酒がまずかった。 新宿某所。 私と令嬢(あだな)はビル5,6階へエレベーターで昇った。 『あっ、うさぎのしるし ですよ』 「ほ〜。」 『うさぎが 出るんですかね』 「ん〜。肉、硬そうだな・・・」 『じゃあ、うさぎにしましょう』 「はい。」 既に会話が噛み合っていないのだが、 この、ポリデントでわざとずらしたような会話こそが、 この令嬢の魅力どころである。ああめっちゃ好き。 我々が店に入ったことも店員たるものが 全く気付かないので 軽く放置される。 「こない〜」 『うさぎ野郎め!』 「みんなシャイなんかな」 『初めて東京来たばかりで 人が怖いとか』 「新宿なのに・・・」 『あのーすいませ あっ無視された。』 「ぐすっ。ひもじいよぅ」 『うさぎ恐るべし・・・ いちげんさんは眼中に無いの』 いらっしゃいませー あっ店員。 ------------------------------------------- やっと席に着いた。 ペット雑誌出版関係の会社の話をしていたら 段々、せちがらいな此の世に なりました。 酒もまずいですし、 そのせいもありましょうか。 冷静、しかし荒れ模様。 「うーー」 『ほんと どうします?』 「あーーもう」 『将来とか、このままいくとしたら 確実に俺は無縁仏で死にますよ、実際。』 「ウチもなぁ〜、転職ほんとに激しいからなぁ〜 業界そのものがさ〜、 みんな渡り鳥みたいなもんやから 全然、人が居つかない」 『弊社も離職者がやたら多いので なんとなく感じは解りますよ』 「出版なんて、同じ業界の中でしか つぶしが利かんから 転職するとしたらまた出版・編集になるねん それも まあ どうなんかなぁ」 ------------------------------------------- 令嬢の苦悩。 私は将来に対して迷いが無いわけではないが、 しかし 真剣に悩む、ということを、敢えて選択してこなかった。 悩むという状態さえ、 ある程度 自分の選択によって選ばれたアクションだと、実感していた。 だから将来については普段、全く考えない。 だが 令嬢の言葉を聴いてるうちに 私の内部で色んな作用が起こり始める。 見えざる『ぐああああ』が起こる。 ぐああ。 「ブリーダーおかしいわ!」 『おかしいですか!』 「ネコ好きな人って偏り激しいから、もうついていかれへん」 『家族みたいにしてる人とか ひどいですね!』 「そう><><><> ほんまそう。 服着せられてネコがうれしいはずがないのに 一人で喜んで 何十枚も編集部にネコの写真送ってくるねんもん ついてかれへん ぐすっ 」 『あああ 泣かないでください』 「ひっく ひっく だってさぁ あたしそんなにネコ好きじゃないもん」 『ぐあああああ』 「しくしく」 『それはひどいいいいい』 「ぐすっ」 『なぜ我々は労働しなければならないのか!!』 「ほんまに。なぁ。 そんなにずっと真剣に仕事ばっかりしてられへん」 『ずっと仕事できる人っていますよね あれがすごいと思う』 「編集部にもそういう女の人いるけど 30代なりそうで まだ独身で 仕事は出来るし 気も強いけど でも それってどうなん? って思う・・・」 『よこもれギャザー!』 サラダを食らい、 チーズフォンデュは餅ばかり。はぁ。 もちもちしてる。 その後は家で、ぬいぐるみのミッフィーをいじりたおしながら会社の話。 将来、独立する人間というのは、何が違うのだろうか。ぐう |
writer*マー | |
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