Kyoto Sanga Sketch Book
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2006年08月19日(土) 【福岡戦第18節】〜博多の夜の乱打

あんなに美しかった博多の深い緑が、闇に沈んでいく。
荘厳な存在感の山並みも消えていった。
闇に浮かび上がる電光掲示板。得点がどんどんつみかさねられていっていた。

その中で、何度となく熱気に包まれるスタジアム。
電光掲示板はアウェイゴール裏の正面、
その森の暗闇の中にまた得点されたことを知らせて浮かび上がる。

「福岡3−3京都」

双方の中盤の選手に守備の意識はない。
自分達のDFたちの大混乱は何も気にしていない。
どちらも、少し大きくボールを空間に動かせば、簡単にフリーの選手にまわせる、
こんなのはサッカーの試合ではない。

問題は…もうどちらも「今日はそれでいい」と思っている事。







久々の博多の森。ゴール裏が紫に染まる西京極もいいけど、京都から遠く離れたアウェイもいい。
はるばる自家面々に応援の場に集った人たちの、緩い、ほんとに緩い連帯感もまたいい。
各自位置を選び、いつもの西京極の姿になる。

ゴール裏で気合を入れて横断幕を張り、応援の準備をするコアな人たち。
その横でサンガグッズを持って座る穏やかなサポーター。
アウェイゴール裏側のスタンド席で、着々と紫に着替えるスタンド観戦者

稲盛名誉会長が今日もアウェイゴール裏に来ている。
柵に寄り、アウェイからのピッチを目に焼き付るように見つめて、
そしてスタンド席に引き上げていく。


今日の相手福岡は、下位に沈んでいるが、
失点に関してはJ1リーグでも非常に少ない堅守のチーム、のはずでした。

何年ぶり、代表関係から始まった福岡サポの友人と、
「いつか互いの選手がいる代表戦の海外遠征に行きたいね」と、話したり。

福岡には手島がいない。福岡にも古賀誠司がいない。
少し互いに守備に心配。



■前半

実は立ち上がりは少し福岡が攻める形に。しかし、すぐに互角になった。
京都は児玉をCBに配し三上がSBに入り、
少し三上が上がり気味の3バックに近い4バック。

中払とホベルトがやりあい、その後あちこちで小競り合いが。
負けられない試合はそんな所にも出てくるもの。
ダイシの突破も倒されパウのFK。この時間からダイシへの突破が目立ちだす。
(福岡は何かDFまで攻撃の意識が高いのか、守備に戻ってこれないよう)
福岡の攻めが始まっていたが、バロンへのボールは非常に読みやすく、守りやすい。

○9分アンドレの得点。
○29分福岡の飯尾も得点。

福岡飯尾が1人でドリブルで持ち込み、
ペナルティエリア外からシュートした。
それは彼につこうとした京都DF(児玉?)の足先に当り、
わずかに方向をかえてフワッとゴールに吸い込まれた。
膝をがくんとつく児玉の前を、福岡選手たちが抱き合い、サポをあおり、
博多の森は湧き。同点。飯尾、のコールが響く。


福岡1−京都1。

ここからこの試合のテンションは異常になった。

○41分福岡、久藤の得点

薮田からの右から4人の立てパスが続き、京都DFの寄せが甘いまま、
ホベルトから左の久藤、真直ぐ蹴ったボールはそのままゴールへ。
さっきよりスタジアムの歓声は長い。久藤も福岡サポを両手で煽る。


福岡2−1京都

○44分パウの得点

しかし、三上の中央突破が倒され、京都のFK。
数十メートルの距離、真直ぐに壁の選手たちを飛び越えた。
福岡の選手はジャンプせず。ボールはゴールバーのすぐ下すれすれに、
綺麗な白い線を描いて・・・ゴール。

沈黙する博多の森。
喜びに小さく騒ぎ出すアウェイゴール裏。


福岡2−2京都



後の記憶は、あまりのことに混乱している。
だって、福岡サポも京都サポもぬか喜びを続けるんだもの(笑)


「福岡選手が得点する度」に、博多の森のスタジアムは歓声を上げて、
スタジアムDJが叫び、ネイビー色の選手たちが抱き合い転げ回る。
「京都選手が得点する度」に博多の森は静まり、
アウェイ側の人々が小さく歓声を上げて、京都選手が転げ回る。
その繰り返し。

勝ちたい、と思う気持ちが強いと、人は本能的に「前方」に向かってしまうのかな。
馬鹿試合は後半になって、ますます馬鹿試合になる。

「今日の試合は点を取られても、ゴールを決められる自信があった」

ダイシの言葉。よって、失点はこわくない。
たぶん、福岡の選手も含め全員そう思っていたはず。
なぜなら、見ている、応援している私たちも同じことを思っていたんで。

福岡も前しか見てない。失点はこわくない。
京都の緩い守りに向かって、守備陣まで攻撃を仕掛けてくる。
そこに松田監督時代J1でも堅守を誇った福岡の姿はない。

左から走りこむ相手の藪田を放置し、ゴール前に固まるだけの京都選手たち。
そしてパウリーニョが持っても全く寄せない福岡選手たち。

サイドに張っているパウもまたフリー。
福岡はサイド攻撃のまた外側にいる相手選手には、
見えないらしい…そして京都選手も

両選手ともゴール前に引きこまない。
まだ続く。


もうそれでいいのかも。守備なんて考えるだけでめんどくさい。。それどころじゃない。



○1分福岡、藪田の得点

中村が左からドリブル。
それを見た京都選手はどういう訳だかゴール前に二、三人とも固まり、
左から走りこんだ藪田にはだ〜れもついていない。
飛び上がるネイビーのユニ。叫ぶスタジオDJ。


福岡3−2京都

○2分パウの得点

右加藤からパウリーニョに軽く横パス。
福岡選手の寄せはなぜかワンテンポ遅く、そのままシュート。
叫ぶ京都サポ。少ないサポーターの声の中、太鼓の音が響く。


福岡3−3京都。

○13分中払の得点

中払が中央からシュート。
福岡選手のマークが微妙にずれた。京都の歓声。


福岡3−4京都


まだまだ。得点できる。



パウリーニョから林への交代。アンドレも松田と交代。

外国人がいなくなった京都は攻め手を欠き、次第に押される。
平井のセーブが続く。唯一弱気になった時間帯。

○35分福岡、城後の得点

城後がガッツポーズをして芝の上を転げ回る。

京都4−4福岡。


でも、まだ9分もある。
双方の攻めが性懲りもなく始まる。



○38分加藤大志の得点

中央に自身で右から切れ込むダイシ。福岡DFはラインを上げず釣られる。
そのままミドルシュート。ボールはバーに当りそのまま吸い込まれた。
ダイシと林が抱き合う。スライディングしたまま倒れこむ福岡DF。


京都5−4福岡



残り7分。ようやく京都は攻撃をやめた。
米田から石井に交代。あとは逃げ切るだけ。
時間を使うだけのような怠惰な時間を費やそうとする。もう福岡にボールは渡さない。必死。

福岡の焦りが見えてきた。
有光のスローインからホベルトへ。アレックスへのボールはラインを割った。
一体何点入ってたのか。もう思い出すこともできない。





終了の笛がなった。
倒れこみ、うな垂れる福岡の選手。
互いに抱き合う京都の選手。
観戦者でさえ、ドッと疲れでへたり込んでしまう。
福岡側はため息とともに。京都側は希望のコールとともに。



<監督試合後のコメント>

福岡、川勝監督
「選手たちは最後まであきらめずに戦ってくれているので、もう一度修正していきたいと思います。

京都、柱谷監督
「ただ今日は本当に選手たちがあきらめないで最後までボールに向かってプレーしてくれたことが、この結果につながったと思います。
素直に選手たちをほめてあげたいと思います。







夜も更けた中州の屋台へ。疲労と安堵で少し抜け殻になったような身体。
焼酎とともに出された天婦羅。もの凄く旨い。深い皺を刻んで「当たり前」という笑顔をする。
年老いた店長に聞くと、この店にはプロ野球選手や監督も常連だとか。
「アビスパとの試合を観に来たんですよ」
だが店長は全く反応しない。
この街ではプロスポーツといえば野球、そしてホークスなのかも。少しあきらめた。

しかし、勘定をするとき、息子さんがポソっと言った。
「アビスパねぇ、点が取れなかったでしょ…守備は悪くないんだけどね」
「いえ、凄く取りましたよ」
「えーっ、だったら勝った?」

双方の得点なんて・・・言えないよね。サッカーファンとしては。

真夏の日。博多の夜の馬鹿試合。



京都5−4福岡



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