言葉のサラダ
黄と藍



 行方不明


言葉が止まる
言葉が止まる
何もしてないのに
何もしてないから
流れが絶えた
動きが消えた
続かない
続けない
続けられない
続こうとしない


割れた指先からは

流れつづけているのに

2002年12月28日(土)



 無意味


思っていたより
距離は遠かったみたい

約束を守ったけど
約束なんて無かったから

忘れていたけど
道は広すぎたみたい

だから
あたしたちは途方も無く
只日々を過ごしていくのね

2002年12月25日(水)



 手足


閉じかけの扉を蹴飛ばして
思い切り開けてやろうか
その足と勢いで
中に座っている奴を蹴っ飛ばしてやる

開きかけのノブを握り締めて
思い切り閉めてやろうか
その手と勢いで
外で待っている奴を殴ってやる

2002年12月24日(火)



 みかんより好き


理解されない苦しみは
本人にしか分からない
経験していても
その場にいても
身近なひとでも
気付かないことが当たり前
期待できないのが当然の事

部屋を音で溢れさせる
過去最高の音量で
爆音が嫌いなあたしの
最大の音量で
きっと誰も
あたしの胸の内を知らない
知ろうとしない
出来ない
隣りの部屋で寝ている父親ですら
音を止めに来ない
身体に響く大音量
ジリジリ音がする

新しく見つけた解消法
絵を描くよりも身に感じる
部屋を壊すよりも
他人への暴力で気分が落ち着く
落ち着いた気になる
気がする

2002年12月20日(金)



 太陽はレム睡眠


不必要なサイレンが
朝を待つ町に響く

ため息のように早く過ぎていく時間の流れを
追うかのようだった

もうすぐ
学校へ向かう時間だ

2002年12月19日(木)



 へんけい


「嘘吐き」と
「自分」に言われ
「正直者」と
「自分」に言われ
脳内は混乱し
乾いた唇は
役に立たず
一人で机に
うつ伏せて
朝が来るのを
願い待つ

2002年12月17日(火)



 耳へ針を差し込む


そうだよ
あたしは不眠症だから
夜なのに眠れないんだ

だから
早く布団に入りたいんだ

そうだよ
あたしは不眠症だから
夜中に目が覚めるんだ

だから
早く夢へ戻りたいんだ

信じられないけど
信じられたいから

2002年12月16日(月)



 枯れそうな花の下の黒い土


願わずとも
願いは叶い
思わずとも
身体は動く

空気に溶けた
君の残像
走って追った
僕の影

大きくなった
君の悲鳴
殴って止めた
僕の腕

傷から滴る
僕の血液
片手で支えた
君の頭

2002年12月15日(日)



 病気


尖ったナイフなのか
鋭い針なのか
大きな斧なのか
沢山の矢なのか
・・・・・

なんだか知らないけれど
人の胸イタメさせて
何が楽しいの?

2002年12月14日(土)



 発表会


深呼吸をして
手を鍵盤へ
軽やかなメロディーが
部屋を包むだろう
忙しく指を動かして
目では必死に楽譜を追って
素敵な演奏会が始まった
観客は世界
音は国境を越える

2002年12月13日(金)



 グローブ


殴っても
痛くないのに

殴られたら
痛いんだね

オカゲで
打たれ強くなれるよ

2002年12月12日(木)



 道端のイシ


喋りすぎて
喉がカラカラだ
水が欲しいが
喋れない
仕方なく
文字を書くが
腕は思わぬことを言う
切り落とした腕を眺め
コップ一杯の水を飲み干した

2002年12月11日(水)



 鏡に悪魔が映ったよ


そんな注文されたって
私に出来ないこともある
受話器を持ち上げ電話した
電話に誰も出なかった

椅子に座って本を読む
読んでも脳から抜けていく
拾って入れても溢れ出し
本は灰に変わってた

蝶になる毛虫
死んでいく蝶
真っ黒な塊が
部屋の壁を埋め尽くす

大きなファイルは全て
印刷した証拠を入れるため
後一つで君はもう

2002年12月10日(火)



 飛んでった○○


耳障りな目覚ましが
三回目の携帯電話のアラームの後に
部屋中に鳴り響く

気が付いたら
目覚し時計の電池は
おなかから抜けていた
電池は窓からお空へ飛んでた

2002年12月09日(月)



 リレー


渡したと思ったバトンは
相手の手から滑り落ち
地面を跳ねて転がった

拾う手が躊躇して
私達は拾えない

側によることも出来ないから
審判に拾ってもらうのを
只待つのみ

転がったバトンは
空よりも
海よりも
カーテンよりも
濃い青だった

2002年12月05日(木)



 カギヲアケテ


無視してやる
開けてやらない

集中してて
聞こえない振りをしてやるんだ

知らん振り
知らん振り

耳が遠いから
聞こえないよ
聞こえない

2002年12月03日(火)



 別行動


目薬と一緒に
私の涙は下へ落ちた

皆に聞こえるように
あたしは、小さくなった飴を噛み砕いてる

期待通り
今日も遅刻する

あなたが理解出来ないことを
あたしは理解した

2002年12月02日(月)
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