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■ 青年劇場9月公演『アトリエ』チラシ掲載文。
『アトリエ』によせて
第二次大戦後のパリ。ドイツ軍が去り、連合軍がまだ駐留している不安定な時期。時代の波に翻弄され、溺れないように足掻きつづける庶民たち、「アトリエ」で生業をたてるお針子たち。そんな彼女らが架せられた不条理の中での「在り方」、引き継がれていく「思い」
『この戯曲は私の母のために、また多くの縫製室で私が出会った、泣いたり笑ったりしているすべての人々のために書いたものである』と作者のグランベールは書いている。ユーモア溢れるグランベール流、人間讃歌である。 そして「アトリエ」での日常的な‘いとなみ`を通じて、「なかったこと」「みなかったこと」「しらなかったこと」と目を背けがちな人が内包する怖さを、静かに告発したドラマでもある(グランベールは処女作以来、弱者・被抑圧者をかばい、人種差別(特にユダヤ人排斥)を憎み社会を告発している)。その人物一人一人の煌く在り方が、思いが、国境を超え、人種を超え、時代を超え、僕らに迫ってくる。 純粋とか不純とか優性とかでなく、
人って、なんて愚かで、汚く、滑稽で、かくも美しいー
戦争に善なんてないこと。戦争が生むのは悪であること。僕らは知っている。 でもその戦争を生むのもわたしたち人間であること。忘れがちだ。 「あったことに」「しっかり目を見開いて」「識ろうとする」こと。過去に学び、思考し続けていかなければ。個性の光る登場人物たちと稽古場で出会いながら、そんな事を感じている。
藤井ごう
2017年06月19日(月)
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