2003年05月29日(木) |
檀ふみ『ありがとうございません』★★★☆☆ |
『ありがとうございません』 檀 ふみ 幻冬舎 (2001/04)
エッセイ集。 読みやすくて、こ難しいのや深刻なのを併行して読んでいる時にとりまぜるとよさそうな一冊。
いい!と思った所。
「読んでいて腹立たしかった。反省の日記は小学校だけでだくさんである。反省すればコトが改善されるなら、私はとっくの昔に立派な人になっている。 だんだんと日記のつけかたを覚えた。まず、反省はしない。後で読んで恥ずかしくなりそうなことも努めて書かない。人のことを書く。なるべく身近な人がしたこと、言ったこと。できれば悪口がいい。 すると、がぜん日記が生彩を放ち始める。ひとくちに悪口というが、悪口を書くのは結構難しい。細かな人間観察が必要になる。それに、後になって浮き彫りにされるのは、悪口を書かれたほうではなくて、書いた方の精神状態なのである。」(P204-205)
で、彼女はこの当時、4冊目の3年連用日記を書いてらっしゃるそうだ。 ちなみに私は10年連用日記を、たまに、書いている。 5年目ともなると、過去を眺めるのが楽しい。 白紙が多くても、ええ、それでも。 ほんとは毎日書きたいんだけれども、そうもいかず。 特に、マイホーム購入やら妊娠、入院、出産、育児、などなど転機がもりだくさんだからだろう。 そうでなくても楽しい毎日でありたい。そんな毎日に、したい。
てことで、今からそっちの日記も書くことにします。 おやすみなさーい。
『ありがとうございません』 檀 ふみ
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2003年05月18日(日) |
宮部みゆき『ドリームバスター』★★★☆☆ |
『ドリームバスター』 宮部 みゆき 徳間書店 (2001/11)
帯より。 「あなたの悪い夢退治します! 宮部みゆきの新たな魅力 ☆アクション・ファンタジー巨編第一弾!」
16歳のシェンと師匠のマエストロは別の世界からやってきて、夢に出てくる邪悪な意識を捕らえる賞金稼ぎのハンター。 邪悪な意識は夢に出て来て、その人をのっとろうとする。のっとって何をするのか。彼等は凶悪な死刑囚だった…。
子どもの頃の近所の火事。燃え盛る火の中で踊る人影を見た道子。 一人娘の真由がその当時の道子の年になった頃、二人は同時に焼跡で追われる夢を見る。 そこにバケツにプロペラを付けたような乗り物に乗った二人のドリームバスターが現れて…。
途中まではあまり気持が入らなかった。ふーん、作り物のおはなしじゃーん、って。イラストが余計だったかもしれない。イメージが固定されちゃうから嫌いなのだ。私のマエストロはもすこし老けてて頭よさそうなのよ。
それはともかく。 中盤を過ぎて、ふたつめの死刑囚をとらえたあたりから、ぐっとおもしろくなってきた。シェンに気持が添えてきたから。 そして、訳ありで幼い頃に別れた少年を探す女性。殺人事件発生。新しい登場人物のリップ。味のある『穴』のおやじさん。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。 そ、そりゃないぜ…。 図書館予約しなくっちゃ。ああでも「貸し出し限度いっぱいです」って昨日言われたばかりだった。 読みたい…。 ま、いっか。先に読むのがまだいっぱいあるし。 というわけで、つづく。
『ドリームバスター』
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2003年05月17日(土) |
横山秀夫『顔』★★☆☆☆ |
『顔 FACE』 横山 秀夫 徳間書店 (2005/04)
帯より。 「だから女は使えねぇ!」 鑑識課長の一言に傷つきながら、 ひたむきに己の職務に立ち向かう似顔絵婦警・平野瑞穂。 描くのは犯罪者の心の闇、追いつめるのは「顔なき犯人」。 警察小説に鮮やかなヒロイン誕生!」
この作者の本は2冊目なのだが、これを読み終えて、ようやく面白いと思えた。 読み終えて、「警察小説」というジャンルがあることを知った。 そう思えば、面白い。 単純なミステリーだと思って読むと、「なんでこんな警察内部の話をちまちまと」「どろどろした人間模様よりもスジを進めて!」などと思ってしまうのだけど、そこを掘り下げていく面白さというのもアリなんだ、とひとつ賢くなりました。
虐げられているとも言える職場で、自らの誇りをかけて、職務を果たそうとする瑞穂。彼女の前に現れる事件の数々。苦労しながら、傷つきながら、危険な目にあいながら、真相に迫り、犯人を追いつめて行く。 5つの事件が出てくるのだけど、だんだん瑞穂に気持が入っていく。 応援したい気持になる。
緊迫したクライマックス。 ほっとできる結末。続きがあるなら、読みたいなぁと思えた。
でもなー…「だから女は」なんていうくくりしかできないような人は(男は、でなくね)「その程度」だと思うんだけどなー。 深く傷つけられる、ということはその価値観が自分のものでもあるからで、イマドキそんな人っているの? とマイノリティ歴の長い私は思っちゃったりするのだけど。 それも横山秀夫さんの価値観なのか、あえて問題提起なのか。
そうかもなーと思ったあなたには、衿野未矢さんの本がおすすめ。 社会学っておもしろいね!と思えるよ。
『顔 FACE』
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2003年05月16日(金) |
東野圭吾『むかし僕が死んだ家』講談社文庫★★★☆☆ |
『むかし僕が死んだ家』 東野 圭吾 双葉社 (1994/05)
背表紙より。 『「あたしには幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで二人を待ち受ける恐るべき真実とは……。超絶人気作家が放つ最新文庫長編ミステリ。』
今日の日経新聞の高額納税者ランキングの作家部門に載ってらした東野さん。 こんなにおもしろく、多作で、しかもはずれがないとなれば、本の売り上げものびようというものかしら。 これだけ読んでいて、購入して印税に貢献したのは『秘密』(しかも文庫)のみ。ごめんなさーい。 でも、ここ読んで買ってみた、なんて人が…いるわけないか。
タイトルが、読み終えてしっくりこなかった。 彼女の謎の真相は「ええっ…」と思えたけれど、「僕」の納得にはついていけなかった。わかるような、わからぬような。
伏線がはりめぐらされていて、ほどけそうにないあやとりがすいすいと元に戻るような見事な結末には感動しました。 いつもながら、どんでん返しの楽しさいっぱい。
解説もファンには読みごたえあり。 でも先に読まない方がいいですよ。
『むかし僕が死んだ家』
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2003年05月15日(木) |
長新太『ぼくのくれよん』講談社★★★☆☆ |
『ぼくのくれよん』 長 新太 講談社 (1993/04)
息子3歳のみならず、父親30うん歳、母親30うん歳も虜にしている、長新太さんの絵本。 多数の賞を受けている。「名作」になるのかな。
そーんなことはどうでもよく、これも大きくて楽しい本。 本自体も大きいのだけど、ページをめくって広がる世界も大きい。
おおきなクレヨンが、ごろごろ、ごろごろ。 これはぞうのクレヨン。 ぞうが「びゅー びゅー」と書くと、池だと思ってかえるがとびこみ、バナナだと思って動物たちがこぞって集まり、火事だと思って逃げ出して。 おさわがせなぞうはライオンにしかられてしまうのだけど…。
いたずらっこはこのぞうのやりたい放題に心をくすぐられてたまらないのでしょう。 型にはまることになれてしまった大人はこの奔放さに胸のすく思いをするのでしょう。
だんないわく、ライオンの顔が長新太さんそっくりなんだそうだ。 見返しの所に写真があるので、是非チェックしてみてね。
「でもね」 で広がる長新太ワールド。もっともっと楽しみたい。
余談だが、先日「ねこは…にゃあにゃあ、犬はぶうぶう」「ちがうよそれはぶた!いぬはわんわんー!」(すんごい嬉しそう。うらやましくなるくらい)と『じゃあじゃあびりびり』をネタにして、息子と遊んでた。 「ごりらはうっほうっほ」というと、「ちがうよ、ごりらはゆうゆうだよ」と。 笑えた。ちと感動した。だんなにも話したら納得して笑ってた。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(ネタバレ注意!) やっぱり、絵本って、いいなぁ。
↑ ボタンの本を 復刊させたいです。よかったら清き一票をお願いします。購入しなくても全然Okです。
『ぼくのくれよん』
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2003年05月14日(水) |
東野圭吾『トキオ』講談社★★★☆☆ |
『時生』 東野 圭吾 講談社 (2005/08/12)
帯より。 「1979年、浅草。 時を超えた奇跡の物語 男は父親になっていく。 「彼」との出会いによって。」
ほんとに、しょーっもない男が主人公。 定職につかず、つけず、いつか一発あててやると思ってる。 うまくいかないのは、境遇のせい。周囲のせい。赤ん坊の頃に捨てられたからだ。 そんな卑屈な毎日を送る拓実のもとにふいに現れたトキオと名乗る少年。 彼女に別れをつげられたと思ったら、どう見ても怪しい連中から彼女を見つけるよう脅される。 彼女を探すべくトキオと一緒に行動しながら、過去に、真実に目を向けていくことになる。ずっと避けて来たものに。 魅力的で存在感のある竹美との出会いにも助けられながら、拓実が向かうものは。得るものは。
読み終えて。 うーん、おもしろいけど、できすぎ! ジェシー便利過ぎるし、竹美さんの登場の仕方は漫画みたいだ。 ポニーテール(後の方のね)の彼女も気軽に座らせ過ぎ。 トキオのラストもかっこよすぎだ。 拓実の改心っぷりも見事すぎ。 とはいえ、納得できるだけの材料は揃ってる。 元彼女の言葉、竹美さんの言葉、母の手紙、真実。 愛だよ愛、やっぱり愛。そんな感じ。
バック・トゥ・ザ・フューチャー根性叩き直し編、ほろ苦い涙付き。 面白いSFでした。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(ネタバレ注意!) 言われてみれば、そりゃそうかも、と思ったけど、ほんと、ほっとした。
トキオも、幸せだったよね。 明日だけが未来じゃない。 素敵な言葉をありがとう。
※東野圭吾さんと手紙、とか分身とか悪意、とかで検索すると、ここのページがけっこう上位にきてしまいます。その価値があるかは一目瞭然なのですが(ないです。キッパリ)、もももしかして、ひひひ東野圭吾さんも、ちちちちらっと御覧になってたりしてててててて、なんてことを考えると嬉しくて眠れません。でもま、お忙しい方でしょうし、ないかな。何より、こんなとこ読んでホントお目汚しになっては申し訳ない。 でもまだまだ読んでくつもりなので、しばらくはヒットしちゃうのかなー。期待外れやんけ!と思ってるあなた様、ごめんなさい。※
『時生』
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2003年05月13日(火) |
斎藤洋『海にかがやく』★★☆☆☆ |
『海にかがやく』 斉藤 洋 講談社 (1994/07)
小学校高学年から中学生以上向け? もちろんそれ以上のおとな、おばさん、おばーさんでも楽しめるでしょう。 ジュニア小説ってジャンルになるのでしょうか。
主人公はひなびた漁村の少年二郎。 夏休み、お世話になっている漁師のじいちゃんから頼まれ、遊びにくる孫を迎えに行ったが、そこにいたのはちょっと生意気そうな、利発そうな女の子夏生(なつお)だった。 二人の交流、竜神の存在、夏祭り、危険な勝負「伝馬くらべ」。 訳ありの夏生の背景、伝馬くらべの陰謀(というとちとおおげさだが)、真相、そしてつぐない。 クライマックスは沖へ出て行く子ども達、時化。 「竜神を見せて」といった夏生は、果たして見ることができるのか。 無事に帰ってこられるのか。 淡い恋の行方は。
といったおはなし。わかるでしょうか? 読み終えると、プロローグとエピローグがじわわん、と胸にしみる。ほっとする。 そこそこのドキドキと、そこそこのワクワクと。 幼いゆえの純粋さ、青さが好感を持てる本でした。 青は青でも、独特の、澄んだ青。 それこそ、二郎の住む海の青。
そんな「青」に時折ひたるのは、オバサンにもいいのかも。
『海にかがやく』
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2003年05月10日(土) |
ユリー・シュルヴィッツ作・画 瀬田貞二訳『よあけ』★★★☆☆ |
『よあけ』 ユリー・シュルヴィッツ 瀬田 貞二 福音館書店 (1977/06)
寝る前の読み聞かせに(もちろんおとなが自分で読むのにも)いい本。 『よあけ』なんだけどね。
オススメされているのを見て、借りてみた。 静かな、静かな、よあけの風景。 最初のことばが、『おともなく、』だものね。 言葉も厳選されていて簡素で美しい。 湖畔の寒さ、静けさ、清らかさ。 湖面をわずかになでるそよかぜの存在感 そういったものがしいぃんと伝わってくる。
たとえば、湖畔。 月の光がぼうっと湖面に照らし出され、黒い山々の姿も鏡のように映っているページ。 『つきが いわにてり、ときに このはをきらめかす。』 『やまが くろぐろと しずもる。』
わかるんかいな、と思いつつ読んだら、3歳の息子はいたく気に入った様子で毎晩リクエスト。
音のない状態、という「音」を感じられる絵本。 休止符の存在を実感できる本。
疲れた時に、神経がささくれだっている時に眺めると、安らかな気持になれそうです。 湖面が穏やかになるように、そして気持良く朝が迎えられるように。
『よあけ』
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2003年05月09日(金) |
東野圭吾『宿命』★★★☆☆ |
『宿命』 東野 圭吾 講談社 (1993/07)
背表紙より。 「初恋の人、美佐子に別れをつげ、和倉勇作は苦労を重ねて警察官になった。その勇作の前に殺人容疑者として現れたのは、学生時代どうしても勝てなかった宿敵の瓜生晃彦だった。しかも美佐子の夫として!宿命を背負った二人の対決が極限に達したとき語られる、ただ「ひと言」の衝撃。感動の名作、ここに誕生!」
謎解きの意外性もいいけれど、別のタイプの意外性を想像したい、との著者の言葉が見返しにある。 最後の一行に一番気に入っている意外性があると。 だけど先に読んじゃダメですよ、と。
うん、絶対に読んじゃダメ。 この面白さが半減どころかほぼ全減といってよくなっちゃうので、やめといた方がいいです。
意外性のおもしろさ。 そうだね。東野圭吾さんはそこがうまいというか、おもしろいというか、好き。 読み進んでいくうちに、自分の中に構築されていく勝手な思い込み。想像。 それをひっくりかえされたり、まったく予想もしてなかった展開を見せられて、
「へっ?」
そして「えええーーーーーっ」 となるのが、読者は快感。少なくとも私は快感。 きっと作者はそれが快感なのでしょう。
このお話も意外性の連続です。 思い込みをくつがえされたり納得させられたり(あの人が犯人なんじゃないのーとか、サナエさんとの関係とか、逃げた現在有力者とか)満喫させられます。 ただ、ふたりの環境というか、生い立ちは痛ましい。 刑事ではなく警察官であることとか。 刑事がイジワルなのも、読者が彼に肩入れするような効果を狙ってるのかな。
さて、次は何読もう。
『宿命』
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2003年05月08日(木) |
井上絵美『今はじまる、新ケーキ伝説』★★★★☆ |
『今はじまる、新ケーキ伝説』 井上 絵美 講談社 (2000/10)
料理本はもっぱら図書館から。 借りては眺め(るだけ)、そして返す(だけ)。 もちろんこの読書日記に登場することもほとんどなく。
…の私が、この本のレシピで昨日今日と2回シフォンケーキを焼いてみた。 できあがりは…感激! シフォンケーキにしては丈が短かったけど、膨らまなかったという感じではなく、しっとりふわふわ、スポンジケーキのような生地。 しあわせ。
この本は、なにがすごいって、はかりを使わないこと。 『ケーキ作り=計量=面倒』 これで「やってみたいけど、なかなか…」「洗い物がたくさん出るし」と躊躇している人は多いと思うのだけど(もちろん私もその一人)、メジャーカップでざっくりはかる方法で材料は用意。 バターは200gが一般的なので、何等分したうちの何欠け、というはかり方。
例えばシフォンケーキ。 小麦粉1カップ、砂糖1カップ、卵4個、塩ひとつまみ、油と水が1/4カップずつ。 私でももうそらで言えるくらい、簡単。 ほんとに?と疑いつつ製作してみたら、めっちゃおいしそう、かつおいしくできあがって、びっくり。
今日はチョコシフォンを作ったのだけど、チョコを溶かすのではなく、ココアをお湯で溶く。なんでかなーと思ったら、その方が断然簡単でラクちん!
来週はこの本のバナナティラミスに挑戦する予定。 他にも、シフォンケーキのバリエーション、バターケーキ、クッキー、タルトのレシピなどがあったり、ホイップクリームの五分立てから泡立て過ぎまで画像も一緒に載ってたり、ケーキの配合表一覧があったり、お役立ちグッズの紹介があったり(買えねーよそんなの、というのではなくて、ほんとに身近で便利なグッズたち)、いろいろとレシピ本には感激してきた(するだけ)中で、これはホント優れものだと思います。 特にぐうたらさん(簡単に、めんどくさくなく、失敗なく、おいしいものが作れたらいいなー)に、ね。
ちなみに1700円税別。 入門書にもいいのではないでしょうか。 私のためにあるようなこの本、めいっぱい活用させてもらいたいと思います。
『今はじまる、新ケーキ伝説』
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2003年05月07日(水) |
松岡圭佑『千里眼のマジシャン』★★★★☆ |
『千里眼のマジシャン』 松岡 圭祐 小学館 (2003/03)
446ページ。 読んじゃった。読み終えちゃった。終わっちゃったよぉ。 もっと読みたいよおぉ。
読んでも読んでも終わらない、『はてしない物語』だったらいいのになあ、なんて思っちゃう千里眼シリーズ。 でもまあそれだとさすがの岬美由紀も持たないし、敵も宇宙人とかになってしまうしかなさそうだからダメかしら。
お台場にカジノが出現!オープン前の興行で要人が集まる中、黒装束のテロ集団が彼らを人質にし、カジノに用意された400億円を奪い、海上自衛隊の原子力潜水艦の引き渡しを要求した! イリュージョンのショーを始めようとしたところで劇場を占拠された里見沙希。 汚職警官として無為の日々を送っている枡城元刑事。 カウンセラーとして島内にいた岬美由紀。 知性を感じさせ、冷静かつ行動力、正義感も持ちあわせた案内係の米倉茜。 都知事を父に持つ、行革担当大臣の戸田。
絶対絶命の状況下で、果たして人質は無事救出されるのか。政府の対応は。
ま、岬美由紀がいるんだから大丈夫なわけで、どうやってこれらの困難をクリアしていくのか、がお楽しみなのだけど、それでもやっぱりもう、ドキドキ。 しかも『千里眼』と『マジシャン』のコラボレーションなんて、たまらない。 贅沢すぎます。
岬美由紀登場に関する謎もお楽しみの一つ。 ささいな違和感が育っていき、そしてどんでんがえし! これにどの時点で気がつくかで「岬美由紀はまり度」が計れるような気がします。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(ネタバレ注意!) 遅いかな?
もんのすごい面白さだから目をつぶっちゃうか、と思うけど、やっぱり変だよなあと思うこと。 なんでみんな「あの」岬美由紀の顔を知らない(ということになっている)わけ?あーでも知ってたらダメなのか…。こんなにおもしろーくならないものね。 この設定でOKOK!なので、是非是非また続きを書いて下さい>松岡様
『千里眼のマジシャン』
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2003年05月06日(火) |
かこさとし『あかですよ あおですよ』福音館書店★★★★☆ |
ちまちま系(?)をかかせたらぴか一のかこさとしさん。 「とこちゃんはどこ」「からすのパンやさん」「だるまちゃんとてんぐちゃん」でもちまちまと楽しませてくれているのだけど、この本もやっぱりイイ! シンプルでおしゃれな装丁、サイズもちょうどよい。
海の中にある、たこのこどもの学校。 生徒はいっちゃんからろくちゃんまで6人。(6匹?6杯?) 先生が言います。「きょうはえのべんきょうです。みんなでえをかきましょう」 みんなは先生に言われた色で、思い思いに絵を描いていくのですが…。
あかい絵、あおい絵、みどりの絵、きいろの絵…。 最後は黒の絵を書いて、なぜだか授業が成立しなくなり、きょうのべんきょうはおしまーい、さよーならーとなってしまいます。 なぜかは読んでみてね!
たまんないなあ、好きだなあ、と思うところ。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(ネタバレ注意!) 私のツボに入りました。こういうの、弱いんだ。 あくまで決まったものばかり描く、ろくちゃん。 つりざおを持って逃げて行く魚。 はさみを持った蟹。 懐中電灯を持って照らすのはあんこう? 本題と全然関係ないところでのこういう遊び心がくすぐったくて、楽しい。
そして、せんせいのほめことばが毎回違うこと。 しっかり、じょうずに、みごとに、すてきに、りっぱに、ていねいに。 そしてせんせいはとってもよろこんで。
3歳の息子はきっと、この「できた、ほめられた、よろこんだ」の繰り返しが心地いいんだと思う。5月最初の彼のヒット。 これは購入いたしましょう。
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2003年05月05日(月) |
横山秀夫『動機』★★★☆☆ |
『動機』 横山 秀夫 文藝春秋 (2002/11)
今朝みた夢は、とてもシビアだった。
二人の殺人を犯した私、逃げ切れそうにないけれど、発覚しないことを願い、しらばっくれ、焦る。アリバイを作るため特急あずさ名古屋行き(ない)に乗ろうとしたり、刑事の追及で観念したり。 逮捕後の夫と子どもの生活を想像して、申し訳なさと離れて見守ることができない寂しさに、後悔の念でいっぱいになる。でももう取り返しがつかない。なんて切り出そうか悩み、明日離婚届を用意して話をし、自首しようと思う。(婚姻届を出してないから無意味…というのは今日の夕方気がついた)
目が覚めて、安堵したのなんのって。 あまりのつらさに、ミステリー読むのをやめようかと思った。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(別件のネタバレ注意!) そ、それは『青の炎』だね…。私のシチュエーションもそういえばそうだ。 でもそれはぜーんぜん考えてなくて、獄中から手紙書くことも想定してた。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(別件のネタバレ注意!) バンドやってる相方だけに、シャレになってなくて、イヤだーーーっ。
犯人(わたし)のお気楽ぶりからして、殺人を犯す所まで『青の炎』、その後は『手紙』になりきってたみたい。疲れた…。
ところでこの『動機』、評価は高いのだけど、私にはいまひとつ。 なんかグズグズいじいじとした話だなあ、という感想しかもてなかった。 『ネタ元』は職場での女性の扱いを軽んじ認めず拒否する男社会で奮闘する女性事件記者の話なのだけど、作者自身、本音はそのまんまなんじゃなかろうか。なんかこう『男の矜持』『男の美学』『男の意地』がじわじわと感じられて、読んでてしんどい。 『密室の人』ではそういう男の悲劇が書かれているようだけど、人間を『男』と『女』にびしっと線を引いて分けちゃってるのが、読んでてつらい。 『女』がステレオタイプ、描写が浅い。 それが胸の奥でひっかかってたような気がする。
が、4編入っている中の『逆転の夏』は今朝の夢の重い気持を思い起こさせてくれて面白かった。とうか、重かった。 悲劇だけれど、すこーし救いがあるような。あのラストでよかった。
『動機』
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2003年05月04日(日) |
アニタ・ジェラーム作絵/常陸宮妃華子訳『ぼくじゃないよジェイクだよ』★★★★☆ |
『ぼくじゃないよ ジェイクだよ』 アニタ ジェラーム Anita Jeram 常陸宮妃華子 国土社 (1997/10)
んもーっうちの子ったらいいわけばっかり!!!
なんてことをよく思う時期のおかあさんおとうさんにおすすめの一冊。
少年ダニーと犬のジェイクはとてもなかよし。親友です。 いつだっていっしょ。 ある日、たいくつしたダニーは「いいこと」を思いつき、ジェイクと一緒にファッションショー。 やってきたおかあさんは「こんなにちらかして!」 ダニーは「ぼくじゃないよ。ジェイクだよ」。 ジェイクにもういたずらをさせないように言って(ここ重要)去るおかあさん。
続くいたずら、その度に「ぼくじゃないよ。ジェイクだよ」。 とうとう言われてしまいます。 「いいかげんにしなさい!なんでもかんでもジェイクのせいにするのは。」
でもって次のページでジェイクがそのいたずらの数々が不可能だったわけを説明するのだけど、ここがたまらない! スコップをもったジェイクのかわいさには倒れそうになる。 最後のオチもいかしてる。
誰かのせいにしないこと、ちゃんと謝ること、罰を受けること、許すこと、ほんとうに仲良くするということ。 そんな大事なことをあたたかく、やさしく、おかしく、語りかけてくれる本。
息子3歳も気に入って、母親(わたし)が「こぉらぁー××くんがやったでしょぉおー」と芝居がかって叱る時は、にかっと笑って言うのでした。 「ぼくじゃないよジェイクだよ」と。 是非是非一緒に読んで、遊んで、たのしく、しつけもしちゃいましょう。 (そういう”教育的””効果”を目的にしたくないのだけど、この本はもれなくついてきてしまうのです。が、ほんとに楽しい本です)
『ぼくじゃないよ ジェイクだよ』
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2003年05月03日(土) |
森絵都『DIVE!!1前宙返り3回半抱え型』★★☆☆☆ |
『DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型』 森 絵都 講談社 (2001/07)
ジュニア小説とか青春小説とかいうんでしょうか。 青くて酸っぱくて甘くて平和な、中高生向けの小説。
評判を聞いて借りてみたら、三十路の私に今さらって感じ?とかなり乾いた感性で読みました。 が、おもしろいです。 めちゃめちゃおもしろい、という程ではないけれど、続きが気になる程度にはおもしろい。
4巻あるうちの1巻。 紹介より。 「一瞬にすべてをかける競技、高飛び込み。謎のコーチの出現で少年たちはオリンピックをめざしはじめる。」
ダイブに青春(はずかし…)をかける3人(他にもいるけど)。 闘志のかけらもない、のほほんとした、でも「ダイヤモンドの瞳」もった知季。 悲運の天才ダイバーの孫、天性の才能を持った飛沫(しずくと読みます)。 恵まれた血筋と才能、努力で高い実力を持った要一。 祖父の悲願成就とクラブの存続をかけ、彼等をオリンピックへと導こうとする麻木コーチ。
知季を応援する「彼女」の美羽。 ダイブに時間も気持も割くのが必死の知季からいつしか美羽の心は離れ、最悪の結果をもたらす。そのショックから立ち直れない知季は重要な選考会への参加に間に合うのか。
と、盛り上がったところで2巻へ。
中高生の頃に読みたかったなあ、と思った。 「読書」が当たり前じゃなかったあの頃、誰か「ここにくれば、好きなだけ好きな本が読めるよ」って図書館に連れて行ってくれていたら。 そしたらお小遣いからやっとの思いで買った「赤川次郎吸血鬼シリーズ」や新井素子のSF、堀田あけみのハードカバーでいっぱいいっぱい、なんてことにはならなかっただろうに。
今頃読書少女もとい、読書おばさんになっても、ねえ。 今、楽しいからいいんだけど。ちと寂しさも。
『DIVE!!〈1〉前宙返り3回半抱え型』
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2003年05月02日(金) |
谷川俊太郎+だれかとだれか『なんだかうれしい』★★★★☆ |
『なんだかうれしい』 谷川 俊太郎 福音館書店 (2002/11)
月刊「たくさんのふしぎ」2001年4月号として刊行された『なんだかうれしい』を改訂、増補した増補版。
だれかとだれか、というのは19人いて、例えば、元永定正(『もこ もこもこ』の人)、長新太、スズキコージ(あ、6月に講演があるんだ。行こう)、和田誠、瀬川康男などなど。
いろんな人の、いろんな『なんだかうれしい』を集めた一冊。 絵や写真も楽しみつつ、ささやかだけど、なんだかうれしい「滴」が、胸の中でぱちんぱちんとはじけるのが楽しい。
たとえば。 朝露にぬれて光るクモの巣の写真。 「クモの巣ってきれいだなあ。」
新しい靴を机の上において兄弟でゲームに興じてる。 「新しいスニーカー、あしたはまだはかない。月曜日までかざっておく」
こんな定番の「なんだかうれしいもいいけれど、以下のような意味不明なのも長新太ファンにはたまらない。
「プフー! ねたきりのおじいちゃんのおなら」 「これは、ヒマラヤがインド洋まであるいてきたところ。」
最後の一ページ、机の上に卵がひとつ。 「きょうがあしたになる…」もいいね! 読み終えると、落ち込んでいても、明日が来るのが「なんだかうれしく」なる気がする。なにかいいことありそうな気がしてくる。
↑押すと続きが読める投票ボタンです。(ネタバレ注意!) やっぱこれでしょ!
ポストカードサイズで、もう少しページ少なくていいから700円!だったら即購入なんだけどなあ。
『なんだかうれしい』
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2003年05月01日(木) |
斎藤孝文つちだのぶこ絵『おっと合点承知之助』★★☆☆☆ |
『おっと合点承知之助』 斎藤 孝 つちだ のぶこ ほるぷ出版 (2003/01)
声に出すことばえほん。
付け足し言葉ですすんでいくお話。 おじいちゃんがにんじゃごっこをしようと提案、やってみたらキツイ。 おなかがすいたのでおだんごをこっそり盗み(そしてバレ)、「じつはワシおじいちゃんじゃないんじゃよ」というおじいちゃんは変身、忍者になってくもがくれ。そして帰宅するおじいちゃん。
各ページで一言ずつ付け足し言葉が大きく書かれてる。 『おはようごん左衛門』 『おっと合点承知之助』 『結構毛だらけ猫灰だらけ』 『ただいま帰ってキタキツネ』などなど。
大人と子どもで一緒に読むと楽しいと思うのだけど、大人でも楽しめる。 相方「『その手は桑名の焼蛤』って何?」(えっなんで知らないのー?) 私「『しーらんペッタンゴリラ』なんて聞いたことない…」 子ども『何か用か九日十日』『さよなら三角また来て四角』→中川ひろたかさんの『うみちゃんのまど』を思い出してる様子。(これも言葉遊び満載の絵本)
あとがきに、こういう軽口は人間関係の距離を近くするとあって、そうはいってもかえって「引く」場合もあるよね、なんて考えてしまう自分は寂しい奴だとも思うけど、さむいギャグを飛ばしたりとばされたりして、遠慮なく「さっむーっ」といえる関係、ここ数年作れていないなあとふと気づいた。
それ以前に。笑ってないかも。 それって、さむいかも。それこそ、さむいかも。
よーしそれじゃあ2ちゃんの笑えるスレへ。 ↑それがいかんのでは…。
『おっと合点承知之助』
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