2010年09月26日(日) |
恋のはなし ぞくへん |
もしもいつか
これが全部嘘だと言ってくれるひとがいたら
そのひとについていってしまうと思う
終電も近い電車に乗っていた 住宅地でたくさんの人が降り 電車はやがて地下を走った
白々としたホームに降りる アルコールに汚染されずにこんな時間にここにいるのは久しぶりだと思った 人の流れ 笑い声 金曜の夜の熱気のようなもの
シャッターの半分降りた地下道 眠気と疲労感に押されて階段を上がる 夜道 客待ちのタクシー いつになくきらきらとした店々の灯り こんなふうに 帰ってくるつもりはなかったのに
そうやって 眼が溶けてしまった
吐息が 泣き声になり 見開いた眼から 目尻から水があふれ かなしいとか ことばは何ひとつ見当たらないのに むせぶものだけあとから あとから
こころをこころであがなえない いつか それでも いつか を
信じたかった
恋のはなし これもまた 恋のはなし
憧れて あこがれ て
なんにも残らなかった 恋の
はなし
何故だろう、
ときどきひどく、無惨な気持になる
どこかへ行くのは簡単だと思いたい。 ここにあるものみんな、閉じ込めて出ていけばいい。
もしかしたら、と思う。
ここは柩にするためにあるのかもしれない。
満ち足りることは自由だ。
誰にも強制されないし、むしろ奨励されているとも言える。
飢え渇くよりも健全で、欲望よりも謙虚だ。
それでも、どうしてだろう、いつもひどく無惨に思う。
いたくない、 いた くない、
もう何も、欲しいものなんか無い、
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