hazy-mind

2004年08月11日(水) 『雨の見えない夜のこと』 短編

本屋で立ち読みをしていたら
いつのまにか夜になっていた

外に出ると、すこしだけ、雨が降っているようだった

手袋や、マフラーをしていたし
髪もすこしのびてきていたから
あまり、よくわからなかったけれど
MDのイヤホンの片方を耳からはずしてみたら
雨音がすこし、聴こえた

すこし前の信号が、黄色に変わった
走る気分にならなかったから立ち止まった
信号が赤になった
横を見ると、車が何台か止まっていた

そんなに大きな交差点ではなく
車もぜんぜん目の前も横切っていかなかったから
信号を無視してわたった

すこしたってからふと後ろを振り向いたら
車は止まっていた
信号がまだ赤だから

なんだか不思議な気がした
ぼくが信号無視してもつかまらないけれど
車が信号無視したら、つかまるんだな

そんなふうに、優越感を感じて
すこし笑って、また前を向いたら
三秒後くらいに
ぼくの影が車に轢かれた
ライトのついてない車に

そしたら
ブツって音が聞こえて
MDの音楽が消えた

ブツって音が聞こえて
MDの音が消えたんだ


たぶん電池切れだと思う

充電したらまた、聴けるさ


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ぺんぎん