再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 Ring-Bong『シングルファザーになりまして』パンフレット挨拶文。

演出の戯言「よく見てみる」

作家山谷典子とは毎回、プロット立ての段階から打合わせを繰り返し、関連書籍に当たりガンガン取材を進めていく姿と、この舞台とそこに生きる人物たちの立ち上がりを見つめ、その丁寧に用意した下地から、小劇団には見合わない選りすぐりのメンバーと稽古場で自由度高く立体化させてもらっている。現代劇に舵を切り「子ども」に焦点を合わせる山谷典子の筆致に、こちらは普段を「イタタタタッ」と斬られる感覚満載である。
前を見ても後ろを見ても耳をすませてみても気が滅入ることが多い世の中で、過去から学ぶことをしない世界で、未来とか将来を明るく見通すなど簡単ではないし、目も耳も閉じたくなる。まして「子ども」たちに明るい未来について確信を持ってウソなく語るのも難しい。
でも、モノづくりを歳や経験や肩書や属する団体なんかを越え、互いに認め合い寄ってたかってあーだこーだしている時間は、笑いが絶えず、何にも増して豊かで、ちょっと人の未来を信じてもいいかもしれない、なんて思わせてくれる。(勿論その先の産みの苦しみを経て、今日この日の出逢いがある訳だが)

劇中、夜間保育園の園長は言う「保育園って言うと、小さな子供たちの場所って思われるんですが、子どもたちの場所であり、パパとママのための場所でもあるんです。子どもたちはね、パパやママがニコニコしていたら幸せなんですよ。そのための手伝いを私たちがするんです。」
視点を変える、視野を広げる、相手側から眺めてみる。そして自分に戻ってみる。
よく見れば、世界は、出来事はどこかで必ず繋がっている。
どうぞ最後までお楽しみください。

藤井ごう(そして、この規模で演るに足りない部分を創造面だけでなく実務的に補い、支えてくれるメンバーがいること。頼もしい、この場を借りて感謝します。)


今後の予定
○ZASSOU-BU「エアスイミング」(作:シャーロット・ジョーンズ)演出
5月08日(水)−12日(日)@下北沢「楽園」 出演:江間直子・樋口泰子(無名塾)
○エーシーオー沖縄「洞窟(ガマ)」(作:嶋津与志)脚色・演出
6月18日(火)−27日(木)@ひめゆりピースホール(沖縄)



2024年03月31日(日)



 「ガラスの動物園」戯言

演出の戯言

今年は人数的にも密度の濃い一年、いつもこの養成所で作品を創る時、夏の中間発表は日本の現代劇、で、モノづくりの考え方や、役作り、相手役との交流、本の読み方、などなど共通体験をもって修了公演の高いハードルを超えることを目標としてきた。今年は夏の発表を担当しないままの修了公演、色々悩んだけれど、一番高そうなハードル(作品選定)にいきついた。
「ガラスの動物園」は有名なんですねぇ…なんでだろ? でも海外戯曲でしょう! 外人でしょう!と上辺を飾り、饒舌に抑揚たっぷりに喋る姿は段々と消え、テネシー・ウィリアムズがこれでもかと書き込んだト書きや人物背景の意味を捉え、人がなぜそうするのかそうしてしまうのか、そしてあらためて家族って、母って父って兄弟って……と文化国籍を超えた普遍的なところまでたどり着いている。あとは客席とどう出会えって作品として昇華できるか。
稽古場は創意工夫に溢れているべきで、それは演出的な創意はもちろんだけれど、俳優が人間をいかに豊かに深く理解し、いい意味で疑い、それでもわからない部分を楽しみながら他者との交わりの中でその面々でしか創れない世界があるのだと信じてトライとエラーを繰り返す、思い切って失敗をして良い場所だ。その失敗から多くを得、進むべき道を座組みなで見つけていく。誰かが提示してくれる正解は一つみたいなまやかしで安心せず、自分の表現と日々向き合う。わからないへの挑戦である。
この苦しんで楽しんで自分を突きつけられた時間はきっと嘘はつかない。
本日はご来場くださいましてありがとうございます。
このキャリアだからこそ魅せられる追憶の劇、最後までごゆっくり、そして温かく(笑)、ご覧ください。

藤井ごう

2024年02月19日(月)
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