やさしいおんなのこは とべないおとこのこをかだんにうえて おろしたてのジョウロであみのさんをやります +++++ 真夜中の夜明け。 少女の眼は白く、 +++++ そら を 譜面どおりに発音して、 彼女は五月を見あげた。 幻のような夏、その +++++ 青。 +++++ キャンディー・カラーのうきわを腰でくるくる回しながら エレファント・ガールがやってくる ぼくがほめると 喜んでうきわの回転速度をあげる ついには太陽光すらはじかれる +++++ 天使は暗い眼でわたしを見あげた。 だって、わたしは扉なんか 隠してないもの。 天使はすりきれてぼやけてゆく足首を抱えこんで しとしとと泣きはじめた。
避雷針のてっぺんでV字バランス、 +++++ たいふうのかぜがふいています たいふうのあめがふっています でっかいめだまはあしたのあさにくるらしい せまりくるしせんのせいで ぼくらはこんやめだまやきせんそうのゆめをみる +++++ 祈りは真夜中の夜明けに似ている +++++ 象はたまごから産まれると思う。 +++++ そらはいつだってはいいろをしていて わたしがいてもはいいろがすこしこくなるくらいで だれにもみつからなくて だからわたしははしった
ぼくは蟹を探す。 +++++ オレンジとホワイトのストライプよりも オレンジと白のストライプのほうが目にやさしい。 みかんいろやだいだいいろはまた別の問題。 ぶんたんいろやでこぽんいろはまた宇宙人的な問題。 +++++ 今日の宿題は、半径が家の高さと同じ雪玉で玉乗りをして うっかりタガメを踏みつぶすこと。 ぼくらの先生は努力を評価するので まず雪を掘るスコップの原料の鉄を取るために U字磁石を持って砂場へ行こう。 (磁石にはあらかじめポリ袋をかぶせておくと砂鉄が離れやすい) +++++ 今日の早口言葉 トマトポトフを20回言え 意外と言える気がしてきたけど それよりフの音が苦しい。 +++++ ぼくらの最終の目的は、いかウインナーを手に入れること 28匹のたこウインナーと35匹のかにウインナーを分解接合したら 何匹の偽いかウインナーが出来る?
この、広大なロビーから わたしは離陸を見届ける。 そこから180度離れた場所で、 あなたは着陸を促している。 +++++ 重厚なテーブルは牛に変化し 抱かれたギターは嘘少女へと進化する あらゆるものの思い出に埋もれながら 少年だったスプリンクラーは水圧で化石を掘りおこそうとしている +++++ いぬはいつまでもついてくるので どこかでつきはなさないとならない ロープ? いぬ は ついてきていたのではなかった わたしのゆびにむすんでいたいとがほどけて からまったいぬはひきずられてきたのだった +++++ リンドウ という美しい音にどうして竜が含まれているのだろう +++++ 沖に浮かんだ無数のコックピットがしろい菌糸を吐きだし 巨大なさなぎになろうとしている +++++ 少女は坂のしたで両腕をひろげ いつか転がってくる果物もしくは自転車を待ちうけている
緑と縁をまちがえた。 た。 ぼくの眼の容器、くき と張りだせ。 +++++ とてもみちがえたよ。 あめがふって どろりととけたじめん、 あのこはいちどみづからうまって よみがえった。 つぶやく おかえり のこえに じんじんとふるあめのしつどをおもいかえす。 ねえ、ぼく、みちがえたといいたかったのに みまちがえてしまって、いたん、だ。 ねえ、きびすをかえすまえに、 ねえ、このはなしにかえるはなんびきかつようされた? +++++ ベランダとまちがえて 彼女は紫色の花畑から飛び降りた。 そして何処へ着地した? 同じく、ロッキング・チェアーと思って 椅子百合に腰かけた姉さんは食べられた。 いえ、わたしの姉さんはまちがっていない、 のみくだそうと花弁は激しく上下にスウィングする。 最初に踊りはじめたのは誰だった? +++++ 惑星的に、ぼくは傾いた。 リコーダーを支えにしようとしたが、 ぼくの背はとっくにソプラノを追いぬいていたんだ。 +++++ 空も同様に傾く。 意味不明の言語の蟲に誘われて、 弔いの戦争がはじまる。 今日の、夕焼けの動機。 +++++ わたしは花畑で飛び降りた。 そして美しく着地した。 +++++ 何処へだって着地できるよ。 地下鉄は、とっくに土を離れてしまったもの。
某即興掲示板に出すタイトル候補たち。 「ノアの結婚式」 「しょくぱん物語」 「象の美術館」 「のどかなカルピスおろかなカルピス」 「ハコブネ、リリク」 「しろいもくせい」 「獏の出てこない話」 「わにくん」 「プロペラ墓地」
ストッキングをかぶったウサギの大犯罪 長い耳は(そのために作られたように)完璧に奥まで納まり わずかなたるみも作らなかった そのあまりの完成度に 白昼行われた犯罪 大勢の目撃者にもかかわらず ウサギはらららと逃げおおせた +++++ 白い昼、 わたしの眼は潰れたのだろうか、 かげろうさんが横ぎる、 幻のような すみれいろの陰が 瞼のすみにおちる、 +++++ 永遠スキップにはもう疲れた +++++ リンドさん、 真昼のベンチで手を広げて 僕らを迎えた リンドさん、 僕らは毎夜 小花柄の夢にうなされる、 その柄は彼女のギャザ・スカアトとして 僕らの夢で繋がっている +++++ カモメが死ぬのは白い昼である。 +++++ 獏は、ほがらかに跳ねることを、もはや、やめてしまった +++++ 獏の夢見に関する物語 語りはじめる前に、 僕たちはまず「闘争」について思い出さねばならない。 次に、群青色の絵を思いうかべ そこから連想をはじめねばならない。 そして、過程がどうであれ、 最後には潮で錆びた城にたどりつかねばならない。 そのときようやく、僕たちは獏の、咳こむような寝息をきくことが出来る。 +++++ ウサギは両耳を大きく水平にして飛び降りた。 けれども僕らは、堤防に転がった彼の亡骸をカモメと判断してしまったのだ。
うつろな眼で 彼女はスミレ科生物の生態について暗唱する 僕はその隣で耳をふさぎ ブドウ科生物の進化の過程を暗記している +++++ 翼は何度でも生えてくる だからわたしは何度も切りおとす、 いつかかたわの翼が生えてきて 進化の瞬間をこの目にしよう、 +++++ 黒い犬、 暗号のように。 ナクナ の切れめがわからずに クナクナクナ、と くりかえす +++++ リップクリィム、 あなたとわたし、 両側から塗る方法、 うすももいろに透けて見えるよ。 海の側へ行こう。 くちびる、きさきさに荒らして 一刻も早く、 使い切ろうよ、 早く、 出会おうよ、 わたしたち、 +++++ 戦いは終わった。 スミレは立ちあがろうと体を震わせるが、 じきに力つきる。 やがてヨーグルト・レーズンの匂いが街を覆っていく。 「あなただけはプルーンの香りを忘れないでね」 と言い残して、スミレは死んだ。
釣り糸をひとさしゆびに巻きつけながら 貴方が泳ぎから戻ってくるのを待つ。 欝血した指先は、昨夜の月の集合体。 +++++ ヘリコプター、舞台で再現 どちらへ走るよ? ふりあげたわたしの右手と すっとしたあなたの左手が交わるように 空間を、歪めよう。 +++++ ことり、 わたしにうめてもらおうと いま、 おちたね。 あいにくわたしは はんとうめいのこざかなをかっていて、 かれらにうみをおしえないために わたしは きょう、 そとにでていない。 さいごのときはおくじょうでまちあわせようときめていた、 ことり、 もうよあけはあけてしまったよ。 +++++ あのこのむねの、むかってひだりがわの くうどうをぴんくのぺんきでぬって だめおしにおおきく しんぞう とかいた。 これであのこはもうしなない ふたつめのいのちを ぼくは えいきゅうしようでつくった。 +++++ 橋の色は、渡る者を選ぶ。 仮に、二枚葉を追ってきた少女飛行機は 陽炎の橋を渡る、 それも途中でキンシチョウが横切ると 少女飛行機は谷(と自覚されたオブジェクト)の底に墜ちていく。 +++++ ばらばらばらばら この音が全てを救うと信じるあのこは 両てのひらに心持ち神経を送って 呟きつづける、 (ばらばらば・らば・ら) ねえ、今はライトを消したあとでしたっけ、 それとも、 +++++ ら ら ら と歌うらばがいるという砂漠を 今朝、窓から見つけました。 それだけの記録で足りたのだけど。
わたしを何処までも引き延ばしていくものは、 春の欠片を握り潰してしまったのだろう。 しきりに、 まばゆい、 +++++ やまをつくった あなたのてのひらのかたち、 わたしのせなかのかたち。 なみは やまからよせてくると、 わたしはいま しんじられる。 +++++ 旗は視界の果てまで続いている それらの大群は永久記憶を不用意にかきたて わたしは「冒険」と呟く。 +++++ ジャックは箱に閉じこめられたまま、 僕等は箱を見失った。 箱のなかのジャックの呼吸音が真夜中にとつぜん響き、 僕等は泣きながら幾度も飛び起きる。 +++++ たとえば、 きいろ といういろを見る度に 屋上のことや 熟れた炭酸ジュースや 奪われたマントや 三つの段階のことや しあわせだったことや 眼の痛みを思いだすのだろう。
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