私は日向を好きという気持ちに 正直でいられた でも日向は自分の思いを殺し 家族の幸せを願い 私の幸せを願い 全ての幸せの為に 自分の望みを捨てる覚悟を 日々思いながら 生きてたんだから
本当は12月に 別れるつもりでいた
本番後に別れたら 普通に会うことも出来なくなるから 辛かろうって考えてくれて 12月なら別れても 練習で会えるから 淋しくないようにって だからあの日日向は別れようとしたのだ
でも私が我侭を言って それを潰してしまったから
日向は 本番後に分かれる決心を してた
本当は1月に でもその続きで2月に友人の舞台に エキストラみたいに出る事に なっていたから それが終わってからって 思っていたと思う
日向はずっとずっと 12月から・・・ いやもっと前 二人が付き合いだしてから 別れる事だけを考えて 私といた
好きだから 一緒にいる
でも 別れられるように 精一杯線を引いて 自分の為じゃなく 家族の為に理性の為に ずっとずっといろんな思いを 我慢して 別れる為に ずっと「結婚する」って 言葉に出していた
隠すのではなく ずっと正直に
日向はそれを言う事ずるいと言う
そんな事あるわけ無いのに
日向が結婚を考えるのは 自分の存在に対する義務感から 女に生まれた以上 結婚する事が最大の親孝行だから 期待する父親を無下に出来ない
だから二人の事とは別に 結婚したいという日向の望みを否定するつもりもなくて 日向が結婚するつもりになった時が 私が振られる時だと分かっていたし それを邪魔するつもりもなかったし 反対するつもりもなかった
そんな事考えたく無いけど でも日向が私の前から居なくなっても そんなことぐらいで人間は死なないって 知ってるから
そして日向が素敵なお嫁さんになるであろう事を 知っていたから お見合いならなおさら 何でもそつなくこなす日向に失敗は有り得ないから だからいいと思ってた
日向が結婚するって言ったら それが別れの時
生きていく上で必要なもの 日向にとっての 「結婚」は日向を好きである以上 否定できない事だから それを言う事は卑怯と言うより 寧ろ正直だと思っていた
日向にしてみれば 恋人はいいけど結婚はダメと言うのは 日向の所為じゃないのに 愛人にしてるみたいで 卑怯な事だと感じていたのだと思う
そして私が忘れないようにと 時々もらすその言葉を 私が辛い思いをするのに 言わずにはいられないのだといい 言いながらもっと自分が傷ついていたのに そういう事は一言も言わなかった
日向は 世界中が関係無くなればいいのに 二人だけの世界に行けたら いいのにって
よくそう言ってた
そしたら日向の理性は必要無くなり 幸せに一緒に居られるのに 日向ははちぎれそうな心を抱えて 真剣にそう願っていたのだと思う
今だから少し理解できるようになった 日向の気持ち
ずっとずっとずっと 切ない思いを抱えて はちきれそうになりながら 日々を過ごしていた
日向にとって二人の時間は切なくて 痛すぎる時間だった
なのに私は何も気づかず 日向に思いを寄せ デートも催促もするし プレゼントもするし
断るたびに 貰うたびに 日向はそれに報いる事が出来ない自分を責め 引き裂かれる思いに どんどん苦しくなって行った
好きな人からの思いを 拒まなくてはならない事に ブレーキを掛けないと自分が止まらなくなりそうで 怖くて 日向は必死に自分の理性を守ろうとして あがいて そして巻き込まれる私を気遣って傷ついて 本当にボロボロになっていた
ゆえに日向は 「恋人」という状態を保つ為に 会うことを避け 距離を保とうとしていた
矛盾している行動は 私の望みを叶えようとする 日向の精一杯の思い
だったのに
私が
爆弾を投げてしまった
今にも壊れそうな ギリギリの所にいた日向に
コップの中の表面張力で保たれた 水の中に
抱えきれない自分の思いを 身勝手に 放り込んだ
結果は
火を見るより
明らか
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