言葉のサラダ
黄と藍



 水泳

忘れないで
マジで悲しい
あたしだけ
残されちゃった
プールの真ん中
赤い台で
ひとりぽっつん
待つ水の音

2004年01月31日(土)



 お気に入り

すげえ怖いの
何度行ってもビクビクしちまう
息を呑むって思えたのはそこが初めて
ピンクチェックウォールペーパー
残酷な文字と画像と音と
なんだってこんな頁が消せないんだろう
怖いもの見たさかしら
いつもいつも名前だけで脅えちゃう俺

2004年01月30日(金)



 昼夜乾燥戦争

乾燥ってなんて残酷
体中内出血してるわ
手の届くところ全て
掻き毟って真っ赤よ

安眠を妨害するのよ
何度も起こされたわ
時計の針がクルクル
まぁ眩しい太陽さん


2004年01月29日(木)



 よっぱらい

お父さんが帰宅すると
はー、って
息を吹きかける
死ね
早く死んでしまえばいい

2004年01月27日(火)



 めがね

すぐに曲がる
気分が安定してくれない
言い訳をすぐ思いつく
悲しいことなんて消えればいい
最初から頭に浮かんで来なければよかった

めがね
めがねがなくちゃ見えない
ぼんやりしてて

見たくないときはいいんだ
コンタクトしてるふりして
町の景色も
家族の顔も
テストの答案も
君の目も
見えてる演技をすればいいから

2004年01月26日(月)



 浪費

時間もお金も
すぐになくなる。
拾っても拾っても
溜めては置けない。

悲しくて。
落としてきた伏線が悲しくて。
もうゴミ箱に入らない。
強がれない。
責められない。
刃を向けられない。

上手いこと避けなくちゃ。
隠さなくちゃいけない感情。
フォローするのはあたし以外。
否定の相手はあたしでいいから。

喜びも楽しみも
すぐになくなる。
集めても集めても
一緒に居てはくれない。

2004年01月25日(日)



 誘拐

気が付いたら
誘拐されていた
夢中に走ったから
擦り傷だらけで
あたしたちを
草花は避けてくれなかったらしい
潰れた眼球も
そこから溢れ出す液体も
もう涼しく
どうでも良くなってしまった

見えるのは
遠い国
淡い希望
頼りない短刀

現在地を見失っていた

2004年01月24日(土)



 片足

忘日の音を聴く
軽やかな和音達
鳴り響く大講堂
空席ばかりの場
別れを告げる今

2004年01月23日(金)



 眉間にシワ


誤飲した感情は食道で突っ掛かり嫌悪感を匂わす
後悔をしないよう慎重に箸を運んだのに
目を瞑っていたから無意味だった
吐き出そうと揃えた指を突っ込んだが
もう腸で消化され始めていた
あたしたちは感情が回るように変化する
そういう生き物だから誤飲だけは避けたかった

2004年01月22日(木)



 不入山

不規則な歩幅
手足が寒くて

帰れない玄関
夜空が黒くて

出せない感情
傍に居たくて

起きれない朝
太陽が明るい

2004年01月21日(水)



 苛立ち

死んでゆく
指先が真っ赤だ
指紋もじきに無くなる
擦り込んだクリームも
もう意味を成さない

血だらけの指先
爪なんか無くなった
要らないから捨てたんだ
赤く布団が汚れていく
忘れてたあのこと

2004年01月20日(火)



 ひとりキャッチボール


時間が無駄にあるときは
各駅に乗って帰りたい
ゴトンゴトトン君に揺れる

とてつもなく退屈ときは
雲をずっと目で追ってる
消えそうな夕日を照らす君

空虚な夜道を歩くときは
しんとした空気を独り占めする
足元でにゃーと鳴く君

恐くて眠れないときは
楽しいことをたくさん考える
浮かんだのは君かしら

2004年01月19日(月)



 ヤミー

闇闇
心が病み
おなかが空いて
また君が呟く

2004年01月18日(日)



 火傷ひとつ

融けた舌
なだらかに風を滑らす
ヒリヒリ
痛むのは其処だけじゃない

当分は
辛いものも熱いものもダメかな
それで
薄味のぬるい飯に満足するわけじゃない

嘘吐きな舌を噛み切って
新しく生きられればいい

一つシンプルな答えを見つけた
「スプーンは冷たく心地良い」

2004年01月17日(土)



 すぐに見つかる場所で

本当は大きな声で言いたい
ここで小さな声で主張する

あたしは一人しかいない
猫の手一つありゃしない

夕方の真っ暗な空に只佇む
本当は誰かと居たいと思う

しんとした空気で人恋しくなる
そっと誰かに頭を撫でて欲しい

寂しい寂しいと言ってばかり
苦しい苦しいと唸ってばかり

退屈な深夜を過ごす
すぐに明け方になる

2004年01月16日(金)



 体重計

おしゃべりなお風呂で
今日も汗を流してみる

毎日私は傷付いていく
心見て鏡も凹んでいく

柔らかいスポンジの泡
擦らない方が落ちる泥

汗ばむ顔を手で拭って
浴槽へしばらく潜って
チクタクくらくららと
過ごす一人の時間とか
消える私の顔の色とか

眩暈を覚えて風呂後に
久しミルクを一気飲み

2004年01月15日(木)



 おと

やっと見つけた楽譜
走り去っていくメロディー
大切にしまっていた

久しく使わなかったピアノ
古い赤いカバー
嫌々に弾かされていた

厳しい先生
何度も弾いたフレーズ
すぐに辞めてしまった

2004年01月14日(水)



 アンビリーバブル


淡々と喋るスピーカー
黙々と泣くマイク
濃い痣の残った胸
湿っていく袖口
電源に親指がスライド
人差し指が必死に止めた

2004年01月13日(火)



 偶然

終わらない日記帳
空白が増えていく
一番深い引出しで
可哀想に眠ってる

誕生日の贈られ物
頁を開かなくちゃ
可能性を潰せない
経過を記録したい

引っ掻いた日記帳
インク切れのペン
痛そうで辛くなる
また引出しへ戻す

2004年01月12日(月)



 ダブル

盲点になってた久しい嬉しさ
いつもと違う所が楽しんでる
新鮮じゃない懐かしい神経
頭の一部の血行最高に良好
素直になれて気持ちが踊る
個性が無いのに個性が見える
楽しんでるばっかりじゃない
走り疲れてると思ってたのに
疲れるのを喜んでるみたい
寄りかかろうと思ったけど
手を引いて独立へ導いてくれた

嬉しいニュース
二人でひとり

2004年01月11日(日)



 そして

忘れちゃった記憶の端々
掻き集めて傷だらけの脳
カスみたいなデータたちは
もうすぐいっぱいになって消えていく

部屋の清掃班は最近ピリピリしている
早く片さないと気が済まないから
さようなら言う前にばいばい、記憶
チープな毎日
薄い、ティッシュペーパーみたいな毎日
存在しない空想の日々
編集しない熟考されていない手抜きの日記
嘘吐きのメール担当者
足音を消す処理班

ばいばい毎日
また新しい朝

2004年01月10日(土)



 キャッチボール

遠くに投げたんだ
きっと誰も取れやしない、って

確信を持って投げたんだ
肩が痛いくらい

高く遠くへ飛んでいけ、って
強く思って投げたんだ

でもあの人背が高いから
でもあの人ジャンプ力あるから
届いちゃったんだ
届けるつもりなかったのに

どうしよう
近い
こんなに近い
目の前でキャッチボール
玉を落とすはずがない
目を合わせられない
怖い
ボールが早いんだ
無意識にグローブが拾ってる

こんなにも
こんなにも・・・

2004年01月09日(金)



 どもり

まだ?
まだ来ないの?

ずっと
ずっと待ってる

それで
それで悲しくなる

みんな
みんなに置いていかれてる

さいご
さいごはみんな一緒だな

2004年01月08日(木)



 騒音計


止まない耳鳴
みょうちょうの鶏声
静かに集う野郎共

止まない耳鳴
みあげた茜色
祭り騒ぎで夜が明ける

止まない耳鳴
ないあわさる思想
討論戦争死者数名

止まない耳鳴
りくつ付ける今
来ない待ち人否定する

止まない耳鳴
わたしの言霊
観衆達の見守る画面

2004年01月07日(水)



 脳内

みんなが言ってる
「口先だけだ」
毎日言ってる
「偽善者」


老いた肯定者
賢い否定者
監視者
訂正者
ただの愚か者
それに私
批判者の集う会合
薄ピンクのテーブル
私の赤い小さなイス
テーブルの上には青い茎の差した花瓶

今日も私は一人
圧死しそうだ
ピストルを持った訂正者
記憶が排除される
死体は処理班が担当
処理班は何も知らない

積まれた死体
貪る人肉
腐る友達
異臭漂う黒い部屋

スポットライトが私へ向く
照明はいつも意地悪だ

2004年01月06日(火)



 掃除機

らっぱが鳴る
遠くで鳴る
響いて心地悪い

不快な空腹感
イライラが収まらない
誰か手足をテーピングして

塞ぐ口
マスクなんかじゃ意味無いから
でも足が騒ぎ出してる
夜中を走るつもりなんだ


助けてくれないと死んじゃうよ
血液が逆流してくる

2004年01月05日(月)



 ランニングハイウェイ

大きな声で叫んだ
窓から人が覗き出すぞ

ぱらぱらと光る照明
もうすぐ割れ始めるんだ

さようなら
さようなら
人類さようなら
汚いこの地球にバイバイ

泣き出すぞ
もうすぐ泣き出すんだ
その八重歯を覗かせて大声で

騒ぎ出すぞ
騒ぎ出すぞ
みんながお祭り騒ぎを始めやがるんだ

ねぇ聞いて
夜がこんなにもウルサイヨ

2004年01月04日(日)



 結晶

コードの差し替えも面倒に思うか

布団から這い上がればすぐの明かりも
膝立ちで届く遮光カーテンも
そんなに暗闇で生きたいのか
机の明かりも付け放しでいる

過去を振り返って
整理した日記帳
並べたサイン帳
年賀はがきのファイル
満足に笑みを洩らすか?
変化を喜ぶか?

逝って滑ってしまえばいい

2004年01月03日(土)



 嫌いな人

なくなっていくものを情報と捉える
ふやされていくものを安直と裁ける
肯定の材料がないならば
否定の収集に取り掛かれ

普遍的な事実を見つけろよ
それをプラスに受け止めろ
落ち着いてよく観察するんだ
己の洞察力を計るべき時は今
全て己のモノにせよ
すれば全てが美しい

床に落ちるクサリ等
持ち上げれば全て輪

2004年01月02日(金)



 改・色色→三色

雪の白さは常識
青と云う非常識
赤く汚れる雪景
眼下広がる絶景
今飛び立つ絶壁
咲き乱れる雪化
眼鏡越しの世界

月の黄は日の光
空の青は塵の為
夜の暗き優しさ
朝の一人寂しさ

破滅の赤い世界
孤独の白い確信
覆す青い虚無感

皆の前で倒してくれよ
この世界のヒーローを

2004年01月01日(木)
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