最後の日はウマリの茶室で過ごしました。 なんだかいろんな思い出話をしたり、少ししめっぽくなったりしたなあ。 扉が閉じてしまえば、こちら側の私たちはもう会うこともなくて、多分どこかですれ違ってもきっとわからない。 あれは、あの中だけの日々。 あの中だけのわたしたち。
扉が閉じても世界の時間はめぐり続けると私は信じてるけど。 でも締め出された私たちにはあの世界の自分に戻ることはない。
あとは久しぶりにあちこちで半裸神に会いましたよ。 まっすぐ行って半裸神。 角を曲がって半裸神。 何かを言おうとしたら目の前に降臨…みたいな。 これもすべてこの世界らしい風景。 さすが○○。
扉が閉じたあとで茶室にさふぃが来て、切り札のこととか、まあいろんなことを話しました。 ああ、結局使ってないですよ。 城壁の崩れていない国に対しては大儀がなかったし、理由をこじつけられそうなところは残された時間によっては危険だったから。 私たちは真っ白になった世界で終わりを迎えるなんてこと、どこの誰にもして欲しくなかったのですよ。 だから好奇心はしまい込みました。 他にも理由はあったんですよね。 たとえば夜中に開戦したあの国とか、国民の了承はとれてたのでしょうか? まあカリスマ的国王なら付き従う国民も多いのでしょうけど、古参とはいえこないだ革命で王位、しかも領主になったばかりですからねえ。 何かしたければやっぱりそれなり民意が欲しいところ。 ああそれに、あれもこれもしてからじゃないと、ほら、手順ってものがありますからね。 最後だからと言って好き勝手にしていいというものではありません。
…なんてことを考えていたら面倒になったのですよ(笑)
そして僅かな語らいの時間が終わり、先に還らなければならないさふぃが私を茶室の外へ呼びました。
「お疲れ様でした。それから、」 「はい?」 「―――――――――、 ――――――――――。」
言葉に詰まった一瞬がありました。 多分これだけで、私は報われたと思います。 ずっと彼について来た事も 彼の帰還を二年間待ち続けたことも 最後に頑張って働いたことも すべて無駄ではなかった、と。 だって私は出会ってからずっと、この人のためだけに生きてきたんだもの。 「ありがとう」 最後をこんなに幸せな気持ちで迎えられた。 きっと扉の中の私にも伝わっていて、だからこれからも幸せでいられると信じてるよ。
さて、この会話を最後に私たちはもともとの関係へと戻りました。 というか、多分出会ってからずっとその関係性は変わってなかったんですけどね。 ただあの一瞬だけは私は自分に戻らざるを得ませんでした。 普通に話していたとしても返事には「私は…」となるはずなんですが「マーナさんは…」と第三者的になってしまったんですよ。 ええ、とても後悔しています。
ところで、この日、この夜の会話を短い物語にしてみようかと思ったんですが、考えたら彼女が初めてウマリー島に来たのが二十歳ぐらいの頃。 それから十年近く経ってますからもう三十歳ですよね。彼女人間種ですし。 それを思ったらイメージが逃げてしまいました(笑) 速度の違う時間の中を生きている二人は、これからそれとどう折り合いをつけていくのでしょう。 そちらの方が興味があるかもしれません。
あ、何を言われたのかはナイショです(笑)
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