お父さん |
洗剤と味噌が非常に安いというので、近所のスーパーに行きました。 20代半ばの独身男が特売日のチラシに赤丸つけて買い物するのもどうかと思いますが、安いのですから仕方ありません。
買い物カゴ片手に、スーパーを徘徊。 激安の洗剤と味噌を見事ゲット。 ついでにフルーツを買おうと、野菜コーナーに行ったところ
「おとーさーん」
と叫びながら、ハリーポッターみたいなクソガキが抱きついてきました。
「お父さん、もうどこにも行かないで」
泣きながら僕の足にしがみつくクソガキ。 何があったのか知りませんが、かなりシリアスな展開のようです。 もちろん、こんな子供作った覚えもない。 むしろ童貞だし。
それにしても、このガキ、年齢的には6,7歳くらい。 そんな年齢のガキから見て、僕がお父さん世代に見えるのでしょうか。 お父さんというよりはお兄ちゃんだと思うのだが。
いつもなら、こんな無礼なクソガキ、ぶん殴って言い聞かせるのですが あまりに切実なクソガキ。
「お父さんお父さん、どこにも行かないで」
泣き続けるクソガキ。なんだかすごく情がわいてきました。
「大丈夫だ、お父さんはどこにも行かないぞ」
ついつい言ってしまった。なに言ってんだ僕は。もういい、今日から僕はこの子のお父さんになろう。幸せな家庭を築こう。シチューのCMに出てくるような温かい家庭を築こう。大丈夫、もうどこにも行かないよ。
「こらー、ヨシアキ!」
親子愛が芽生えたその刹那。本物のお母さんが登場し、僕らは引き離されてしまいました。
「ホントに、迷惑かけて申し訳ありません」
ヨシアキ君を引っ張りながら謝るお母さん。なかなか若くて美人。しかも巨乳ときている。
こんな女性が妻になるのなら、ヨシアキ君のお父さんになってもいいかな……。
喉元まで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
それにしても味噌が安かった。
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2002年11月24日(日)
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