向かいのアパートの屋上が 宇宙的郷愁へささやかに移行するような詩を書きたいと思って 最初に浮かんだのは新しい早口言葉だった。 「パスカル的カルピス」 +++++ 書きつけるのに一日を費やした。 +++++ カルピス的なパスカルの眼には朝靄が見えない。 そのため朝はあからさまに訪れ、 彼の眼を傷めつける。 彼は白濁した涙を流しながら ただ「ぼくたちのよあけ」とくりかえす。 やがてコマドリが彼の眼をくりぬきに来る。
積乱雲だった彼女を追って 乾少年はハウスを飛びだした +++++ 乾少年はゆるやかに飛翔する。 彼女が流されていく速度はおびただしく 彼女の這った痕すら残っていない、 +++++ おびただしく、 おびだたしく? +++++ 「帯は正しく結びましょう」と先生が云ったので、 彼女は実に正しく結んだ。 その結びかたは地球の自転する方向のほうがまちがっているのだろうと思わせるほどに正しかった。 +++++ その日、地球の公転の向きがややずれていたために、 ゾウアザラシは絶滅し、 彼女はヘーゼルナッツ・アイスクリームを食べた。 +++++ 翌朝、彼女は自分の質量が300g増加したことに苦悩する。 +++++ 少年はやがて雲に追いつく。 そこで少年は巨大な雷鳥に出会う。 そして乾少年の本当の冒険がはじまる。
ぼくのきりんがあなたの皮膚を覆っていく +++++ つめたいヘリコプターが飛ぶので 気温は上空から徐々にさがりはじめる 凍てついたきりんがしゃりしゃりと 空気を擦りながら降ってくる +++++ 蝉は死にすぎだ。 +++++ きりん婦人はペチコートに身を包んで 結婚式をあげる。 永遠の誓いをたてながら彼女は ホワイトホールの成りたちに思いをめぐらせる。
とてもやわらかな形容詞をともなって彼女は死去し、 すべての森と擬態語が彼女の冥福を祈った +++++ プロトタイプの少年とクロコダイルの少女は 図書館と下水処理場をつなぐ道ですれちがう。 彼等の視線は一瞬結ばれ そのとき彼等は一生分の永遠を使い切る。 とり、 わたしのてのひらからうまれる よるがくるとしんでしまう、 ぼくのとり、 +++++ 世界エレベーターに灯がともる、 空がすみれいろにおちる、 バスが速度をあげる、 (夜が来る!) ぼくたち乗客は生きるために 瞬間的に、心からバスの運転手を愛した。 +++++ とらえたとおもった しろいつきを ぼくはみうしなった きがかりこまれているせいだ
うみ + home
|
previous
+
index
+
next |
|