睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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祠で六地蔵の末っ子の話を聞きながらうとうとしていたら 遠くのほうで雷が聞こえたような気がした。
田野に五穀の豊饒を 山河に五色の霓虹を 人心に五情の幸福を・・・・
「・・・コクトのこえだ。」 「はい、そうですねぇ。今年は少し早いですね。でも旅がしやすくていいですよ。」うれしそうに末っ子が答えた。 「でも1週間しかないじゃないか。」 「ええ、1週間では全部は回れませんね。」 「やっぱりか・・・」 「いいじゃないですか私は一緒にいて楽しいです。」 なんだか妙に嬉しそうだよな・・ そんなこと考えていると狐が膳の用意をはじめていた。
僕らは祠の前に立っていた。 六地蔵の末っ子は短い行程の間中しゃべっていた。僕がふってきたときのこと、みんなで運んだこと、などなど。 三叉路の手前までは椿の女性ときたことがあるが祠があるのには気づかなかった。 「ここは私がお預かりしております」花嫁狐はそういった。
ここより先に進むには僕は何らかの儀式が必要ならしい
「今夜はここで一晩お過ごしくださいませ」
小さな祠は実は中に入ると広かった。 お寺の本堂のようなかんじでひやっとした空気が流れている。
まだ昼だというのに薄暗い。 「大丈夫です。何があっても私がついていますから!」末っ子地蔵は仁王立ちで大きな声を張り上げる 「実は君が怖がっていない?」 「そんなことありません。私は兄様たちに任されたのです。きちんとお供しなくてはいけないのです。」そんなに力説しなくても・・・ 「わかったよ、じゃ、任すから僕少し昼寝してもいい?」 「もちろんです。安心してお休みください」なんていいながら結局彼は怖かったのかずっと「ねてますか?」とききながらおしゃべりを続けていた。 上の空でききながらなぜ儀式がなければ先に勧めないのかいろいろ考えていた。
何がなんだかわからないうちに出発することに・・ 「では、三叉路まで私がお供いたします。」 「あ、きみは」嫁入りのとき逃げ出そうとした花嫁狐だった。 水干姿に衣を被き、なんだか違う人のようだった。 「私が居りますのであなたがこなくても平気ですよ。」 と横から六地蔵の末っ子が口を尖らせながら割ってはいる。 「いえ、雪さんは今のままでは三叉路の先に進めませんから。」 「・・・・・・・・・」不服そうな顔をして彼は黙った。先に進めないってどういうことだろう?主人を振り返る。 「雪さん大丈夫ですよ。彼女も六地蔵もついていますから。」不安な顔をしていたのだろうか、主人はそういった。僕は「雪さん」で、定着するようだ。と思った。
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