OH GREAT RABI RABI

ビニイルハウス
2002年03月31日(日)




ビニイルハウス





まくらをやぶって そのなかに

とじこめた の、


食虫植物のイメージ。
つるからつるへの幻想
さばく、


光合成 と呼んだ
あなたのては うすみどりをしていて
わたしのてのひらからすりぬけてゆく
たいようはえいえんに沈まない、


いろの果てのいろをした
はなびらを
すくっては すくっては
ひざに積もらせて
(楽器をつくろうとしていたの、)


リリー と発音できなかった
いつも
リギー、リギー
せばまったのどのおくで
わたし、


まよなかに目がさめて、
ゆめのつづきで
三月の朝と六月の池の共通点について
かんがえた。
ぬるいひえこみ
しめりけ
水仙、


かぜはない。


乾いたはなは
どうぶつのおとをたてる
けれど
あなたは植物だった、


(笛でひまわりはこちらを向く?)


けれど、
はなはもう おとをならさない
かぜはしんでしまった
まくらがないので
ゆめは もう みない


ねえ、リギー
まぶしくて 匂いしかみえないよ。












海の電線
2002年03月30日(土)



海の電線





猫はひどく疲れていた。


それは、疲弊という言葉が最もふさわしかったが
ひへいと発音できるだけの息を吸うことも、今の猫にはかなわなかった。


猫は永遠的距離を歩いてきた。
それだけ歩いても、肉球にこびりついたもどかしさは落ちなかった。


もどかしさは、春に襲う。
うすみどりをした午後に、煤のようなもどかしさが降ってきて
屋根を薄く覆う。
そして猫の足の裏に、ささやかにへばりつく。


もどかしさに襲われたことを、誰も理解しなかった。
もうすぐながい雨が来る。
猫は、みんなに同じものをばらまいてやろうと思った。


海までは遠くなかった。
夕方に町を出て、翌朝には浜辺に着いた。
けれども、猫は疲れはてていた。
もどかしさとの道中は永遠のようだった。


波打ち際に近づきながら、猫はためらいはじめた。
視界のすみに、骨が反りかえったパラソルが立っている。
猫は想像した。


(ここは大きな屋根だ)


すると、少しうえを電線が行き交っているのに気がついた。
どこまで続いているのか、電線の先は沖のあたりでぼやけている。


(別の屋根にもきっと猫がいるはずだ)


猫は電線に飛びのり、慎重に足を進めはじめた。
足元の海の色はしだいに濃くなる。
もし海に落ちても、みんなして永遠に悩まされるだけのことで
もともと自分はそのために海へ来たのだ。
そう言いきかせても、足を置くときの震えは隠せなかった。


意外に早く、耳はその鳴きごえをとらえた。
こえの主が、海面すれすれを近づいてくる。
しろばかりが目立って、どういう感情を抱いているかはわからなかった。
けれども猫は走りだした。
もどかしさが全身に行きわたる。
毛が逆立ち、軽やかに背中がうねる。
大きな一跳ねを最後に、後足が電線を離れ
前足に沿ってぎんいろにかがやく翼がひらいた。
激しく鳴きながら、しろに向かって猫は飛んだ。












沈める寺
2002年03月29日(金)





沈める寺





涸れてゆく
みずうみの淵にかかとをのせて
わたしは水底を見おろした。

(とりはしんじてくれんよう、)

腕に抱えた幾十もの塔。
そのひとつを摘み
しずかに、水に沈める。

ほそい円錐が
粉砂のうえ、水草のすきまに
着床するのを見届けて
ふたつめの塔を投水する。

(みずのなかはみえんよう
つかるとしんでしまうよう)

沈んでゆく円錐は
水底の円錐にゆらりと被さる、
わたしは次の塔を手にする。

(みっつ、よっつ、
いつつ、)

(だあれもみとらん、)

この土地には
喉を射られた鳥が棲むという。
彼が飛ぶと音が死ぬ、
最後の輝きのように
尾が艶やかにたなびく。

(むっつ、
ななつ、)

(うそゆうたらいかんよう、)

(とりが、)

しんきろう という
そこなしの塔。
尖端を重ねて
何処までも高く出来る、

(やっつ、

ここのつ、)

(みみ つまった)

(ちやう それは、)

腕のなかの塔が無くなれば
また集めにゆく、
塔はいつか水面を突きぬける、
わたしは塔を重ねつづける、
そのてっぺんに、鳥を

(おとはもうすぐしぬよ。)

つかまえるまで、

わたしは塔を重ねつづけた。












ぼくはけしてとりちがえたりしないよ、
2002年03月28日(木)



ぼくはけしてとりちがえたりしないよ、



と ドラゴン・キッドは云った。

ぼくは全てを透きとおす眼をもっている。
そのまえに世界はすみれ色だ。
水滴は飽和物、
月は紙粘土で出来ている。
電車は夜明け、
天使は五本足、
ポストはチョコレートのかたまりだ。
地面は育ちすぎた胎児が支えている、
猫は物質化された時間だけど
色によって役割がちがう、
たとえば三毛はひだまりというふうに。
隕石はぼくも見たことがない、
けれどもロケットは突きぬける、
なかでも月ロケットは記憶まで。
鳥はホメロス叙事詩を謳っている、
歩きかたはさざなみ、
お皿は永久凍土、
舗装道路は物語のはじまりへと続いている。
標識は細かい縦線の集合体、
信号は砂嵐のなかの一点、
灯台は細い旗と、一人の人間。
雨は幻のように降る、
温度は下がりつづける。
きみは静かな溜まり色をしている。
ぼくはその色がとても好きだ。

僕は、君を美しいと思うのに
本当の色はちがうのだね。
いつからか触れなくなった、

とっくに気づいているよ。
ぼくの名前にはスカイが含まれている。
触れなくても思いだして。
握りかえす。
ぼくはいるよ。
ぼくはいるよ。












とうめいなあく
2002年03月27日(水)






とうめいなあく




かーてんのたるみにひそんだ
ほそながいあくまが
くさり と
ぼくをつきさした

ながれだすちは
あか とおもっていたが
ふしぎにすけていて
あしもとにむらがる すらいむたちを
うるおして く

すべてをてらさなくてはならなかった。
あくまはかげにすんでいる。
あくまはかげにすんでゆく。

(こきゅうをとめれば
いつまでも いきられるように
おもった)

くうきのりんかくをたどると
たしかなてざわりがあった

いきを すう と

ぼくのてあしが きえた。











ひかりごけ
2002年03月26日(火)







ひかりごけ





あなた とおく わらって ゆく

とてもふつりあいに ひかりごけがふるのです。
そのみどりを はねあげる
くるまの いろ、
こけにぬられる ぼくのめ

わらいごえのかたちを
ゆびで つくった
そのまんなかから
さいごのあなたを かくにんした。

ゆうん と
なにか こうさ しました、

(つづいている)

ひかるむしを にぎりつぶしたてのひらで
てを、
のばした。

(つづいている、)
(つないで いる?)

ひかりはしにました。


いま、あさがきたのです














あけがたのゆめ
2002年03月25日(月)





あけがたのゆめ




てんしのゆめをみた。

まるいおしりをふって
ぼやけたそらにきえた。

あさごはん。

ぷりんのきいろいところをおさらにあける。

からめるのぶぶんは まよなかに
だれかが てじなでたべてしまったらしい。

まえのひは やけにあまいにおいのする
ひつじとわらいあうゆめをみた。

くちもとのけが ごわごわしていたのがきになって
ひつじのかおはおもいだせない。









no title ( or zzaj )
2002年03月24日(日)




no title ( or zzaj )




ちきゅうが ひっくりかえった日
おんがくも ひっくりかえった

おかげで 父はくっしっらくを聴き
妹は 幼稚園でうようどを唄い
友人は くっろをやっていて 
彼女は るぺすごを習い
ぼくは ずじゃ喫茶に通うはめになった

(たとえば ーびどんあるーあ は発音しにくいが
すーるぶどんあむずり というのもどっこいで
このようにして 多くのおんがくが廃れてゆく)

くっじーみゅぐんりーひが 一度リクエストされる間に
ずじゃずじゃずじゃずじゃ と限りなく口ずさむ
ぼくの洗脳計画

だから このままでいいんだ
ペンギンが絶滅しても ずじゃが残る

(けれど)

ぼくはアルトサックスを吹く
へたくそだが その時
ちきゅうは 正しい方向を向いているように思うんだ











ぼくのうしがしんだはなし
2002年03月23日(土)






ぼくのうしがしんだはなし




あたらしいふうにかいた
ぼくの え

ぱれっとに しかくくこびりついている
えのぐが すべてで
みずさえあれば どこまでもかけた

みどりいろのうし と
しろい しょうじょ と
あかい そら

「うしは みどりじゃないでしょう。」

うしろから てがのびてきて
ぼくのうしに おもたいえのぐをのせた

がようしのすみにかたまった
しろいえのぐを つめでひっかくと
せかいが わずかにくずれていった









2002年03月22日(金)










みみ は どこに売っているのかしら

と 彼女が困ったかおでやってきた

どうしたの突然

彼が いやりんぐをくれたんだけど
私には みみがないこと云いだせなくて

とりあえず ぱん屋にゆけば
あるんじゃないかな

ありがとう と 彼女は走ってゆく

(でも あのぱん屋は
みみで かりんとうを作っているから
ちょっと べとべとしているかも。)

そんなの平気

と はるか彼方から叫ぶ 彼女

ぼくはそんな彼女が好き。








つりかわ
2002年03月21日(木)





つりかわ




つりかわが ゆらゆら ぼくをよぶ

あいにく ぼくの頭はそんなに小さくない


昨夜 これで こびとが首をつったんだ。

うそ。


たーざんごっこでもしようか?

(さらう場所もないくせに)


ちょうちょのように 小さければ

きみとぶらんこができるのに


つりかわにしがみつく

これをつたって 天にものぼれると想像する


でんしゃは かーぶに入った

ぼくの体は ぐらんぐらんとふりまわされる

はずみをつけて 飛べば

窓をわって

どこかへ ゆけるだろうか








ば す
2002年03月20日(水)






ば す




てのひらくらいの小さなばすにひかれて死んだんだ。
少しずつつぶされてゆくから、とても苦しかったって。
大きなとらっくにひかれたほうがましだったって。


くろねこがよこぎったんだ。
だから彼は横を向いて、すれちがうかたちにした。


そしたらばすが来た。


ぶれーきの音だけは僕もきいた。
くろねこはふりむかずに行ってしまった。
くろねこには耳がなかったから。









peel
2002年03月03日(日)

peel








ひどく乾燥した午後だった。





今朝は 何やら


銀色に光るものが さりんさりん と


しきりに降っていて





それを見ながら ぼくは


体温計で自殺しようとした


(この雨のなかに出てゆくほどの勇気はいらない)


けれども 水銀があまりに冷たくて


結局 いつもと同じに


2度高く 体温を伝えただけ。





世界中のじてんしゃが溶けて


降っているのかと思った


それくらいに 誰もいない、


音のない 午前9時から11時。





つるりとした ぷらすちっくの工作ばさみで


小指を ちょきん と切る。


(この指を 恵まれないこどもたちに


食べさせてあげてください)


階段のうえで 膝を抱えて


見張りを続ける ぼくのはなし


(電気のこーどで首をつる


薬を 一粒ずつ飲んでゆく


あるいは べらんだから飛び降りる)


おなかがすかない。





銀色はいつのまにかやんでいて


白い虹が出ていた。





午後は ひどく乾燥していて


ぼくは風化するために 道路に出た





坂のしたに はだしの男の子


(手のなかに隠した 丸い実を


かったーないふで むいている)


そばかすに覆われた顔と


うす茶色の目





皮は長くつながり 地面のうえでひからびてゆく、


その裏側がやけに 白く


(もしも人であったなら


とてもやわらかく動くのだろうと


そう思わせるほど 白い色をしていて)


積もったあたりから 雨の匂いがした。





(轍をたどって 追いつくように云われたのだけど


見失ってしまって)





男の子は 皮をむきつづける





水たまりが必要だったんだと思う。


だから ぼくは道路のすみで


おしっこをした


そうして出来た ひらたい水たまりを見ながら


僕はかすれた声で


さりんさりん と呟く。





夜まで からからに乾いていたので、


ぼくは なかなか眠れなかった。





ようやく うとうとしはじめたころ


(さりん さりん)


幻のように 雨音がきこえ、


それは一晩中つづいた。





次の朝、道路は 白く粉を吹いていた。








イエロウ・ドレス
2002年03月02日(土)

イエロウ・ドレス








ちぎれてゆく ちょうの


きいろ





つまさきから なかゆびまで


りんとした くものいとをとおし


くうきの きまったばしょにとめる





そうしてできた ひょうほんは


そよかぜにふられて


ぶらんこのように


もどってくるんだった、





たしか。





(あなたは いま どこかでおどりつづけていて


その ようふくのこすれるおとが


ふしぎに みみにさわるのです)





ちょうをむしっていた きみのては


しだいに とうめいになって


やがて ちょうは しぜんにちぎれてゆく


そんな きおく。





そのとき ちるようなはなは


さいていなかった


なのに


よわいかぜがくると


いっせいに はなびらがちゅうにまって


そのなかで


ひときわ ぎこちなく あおられている





(おどりばの ひとつひとつに おどりこがいて


ぼくは かいだんをのぼりながら


いくつものおどりを おぼえた)





おくじょうの じめんには


むすうの ちょうのひょうほんがとめてあって


あしの ふみいれるすきまもなく


つまさきだちになっても


とても たどりつけなかった





よわいかぜがくる


いっせいに ひょうほんから りんぷんがまう


ぼくはせきこみながら めをこらす


むせぶような こなのおくに


ほんものの





きいろ。





かだんのよこで ないていたきみの


ちいさく くちずさむうた


それにあわせて


ぼくは でたらめにおどりだす


おどりながら ちかづいてゆく


ゆれるようふくのはしに てを のばす





ふれる と どうじに


あなたは ちぎれて


きいろだけが


ぼくのてのひらに のこった





(あなたは しぜんにちぎれていった


いろ と おとだけを ぼくにこすりつけて)





きみは りんぷんで きいろにそまって


ひょうほんのように ぼくをまっていた


そして とうめいでなくなったてで


ひたすらに ぼくのてを


にぎった。










おうじさまのはなし
2002年03月01日(金)

おうじさまのはなし





いつおわるのだろ?





さんかくけいのがらすがおちてきて


ぼくは そのじゅうしんのまっすぐしたにいた。


ずっと ばらんすをとっていたんだ。





なつのだいさんかくのなかの


ひとつはこどく。


かなしくおもって、ぼくは ちょくせんにつなぐ。





つみあげたほんの いちぺぃじずつ


やぶりとって


かみひこうきをつくる。


でんしゃのおりかたはしらなかった、


だからとぶしかなかった。





とばすまえに もういちどひろげて


てがみをかいた。


でも きみにとどくのは


なんのかわりない まっしろいかみだといい。





いっしゅんのうちにかいだんをかけおりて


とぶれんしゅうをした。


きみのとんだふりを いつもしんじていた、





くうきをかためるほうほう とか。





あめふらし いっぴき つれていってもいい。


ぼくのはなに あめをふらせてやらなきゃ。


しっぽのおされてつぶれた おかしないろの つれてゆくよ。


とてもよわいあめでいいんだ。





いっぽんあしのかずをかぞえて


じめんがまっすぐか たしかめる


すこし ゆがんでいる。





ここのすなは がらすがくだけたもので


あしが ひどく いたい。


すながふえてゆかないよう


ばらんすをとらないとならなかった、


でも とんだら


ばらんすは ぼくにかかわりなくたもたれて


ぼくは まっすぐにしていればいい。





いつか たいようがちかづいてくる


すながとけて せかいがしずんでゆく


あたらしいかたちにかたまる


そのまえに


とぶんだ。











そらは まっすぐだった。

















ねえ ぼく きみのこと すきだった。














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