|
|
■■■
■■
■ 大阪劇団協議会「民衆の敵」当パン戯言。
演出の戯言 「僕らの物語」
僕たちは思っているよりもよっぽど危うい世界に生きている。 明確な「これが正しい」といった価値観のなくなった世界で、 頼りにすべきものを失ったまま、このコロナ禍(死者600万人!)を過ごし、 海の向こうでは20世紀でそういうのはなし、となった筈の戦争が展開する。 こうなっても救済者やヒーローはやはり現れない。 だから誰かに「それでいいんだよ」とでも言われない限り、俺はこれだけやったんだ!ということが生きた証なのに、誰も言ってはくれない…。これは困った。そこかしこでSNSを発信し、自分が生きた証が欲しい、生きてる証が欲しい…三大欲求に食い込むかのような承認欲求の過大… ストックマンが北の果てで感じたこと…登場人物たちが各々の立場で感じていること… 私利私欲、自分たちの利がすべての基本。イプセンが140年前に見通していた世界、人間の姿は、何も変わらずここにある。いや、色合いを増して眼前にある。 「民衆の敵」は正義を貫いた貴い人間の話では決してない。難しい話でもない。 人に認めてもらいたくて、人のためになりたくて、でもなれなくて、あれも欲しくてこれも欲しくて、人目を気にして、家族も仕事も大事で、世界はできれば平和がいい。 そんな、どうしようもない位、僕らの物語だ。
訳語の中に「郡の行政官」という台詞があるのだが、二月の下旬を境に「軍の行政官」にしか聞こえなくなった。それくらい、僕らは短絡的で、いつの間にか価値観が動かされている。人を識り世界の仕組を識る。考えることを放棄してはならない。
どうぞ最後までお楽しみください。
藤井ごう
2022年03月25日(金)
|
|
|