『 hi da ma ri - ra se n 』


「 シンプルに生き死にしたかった 」


2003年10月31日(金) わたしのすきなふく

わたしは流行のおようふくがすきではありません
どうしてかわからないけれどすきではありません
風にふわふわする長いスカートとかジャンパースカートとか
ちょこっと留めておくブローチとかまあるい感じの襟とか
コットンのおようふくとかエプロンドレスとか
そんな
100年も前だったらスタンダードだったとおもうおようふくが
すきです

100年前だったらみんな
ペチコートを着てボンネットをかぶって長いスカートを履いていました

流行なんてその程度のものでしかありえません

けど

おようふく。
わたしのすきなおようふく。

それはとても目につきやすいのでいろんなひとが
わたしのことをわらいます
それはとても指摘しやすいのでいろんなひとが
わたしのことを未熟だといいます
25歳の女の子らしくないといいます
おまえはもう少女でないにも関わらず
そのようなものを着るなといいます
現実から逃げているといいます
すべてが中途半端だといいます
なにかもかもできない子どものままでいたいのだと
わかったようなことをいいます

私の好きなおようふくを少女服とかんちがいしている
たくさんたくさんの男のひとたちへ
あなたの身につけているものは15歳のころと一体どれほどの
変わりがあったというのですか


わたしのこころはあなたがたのことばでぼろぼろになって
そうしてさいごにあなたがたは
もしもこのことばで傷ついたらごめんよと笑って言うので
わたしはもうこの涙をどこへやったらいいのかわからなくなってしまいます
人を傷つけるために研いだ刃なら自分の胸に突きとおすくらい
覚悟を持って振りかざしてたちむかうべきだとおもうのです
さいごに「傷つけていたらごめんね」なんていうのは卑怯だと思うのです
吐き出したことばの責任は謝罪のことばで帳消しにはできないのです

わたしのこころはぼろぼろです
なにを身につけたらいいのかわからなくて
わたしのこころはむきだしで
わたしのからだはむきだしで
血のまじった液体がじわじわと染み出てくるのを
舌で一生懸命なめながら
それでも、いたくていたくて、いたいから
もうなみだも出ない

目の前に並ぶひとつひとつ一枚いちまい
わたしがえらびとってつかみとってきた私をつつむ衣を
破り捨てて笑うあなたはそれで満足ですか
わたしがこれをすべて焼き捨てたら
そうしてごくふつうのそこらじゅうにあふれているお洋服で身を包んだら
それでみんなは満足するのですか
もうわたしを指差して少女ごっこをしているキチガイだと
いちいち刺し殺さずにいてくれるのですか


だからわたしはそのおようふくをぜんぶ捨てたい気持ちにかられます
ただ人の中にうずもれて目立たない人になりたくてこれ以上
ぼろぼろのきもちになりたくなくて

でもその一方でわたしを止めている糸はひとつ


「自分の着たいおようふくさえわかんないようなやつには戻りたくない」


わたしを踏みつけてくれたひとへ
わたしを刺し殺してくれたひとへ
たくさんの憎しみと
捨てきれない愛をこめて
それでもあなたの言うなりにはなりたくないと
血だまりのなかから



10月31日 深夜  真火



2003年10月28日(火) サンドリヨン

灰かぶり姫。

だれもお王子様を待っているわけではなく
ただ
12時の鐘の音に追いかけられているだけだ
11時45分のクォーターチャイムが鳴ったから
彼女は走って舞踏室を出たけれど
そうして、お洋服の魔法が解けるのを見られなくてすんだけど
もしも間に合わなかったのなら
いったいどうなったことだろう

お薬の副作用なのかしれませんがうまくろれつが回りません
座ろうとしたりしゃがもうとしてよく床にころがります
うにゃー、
なんだかたいへんなひとみたいじゃないか
自分に我慢がなるときとならないときと
いろいろあります
文字がかけないのは思い浮かばないからと
死にたい消えたいサミシイ病にかかっているせいかもしれません

さみしいから世界に向かって声をあげていたわたしがいた
話せないから文字で書きつけて書きつけて止まなかった
それなら今は
わたしはせかいにむかって
なんて声をあげているんだろう
どんなかたちで
さみしいって訴えているんだろう

直接ことばで言わなきゃつうじないと思うのにそれがへたくそになりました
あとすこしで25歳自称少女は26歳になります
誕生日が追いかけてきます
それといっしょに
お洋服の魔法が解けてしまったら、どうしよう、どうしよう、
どうしよう?

ジェーンマープルで新しいコートを買いました
否、買ってもらいました、母に。
今まで着ていたコート大のお気に入りなのだけど
お気に入りなあまり、寿命を縮めてしまったから

ケープのついている紫寄りの紺色の別珍コートです
ベルトもケープも取り外すとワンピースのようになるので
ガーランドもカネコイサオも着たいわたしには
お勧めですと担当さんにイチオシされて一週間かんがえて……

この魔法が消えてしまったらどうしよう
お洋服から勇気をもらっていた
この魔法が消えてしまいそうな15分前の鐘が鳴る
クロゼットに吊るしてあるお洋服が
だれもわたしに呼びかけなくなったら、どうしようどうしようどうしよう

こわいのでした
不安なのでした
その気配を感じて
こわいのでした

自分のあるくはやさが人よりもずいぶんとのろいことに
最近、誰かと歩こうとするたびに、気がつかされます

はやく逃げなくちゃ
この悪い予感から逃げ出さなくちゃ
そうして世界をまっすぐ見つめかえして風を感じながら歩けるように
この残された魔法を守らなくちゃ
守らなくちゃ


………そのために、どうしたらいいのかわかりません




10月28日、雨のまひる 真火



2003年10月21日(火) 這う

いきている価値が
ぼくにはないなんて思いたくなんかないよ
でもそれにどんどん引きずられていくのはどうしてなの
坂道を這いずって登っていくのに
気をゆるませれば腕の力は弱まってずるずるとすべる
下のほうにぱっくり口を開けて黒い穴が
笑っている笑っている笑っている
嘲っている

ねえ
ぼくのいっていることはばかなことばっかりなのかな
誰ともさようならを言いたくないなんて
ばかげたこどものタワゴトなのかな
年相応に大きくなれていなくって
ぼくははやくそんなぼくをこの手でグサリと突き殺さなきゃ
いけないのかな
いけないのかな

音が怖くてどこにも出て行けなかった
光が怖くてなんにもすることができなかった
知らないひとの足音がこわくて
家族の立てる物音がこわくて
廊下を歩く足音、トイレに吸い込まれていく排水の音、
指までも縮めてふとんの中だけで目を開けていた
ぼくはやっぱり
このせかいにいらないにんげんなのかな

お守りがつぶされて消えてく
大事にしていたおんがく
たいせつだったことば
何とも引き換えにできないとおもっていた
ぼくがぼくであるために必要だった
たくさんの考え方、たくさんの方法、生きていくやり方、
誰かとのつながりを求めて求めてそうして手に入れようと
少しでもいいよ、近づこうと
必死になりながら作ってきたひとつひとつのぼくのお守り

さようならなんて言いたくない
もう誰も、いなくなってほしくない

あっさり
つぶされていく
あっさり
消されていく

笑いながらでもそれができる人があんまり多いからぼくはもう
ひとりでかなしいの塊になって夜の中につぶれていきそうだよ

「だれかたすけて」

引きずり落とさないでよ
わらいながらぼくのことをころさないでよ
知らないという究極の言い訳を武器にして
ぼくのことをころさないでよ

鼻と喉をふさがれてそのうえ首をしめられて
もうあとは
目を見ひらいてぼろぼろと泣くくらいしかできることがなかったよ
ずるずると黒い穴に食われて腕を刺し続けたいとおもったよ
お酒を飲んで安定剤をのんで眠り薬を飲んでねじふせるように眠ったよ
ばかなことばかりしているばかなぼくだよ
あなたの言うとおり
病気と言う名前を隠れ蓑にしてただぬるま湯につかっている
意志のよわいばかなぼくかもしれない、しれないよ

それでもぼくは
生きていたいんだよ
こんなぼくだけど
生きているんだよ

笑いながらころさないでよ
笑いながらこわさないでよ
ぼくの大切なものを
ぼくが今生きていくのに必要なのに

そんなにあっさりとその口でその言葉で
ぼろぼろのゴミみたいに取り扱わないで
あなたの目にはクズの塊でも
ぼくにとっては命の支えなのに

元気なのは見せ掛けだって見抜けないならそれはあなたの目が節穴なんだって
ふつふつと燃え続ける炎みたいに怒りのことばを叩きつけられたら
どんなにかよかっただろう
どんなにか、ぼくは
今と違うものになれたろう


だけど、ぼくは、ぼくだから
こんなばかなぼくでしかないから

這い上がれ
這い上がれ

あいつになんて食われないように
しっかりと指に力をこめて


生きていくって決めたんだから
そう、約束、したんだから



10月21日、深夜 真火



2003年10月19日(日) 迷子

自分のかえる場所がどこなのかなんて
そんなことばはくりかえすような年でもないと思うのだけど
知らないうちにさむい背中を抱えてしまったような夜には
帰る場所についてくそまじめに考え続けて考え続けて
そうして気がついたら何にもない場所に進んでいってしまっていたり
することがあるんだ

ばかなぼくだよね

そんなぼくをきみは背中から抱きしめたとしよう
ぼくがどんな顔をしているのかきみには見えないこと
きみがどんな顔をしているのかぼくには見えないこと
それでもただ背中をゆだねて温度を交わしていること
やすらかさをください

背中から追いかけてくる不安は足が速くて
ぴったりとぼくにとりついて離れない
少しずつ少しずつ冷やされた血液がからだをめぐっていって
心臓がうすあかい血を毛細血管までゆきわたらせる
ぼくはまるでロボットのように感じはじめることがあるよ
ぎしぎし言いながら、
手をかざしたら見える10本の指、10枚の爪、
まるで誰かか他の人の手でもいいんだと思った
天井の穴から覗き見ているみたいな
テレビのドラマを見ているみたいな
遠いとおいせかいだったから

まくらもとにおくすりをならべてぼくが静止する
冷えていく背中、

この気持ちを、なんて言ったらいいんだろう

ぼくがここに居る理由は考えつかないけど
ここから出ていく理由はいくらでもかんがえつくんだ
おくすりだけ散らばっていて
どれだけ飲んだらいいかよくわからないで

夜だけ、時間だけ、
ずんずんと進んでいくんだ


「あなたの手のひらのぬくもりをわたしずっと夢みてた」



10月19日、深夜 真火



2003年10月17日(金) しんじたいこと

すべてここからはじかれたと思うぼくへ

ぼくたちは道がない地図をたまたまもらってしまったらしいけど
だからといって顔を伏せて歩いていくことなんてないし
ちまなこになって道を探そうと駆け回らなくたってだいじょうぶなんだ
知らないうちに手に押しつけられていた道のない地図かもしれないけど
でも、それでも、

一歩でもいいから足を踏み出して歩いてそうして
ふりむいたらそこにはきっと
他のひとには知れないきらきらひかるきれいなものが
みずみずしくやわらかに生まれでるたいせつなものが
きっとあるんだ
きっとあるんだ


10月17日、深夜、都内某所 真火



2003年10月14日(火) 紙くずになるわたしの家出

半泣きになりながら電車に乗って2時間半、
うちでは、ないところで、わたしがことばを書いている
本日、二日目の夜あるいは三日目の朝。

好きでうちを出たのでもなく、電車に乗ったのでもなく
ただ、築17年経った我が家のリフォームが始まって
たった、お風呂を取り壊してユニットバスに取り替えるだけのそれだけの改築なのだけど
ただ、それだけなのだけど

ただ一日、お風呂の湯船に浸かって水分をからだにしみこませる
そのことができなかっただけで、わたしのからだがこれもまたあっさりと
悲鳴をあげてしまっただけ。腫れ上がってひりひり痛む顔と腕と身体と。

そうして

知らない人が頻繁に出入りするその慌ただしさと
取り壊されていく家の一部が出す悲鳴みたいな轟音と
ひっきりなしに続くたくさんの知らない物音に
わたしのこころがあっさり参ってしまっただけ。
ほんの二年勤めさせてもらっていた図書館にて学びとったらしい
やってくる業者さんに笑顔できちっと応対することを覚えたからだが
知らない人がすぐそこに居るという緊張感であふれながら
いざ、というときに備えてスタンバイしてる。
にっこり笑って挨拶ができるように
ただ一つの世間話でも
気持ちよく、なめらかに、その時間がすすんでいくように
ひたひたと緊張はたまっていって
そうして、業者さんがいなくなったあと
わたしがこわれる

めちゃくちゃなことば
意味のないなみだ
自傷はつづいて
時間だけながれた

耐えられない耐えられない耐えられないでも我慢しなくちゃ我慢しなくちゃ頑張らなくちゃ

わたしがこわれて
紙くずになって
くしゃくしゃになって
窓から捨てられる
それをわたしはぼんやりみている
うつろな手で
そこらじゅうに転がっていったわたしを取り上げて
ぐしゃぐしゃに丸めながら
わたしがみている

苦しかったから血を出したの
苦しかったからお薬に頼ったの
でも
なんにも減らなかったの
ただくるしいということばの山が
少しずつ大きくなっただけで


……毎日、毎日、唐突にぼろぼろと泣き出す25歳の小娘をみて
理屈の通らないことを口走って自分を殴りつける小娘をみて
……うちをでていなさいと、
家人のだれもが
言った


だからわたしはいまここにいて
こんなところで
慣れないパソコンからそれでもことばを綴ってる
パソコンを貸してくれたひとは隣で寝息を立てていて
うまく眠りにつけないわたしは
また、新しい明日のことを思って
どこかひどく、怯えていたりするんです

こんなに親切にしてもらっているのに
その気遣いに応えられないじぶんが
なんでこんなに我が儘なんだろうって
また、価値のない方向に一度かたむき
だけど、わたしは明日を迎えなくちゃいけないんだと
ふらふらとバランスをたもっている。

小さいころつくった、不格好な、どんぐりのやじろべえ
右と左のどんぐりはどうしたって不揃いな大きさで
とてもとても頼りないちいさなバランスをちいさな指が
つくろうとして四苦八苦していたんだったよ

いちどでもつくれたこと、あったのかな
どんぐりでできた、やじろべえ
ばらばらころころと椎の実の落ちてくる道路のなかで
地面に目を凝らしながら、ゆっくりと還っていく
指先の記憶、夢みたいな視野のなかで
わたしのはらっぱ、と呼んでいた空き地のこと
ちっぽけでしかたなかった、でもきっと嘘なんかじゃなかった
お日さまに満ちていた時間のこと


いつかあそこにかえるまで
わたしはこの怯えと
闘ってゆかなくちゃ、いけないんだ
いけないんだよ

言い聞かせる夜は、つづきます



10月15日、未明  真火



2003年10月12日(日) 真夜中の雨

雨が降っている
雨が降っている
激しい音はもう音楽じゃなく
叩きつけるものは水滴でもなく
地面はやわらかくかれらを受けとめず
風にあおりまくられてどこへ行くか分からないまま吹きすさび
遠の果てへ投げ出されてくだけちるんだ
ぼくがぼくとも分からない粉々の破片が
闇の中で妖しくてらてらとひかって
ぼくをみうしなったまま、ただ

雨が降っている
雨が降っている

雨が止んでくれない
止んでくれない

こんな夜に目を覚ましていると鼓動がどんどん早くなるのを止められない
どうしても気になることがあって、どうしてもしなければならないことがあって
そうしてわたしは目を覚まし続けているのに
そこらじゅうに散らばったがらくたみたいな物の中で
わたしはひとりでぜいぜいと呼吸困難なんてやっている
物事はちっとも進まずに
どきどきどきどき
心臓は必死に鳴る、
どうしてなんだろうどうしてそんなに必死に鳴るんだろう
そんなに生き急ぎたいのか死に急ぎたいのか分からないまま

外の雨音と同調するように
わたしの周囲は散乱して
わたしのなかみは屑みたいにばらばらと
ばらばらとそこら辺に投げ出されてうめいて

不安という糸でつなげられているだけ

そんな首飾りほしくないのに
そんな首飾り
もうどこかに捨ててしまいたいのに

がんがんと叩き続けた手

不安発作、というわけのわからないものとつながれているらしいこの手

脈拍は
いき先をうしなって
もういいかげんめくらめっぽうに
突っ走っていくから

わたしは両腕を床の上に投げ出して、げほげほと咳き込んだ
酸素が足りないのか足りすぎているのか
どっちがほんとうなのかわからず、ただげほげほと咳き込んで
散乱したもののなか
血走ったよなわたしの胸のなか
ダッシュしていくまっかな心臓

この雨が止むまで
この音が止むまで

耐えたなら、そうしたら
ぐたりとしたからだを引きずって
軟体動物みたいなあしを垂直に使い
やってくるあしたというじかんまで
あるき、そしてあるき続けて

いきましょう

いきましょう



10月13日、未明 真火



2003年10月09日(木) それでも夕焼けだけ見てた

ふとんから
出られない
出られない
出られない
を、くりかえして、これはただ「出たくない」だけなんじゃないかと思ったりもして
ようよう午後3時、いちにち、ということをはじめた。

本当は今日は通院の日で前々から行かなくちゃと宣言していて
でも

この気持ちをなんて言ったらいいんだろう

もうだめだ
もういやだ

そう涙も出ない
着替えることもない
ごはん、食べたくない
ずっとこのまんまがいい

日が暮れていく
少しずつあたりがつめたくなっていく

もういやだ
もうだめだ

太陽の角度がわずかずつ小さくなって下がってゆくのと同じように
あたりのぬくもりが0.1度刻みでひえていくのと同じように
わたしの心の中をきちんと束縛してくれているなにかのくさりが
ひとつ、ひとつ、
留め金をはずして壊れていくみたいに

ぱちん

ぱちん

もうどこにも行きたいと思わないし
生きたいと思わないし
おくすりを飲んでもいけないし
首をくくってもいけないし
邪魔だ邪魔だ邪魔だ金を喰らいながらここにいるだけだ
わたしがいなくなればどんなによいことがあるだろう?

……そんなことばの列があたまのなかをぐるぐると巡るのでした。


ひえていく世界と
ひえていく身体と
うごかなくなっていく
こころのなかのなにか

それでも引きずって外に出て(網戸をあけそこねてこわしたけど)
洗濯物をとりこんでいたあと(冷えさせるなんて恐くてできない)
ふと
視界に入った向こうのずっと向こうの家の壁は
夕焼けの色をしていた


明日はきっと、病院に行きます。



10月9日、夜 真火

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


私信:
 「俺は、俺だ。その為に戦う。」の、精神異常者さま
 文中にわたしの名前、ありがとうございました
 どこかで聞いたような、名前だな、だれだっけ、と
 しばらく考えてから自分のことらしいと気がついたまぬけなものですが
 そんなふうに読んでいただけているなんか、うれしかったです
 どうもありがとう
 それから、久しぶり。



2003年10月06日(月) 可哀相。

わたしってかわいそうなのかな

埒もないことをつらつらと頭のすみっこで考えていた
なぜどうして突然こうなるかといえば
日曜日に母と久しぶりに買い物に出かけた先で
お店の人に「かわいそう」を連発されたからです

お嬢さん、見たところ、、、、アトピーでいらっしゃる?
まあこんなに、かわいそうにねえ

はい、アトピーです
生まれてこの方25年分
気合いの入ったアトピーと手をつないで生きています
でも、、、、
それって、そんなに、
かわいそうなのかな、、、、、、

と、ぐじぐじ言ってしまうのは
そのお店の人が話しているあいだに
おおよそ10回くらいも「かわいそう」を連発したからで
そこまで言われると、割合に言われなれているわたしも
だんだんおかしな気持ちになってきてしまいました……

その人もやっぱりアレルギー持ちで花粉症の時期が大変なのだそうです
でもテレビのなんとかっていう番組でやっていた日本の何処かの地域のお水を
取り寄せて一日2リットル飲む、というのをやってみたら
あらららという間によくなったのだそうです
だからきっと大丈夫きっと絶対治るわよ、と
その人は言ってくれました
その治るわよっていうことばは励みになれる筈なのに
なれないのは、たぶん
その人の話しぶりと自信の持ち方のせい
なんだか、ぐったり、してしまう

そんなに、かわいそうかわいそうなんて、連呼しなくてもいいのに

そうして
本当にアレルギーで苦しんでいる人ならば
自分によかったものが人にもいいとは限らないことを
実を持って知っていると思うから
自分の使った商品の宣伝を誇らしげにしたりなんて
しないような気がするんです、、、わたしの勝手な
思い込みかも、知れないけど

アレルギーの程度には、軽度と重度ではものすごい差があるって
花粉症だって
悩んでいる人は多いから
アレルギーに対する認知度はとても高くなってきたけれど
その程度にはとっても差があって
市販薬なんかじゃなく、病院できちんと処方されたお薬でないと
効かないし、第一こわくて使えないとか、そういうことは
たぶん、あんまり、知らないひとなんだと思った


くりかえされる
かわいそうかわいそうかわいそう

けれどね
それだけならまだいいと思ったの
かわいそうと言われるだけなら
それだけなら
まだよくて

あまつさえ
母に向かって「早く治してあげればいいのに」なんて
何度も何度も言わなくたって、いいではないですか

自分がかわいそうと言われたのにはぐったりでしたが
母に早く治してあげなさいよと言っているのには
正直かなり腹が立ってしまいました。
話を遮って帰りましょと言いたいところで
ぐぐっと我慢して黙って微笑んでいました

わたしは確かにアトピーだけれど
放置しているからこの状態なんじゃなくて
たくさんのたくさんの治療法を試して、
病院にも通って、アレルギー検査もして
駄目な食べものや何かもいろいろと調べて、食事療法やなにかもして
一時期なんて自然農法の食事に完全に変えてもらったり、今だって
食べものにも着るものにも石鹸にも洗剤にも気を遣ってもらって
そういう色んなことを小さいころから駆けずり回ってやってくれたのは
結局、父と母なんです

それをまったく無視しているように言わないでください
そんなふうに、努力してないみたいに言わないでください
すごくすごく頑張って面倒を見てもらって治療法を探してもらって
その果てに、今のこのわたしがいるんです
今は確かに色んな事柄のせいでまた壁にぶつかっているけれど
それでも、でも、すごくよくなってきているんです

にっこり笑いながらおなかの中でぶつぶつと
思いきり怒っていたみたいで
口に出したら怒鳴りそうな気がして
そんな怒りを黙っていられるようになったのは
おとな、に少しはなったということなのか、、、、、、
高校生の頃だったら間違いなく思いきり睨みつけていたと思い
それがいいことか悪いことかわたしにはよくわからなかった


アトピーは目に見える病気で、皮膚病で、
たしかに状態の悪いときはとてもひどくて
かわいそう、と思うだろう
だけど

お買い物に出かけた日、わたしは
久しぶりに首のしつこかった出血がなくなって
襟のないワンピースを着てうれしかったのにな

確かに蛍光灯で見た鏡の中のわたしの顔は
赤くて、湿疹でぽろぽろ、していたし、
お化粧だって、していなかったけれど

でも、この間までできなかった口紅をして
新しい色が欲しいねなんて
そんな話まで、できていたのにな



……目に見えるだけのことで、かわいそう、なんか決めるのは
それはあんまり、素敵なことじゃない気のしている、このごろです



10月6日、深夜 真火



2003年10月03日(金) お日さまを見ていない

急速に調子がわるくなった
よくなっていくときはゆっくりなのに
悪くなっていくときはどうして早いの?


これはいつも思う疑問

ただ今回はアトピーではなくてアリスの穴に落っこちたほうで
そうして悪い考えにひっぱられていくほうだ
そういうときに限って昔に処方されていたおくすりを
ごっそり発見してしまったりして、
泣いていいのか笑っていいのかわからなくなってしまう

それで、結局、無表情でいる

無表情
それがとても多いような気がするんです
なんとなく「落ちてきた」と思うとき
感情が顔からすべりおちて心からもすべりおちて
さらさらさらさら
風景が目の前を流れていくだけみたいに

麻痺しているみたいな時間がずっと続いていくような1日

なぜか、起きていられなくて
なんとか、っていう朝にだけ飲む「覚醒作用のある」おくすりを
もらってちゃんと飲んでいるのにも関わらず、とつぜんなぜか
起きていられなくておふとんにぱったり、気がついたら夕方

お日さまを見ていないなあ
よくないなあ
と、ぼんやり思うのだけど
夕焼けにも足らないくらいのひかりしか
空には残っていなかった

彼岸花、きっときれいだったのに
起きていられなくて勿体無かったな
金木犀のなかでそう思う
ひかりがたりなくて写真が撮れないことに
かすかにまた、穴の深さが深まった気がした

落ち込んじゃいけない

強迫観念に駆られているようにお皿を片付け流しを片付け
ひえた洗濯物を取り込んで郵便受けをのぞき新聞と郵便物を
ひっぱりだして台所のテーブルの上に、かさねる
心臓がどきどきしていて不安は
包丁は横目で見るようにします

そうしてなぜか、しゃべれなくて
口がうまく動かなくてどもるのと
単語がぜんぜん浮かんでこないの
さらにはなぜか、食べられなくなった
流動食みたいなものとか水気の多いものとか果物とか
そんなものなら口に入るけれど、お米とかちゃんとしたごはん、
お肉にお魚、そういうものが、なぜか
食べるものの量が半分に減りました、そんな感じだ

おなかがすいたという感覚を忘れてしまったみたい、どうしてか知れないけれど


きれいに高い高い秋の空とあかるいお日さまを
あびられる生活を保ちたいな取り戻したいなと
思って、いて
思っているだけ

強迫的な感覚に襲われながらでも何かすることができるのだから
わたしの状態なんてまだまだよいほうなんだと言い聞かせつつ
人との約束を守れないわたしになってしまっているから
急かされるとすぐに泣き出してばらばらになってしまうから

なにかがおかしいよって
感じているんだけれど
なにかがわからない


お守りのことを忘れないように
自分をうしなわないように
夜でもいい
しっかりと生きよう

毎日、お日さまを見られるようになるそのときまで
ちゃんと行こう



10月3日、夜半 真火



2003年10月01日(水) アリスの穴に

秋晴れの空に騙されてしまった
アリスの穴に落ちてしまった
わたしはいろいろなものを見る
でもそれでいて闇の中をどんどんどんどん
落下していくのを止められないのだった

日記を書かなかったしばらく
日記をかけなかったしばらく
オークションに手を出していくつか落札してお金を使っちゃったりして
おかしな熱に浮かされているということなんだろうと思いながら
何か小さなものが手に入ることが元気のもとになるならいいと思っていたのに
くるりひるがえって
グサリと自分を突き刺していることに変わってしまいそうな気配を感じて
ぶるぶる震えている

それはこんなにおかねつかってしまったどうしようという恐怖

自分で自分についていけなくて
がたがたしていました
がたがたしています

これからがたがたしながら暮らしていくような予感がします
アリスの穴の中をわたしは今日の昼にのぞきこんでしまって
いま、ゆるやかにその中に落ち込んでいっているところらしく

わかっていても
止められないんだね


10月になりました
金木犀が
香っているそうです



10月1日、午前1時 真火


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真火 [MAIL]

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