Kyoto Sanga Sketch Book
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2007年07月16日(月) |
【鳥栖戦第28節】〜亡き選手とこの今の試合 |
アレモンのための短い黙祷。 ピッチに散ったままうつむいている斉藤の顔が映り、 目を静かに閉じた田原の顔が映り。 敵味方関係なく全ての選手とサポーターが彼のための静寂を作って。
試合が始まった瞬間、 その静寂さを打ち破ってサンガサポのアレモンコールが2回響いた。 鳥肌が立った。
序盤出遅れていた京都はこの数試合、凄い勢いで得点を重ねている。 自動昇格圏2位に順位を伸ばしていた。
台風が近づいていた。 激しい雨音が聞こえるように、カメラはクリアでない映像を伝える。 レンガ色のトラックの上には雨水が川のように流れていた。 紫のポンチョやレインコートや傘。ずぶ濡れの紫のユニ。
酷いピッチ状態。パスされたボールも走らず、泥濘に留まってしまう。 選手たちが運ぶボールは、選手たちについていくことを拒み、 重く地面について取り残される。 サイドチェンジされたボールは反対側のピッチにまるで墜落。 水溜りのボールを蹴り上げた選手の足からは、水しぶきが上がる。 まったくゲームなど作れるはずがない。互いにゴールは遠い。
この天候下で苦戦していた倉貫にかえて、中払が入った。 まるでキャタピラをつけた小型高速車のように 雨の中、彼が走っていた。
ついに、ピッチ中央で斉藤が持ったボールは、 ゴールに向かって左へ走ろうとしているパウへ。 しかし泥濘に落ちたボールはパウの足に当たらない。 自分の空振りに振り返ろうとするパウ。 だが、背後から猛スピードで選手がその止まったボールを蹴った。
徳重の蹴ったボールは鋭くゴールへと吸い込まれた。
ずぶ濡れの紫のサポーターたちへと徳重が走り寄る。 試合前にアレモンに献花しただろうサポーターたちが、 アレモンを知らない彼のプレーに歓喜していた。
こうやって私達は沢山の選手達を見送り、沢山の選手たちを迎え。。 私も試合中はアレモンのことなど忘れてしまってた。 でも、それでいいかもしれない。 たぶん、また思い出すことがある。忘れ去ることなどない。
たった一人のサッカー選手の死など関係なく、サッカーは続く。 でも、日本の二つのチームのサポーターの心の隅に彼の記憶は刻まれて続ける。 私達は彼の短い人生にめぐり合えた幸運な者。忘れてはいけない。
ゴーラーに前からいる選手たちが駆け寄って祝福していた。 ずぶ濡れになった紫の旗たちが、今日もゴールとともに翻った。 京都は2位をキープしている。
京都1−0鳥栖
※2006年06月13日のスケッチ「Obrigada!アレモン!」
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