ジョージ北峰の日記
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2014年11月02日(日) 悪性新生物ーーこの化け物の正体を暴く

癌の悪性度は、癌のプログレション(悪性の増悪)のメカニズムがあまり良く理解されていなかった時代から、癌を5段階のステージに分類(0期から4期)して、予後の判定や治 療に利用されてきた。
この分類は、現在も膵がん、胃癌、肺癌など、さまざまな臓器の癌に適用されている。

偶然かもしれないが、以前から採用されていたこの癌の(1)病期分類と(2)癌のプログレション(突然変異遺伝子の蓄積)との間に見事な相関が見られるのだ。
 
癌の基礎的な話しばかりでは、疲れるので、少し別の観点から話をしてみよう。

このエッセイの最初に登場して頂いた天 才先生の話を紹介しょう。

彼の先生曰く、癌は女性に似ていると言う。
昔コミックバンドのU.H.の歌に「ハイソレマデヨ」という唄があった。
先生は癌の悪性化の過程はこの歌で上手く表現されていると言う。

先生は、歌詞の最初の部分[あなただけが〜生甲斐なのよ〜]ここまでが発癌過程でいえば(ステージ0)、つまり癌細胞が正常細胞に徐々に入れ換わっていく過程を指す、と言う。 
この時期は癌が発生部位から周囲に向かって拡がることはない。

悪性細胞は、女性に例えれば思春期で初な(うぶな)状態にあると言うのだ。


次に歌詞が[お願い〜私を捨てないで〜]の部分まで進むと癌は(ステージ1)に、つまり癌はわずかに周囲組織に顔を出し始める。
   癌細胞が周囲組織に拡がっていこうとする段階だ。

この時期を、女性に例えれば青春期で本音をまだ男性には見せない段階で、例えば、ゴギブリを見つけた時女性が「イヤー!」と言って「あのゴギブリ何処かに追っ払って〜」と如何にも哀願するような素振りで甘える段階だ。

この時期の癌は、最初に発生した病巣に未だ限局した状態で、初発の場所から離れて周辺組織に広汎に拡がったり、リンパ流や血流に乗って、別の組織、例えばリンパ節や他臓器に移動出来ない状態だ。この時期に発見された癌患者は、手術で癌を完治させる確率が極めて高い(90%以上)。
  しかしこの時期は、女性がはゴギブリ退治に向けて、自分で新聞紙を探し始める段階でもある。

だが続いて歌詞が[“てな”こと言われて、その気になって〜]とこの辺りまで進んで来ると癌の(ステージは2期)で、癌は原発組織から離れて周囲組織に活発に侵入し始める。つまり癌細胞は自由を獲得し始めるのだ。

この時期、 女性はゴギブリ退治にあたり、君が居ない場所では新聞紙を竹筒のように丸めゴギブリを追っかけるようになるだろう。 あるいは男性に向かっては遠慮せずにゴギブリを叩き殺して、と言い放つ。男性は心の中で“イヤ”だなと思っても、まだ面子が少しは残っている段階て、言われるままにゴギブリを追っかける。しかしいやいや気分が少しあるので、ヘマをして取り逃がすこともあるだろう。


一方“癌”は、この時期には死亡率が一気に駆け上がる。つまり外科医には周囲に拡がった癌細胞の居場所がつかめず、手術に際して、彼等に逃げ延びるチャンスを与えてしまうのだ。


  さらに 歌詞が[女房にしたのが大間違い〜 、炊事・洗濯まるで駄目〜〜]迄進んで来ると、
  この時期は(ステージ3期)と呼ばれ、癌は原発病巣からリンパ流に乗って近隣のリンパ節に移動(転移)し始める。 つまり癌細胞はこの段階になると元の病巣から離れて自由を獲得、大暴れする準備段階に入る。

  男性が“愛した”女性も、この頃には子供が小学生になる頃で、彼女はいらだちを隠そうともせず“早くゴギブリを殺して!”と命令口調で叫ぶ。
 仮に男性がモタモタしていると、嫌みの一つや二つが子供の声と一緒になって飛んでくる。


   癌の(ステージ4期)となると癌細胞は元の病巣から自由になるだけではなく、自分自身で遺伝子を自由に変化させるようになる。
  一旦変身できる自由を獲得すると、形を変え姿を変えて薬物が来ようが放射線が来ようと柔軟に対処する能力を獲得、血流、リンパ流に乗って遠隔の臓器へ広汎な移動(転移)を開始する。
  
  この時期は、子供が成長し小学生の高学年になる段階で、女性は男性には手に負えない化物に変身している。
 最後に歌詞は「ふざけやがって、ふざけやがって!!!! この野郎!]となるが、この段階まで来ると、男が如何に悔やんでも、結果は「ハイソレマデヨ〜」という訳だ。


  学生が「そんな話、奥様に叱られませんか?」と笑うと「いやこれは、女性をそしったのではなくて、私が男だから、女性を癌に例えただけだ。女性の立場から見れば当然同じ様なことを男に言うだろう」と、そしてまじめ顔に戻って、
  「癌の進行度は、今述べたように5段階に分けられていて、各段階に応じて予後の判定や治療対策が考えられている。
  しかし最近明らかになった事は、癌のステージが上がる過程は、増殖にかかわる数多くの遺伝子群に突然変異が積み重なるということ、つまりステージの段階が上がれば、本質的な意味で治療が困難になるとうことなんだ」と締めくくった。


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