ジョージ北峰の日記
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2007年05月01日(火) オーロラの伝説ーー続き

 ところで、私はパトラの生まれたままの姿を見たのは初めてだった。性の儀式の時は、目隠しされていた。私の部屋を訪れる時も必ず何かを身に着けていた。自分のありのままの姿を相手に曝(さらけ)出すことは国を君臨する王女として許されぬ事、いや弱みを見せる事と考えているに違いない、と思っていた。「今朝は一体如何したのか?」一瞬不思議に思った。しかしそれは、女性に対する私の偏見なのかもしれなかった。昔、王(男)は国を君臨するばかりでなく、何百人という女性を支配するパワーを持っていたという、桁違いの人達だった。だからラムダ国に君臨する王女パトラが女だとしても何百人という男達を支配するパワーがあっても不思議ではなかった。
それに彼女の体に潜む無尽蔵のパワーが、全身から溢れ出ていた。顔や四肢は褐色に光っていたが体幹は白く輝いていた。大腿や腕はふっくら柔らかく膨らみ、オリンピックに出場する女子水泳選手達の四肢の膨らみを連想させたが、一度(ひとたび)動き始めると、それに連動する筋肉の盛り上がりは疾走するサラブレッドの四肢に見られる筋肉のようで--それが奇妙な色気を発散し、私の理性の砦は打ち砕かれ、エロスの中枢は噴火せんばかりだった。それに彼女の四肢の動きは力強かったが、対照的に体幹の動きは女性的でしなやかだった。それが一層魅力を際立たせているようだった。胸の膨らみは豊かに見えたが、張りのある砂丘のようななだらかな円錐形を描き、しっかりと胸に収まっていた。まるで女性ボデービルダーの胸筋のように見えた。しかし一方彼女の肌は豆腐の肌のようにきめ細かく柔らかで、その上しっとり吸い付くような感触がたまらなく官能的・女性的だった。
そんな彼女の姿に私の心は圧倒された。
この世の最高美女とされる、ヴィーナスとは違った力強い肢体、これまでに見聞きしてきた女性像とはまったく違った美型に、私は言葉を失った。彼女から溢れ出る魔物のような魅力に、私は嫉妬を覚えるほどだった。
彼女の愛の行為は何時も(私に対しては)優しかった(誰に対しても同じだったのかもしれないが)。無言のまま私の衣服を脱がせると、ヘビが獲物をねらうかのように、時々真っ赤な舌をちらつかせ愛し始めたのである。しびれる様な快感が全身を突き抜ける---しかしその朝、私は幸運にもベットに縛り付けられていなかった、だから私も積極的に彼女の動きにあわせることが出来た。
私にとっては夢のような出来事だった。想像してみてください、王女と愛し合っていることが夢ではなく本当の現実なのだ。しかも一方的な愛ではなく、彼女は私の愛を(今は)受け入れようというのである。
私は、この降って湧いた幸せな時を大切にしなければと思った。「今夜の戦いで死ぬことだってありうるのだ!」
私は無我夢中でパトラを愛した。今こそ自分の気持ちをパトラに体当たりで伝えなければと必死の努力を繰り返した。
最初、戸惑って(とまどって)いたパトラも、やがて私の気持ちを素直に受け入れる反応を示したのである!
その時の私の感激が、どんなに大きかったか、理解していただけるだろうか?
行為が終わった時、パトラの顔は少し上気していた。少し涙が浮かんでいるようにさえ思えた。
「仮に死ぬことがあったとしてもパトラのためなら本望だ」と私は真剣に思ったほどだった。

やがてパトラは冷静に「面白いものを見せてあげましょう」と枕元に装着されたキーボードを操作すると、突然空間に私たちの姿がまるで幻のように浮かび上がったのだ。つい先程まで繰り広げた二人の行為が、まるでストリップショウの舞台演技のように展開していた。想像以上に執拗で、刺激的な光景だった。私は自分の興奮が再度高まるのを抑えるのに苦労したほどだった。
感情を抑えながら「ヴァーチャルな映像ですね!」と尋ねると、それには答えずパトラは「あなたには、この映像が見えるのですね!」
「勿論です」と私が答えると、彼女は頷きながら「私が想像していた通り、あなたはやはり特別な能力を備えた人だったのね」言った。
「どういう事ですか?」と尋ねると、
「詳しい話は、いずれ科学者から話してもらいましょう」と話題を変えた。
そして暫く何かを考えているようだったが、振り向きながら、パトラは「今夜の戦いにあなたは参加しないようにして下さい」
「あなたには生きて故国に帰っていただきます」
「えっ!」私は咄嗟に「私は貴女の為に戦いたいのだ。たとえ死んだとしても!」と叫んでいた。
パトラは私の目を覗き込むように微笑みながら「ありがとう。でも、あなたを私達の戦争に巻き込むこと出来ません」と答えた。





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