋る。 「ダイビングってのはね、リラクゼーションなんだよね、都会暮らしの僕にとってはまさにそう。やっぱね、浮遊感があるからね、3次元じゃないですか、水族館とかと違って、3次元の空間を浮遊するってのが・・ああ」 時間流も合わせると4次元ですよ、 とは言えなかった。そんなしょうもない突っ込みをしている間もなく時間は過ぎる。 星野氏、語る。 「海での生物との出会いって独特じゃない? イルカやマンタってリピーターが付くように、何度でもまた会いたいって思うわけじゃない。例えばアフリカゾウとか陸上の動物って、同じように”また会いたい”って思うもんなの?」 これは非常に的を得た言葉だった。海洋動物は確かに、何度でも会いたいという揺さ振りを心に掛けてくる。マンタがそうだった。けれどそれはやはり、強烈に透明で色濃いブルーの海があるからこそ、また会いたい、という念が育つのだと思った。巨大な猛禽類が美しいのも、やはりブルーの空があってこそだろう。ブルーの濃度は人に何か大変なことを及ぼしているらしい。 更に星野氏は語り続ける。 「何本も潜ってるうちにどんどん海にも慣れてくる。すると自分の見たいものとか好きなものってのが出て来て、自分のダイビングのスタイルが出来るんだ。ハゼが好きな人もいれば地形を楽しみたいって人もいるし、僕みたいにエビ・カニ大好きって人もいるし、ナイトダイビングみたいに冒険が好きな人もいるよね。それに技術も付いてくる。するとね、目当てのものが観れなかったり、こんなシチュエーションじゃつまらない、って感じるようになってくるの」 「それは悲しいことだよね。折角さ、時間掛けてお金も掛けて、潜りに来て、つまらなかったら何もならないよね。せいぜい朝から潜ったって、夜のナイトダイビングまで潜ったとして一日4本が限度でしょ、一回が30分ぐらいだから、そのうちの一本がつまらなかったら、ねえ」 「潜ってそこで”あーあ、つまんないな”って思ったら、浮上するまで30分ぐらいずっとつまんないわけでしょ。それは悲しいことだよね・・・何してるんだろ?って感じ。だから、一番ダイビングに大切なのは、海が好きっていう気持ちなんだよね」 (・_・)はーい。 そして飲み会の後は、「父島ペンション」の人たちが花火大会をする。20人か30人近くいる。それに何故か紛れてゆく私。便乗です便乗・・。 花火は東京から運んできたものだという。ダンボールいっぱいに詰まったそれはみんなで連打していたらあっと言う間に無くなった。 風が強くて線香花火もなかなか付かない。ダンボールの中で火を灯し、みんなで集まって、ちびちびと線香した。ぢりぢりぢり。夏やなあ。 花火を終えたら波打ち際すぐ近くの岸壁、コンクリートにみんなで寝転がって、流れ星を探す。天には天の川が横たわり、ぼんやりと光のガスを照らし出していた。その中を、時折、光の玉がスッと落ちて流れていく。こんなにも何度も、星が流れて落ちていくのかと私は驚いた。このまま行けば全部、どこかへ落ちて無くなってしまうのではないか・・・とか思った。それぐらい、いつまでも、一つ、また一つと流れ星は落ちていった。 皆は「父ペン」(略称)へ戻り、テラスで飲むようだ。花火の時に集金した余り銭でみんながエビスを買った。酒盛り続行。私も付いて行く。 同じテーブルには「社長」と呼ばれる、ちょっと童顔の男性がいた。本当に会社社長だった。 「社長なんて、なるの簡単やで。誰でもなれるわ」 「初めは俺の仲間と起業して、俺は専務やってんけど、まあ社長になってさ、ほんま最初は死にそうなほど大変やったって! 社員に給料払えんのかなって、まじで不安やったわ」 会社の話が続いた。みんな圧倒的に社会人が多い。学生の一人旅というのはいなかった。では何故、会社勤めの普通な人間達が、たった一人で、こんな東京から1000kmも離れた小島に来るのだろうか? コンビニも無いし。その心理をもっと深く理解するための会話をすべきだったと今にして思う。 記念写真を撮り、私は宿に帰った。もう1時半を回っていたので、みんな眠っていた。安眠! 明日になれば、でかいナカジマ兄ちゃんは荷造りをし、モリ氏は一人でよく喋りながらダイビングの準備をして海に向かうだろう。他のおっさんは地味な顔で、やはり高価な水中カメラの装備を整え、送迎の車を待つのだろう。 何て面白い連中なんだ。彼らがたった一人で、わざわざ極端に重装備でこんな孤島へやって来たのは、もはや私の理解を超えたところに理由があるようにしか感じられなかった。 めちゃうれしい。迷うのだ。全ての人間よ、迷え、そして踊れ! 此の世の孤島で踊るのだ、そして迷いながら、辿り着け、ぐるぐると回る究極のポイントへ! そんな感じ。 しばらくは小笠原日記。 |
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