あなたなしで確かに何処へでもゆける、
それでもまだあなたにやさしいことを言って欲しいと思う
ひとに会うのが恐ろしい、なんて誰にも言えない台詞をひっそりと呟いてみる。
いや言えないのはそんなコトバではなくてたった一言の、
浅ましい浅ましいことば
ひとに会う。
するとまだこの悪夢が続いているのだとわかってしまう。
何処までゆけばいいのだろう。
後悔しない、と笑うことばがすぐに軟らかく冷やされてしまう。
祈らない。
ただもうほんの少しだけでいいから楽になりたいと思う。
あなたがもう、
生きていなければいいのにって
それくらいの望みはまだ軽く唇からこぼれてしまう。
太陽と月しかないくらいに。
2007年12月24日(月) |
それから足跡を消すように |
明日を探して何処までゆこう。 昨日を埋めに何処までゆこう。 呼ぶ声は低く頼りない。 わかっているさようならを云えばいい。 それでもふらふらとあてどもなく、歩いて、そうして此処でこの胸の中でひずんでゆくものが怖いのだ。
君は何処へ行くつもりだろう。 そこに不安を思うのは、心が傾いている証拠だと裡なる神は厳かにのたまうので、その託宣を祓うためにただ朝を、待ちわびる、此処はひどく夜が暗い。
朝。 雨の音で目が覚める。 出掛けるつもりもなかったけれど、少し憂欝になる。
少し熱っぽい頭を抱えながら散歩に出る。 寒さは雨に若干ゆるんで、手袋は要らない程度の気温。 てくてくと、人影も薄い道を傘を差しながら迷うように歩いていく。
住宅街の中にぽつんとあるコンビニに入り、嗄れた喉を潤すものを少し多めに買って、また雨の中をゆっくりと歩いて帰路につく。
この樹は桜、桜、
そんなふうに思いながら、春になれば花に彩られる道を辿る。
桜、ミモザ、ハナミズキ、桜、レンギョウ、雪柳、桜、桜、桜、
うつくしいものを見たい、と思うのは当たり前だ。 うつくしいものを見せたい、と思うのも。
何処へでも遠くへ行ける。 それはうつくしいものを見せたい相手がいないからだ。 いてもいないのと同じだから。 今の僕はこれら花の樹を見上げて春を想う。それはこれを見せたかった人がいたからだ。 見せられなかったことを惜しむ気持ちがあるからだ。
あぁ何処へでも遠くへ行こう、何処にいても君は遠く儚い
へらへらと、無防備な表情を見せてしまっているという自覚はあった。
そばにいるだけでどうしようもなく警戒心が溶けてしまうひとというのがいる、 それはたぶん僕は頭の中でひどく計算をしていて、 このひとならたぶん、 だいじょうぶだ、 という 直感に近い演算結果にもとづいて心がやわらかく骨抜きになるのだろうと思う、 ただ時々、 少しずつ このひとではないという憎しみのにおいに似たものが 僕の中身を強張らせるので まだ僕から ひとのためにかけた呪いが解けていないのを思う
ヒトが好きだ、と思えば世界は明るい。 ここに何の理由もなく自分が立っているのだということも。 けれどあのひとのことだけは、考えれば自分が脆く壊れるように思う。 イヤなことは1日あれば忘れられる人間になれた。 なのにあのひとだけはまだ僕を刻んでいく。
心は心、思いは思い、切なさだけでヒトが生きていけるはずもない。 それでも こんな風に笑うはずではないという 何か妄信にも似たものが 憂鬱な夕方にふと甦る。 どこかへ、帰って行けはしなくても 心はただ絶望的に危うい
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