『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2006年09月26日(火) memo memo + music

火曜日、小雨の降るなか病院へ。
最近待合室が苦痛になってきてしまった
どうしてだろう。

前に通っていた病院は待合室がせまくて
そうしてテレビがついていた。
私はたいていバイト帰りにそこへ通うからいつもテレビは
夕方の、ニュースなのかスキャンダルなのか曖昧な
そうしてとても刺激的(なるべくなら聞きたくない単語)を
いつも吐き散らしていたっけ。

どうしてみんな、こんなニュースをぼんやり
観ているのだろう。ふしぎに思った。
面白いよりも怖くて不快な不安なものの数々。

今は、
精神科単科の病院、になり
広さは前の四倍くらいに、なり
刺激はとても減ったはずで
ああ、らくだ、と思っていた。なのに、
最近つらい。
動悸がする。
吐き気がやってくる。

帽子の上から耳を押さえて目をつむって
まるくなって、椅子のなかにすっぽりと埋まってしまう。

おくすり、ぼうっとしていると忘れてしまうので
なるべくいっしょけんめ、のんでいます。
おしごとは、つらいです。
ねむれなくなりました。
体重が、へりました。
……そんな、申告。
それから、逡巡してどうしようどうしようと、ぐずぐずして
サポーター外して腕をみせた、三週間くらいのキズアト。

これは痛々しいね、と
言われたけれど
なにが痛々しいのかわからなくて自分の腕を
ぼんやりと眺めてしまった。
自分でキズつけて自分でふさぐ

おくすりはかわらないで
とにかく、飲み続けることと
来月からはじめる予定のカウンセリング、で
気長に気長に
なにかが変れるのを待とうと
言い聞かされている。

カウンセリング。
とても期待していて
でも
少しこわい。
ううん、
とても、こわい。

わたし秘密がたくさんあるような気がするから。
忘れていたところにたくさん。
泣く私や怒る私や黒い私が、たくさん。

・・・・・・・・・・

明日より先のことを考えると息が詰まる。
そんなもの、ないような気がする。
結婚なんて
とおい果ての他人事のような
気がする。

・・・・・・・・・・

来ていた相棒さんと、ふとオンガクの話になり
CDの棚をひっくりかえして懐かしいものをさがした。
結局、目当てのものはみつからなかったんだけど
そのかわりに見つけたのが、「大江光 ふたたび」。

埃をはらってCDプレーヤーに乗せると
なつかしいやわらかいフルートとピアノが流れてくる。
眠れなくても眠れなくても眠れなくても
耳を済ませているうちに静かになって
気がついたら明るくなっていた、、、ような。
「ありがとう」
しばらくこれを眠るときにはかけようかなと、思った。

あたらしくなくていい、
やさしい音を
きこうよ。



2006年09月24日(日) 息づく卵。

泣きたいきもちを腕のなかにおさめて
湯船のなかに、しずめて
きょうを、おしまいにしよう。

行きすぎてはいけない。
急ぎすぎてはいけない。

あかるいひるま、
恋人、であろうひとに電話をした
あいかわらずへたくそな電話をし
何を言いたかったかさっぱりわからないまま、ただ、どんどん
かなしくなっていった日。
ひとりぼっち感が、強くなるだけだった日。

……いつでもぜんぶ
ひとりの人に抱え上げてもらおうとするのは
そもそも無理だし、まちがっている、
そうわたしは知っている。

でもほかに「でんわをかけてよいひともいない」。

せまい世界です。
背中をあててこの壁をおしひろげたとて、
やっぱりそこは、せまい世界です。
どうしてかと言えば信じないのはわたしで
何を言われても心に届かないのはわたしで
コトの元凶は
この腕のなかに、あるらしいから。

不安に支配されていること、とか
常識もなにもぶっとばして人を怖がり
信じないこと、とかがびっしり根を張って
あんまりそれが細く細かく自然なものだから
わたし、いままで自分で気づかなかった。

気づいたら苦しかった。

どっちがいいんだろうねえ。
部屋のなかのそらに向かって、思う。
ヒトリでは生きていけない。
と言って
死ぬ、という選択肢は、
絶対にえらんではならないものだと心に刻んでいて
右と左へ、亀裂の走っていく
「わたし」。

亀裂を目にみえる形にすればすこしやすらぐ。
少しだけだ。
そのときだけだ。
知っていて、かたちにあらわす
かつてまるかった、透明なたまごを腕に抱いて
やいばをそっと、つきたてる。

卵はたぶんぼうっとひかる。

今にも消えそうで消えないひかりだ。


9月24日、きみを恋しかった日。



2006年09月22日(金) とかげ、味のない水

みうしなったもの
読み掛けだった文庫本
季節
いたみに、負けなかったジョーネツ
自制心
笑いかたと言葉
だれか、
あいしていたひと

睡眠がへたになってからどれくらいたつかなあと
数える気はあまり起きないまま外のほうをみていると
新聞屋さんがやってくる気配がする
狭い路地だから、
しかもその行き止まりにあるうちだから
どの家にどんな順序で朝の配達があるのか、だいたい
いつのまにか覚えた。

この路地に新聞を運ぶバイクは三度やってくる。
三度目、最後の一便が
いきどまりのこのうちの前に、止まるやつ

おふとんにくぎづけで何日か経ち
頭がすっかり霞がかってしまった
あがいても醒めない夢とか、そういうのに似ている。
おかしいとわからないで道を外れること

よしもとばなな、の「とかげ」を取り上げて読みはじめたから
ああそうか疲労しているんだなと気がついたりする。
ほとんど、身になじんだ本でしか構成されていないわたしの本棚は
こういうとき、一種のリトマス試験紙。
きょうだいみたいな本しかそこにはなくて
取り出されるときはなにかの傾向があったりする

幸福
迷い
警告


つらい夢しか見ないから、気付いた
水ばかりしか飲まないから、気付いた
手に取れる物語が偏っているから、気付いた
出掛けるしたくに3時間もかかるから
約束のひとつも守れないから

たいせつ、というまろやかなかたちを思い出せないで
春も夏も秋も冬もよく、わからないみたいで
ふにゃりと、


外に行こう
3時間も5時間もかけてもいいから
あの子が待っているから
あたしの気持ちは今はいい
行こう
ねばならぬ

……それでもしも笑えたら笑えたらと
いつも、期待をしているのです

落ちてく。
気がついたからひとつ前進と
思ってみても、いいですか。



2006年09月20日(水) 夜の子供

窓に
庭木の枝葉が拡大されてぼんやり
淡く、うつっています

一匹だけ凛ときこえる虫のこえ
仲間を
いつまでも呼んでいます

気まぐれな蛙も早起きしすぎたからすも
それなりにそれなりの場所でそれぞれの時をひとあしごと
積む。

大きな夜のピラミッド、その頂点
ねむれるあなたにぼくは尋ねたい
月の大きさを測る方法を
あかるさと闇に触れる方法を
せかいからたちのぼる吐息を食べながらあなたは
どうして、目を閉じているのかを

ぼくがただまなこになる
まっすぐにひかれた寝床のうえで
たくさんの吐息を注がれて
注がれて注がれて肢体はきえた
あとに残るは、ぽっかりと
暗さにむかうまなこ、ふたつ

てんてんと視線はつのり、ざりざりと
砕けかわいた砂の味を今夜も綴る
わずかゆがんだ灰色の傍線。

薄らいだひかりがひむかしより来る
夜はめくりあげられて
また、隅々までが充ちる昼がくるだろう
ぼくの呼吸を塞ぐほどあかるい
唇を綴じ合わせ鼓膜を凌駕し
うけとめきれない生気と終焉の気配にみたされたひるまが

くるだろう



長月二十日、未明〜早朝 ma.i



2006年09月15日(金) らっか

今日は
げんきなひと、のふりが
できませんでした

げんきなひとのふり。

それは
外に出てもゆるされる範囲で
行動ができるということ
です。

いっそ休めばよかったかしらん
動かなかったからだの、訴える通りにさ。
試験前だからって意地はらないで

……と

なにをするにも時間が異常にかかる
わたくし、かんがえ
それでも外におりまする。
防波堤ですか
じぶんのためだけに、ひとへの迷惑

外。

不安発作とかさ
パニックとか
はなから問題にならない世界、

叱られ叱られ
いつか許してもらえなくなったなら
しずかに退場、するつもり
それまでは
……泣いても泣いても、笑わなきゃ

げんきなひとのふり

げんきなひとのふり

・・・・・・・・・・

叱られているということしかわからなかった
相手の話す言葉の意味がわからなかった
処理速度がおっつかなくて頭のなかも真っ白で
ただ、ハイ、ハイ、と凍った顔でうなずくだけ

叱るなんて向こうもよい気持ちはしないはずなのに。

記憶が散逸していって
かきあつめても
ほんのぽっちりしか残らない
誰のことだこれは誰の
……そんな気持ちで
遠く遠くにあるビジョンを
つないでもぼろぼろの記憶

震える目蓋、震えるくちびる、震える震える
視界、ことば、えがお。



2006年09月13日(水) memo + autumn drop

寒くなると
指先が、ぬくもりを恋しがる。

それをわたしは
編み物の季節だと理解する。

急に訪れすぎたさむさはなまくらなナイフ、
無表情でこちらをみている、隙だらけのここを。

この窓を開けて
どうして
飛び出してはいけないのかとばくぜんと考え
健全なわたしが
いけなくてあたりまえでしょう、と
電灯のもとでささやいた。

・・・・・・・・・・

通院、
先週から病院にばかり行っているような気がして
それは嘘でもなく、
今日は皮膚科、それなりのヘルペス発症。
試験前で授業に注ぐエネルギーがいつもよりもずっと多いよ疲れたよと
感じていたことがきっとそのまま
ほんとうだったんだろう、と思う。
そうしてごはんが食べられない。

部位が背中なもので自分じゃ見えず
カンで薬を塗ってみたりする、あー
これでほんとに大丈夫なのか。

お医者は私の顔を見ていった
「垢がない!」
……そうですか洗いすぎですか。
「そう!」
ヨワヨワかつ病的乾燥肌の身には
ふつうなら睨まれる垢だって
じぶんのからだをまもるバリアーになるんだよ。
ただ常に汚い、とか
そういう話じゃあ、なくって。

大きな錠剤をもらって帰る。
試験が終わるまでは、せんせい、
倒れるわけにいかない。
あと一人残っているんだよ
受け持ちの生徒くんの期末テスト。

……だから、踏ん張らなくてはいけません。

・・・・・・・・・・

このすずしさのなかで
つめたさのなかで
誰かを追いつめるのも傷つけるのも
とてつもなく簡単だと空っぽ涙で思った日。

あたしは泣かない。
去年もう
さんざん泣いた。
切りつけられる驚きはもう
一度きりで、十分で。

ともだちでいたなら一生いっしょにいられると
考えていたこの甘ちゃんを笑ってやってください。
もう私なんて要らないと
その結論につっぱしる、この機構を。
そうしてそれがあながち間違いじゃないことも。

指先から少しずつひえていくのは
気温だけではないらしいから

叩きつぶした夢を
拾い上げたりはしないで
ちゃんと、ちゃんと、
一人で歩いていこうよ。

……でも、まだ、
片足なくしたようでうまくあるけない。
転んでも転んでも、どうして
SOSをさけぶひとがきえてしまったのか
まだ、うまくわからない。


ぼんやりと視界が揺れていた。


9月13日、Ma.i



2006年09月08日(金) 帰り道迷子。

病院に出かけた。
寸前で間に合わなかった、あたしは
あまり、よい患者では、ないのだろう

携帯電話を忘れてた
定期入れも
帰りのバス代、とったらお金がない

歩き出して
立ち止まって
ふりかえって

……どこ、行くんだっけ。

わからなくなりました、なんも
わからなく、かたちだけそこにある。

そうして、気がつくと
4時間、経過。

ほらまたやってしまった駄目な奴め。

・・・・・・・・・・

義務として帰るべきところがある
それは十分わかっていて
嫌というほど想像できて
それでも足が動かなかった。

……なんて説明を、そうかと聞いてもらえるわけも、ない。

解る言葉で説明せよと家人は言う
命令

けど
あの
ひとりで歩いていたら周りがぐるぐるして
自分がここにいるのに何も選べなくて
次に足を向ける方向もあやふやになってクギヅケになる
どんどん時間が経って行くのに
帰り道を選べない?

その感覚を
どう言ってみたら「普通に解る」んだろう

……うまく言えない。ここでさえ言えない。

ただ
なんにも選べない。
繁華街のまんなかで泣く
選べない
選べない

みんな色褪せて
誰も関係なくて
欲しいものも消えて
おなかもすかなくて
焦りだけ

……どうして迷子になるんだろう
みんな、一人でどんどん、歩いて行くのに


正気のふりして朝がはじまる
あたしが自分をひっぱたく



2006年09月05日(火) tin

とろり落ちた夜で
だれの気配も感じられないから
だれも話しかけるひとがいないから
ユウ、
空想のともだち溢れさせた

ちいさなヒヨコ
はねみみウサギ
気が向いたとき口ひらく木に
ぽっかりあいた、だれかの家
くりかえし訪問しくりかえし描き
いつまで話したくうそうか。

あたしのなかみはなんでできてる
……しらない。だけど
砂糖菓子では、ありえない

真夜中にはもう誰も訪ねてこないので
うまく眠る必要があるのと
知っていて、でも
なのに。

・・・・・・・・・・

生徒くんが一人ふえて
六人のそれぞれ豊かな子らといっしょに
うるさく静かににぎやかにやっています
バイバイと手を振ったら今日はおしまいで
あとは
体がぺしゃりという前に
コンビニでエネルギーチャージして
夜道を急いで帰るだけ
間に合ったり間に合わなかったり、するだけ

笑顔はなくていいらしい。
でも
笑いは勝手にうかぶでしょう?だから
二日分くらいの笑顔と頭脳を3時間にとっといて
濃縮還元して、注ぎ込むのだ。
秋がふかまって
冬がきて
何人かがひとつの難関、を迎えて越えるまで
春が芽吹くまで

それにつきあうんだよと
言い聞かせる

これだけ長いスパンでくらしを考えるのなんて久しぶりだと
躓きながら、一方で思った。

この夜を、越える。
越えつづける。


 < キノウ  もくじ  あさって >


真火 [MAIL]

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