執着、という言葉を生々しく思うようになったのは あの人に会ってからなのかもしれない。
言葉あそびの好きな人。
どこにでも行ける、と言ったくせに僕はいつまでも縛られていて とりあえずそれを現実だとなんとか納得しようとしていて それでもなんだか夢見がちなことを考えていたかった あのころの僕がたぶん自分史上一番、浅はかで残酷だったとき
わらうしかない
僕はただ ひとに愛されない自分が哀れで仕方なくて 他の人の想いなんかくしゃくしゃに丸めて捨ててしまいたかった 特に自分に向けられるものなんかすべて すべて
なんて無駄なものなんだろうと思った
今ならまだ ニセモノをニセモノとして柔らかく弾くこともできるだろうに
毒にも薬にもならない まるで聖母のような笑みをして 頑ななことばを露わさないように 目を伏せて
その方が遠くへ行けるって思っている
もう 会うこともない人
幸せを望むでも祈るでもなく ただ目を逸らす
あなたの朝がせめて明るければいいと思う
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