2016年07月31日(日) |
高野和明『幽霊人命救助隊』★★★★☆ |
高野和明 『幽霊人命救助隊』
久々に読んだ高野和明さんの小説。
こころに残ったところ。
「人と人との結びつき、心身の健康、そして経済。この三拍子がそろっていれば、誰も自殺なんかしなくなるのではないかと裕一は考えた。逆に言うと、どれか一つが傷ついた途端、人の心は試されることになる。この世を好きなままでいられますか、と、」(p492)
借金苦が恐ろしい理由はこの三つを一度になくすからだ、とも。 わたしの身近にも心当たりがありますが、その立場を想像するだけで「絶望」の二文字が容易に浮かんできます。 実際にどれほどの絶望なのか、苦悩があるのかは想像できないけれど。
「子供の頃、江戸時代生まれの爺っちゃまによく言われたよ。何事も途中で投げ出してはいかん、結果はどうでもいい、最後までやり遂げろ、とね。今にして思うと、あれは人生そのものについて言っていたような気がするんだ。わしらは最期まで生きるために生まれてきたんじゃないのかな。いつ往生するかは、神様が決めてくれる。そこまでわしらが責任を負う必要はないんだ。難しいことなんか考えず、ただ、この世に居ればいいんじゃないのかな」(p542)
人生はマラソン。 ゴールにたどり着く前に自分でコースから外れてしまうのは、もったいない。 まだ走ることができるのだから、歩いても給水してもいい、止まってもいい、けれどコースから外れないこと。
エンターテインメント小説でありながら、とても読みやすく、面白く、考えさせられた一冊でした。
高野和明 『幽霊人命救助隊』
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