Kyoto Sanga Sketch Book
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2004年03月13日(土) |
【大宮戦第1節】〜東アジアの超2星。2トップの発進 |
例年はその年の最終節あたりを「pick up」にするんですが、 この試合があまりにその年の出足を象徴していたので。 このチームの最後の姿は「第43節仙台戦」で。 http://www.enpitu.ne.jp/usr8/bin/day?id=86149&pg=20050304。
2度目のJ2リーグの開始。しかしこの年のJ2の話題の中心は京都だった。 なぜなら、京都は三人のA代表と一人の韓国代表の残留、獲得に成功したから。 特に、サポーターやクラブの懇願に応じて京都に留まった日本代表の黒部。 母国でのスランプ時代からオファーをかけていたと伝えられる韓国代表のチェ。 共に昨年のオールスター投票でFW部門東西で最高の票を集めた二人が、 前線にいることになった。
しかし初戦、組織化されないまま昨年の記憶のまま暴走するJ1的スピードは、 大宮の組織の前に空回りしていた。
終了後。 ゴール裏は興奮と失望、期待が混じった拍手がブーイングを押しのけた。 サポーターからの言葉に、何か言い返そうとするチェ・ヨンス。 ピリピリしているヨンスの高い肩に、そっと手をやる黒部。
アジア最強に近いと噂される2トップが肩を寄せ合い歩き始める。 存在感のある二人の敗者の姿をしゃがみ込んで待つカメラマン。
「格上に”向かって行く”ことでその存在意義を示していたチームが、 これから一年間こんな風に”向かって来られる”ことに耐えられるのかなぁ。」
この試合、実はこのFW二人はかなり被っていた。 それでも彼等二人が互いにポストになり合い、 前線まで繋がらないボールを取りに下がって、どんどん枠にシュートを打つ姿、 前線でチームを引っ張る姿は、 男じゃなくても「男惚れ」したくなったと言うか。そんなニュアンス。
実は試合前、公園内の道まで聞こえるゴール裏のチャントは去年より大きかった。 入場して驚いた。 ゴール裏の紫のサポーターと空に舞う紫の旗の群れは、 どういう訳だか、J1の頃より勢いを増してる。 確かに降格で半減したトラック上のスポンサー看板は寂しさいっぱい。 でもピッチ上には、松井こそ五輪で不在だったが、 「今年1年代表を辞退する」とまで言ったチェ・ヨンスを始め、 ”J2では反則”と他チームから妬まれる選手達がいた。
そして…ゴール裏最前列には、 日の丸を模した大きな2本の旗が白くまぶしく翻っていた。 「黒部」「松井」の黒い文字が青空に誇らしげに鮮やかに映える。 代表を擁するクラブの印。彼らはサンガが育てた。
何かすごく晴れがましい。前の降格とは何もかも違う。
五輪で抜けた松井の代わりに、数年ぶりに熱田がトップ下に入った。 右に森勇介、左に中払。斉藤とビジュのボランチ。 そして3バックは手島を中心に悟と萩村。GKは平井。 (このチームではベンチ入りも大変そう))
今年から新設されたスタンディングシートは上段下段に分れ、 紫色のサポーター達が大勢立っていました。 (コールリーダーの青年も4人に増えていた)。 残留選手、加入選手を見て意外と感激ってことはなかったなぁ。 もう感動は昔のこと。 J1からの続きって感じで、自然に受け止められた(幸せなこと)。
こうして「日本一不幸で日本一幸福なチーム」は、ホームで初戦を迎えた。
■ 前半戦 ■
開始早々、もう黒部はチェ・ヨンス達と抱き合っていた。 黒部のシュートは当然のようにネットを揺らし、 ゴール裏の大旗が一斉に空に舞い上がり、 黒部の得点と知らされると、又大騒ぎになった。早くも先制!
DF手島からのロングボールにチェが熱田へ、 熱田からのスルーパスに反応した黒部。 (この調子なら10点はいける?ちょっと浮かれてしまったのは確か)
しかし、追いつかれたのはそのたった2分後。 悟のクリアミスは敵への絶好のパスになってしまった。 一瞬静まり返るスタジアム。(1−1)
その後は…
手島、右へのカバーリング、
また手島、左へのカバーリング
そして又…
どうしてCBのボールタッチが 一番多いんだよ!!!(--;)
キャンプ後再び懸念されていた守備の乱れは、思った以上に酷かった。 3バック相互の意思疎通のみならず、サイドの中途半端な位置取りも、DF達を混乱させていた。 トップ下熱田は前線とは上手く絡んでいるが…ど〜せ彼は前しか見てないし。 彼は後ろでダブルボランチはあっぷあっぷしているのに気がついてない。 ボランチたちは守備に手一杯で攻撃なんて全く組み立てていない。 サイド選手からのクロスも不正確。 試合前の不安が、一気に噴出してきた。
少ない決定機。黒部の正確な足が枠内に蹴り付ける。 ヨンスの圧倒的な存在感もスタジアム中を惹きつけ始めていた。 ボールが前線まで繋がらない中、兄貴は下がってボールを取りに来る。 (この時間は黒部を立てて、自身は配球側に立っていた)
でも、それはまだ兄貴が「弟たちよ、まぁやってごらん」と余裕をこいていた時間だった。
■ 後半戦 ■
少し修正された。それだけでなくヨンスが自身でゴールを狙いだした。 前半熱田や中払に蹴らせていいたFKも、もう”兄貴自身”で蹴る。 (ボールを奪われ、ヨンスの後を未練がましくついていく空気を読まない熱田に冷や汗)
代わって今度は黒部がヨンス兄さんを立てて黒子役に回る。
ヨンス兄さんは本気になっていた。
後半早々、兄さんは中払からのクロスにダイビングヘッド。 ゴール裏の真下で揺れたゴールネットに歓声があがった! 逆転のゴールに観客は立ち上がる。 再度、紫の旗の群が大空に翻る。京都の2トップはやはり違う!2−1!
でも、兄さんはまだやる気だし(笑)。
サポーター達に向かって両手を下から上に上げて煽る!
FKを蹴る!
豪速球は、サポーターの目の前で力強く曲がった。 キーパーがかろうじて反応。また溜息と歓声がスタジアムに湧く。
後ろの観戦初心者らしき人が、しきりに「凄い凄い!」を連発していました。 (ヨンス見るだけで金を払う価値があったと思う)
他の選手に関しても、京都の「個々」はヒートアップしてきた。 3人がかりのマークを振り切る黒部、熱田の切れのいいパス。 中払のドリブルでの切り替えし、勇介のスピード突破やボールもぎ取り(!)。 そして、後半の萩村の目を見張るカバーリングと攻撃参加。
しかし彼らの「点」のような単発的な動き、連携不足は、 相変わらずダブルボランチに能力以上の守備の負担を強いている。 新しいチームの形が見えない。 (それを寸断していたのは大宮の組織的な守備なんだけど前線の動き一つに後ろまで反応できるシステマティックさが羨ましい)
もう、愚痴は言わない
だんだんヨンス兄さんが苛ついて来る。彼はJ2を知らない。 久々に大宮、ダニエルの顔を見て思い出したんだよなぁ。 このリーグでは”ねちっこい”体にベタベタ纏わりつくマークがお決まり。 (ファウルはうちの中払や勇介のようにスッキリバッサリ男らしくやれよ←違う…)
思わず主審にあたるヨンス。駆けつけてなだめるJ2では先輩の黒部。
後半30分。コーナーキックから失点。(2-2)
後半42分にも失点。(2-3)
終了のホイッスルが聞こえた。
失点は全て守備のミスから。 観客はまだ期待をもった目で彼等の後姿を見ていた。
チェ・ヨンスと黒部光昭。 敗れたアジア最強レベルの2トップ。 何か語り合い続けながらだんだん遠くなる二人の後姿に、目が離せなかった。
二人のオーラだけが印象に残った試合でした。
2-3で敗れる 10位からの超J2チーム(と言われたチーム)の発進
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