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■ zasso-bu『エアスイミング』演出の戯言
演出の戯言「不条理を生きる」 多様性という言葉が踊るようになって久しい。差別や偏見に無自覚でいた時代よりも、社会全体が自覚的になったのは良いことだし、互いを受け入れ、受容し、アイディアを上乗せして未知の発想にたどり着き、ゴールである「誰もが生きやすい社会」が実現されたらとても豊かだ。だが、そこに属そうとしないものに対してのある種潔癖な「私が生きやすい社会」からの「考えのない」糾弾や炎上は、目に余る部分も散見している。そこにまた差別や偏見が生まれ、多様性を巡る争いが続く……。認め合うこと、受け容れることが第一義なはずなのに…、「誰もが生きやすい社会」は「誰もが生きにくい社会」を合わせ鏡のように映し出す。まるで不条理演劇を地でいっているかのようだ。 思っている以上に、理不尽で不条理なものが多いこの世界で、人の「尊厳」というものは軽視され、大きな力に対して声を上げる気力もないまま呑み込まれていく。自分たちの現在地を思考する必要があるのではないか。 もし、決まりのない時代や雰囲気や空気で変わる「社会の常識」みたいなものに照らして、自分の「当たり前」が糾弾され、魔女的悪魔的な扱いを受けたとしたらー 「エアスイミング」は1920年代イギリス、精神異常の烙印を押され、収容施設に収監された二人の女の物語である。五十年以上監禁されていたイギリス女性の史実に基づいた物語でもある この二人のやりとりに、ある種究極の状況に押し込められた二人の姿に、選択に現在を生き抜くヒントがある。絶望の中で、何を手に入れ、何に気づき、何を成し遂げようとするのか。彼女たちの旅、どうか最後までお楽しみください。 藤井ごう ○今後の予定 ・2024年6月18日〜27日 ひめゆりピースホール(沖縄県那覇市) エーシーオー沖縄「洞窟(ガマ)」作・嶋津与志/脚色・演出 ・2024年8月23日〜26日 旧細川邸サロン(和敬塾本館) サロン劇場B-side「留守」他 作・岸田國士/演出 ・2024年11月7日〜17日 下北沢OFF・OFFシアター グッドディスタンス「人という、間2024」作・深井邦彦/演出
2024年05月13日(月)
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