march forward.
りりかの独り言。

2008年05月03日(土) 罪悪。

どこで飲もうか?と、ハルは昔と変わらず、私の意見を聞いてくる。

どこでもいいよ。と、私も昔と変わらず、ハルまかせ。


街頭で配っている割引券を貰って、カラオケに入る。



「二人でカラオケ、なんてシチュエーション、最近全くないし、すごく新鮮」

ハルは笑う。

私はきっと、強張っていた、と思う。


変な緊張が、ずっとあった。

後悔も、同じくらいあった。


なんで、ついてきちゃったんだろう、とか。

なんで、今日は一人で新宿にいるんだろう、とか。



わけの分からない後悔をしていた。




カラオケなのに歌わないで、話しながら飲む。

なんだかすごく場違いだった。

重たくなる気持ちとは裏腹に、ハルはこの3年間の話をいろいろとしてきた。


私は上の空だった。



なんかの話で、私が「うん」といったとき。

「相変わらず、人の話を聞いてないんだな(笑)」

と言われた。

「ごめん」

「大丈夫、慣れてるから(笑)」

「・・・ごめん」





しばらく沈黙になって。

「あの時はごめん」

ハルが突然、謝りだした。

「あの時?」

「別れる話になった、あの話」

「あぁ・・・」




ハルが私の親のことをいろいろ言ってきたことだ。

でも、もう昔々の話。

私は今更謝られても、なんとも思わなかったし。

むしろ、そんなことを忘れていたくらいだ。

私の3年間は、それほどいろいろあった。



「ちゃんと、会って謝らなきゃって思ってたよ。ずっと罪悪感があったんだ」

「気にしてないし、大丈夫」

ほんと、気にしてない。

些細なことだ。

結局、時間が経つって事は。

そう言うものなのかもしれない。



「・・・もしも、あれがなかったら、俺たちなんか変わってた?」

私はちょっと考えて。

「ううん、変わってない。今と一緒。こんな人がたくさんいる街で、3年ぶり!!って再開してたと思う」

「そっか、そうだよね」




2時間のカラオケは、最初の30分はものすごく長く感じられたけど。

残りの1時間半はあっという間だった。

最初の後悔は消えていて。

会えたことは、よかったかもしれない、とまで思っていた。








「またね」

と、改札でハルに言ってしまった。

普通に、友達と別れるときに言うみたいに、気軽に。


ハルは、満面の笑みで「またね!」と手を出した。

私がその手をじっと見ていたら。

「握手!」とやっぱり笑顔で言われた。


私は、少し酔っていたのかもしれない。

その手に応じてしまう。


ずっと、大好きだった大きな手は。

驚くほど、自然だった。

まるで、今まで、ついさっきまでも、ずっと握っていたみたいに。

懐かしい、とかそういう感情は全くなくて。




思えば。

私たちは、手をつなぐことから始まったんだったね。

私は、既婚者と言う身分でありながら。

あなたの手を取ったんだった。

そこから。

長い長い、苦しむであろう道を分かっていながら。



でもさ。

私は、今本当にあなたと出会えたことや。

あのときに手を取ったことを後悔していないんだよ。

あのときがあるから、私は今現在こうしてここにいるんだから。

大感謝、してるんだよ。





ぼんやり、握手した手を見ていたら。

「またね!」

と、もう一度言われて。

頭をポンッと叩かれた。







電車の中で。

ハルからメールが来た。

「今日は本当に会えてよかったよ。
今までずっとたまっていたことが、やっと言えて。
吹っ切れた、と言うか、すっきりした!

りりか、幸せになってね。

それが、俺の今一番の願いです。

おばちゃんになる前に、早く結婚決めちゃいなさい!」



「もうすでにおばちゃんですよ・・・」

そう返そうとして、やめた。

少し込んでいる電車の中でぼんやりする。





逃げる様にしてハルの元から去り。

たくさん苦しめたけど。

今は私は充分幸せで。


ハルも、きっと幸せだろう、と思ってた。

きっと、私と別れたと言うことが、解放という形になって。

幸せな毎日なんだろう、って。





3日後。

「お願いがあるんだけど」

ハルからのメールが来るまでは。



そう思っていた。


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