きらきらと美しい日。 美しい海と砂と空と緑と、太陽のひかり。
この世のすべての うつくしいものを、
もうずいぶん長いあいだ声にすることも思い出すこともなかった名前を思う。 あぁ僕はどんなに彼女を愛したろう。 こんなにも遠くに居ると日常はとてもおぼろげだ。
少しずつ腐ってゆくイメージ。 思い出しも呼ぶこともない想いなら忘れたも同じだろう。 そうやって、僅かずつでも腐り崩れて、きっといつか思い出せもしない何かおぼろげなものになるんだろう。 それが例えばこれまで未来や命と引き換えにしてもよかった大切な思い出でも構わない。 それで砕け形も留めなくなるのがこれまでの僕を形造った心の組成物でも構わない。 そうすればあのひともきっと消えるだろう。 ここからあのひとが消えるだろう。 過去の重みをようやく捨てられるのだ。 もう幸せにも毒にすらもならない思い出が、いくら形ばかり残っていたところで何の意味があるだろう。 何の益になるだろう。 足元がふわふわと頼りなく危うい。 そうして、何もかも忘れるように心を造り替えて、
いつか僕は恋がどんなものかを忘れるだろうか。
―――――when it comes to your heart ―――――それが心臓に達したとき Plato "Phaedo"
きょう 私の ゆび が 腐って 落ちました
きのう 私の はな が くずれて 落ちました
けさ 私の ほお が 腐って くずれました
きょう 私の かみ が ざらざらと 抜けました
きのう 私の ひざ が 溶けて くずれました
おおわれた 私の め も いつか 見えなく なるのでしょう
うつくしい 同情の ことばで あわれみを かたるひと
あなたを 見たくはなくて め を 閉じました
目を閉じた そこ で 人魚が わたしの割れたひざに 歯を立てて
うつくしい 泉の 水面で わたしの欠けたゆび に 舌を這わせます
うつくしいわたしの黒髪 を ひきずって ゆきます
やがて とけるわたしの め を あなたが 舐めてしまいます
わたしの くさりくずれた この のこりもの を
せめてあなたが だきしめて くれるなら
せめて あなたが たべて くれるなら
この だれの血にも肉にもならぬ この 不要物 を
せめてあなたが 焚いて くれるなら
雷鳴のように 恋が しんでいきます
おそらく僕が10年くらい、と言うときには何か根拠があるのだ。 ごく矮小でいじましい理由が。
少しばかりヒマになったので時間を持て余してみる。 本当はやらなきゃいけないことはある。色々。 だけど少しだけ、といって自分を甘やかすことにかけては天才的だ。 この身体は概して怠惰なので、精神が少しばかりそれに似てはいなかったからといってどうなるものでもない。
ところどころに秋の端々を見つける。 何かに惹かれるようにぼんやりとする。 どうして心が褪せないのだろう。 とても簡単なことのように思えるのに。 欲しいものが手に入らない餓えが蠢くのを感じる。 わかりきっているのは、たとえここに他の何がなくてもただ飢え続けるだけだということ。
10年と言えばもう僕は涸れているだろうか。
夢を見た。
流星群が来るのだと言う。 真夜中に、凍えるほどの寒さの中、寝袋にくるまって空を見上げてそれを待つのだと言う。
夜。
寝静まる町を抜け、校舎の屋上へ続く階段を上がる。 寝袋がいくつか折り重なる中にひとり、あのひとがいる。
来たよ、とだけ言う。
他に誰もいない。
流星ではなくてあのひとを見ている。 神々しいほどに美しい。
近づく頬。 髪の柔らかさ。 触れる唇。
満天の星々から寝袋に隠れるように唇を重ねた。
つめたい、熱い吐息。 あぁこのひとに会うためだけにここへ来たのだ、という直観。 痛み。 夜と星と、息もできぬほどの恋。
神様に見咎められてはもう生きていけないみたいに。
とりあえずわかりやすく勉強していました。 暗記モノはホント苦手・・・。 もうよくわからんけど適当にマークシート埋めて出てきてしまった。 ちょっとしばらくは試験系はご遠慮申し上げます、という気分。
試験終了後、解放感に満ち溢れて友人に会う。 しばらく会っていない間、けっこう大変だったらしい。 こう言うのも何だが良い友人だ。幸せになってほしい。 僕も今考えると、若干疲れていて上手く話せていなかったような気もする。 頑張れ、と心からのエール。 僕に無い良いモノを持っている人は幸せになってほしい。 いや、なれる、という根拠の無い期待。 希望。
明日はセミナーで大阪だ。 いろいろ用意すべきところなんだろうけど、とてもじゃないけど気力がない。 なんだかこのところ、ひとに会いたいとばかり思う。 ただ会いたいとだけ。 何だろう、8月はそういう月になりつつあるんだろうか。 ひとに縛られて過ぎるんだろうか。 もう忘れたと言いたいのに。
言いそうだったのに。
ひとの欠片が僕を脅かす。
あぁ、攫いにいきたい
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