2007年09月28日(金) |
夏目♀『片付けられない女魂』★★★★★ |
『片付けられない女魂』 夏目♀ 扶桑社 (2007/09/13)
時折ずしーんとくる厳しさと、心が温かくなる周囲の人(やぬいぐるみや植物やオカマ)との絆と、きっぱりとした潔さが印象に残った一冊でした。
心に残ったところ。
「ただ。最近のあたしは『片づけない』ことが簡単なことだとは思えなくなってきている。 (略) そのことをはっきりと自覚してしまった今、『片付けない』ことはもうできない気がするのだ。」(p143)
実はこの次の行からがもっとガツンとくることが書いてあるのですが、ネタというかキモばれになっちゃうので気になる方は借りるか買うかして読んでみてください。 私も肝に命じたいと思います。肝だけに。さむ…。
片付ける、片付けない。 どちらを選ぶのも自由。そして自分の責任。 どちらにしたって、自分で選んだのだ、と思えるならそれでいいと思います。 どちらにせよ難しいことではあるのだけど。
と、当時彼女のブログにコメントしたようなしてないような。 (あっさり脱出を追い越されておいて何この上から発言……あーあー)
会社の先輩の、いい関係なようでそうでもなく、いやでもやっぱりめちゃめちゃいい関係(今日中華料理屋で久々に読んだ『同級生』、切なくなったけどこんな感じ!)じゃないの夏目さん、の「吉田」さんが置いていってくれたサプリのケースを捨てずにとっている理由。
「人の嘆きや呟きにはそっと耳を傾け、でも、闇雲に助言はせず、ここぞと言う時に絶妙なタイミングで手を差し伸べることのできる大人でありたいと思わせ続けてくれるモノだ。」(p274)
私にとっての、二階寝室のオルゴールの人形が同じようなモノかもしれません。
もうボロボロだけど、大好きな母方の亡き祖母が買ってくれた人形。 ねたまず、ひがまず、悪口を言わず、どんな辛い目にあっても挫けることなく、穏やかに生きていきたい、その気持ちを忘れないでいるためのモノ。
……たぶん、一生手放せません。
次。反省させられたところ。
「語弊があるのを承知で書くと、『片付けているから』『モノを増やさないようにしてるから』なんていう理由で、親しい友人や家族の想いを『迷惑』と思ってしまうくらいなら、そうしなければ部屋が片付かないというのであれば、あたしは一生汚部屋住まいでいい。」(p295)
気持ちはほんとにありがたいと思うけど、モノは要らない、困る、と思うことはあります。 無理して使わなきゃ、飾らなきゃと思うことで実はそうしたくない気持ちとのギャップでストレスがたまり、かなりよくない精神状態になったりもしました。
私がそれなりだから、それなりのモノをいただくわけで、それがストレスだというのもある意味理にかなってるのですが、つらいものはつらい。 だから気持ちはありがたく受け取るけれど、モノは受け取った後で、相手の人が聞いたら悲しむだろう方法で処分したりもします。しています。
でも、それでいいのかな。とちょっと思いました。 殺伐としすぎてないかな、と。 でも今はそれが私の選択。ただここが心に残ったのは、私の中で想いを粗末にしてるよ、大事にしなきゃ、と声をあげた私がいただろうから。 その声を封じないで言い分を聞いてあげる余裕が必要なのかも。
10年かけてこしらえた2つの汚部屋を自力で片付け終えた彼女の感想。
「継続は力なり。 無駄なことなんて何もなかった。続けることに意義があるんだと思う。」(p361)
耳にタコができるほど聞いてきたありふれた言葉が、ものすごく重く、説得力をもって迫ってくる。
やればできる。
ほんとにやればできるんだ!
と、このビフォアアフターを見れば誰でも思えます。 私は思えました。言い訳する余地もなく、自分はやれないのではなくやらないのだ、と気づかされます。
そう、要領が悪くたっていいんですよね。 とにかくあきらめないでゆるーく、地味ぃーに、続けること。
そうして片付けつづけた果てに、目が覚めた、と彼女は言います。
「だってこのあたしが、『持ってることがステータス』的な物でなく、人に誇るための物でもなく、安易に買った物でも流行やノリで買った物でもない、そんな薄っぺらい物じゃなく、もっと純粋に、本当に自分が好きだと思える物の中で暮らしたい。って思っちゃったもの。」(p388)
物にもいろんなものがあるということに最近気づいた気がします。 以前は高くて有名な物に価値があり、それをたくさん手に入れることが幸せなんだと思っていました。 実家にはそういう物がたくさん死蔵されていたり、ただたくさんあったり、落ち着かないし豊かな気分にならないけど、不自由はないし(あるけどそれは罰当たり、贅沢な悩みだと)豊かなんだろうな、と思っていました。 自分のものさしを持っていなかった、持とうとしなかった。
今、豪邸でもなくブランド品に囲まれてもなく、まだまだとはいえ物もずいぶん少なくなり、うっかりするとトイレットペーパーの買い置きがなかったりする暮らしをしているけど、豊かさを感じる時間が増えました。
何が好きで何が大切で何はいらないのか、そういうものさしを自分なりにきちんと持つ。そういうことができるかどうか、するかしないかなのだと思います。
ほんとはなくていい、いらない物から受けるストレス、それらに奪われる時間や空間って、なくなってみて初めて気づくのかもしれません。
『モモ』が時間の花を取り戻してくれた後のような、そんな感じ。 実際にはまだ灰色の男たちに言いくるめられて時間を奪われてるけれど、そのことに気づいてる状態。だから「しょうがないんだよ」とあきらめない。もっとゆったりと、毎日を慈しんで暮らしたい。 ベッポじいさんのように、モモを信じて。
この本で一番驚愕し、心底私もそこへ辿り着きたいと思ったのがここ。
「ちょーっと心にモヤモヤが残ってるけど、でも、部屋にある物をひとつひとつ飽きるまで眺めて、たくさんの物を捨てて、9ヶ月かけてようやく、ゴミ屋敷みたいだった8畳間が、『残しておきたい物だけしかない部屋』になったんだ。」(p472)
しかもそこまでいくのに9ヶ月も?も?も?も?もももももも?
たった9ヶ月で『いつでも旅立てる部屋』(『イギリス式月収20万円の暮らし方 』より)に? ほんの9ヶ月で『シンプルな家には、自分の必要なものと自分の好きなものしかありません。』(『居心地のいい簡単生活』より)状態に?
「早くね?(誰か思いっきり殴ってください)」(p473)とあるけど逆の意味で殴りたい、かも。 殴らないけど突っ込まずにいられません。 9ヶ月やそこいらで『残しておきたい物だけしかない部屋』にたどりついた(しかもあの状態から)彼女はやっぱりスゴい人。 これからも薫陶を受けたい、と思います。
人が内面から変わる。 きっかけは様々だけど、変わりたいと思った時がチャンス。
自分のペースで、たゆまずあきらめずくさらずめげず、笑いも忘れず(これ重要)続けること。 そうすれば必ず道は拓ける。ゴールにたどりつける。 そして過程すらも楽しめる。
そういうことを教えてくれる一冊でした。
片付けられた女魂を、自分の中にも取り込んで、ゆるぅーくやっていこう!
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