睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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雨は降った・・・文字どうりの狐の嫁入りだ・・・ だけどこれって。彼女の一族の力ではないことぐらいわかってしまうのでは・・? そう僕は思いつつ露天に入っていた。 「雨降りの露天ってなんかいいねぇ。」 「なぁに言ってるんですか、あなたくらいなもんですよ。雨ふってんのに露天開けろっていう客は、、、まったく、、、。」ぶつぶついいながら番頭は去っていった。 そう言われればそうかも・・・・。主人のような含み笑いになった。
あのあと婚礼自体は、何事もなかったかのようにすんでいった。 主人が言うには当人同士の問題だから雨が降ったことなんかは、関係ないんだそうだ。まぁ、無事すんだんだしいいんでは・・・・? 実際、僕は花嫁の部屋に入ったことで花に怒られ、びしょぬれで帰ってきたことでさらに怒られ結局何もてつだわず、婚礼を見ることもできずにこうして風呂に浸かってる。 「みたかったよなぁ・・・。ここの人の結婚式。」そのために手伝うといったわけだし・・。
「ちょっと!!おきなさいよ!!しずんじゃうってば!!」
花の、きんきん声で目がさめた。 「・・・ん?・・・」 「なぁにやってんのよ!!まったく、雨上がったから露天の用意するように言われてきたら、あんたこんなとこで寝てるし。風呂で死んでどうすんのよ!!」 「あ・・・ねてたんだ・・・きもちよくって・・・ついね・・・」 「ついじゃ、ないわよ!!まったく!!もう、湯あたりしないうちに出なさいな。」 「ねぇ、婚礼はどうなったの?」 「ああ、新郎新婦はうれしそうに帰っていきましたよ。」 「そうなんだ・・・」
そういや、、、今、夢見てたよな、、、なんか、凄く苦しかったんだけど・・・?
「手のひらに乗る程度のできるだけ丸い石を、3個探してください。」川を見つめたまま主人はそう言うと、立ち上がった。 僕は何とか、これでいいだろうと思われる石を3個見つけた。 「こんなのでいいの?」 「十分です。」そうして主人は石を受け取ると川に入っていった。
背の高い主人がつかると、けっこう、ここの川深いんだな・・・と思った。 そうして。主人は一つ目の石を川上へ2個目の石を川下へ最後の石を足元へと落とした。ただ、それだけをして彼は、岸へ上がってきた。 「さぁ、行きましょう。まもなく降りますよ。」そう言っていつもの、含み笑いをしながら宿へと戻っていった。
言葉通り、彼の姿が見えなくなったとき降り出した。 天気雨が・・・・いや・・・・「きつねのよめいりだ・・」
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