きりんはあんまりに身に近いから 首長竜の輪切りにしたよ。 ぼくたちはかすめるくらいに切なく思って、 すこし泣いた。 竜の捕らえられた日の朝焼けは 菫色がかっていたと云うよ。 背びれはさざなみのようだった。 数人の子供が押しながされていったよ。 そして長く、霧笛が鳴った。 世界さいごの竜が死んだ知らせだ。 ぼくたちはめいめいに割りふられたじょうぎで 竜の首を切ってゆき 子供たちを救いだした。 子供たちの犬歯はやさしい牙に変化していた。 それはそうときりんの話だ。 きりんはあんまり身に近く、 そのくせけして目があわない。 きりんは遠くを見ている、 高くでなく遠く、 いつも。 ぼくたちは肩を抜きながら餌を投げあげ、 きりんは餌に食われる。 あとにはペレットで出来たきりんが残る。 ぼくたちはそうしたきりんを食べて育った。 ぼくたちはくしゃみをしない。 吐いたりもしない。 あくびはときどきする。
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