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■ 加藤健一事務所『詩人の恋』パンフレット掲載文。
「大いなる矛盾の中で、生まれる交流」 ウィーンは境界の街である。地理的、政治的にも東西ヨーロッパの接点であり、共産圏と自由圏の狭間に位置する。相反する両義的な二つの要素がせめぎあい、独自の文化を産んだ。光と闇、生と死、夢と現実、明暗交互に入れ替わり、多様な民族がこの街を通過していった。舞台となる1986年当時、ドイツは未だ東西に分かれ、ソ連もユーゴスラビアも存在していた。 偏屈な老教授マシュカンと、典型的アメリカ青年スティーブン、一筋縄ではいかない二人の一筋縄ではいかない師弟関係となる二人の物語を、再演にあたって加藤健一さん―義宗さん「父」「子」で演じる。お二人は演劇という世界では「師」であり「弟子」でもある。笑いの絶えない稽古場では、健一さんが義宗さんのトライを支え見守っていたかと思えば、自ら目一杯振り切ってリードしてみせる。対して義宗さんも新たな試みを「父」であり「師」であるマシュカンに思い切ってぶつける。マシュカンはスティーブンの試みをがっちりと受け止め……やがて二人の関係は成熟していく……。 教育学者のウィリアム・ウォードは言う。 「平凡な教師は言って聞かせる。よい教師は説明する。優秀な教師はやってみせる。しかし最高の教師は子どもの心に火をつける」 自らがやろう、やりたいと思う気持ちに勝るものはない。 このキャスティング以上に、舞台上の虚構と真実が綯交ぜになり、どちらの関係も超えた二人でしか表し得ない物語が他にあるだろうか。 私事で恐縮だが、師弟と言えば、僕の師でもある故高瀬久男(文学座)×加藤健一事務所作品の多くを観てきた。そして今回、その作品群の末席に加えてもらえることを嬉しく思っている。僕の師も、思えば特別に何かを教えてくれる人ではなかった。でも気づけばこの機会、いつの間にか、心に火を点けられていたのだ… マシュカンとスティーブンは「大いなる矛盾の中で、交流し、そして…」 あれから40年弱の時間を経て、更に混沌とした世界につける処方箋、 どうぞ最後までごゆっくりご覧ください。 藤井 ごう 藤井ごう(ふじいごう) 東京都出身。演出家、劇作家。R-vive(リバイブ)主宰。高瀬久男(文学座)に師事。『カムアウト2016↔1989』(燐光群)『群上の立百姓』(青年劇場)『海ゆかば水浸く屍』(椿組)の3作の演出で第58回毎日芸術賞および第19回千田是也賞、『ダム』(メメントC)で平成26年度文化庁芸術祭優秀賞、『太平洋食堂』(メメントC)で門真国際映画祭 2021舞台映像部門優秀作品賞および大阪府知事賞を受賞した。最近の演出作品は「ガス灯は檸檬のにほひ』(24/椿組)『シングルファザーになりまして。』(24/演劇集団Ring-Bong)『洞窟(ガマ)』(24/エーシーオー沖縄)『人という、間』(24/グッドディスタンス)他多数。 加健一事務所には初登場
2025年02月04日(火)
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