睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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彼女は夕食後ゆっくりと枝を選んでいた。 雨は小雨になっていた。
やがて彼女はとくに紅く見える一枝を選び出し嬉しそうに茶室へ戻ってきた。
「この色はいつみても素敵」そう言って微笑んだ。 「じゃあ、そろそろですねぇ」宿の主人の声がした。
そろそろ?ああ、雨が上がるんだ。と言うことは晴れ間が見えるのか? ここでお日様が出るなんてめったにないことだ。もちろん雪明りで明るいのだけれど。
ところが、突然大雨になった。庭中、いや、そこらじゅうの雪がすべて溶けてしまうのではないかと思うくらいの大雨だった。 その大雨は一晩中降り続いた。
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