白い原稿用紙

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2004年06月25日(金) 業界トリビアその他いろいろ

いつまでたっても
気持ちよく出来上がらないネームに
いつもと違う事をしてみたわ。

きちんとプロットを文章にしてたててみたのん。。。

あたくしはふだん
「プロット」の段階をすっとばすのよ。

普通 漫画を描く順序として
プロット→ネーム→下描き→ペン入れ→仕上げ
と進んで行くわけだけど、
人によって微妙にやりかたは違うのよね。

あたくしは
きちんとプロットをたてると崩壊する
というジンクスがあるのよ。

文章でプロットをたてると
漫画と言う形態では表現しにくい
余計な情報をだらだらいれてしまって
それをどう表現していいのかわからなくなって
崩壊しちゃうのよ〜。

気持ちの奥深い所を語りたい時
文章という表現法法がとってもうらやましいと思うわ。
小説が書ける人達はすごいわ。
……と文章が書けないあたくしは思うのであった。

そしてあたくしの場合
漫画で気持ちの奥深い所を表現したいと思った時
それは
読んで下さる方の読解力に
かなり頼る事になるわけなのよ〜ん。

そうねえ たとえば。

「彼は 去って行く恋人の後ろ姿を見送りながら
奇妙な気持ちを味わっていた。
自分から言い出した別れなのに
恋人が その要求を受け入れた事は
彼に不思議な屈辱感を感じさせたのだった。
それは彼の中で 見当違いの復讐心になって育つ事になる。」

……なんていう
複雑な気持ちを描こうとする時にも
あたくしは たいていの場合
モノローグもかぶせずに
ぽ〜んと 「彼」のアップひとつを
放り出しちゃうわけなのね。
そのアップで彼が何を考えていたのかは
読者ちゃんが
読み取ってくれなくちゃいけないのよ。

なんか どうもすみません。
苦労をおかけして。

とか 謙虚に頭を下げるのもキャラが違うから
「御免遊ばせ、
でも頑張って読んで下さってねおほほほほほ」
とか言ってみる方がいいかしら。

いえ、
そんな物言いを選んで遊んでる場合じゃぜんぜんないのよっ。

いつもは御法度の「プロット」を
思いッきり立てちゃったあたくしは
案の定
多すぎる情報量に どこまで切り落とすべきか
今 右往左往しちゃっていたりするわ。

ところで 今進めているこの吸血鬼ものは
同人誌ですでに32ページ描いて
発表したものの続きだったんだけれども、
話を全部書き出してみたら
冒頭の32ページのキレが悪すぎるわ。
もともと同人でつれづれなるままに描きつづけようと
完結までに少なくとも
コミックスにして3〜5册分ほどを想定していたお話。
それを今回 ページ数は175ページしか無いんだから
もっとタイトにしないと。

確か5〜6年前に
商業誌のお仕事の合間に
足掛け2年かけてコツコツ描いた32ページなのよ。
今描きたいニュアンスの絵とも違って来てるし。

やっぱりここは
その冒頭の32ページも描きなおしたい、と
編集さんに告げてみたわ。

その担当さんは明るい声でころころと
よく笑う楽しい方なんだけど。
電話の向こうで
「それはもちろん 楽しみですけど
とりマイアさん それって、
自分で自分の首を絞めてるような……ころころころ」

そうね
この決断はあらゆる意味で自分の首を絞めるのよ〜。

まず締め切りまでに32ページを余分に描くか描かないかでは
ものすごい労力の違いがあるという事。

それから これは出版界の内部事情で
コミックスの描き下ろしというのは
まずほとんど 原稿料が出ないと言う事。
(余計な業界知識コーナー)

通常のコミックスは
雑誌に載ったものをまとめて出すわけで
雑誌に載った時の原稿料で 
漫画家は画材を買ったり、アシちゃんを雇ったりという
必要経費を賄うのよ。
たいていは それだけでは と〜っても生活が苦しいのん。

コミックスが出て 印税が入って
やっと人並みの収入になって一息つけるわけなのね。

そしてコミックスも雑誌の載ったものをまとめるといっても
ページ数が足りない、あるいはサービス部分の描き下ろし漫画
カラーの表紙や裏表紙 口絵なんかの描き下ろし部分には
いっさい原稿料は出ないのが普通なのよ。

その印税も
ものすごい部数の作家なら ものすごい額だけど
ごく一般の一番多いランクの作家では
まあ、小さな会社のボーナスくらい?
それでも世間にボーナスが出ない会社が少なくないように
コミックスの出ない漫画家はぜんぜん 珍しくないのよ。
出るだけありがたいものなのん。

漫画は とっても手間と時間がかかるから
ボ−イズなら 
年2册出れば順調と言えるんじゃないかしら。

全ページ描き下ろしのコミックスが
どういう事かと言えば
お給料無しで ボーナスの額だけで暮らすと言う事。

ものすごく運がいい場合
描き下ろし分にも原稿料が出る事があるようだけど
ごくマレだし、あたくしは出会った事がないわ、
そこまでおいしい話には(^^;)

それでも 
描き下ろしのコミックスをやろうという
漫画家の理由は 人それぞれだと思うわ。

あたくしの場合、話は簡単で

  描きたいから。
  そして あたくしが描きたいものは
  気楽に雑誌で連載させてと言えるほど
  一般受けするものではないから

今回の描き下ろしも
あたくしの方からお願いしたわけなのよ。
原稿料が出ない 描き下ろしのコミックスの話を
作家に持ち込むのは
編集さんにも 遠慮があるみたいなのよ。

けれど、
その編集さんの弱味につけこんで
あたくしのようなコずるい漫画描きは
雑誌では 絶対やらせてもらえないような
どマイナーなお話を描きたがるわけなのよね〜。

それでもあんまり無茶やると
次の機会はないですけど(^^;)

このプロットを
175ページに押し込める作業を
月曜日までにやらないと。
それではみなさま また来週〜〜〜。


2004年06月19日(土) キーワードは『削る』

ネームにつまって
逃避でネットに逃げこむ日々。

ってそれじゃ困るっつ〜のに
いまいち波が来ない時と言うのがあるのよ〜〜。

なにか資料とか参考サイトがないかと
ネットを巡っていてふと。。。

わりと最近
キッズgooサーチという
良い子たちのための検索エンジンを知ったのだけれど、
別に用もないので行ってみたりはしなかったわ。
今までは。
あたくし良い子じゃないし。

でも人間って 何かに行き詰まると
わけのわからないことをしてみたくなるもので
つい出来心で
このキッズgooに自分の名前を放り込んでみたのよ。

いやもう結果は惨澹たるものだったわ。
予想はしてたけど。

まず検索結果は

(このページは、キッズgooではひょうじしていません。)

のオンパレード。
たぶんあたくしのサイトも
このコメントの中のどれかにあるのね。

そしてちゃんとタイトルが出ている
数少ないページに飛ぼうとすると

「ごめんね。ページがひょうじできませんでした。」

のメッセージが。

良い子のキッズgooのフィルタになにがひっかかるのか、
もしや
あたくしの名前そのものがひっかかってるんじゃないわよね。

いえ でも見事な御判断だわキッズgoo。
まさか係の方が手動でヤバ気なページを省いてるとは思えないけど
どういう基準ではじいているのかしら。
禁句キーワードとかかしら。

画像に関しては実際に確認するしかないわよね。
現に
なんかとってもエロい美少女本の紹介ページとかは
しかと表示されちゃったりしていたのよ。
それには説明文に
これが禁句ワードではないのかと驚く単語も山ほど。
それが表示されるのに
なぜにあたくしのページは省かれるのかしらん。
エロよりまずいナニが
あたくしの名前とセットになっているのかしらん。

キッズgooにはじかれる事に異存があるんじゃないのよ
何がはじかれるのか ただただ好奇心で知りたいのよ〜。

などと知りたがっても
さすがにそれをネットで検索までして調べようとは
今はしないのよ〜。

だってネームが出来ないから
それどころじゃないんですものっっ。
コミックス一冊分でもページが足りないとは
いったいどんなプロットをたててしまったんでしょう
あたくし。

ドコを削るか
ドレを削るかが勝負なの。
キッズgooが何をはじいてるのか知りたいのと
ちょっと関連がなくもないわよね。
気持ちとして

ぜんぜんないかしら。関連。


2004年06月16日(水) コミックス御礼

びわは小さくて とっても少なかったけど
ものすごく甘かったですわ。
鳥がつついて開いたと思しき穴もあったけど
気にせず洗って食べちゃったわ。

以上 誰も待っていなかったと思われる御報告まで。


新しいコミックスも無事発売になり
お買い上げ下さった皆様には
心から感謝の舞いを。
舞われても困るでしょうけど
他にどうやって
感謝を表していいのやらわかんないので一応。

なにしろ
あたくし程度の立場の作家では
毎回 一冊一冊が綱渡り。
この本が(ある程度)売れてくれれば
また次の本を出して頂ける可能性が生まれます。
それも口開けて待っていても
棚からボタモチなんて そうそう落ちては来ませんわ。
ボタモチがありそうな所には
お口を開けて 飛び込んで行かないとッ。
でも空振りすると
上の歯と下の歯がぶつかってとっても痛いのよ。
でもその痛さを恐れていては
ぼたもちは手に入らないの。

そうやってなんとか生き延びている身分でございますゆえ、
もちろん読んで頂けるだけで嬉しいのに
その上買って下さる読者ちゃんにおかれましては
あたくしとしても
舞いのひとつぐらい 舞って見せなければと。
誰も見たくないでしょうけれども。
いちおう裸踊りはやめときますわね。


以前は このような情けない実情を
サイトとか あとがきとかで書く事は 
みっともないコトよ。と 控えておりました。

読者ちゃんに伝える事は感謝だけで充分。
作家や出版社側の裏事情など余計な事 と。
武士は食わねど 高楊枝。

けれども こうやって 
包み隠さずドシドシ書いちゃおうと思ったのは
原稿流出事件の時
あまりに 漫画業界の実情と言うのが知られていないため
原稿流出の問題の大きさを
うまく理解して頂けなかったなあ と
思う所があったわけなのよ、お嬢様。

世に出ている 売れっ子漫画家の華やかさと
売れていない漫画家の悲惨さ。

その両極端しか世の中には認識がないものなのねと。

その中間 ってのが一番多いんだけども、
それはなかなか理解しにくいのよね。
だってある意味
普通の労働者なんですもの。
とくに目立つ事も変わった事もなく
バリバリ稼いで楽してるわけでもないのよ〜。

というわけで
多少みっともなくても恥ずかしくても
あたくしたちの業界で当たり前のことが
読者ちゃん達にとっては
ちょっとしたトリビアになることも
あるかもしれないということで。

聞き苦しい愚痴などにはならぬ程度に
嬉しい事も
いやんな事も
書いちゃおうかなと思っている次第なのよ。

そして怖い事にね〜
いつまでそうやって漫画業界のトリビアとか言って
書いていられるのかも わからない世界。
だって
お仕事がとぎれたら ただのプー。
そこで犯罪のひとつも犯しちゃった日には
「自称 漫画家」と言われる事間違いなしっ。
良くても「元 漫画家」

が。
がんばんなきゃっっ。

漫画を描く事だけなら 一人でも完結するけど
読んでもらって
漫画を描く事を仕事として行くのは
一人じゃどうにもならないのよ〜〜ん。

そういうわけで
出版社と読者ちゃんに再度敬礼して
今日はこれからお仕事〜〜ん。


2004年06月09日(水) 移り行く季節

尺八の音色で目を覚ます肌寒い夕方。
なんか とっても物悲しいんですけど
どうにかして下さい。

このあたりはいろんな音が聞こえて来るの。

ピアノはもちろん
幼稚園の園児達の朝とかお昼とかの歌。
バイオリン、
夕方の時報の音楽に合わせて
共に朗々と歌う犬の声。

この犬はすごいわよ。
ここに引越して来た時から
「夕焼けこやけ」の音楽と共に遠ぼえしていたんだけど、
それがアナタ
一年過ぎ、二年過ぎ
三年目になる頃には 音程が音楽に合って来たのよ。

石の上にも三年とはよく言ったものよねえ。
しみじみのどかな環境だこと。


そんな中
ちょびをはじめ、
うちの猫達を可愛がってくれていた御近所さんが
引越して行ってしまわれたわ。
しょっちゅう その家に出かけていた猫達が
うろたえることでしょうね。
家族ぐるみで一番仲良しだった御近所さんだけに
あたくしもがっかり〜〜。

借家の宿命とは言え 寂しいわ。
大家さんの都合にふりまわされるその宿命に
その御家族もイヤンになって
お家を買って出て行ってしまわれたの。
近所で探したらしいんだけど
結局一駅離れてしまったので
さすがに 我が家の猫達のいける範囲ではなさそうね。

御近所が3件も空家になってしまったわ。
その3件とも
猫を可愛がってくれる人達だったので
寂しい事この上ないったらありゃしない。

かくなる上は 友達に
「売りに出ている御近所の家を買って!」
「買って 買って 買って!!」
と地面に寝転がってダダをこねているんだけど、
なかなか買ってくれないわね。
すでにお家を持っているせいかしら。
別荘だと言い張ってもいいくらいにお安いのに。

まだ持っていない友達もいるけど
女性のひとりぐらしに一軒家って厭がられるのよねえ。
マンションの方が安全だから と。
でもこのあたりの御近所付き合いなら
マンションなんかよりずっと安全なのに〜。
考えようによっては あまりに密で鬱陶しいけども。

近所に越して来てくれれば
最後は看取ってあげられると言ってるのに。
もっとも同じ歳だから 
看取られるかもしれないけども。


看取ると言えば。。。

今は描いてないけど、以前描いていて
今でも送って来てくれるミステリー漫画誌が
今月で休刊になったわ。
長い事ごぶさたしていたので
編集人が変わった事さえ認識してなかったんだけど
それでも一度はお世話になった本がつぶれるのは
本当にせつないものだわ。

漫画業界は どうなっていくのかしら。
このところ 景気のいい話を聞かないん。
大売れしている頂点の人達をのぞいて
けっこうな漫画家たちが 
明日を憂いているんじゃないかしらん。

なんか物悲しい展開の日記になってるから
最後に楽し気な話題をひとつ。

頼んでいた脚立がトドいたわっ。

これでお庭の、
今 まさに実をつけてるびわを採って食べるのよっ。
でも
なってる実をもいで食べると言う経験があまりないから
どのタイミングでもいだらいいのかわからないの〜〜。

そうこうしてるうちに
鳥にとっていかれそう。

負けるもんかっ。


2004年06月08日(火) 数々の油断

お尻をすりむいたわっ。

痛くてしばらく座る事もできなくて難儀したわ。
ようやく治りかけて来たけど。

なんですりむいたかって
このところちょっと食べ過ぎもあって
とっても太って来たので
またじたばたと腹筋をしてたからなんだけど。

いったいどういう腹筋運動をすれば
お尻をすりむく事ができるのかと聞かれたけど
ふつう すりむかないものなのかしら。

あたくしはちょっと人より背骨が
長いか短いかするらしいのよ。

人間は太古の昔
確かにシッポがついていたのね、という位置に
シッポのなごりがはっきりと。

そのシッポのなごりが
普通に座っていると普通に地面にあたって
けっこう痛いのよ。
固い所に長く座っていると
その部分が擦り切れるというわけなのよ。

これが 身近では
あたくしだけの身体構造だと知るまでに
ずいぶん時間がかかったわ。
生まれて20年以上。

そんなわけで
畳の上でマットも敷かずに腹筋してたら
1日で擦り切れて
そのあと 一週間ほども難儀したと言うわけよ。

なにしろタバコをやめたのと
体重計を買っていないのとのダブルパンチで
どうも際限なくウエストが増大してるみたいなのん。

なんで今までそれに気がつかなかったかというとね、
前面から鏡に映してるだけじゃわからないかったの。
お肉は 横につかずに、前後についていたのよっっ。
横を向いて鏡を見たら
信じられないくらい自分がブ厚かったのよおおおお

おのれ たばかったわね お肉!
食べてる割にはあまり太らないじゃないとか
思いきり油断してたわよっ。

いや、どうせ人間
年月を重ねると 重力にしたがって
いろんなものが垂れたりたるんだりするものだけど、
やっぱり最低限 
自分を嫌いにならないだけの体型は
維持していたいものね。

なんていうかもう すごいわよね。
重力とか引力とかって。

寄せて上げるブラ とかあるけど
あたくしなんざ 上げたくても寄せられないのよ。
ちいさくて。
だからこそ 垂れるお肉もないと油断してたのに
寄せて上げられないくせに
垂れる時は一人前なのよっっっ。

ゆるせないっ!!

ニュートンなんかキライッ!
八つ当たりだけど。

とにかく梅雨にも入り
暑いんだか肌寒いんだかわからない
今日この頃だけど
確実に薄着になっていく季節にそなえて
ちょっくら また 頑張って腹筋しないと。

こんどはちゃんとマットを敷くわ〜〜〜〜。

ちょっとした油断が命取りにならないように
いろいろ気をつけないと。


2004年06月01日(火) 目の前の生原稿

いきなり暑くなりました。

想像していた事ではあるのだけれど、
2階の部屋に作り付けた
145センチの高さのロフトベッドは
暑いわっっっ

やっぱりね〜。
そうだと思ったのよ〜〜。

まあ、それはいいわ。
部屋にはエアコンがついてるんだし。

で、各種の事情があって
旦那様のお部屋だけエアコンの設置が遅れてるのん。
各種の事情と言うのは
室外機を屋根の上につける予定だったので
屋根の工事が終わらないとつけられなかったっていうのと
屋根の工事が終わったらお金がなくなったとか、
まあそんな細かい事はいいわ。
とにかく暑くなったから 早急に買いにでかけたわ。

結論から言うと
付ける予定のところのサイズを測り忘れて
今日は買えなかったんだけど。

ついでに
ユザワヤになんか寄って
足りなくなったお人形用品の調達
さらについでに
ちょっと本屋さんに寄ると そこには
素晴らしい宝物があったのよ〜〜〜〜。

藤子不二雄先生の生原稿が
ウインドウに飾ってあったのよ。
どれも1ページ〜数ページで、カラー原稿もあったわ。

ドラえもん
エスパー魔美
パーマン

そして特筆すべき原稿は
『ローマ便り』の一枚が!!!

あたくしも著書「漫画道」でしか
見た事のないシロモノで
まだ
おふたりが故郷から出て来て
あの伝説のトキワ荘にいらした頃に描かれたはずの原稿だと
記憶しているんだけど。
そして 漫画道での描写では
藤子・F・不二雄先生が執筆されたものと書かれていたわ。
もう何十年前のものなのか
気が遠くなるので計算したくないくらい
古い時代のもので(漫画の歴史からしたら、の話よ)
ほんと〜〜〜に貴重なものを見せて頂いたものだわ。

時がたつと 漫画の生原稿と言うものは 普通
トーンが剥がれてノリも溶け 
たいへんな状態になるのだけれど
このころはまだトーンというものがなかったので
アミの部分は青鉛筆での指定。
原稿には よぶんなノリなどついていなくて
綺麗な状態だったわ〜〜。

そして やっぱり考えてしまう。
この原稿は誰のものなのかしらと。

いえ、とりあえず目の前のこの原稿は
書店さんが借りて来たものだと思うわ。
そういう部分的な事でなくて
やっぱり 先日閉鎖した「漫画原稿を守る会」の
活動内容を考えてしまうわけなのね。


あたくしたち、その先生のファンにとって、
漫画を愛するものにとって
それはまさしく宝物で
目の前で実物を見られるなんて 
それはラッキーな出来事だわ。

でも 
興味のない人にとってはただの紙切れ。

そもそも趣味のものとは
そういうものなのだと思うわ。
なんでも鑑定団を見ればわかるように
そのブツに価値があると考える人は
そのブツにいくらでもつぎ込むものなのよ。

漫画が単なる「シュミ」のものかどうかはともかく。

でも
金じゃない。お金じゃないのよ〜〜〜〜。

あたくしが
漫画原稿流出事件を見て望んだのは
漫画原稿というものに素晴らしい価値があるのだと
日本人ひとり残らず認めてくれというんじゃなくて
せめて
自分で描いたものぐらい
自分のものだと認めて欲しいという事だったのよ。

漫画の生原稿は特殊すぎて
美術品とも小説の原稿とも同じには考えられない。

でも自分で描いたのだから自分のもの。
原稿料は一回の掲載権の代金で
生原稿の値段じゃない。

すごくすごく簡単な事じゃないの。

と思っていたのに
ぜんぜん簡単じゃなかったみたいね。

あたくしが考えたのと同じように考える漫画家は
多くはなかったのかもしれないわ。
あたくしが望んだ事は単純すぎたのね。

もっと
もっと大きな期待を「漫画原稿を守る会」に
寄せた人もいたのね。

「漫画原稿」と
「漫画原稿が持つ権利」は別にして考えるものだと思ってたのよ。

でも
それは なかなか切り離せないものなのね。

100人いたら
100人 考え方が違う
と 学んだかも知れないわ。

これだけ違う人達を
「漫画家って人種は」と言ってしまうのも
単純すぎるお話しね。

自分のもの以外の漫画原稿を目にした時
またきっとこうして
うまくいかなかった「守る会」を思いだすんでしょうね。
ほろ苦い思いで。


でもねっっ。

やっぱり 感動なのよっっっ。

本物を見る事が出来たという感動は
掛け値無し、
目にした瞬間に襲って来るのよっ。
それが誰の「持ち物」かなんて 
その瞬間は考えもしない
ただただ 
その 作者のものだと
その力強さに感動するのよ。

とにかく 誰の持ち物であれ
その原稿が存在していてくれたことが 嬉しいのよっっっ。

これはある意味 
危険な考え方なのかも知れないけど。


そしてね
そういう文化的というほどの価値が
認めてもらえないような原稿でもね
やっぱり 描いた本人には愛しいものなのよ。

せめてその愛しい原稿を
自分で保管するなり、
破棄する権利を認めてちょうだいな、
と言いたかった。

他の漫画家の方々の原稿ならともかく
自分の原稿を
芸術だとか文化だとか言い出す気なんかさらさらないけど
でも 自分の描いたものが自分のものだとは
叫んでも許されるのじゃないかしらん。

とりあえず
あたくしは 原稿は描いた本人のものだと
思う事にしていますの。

それはそうだと思って下さる方は
ぜひ そうだと思っていて下さいましね。

漫画原稿を手にする人がみんな
そう思っていてくれれば
こんな
わけのわからない流出事件はなくなるはずだから。

思うだけかよ とか言わないのよ。
思い というものは
ものすごく強いパワーなのよ。

念力ってのもあるくらいだから。

ちょっと 違うかしら。


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