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己に理解できることのみを愛していくことは出来ないのだろうけれど、どうしても受け入れられないものはある。
その声に犯されてみたいと思った。
2002年05月30日(木) |
画一化された個性の為に |
傷つけるだけの言葉ならいっそ無いほうがいい。
限りあるものを傷つけていくことが時々耐えられなくなる。それらよりも己の方が価値があると言い切るだけの力が無いから。
痛みの中で目覚めたい。
氷のような冷たいものが硝子の破片のように突き刺さっている。胸の奥、腹の奥、心の内。冷たい破片が溶けずに残っている。 目覚めることのできないカイ。雪の女王に囚われた愚かで哀れな魂魄。
甘い甘い砂糖のような、偽りの愛で心溶かして。
あしながおじさん/ジーン・ウェブスター/坪井郁美 訳/福音館書店 1970 264p. 21×17cm ISBN4-8340-0241-1 DADDY-LONG-LEGS/Jean Webster/1912
月並みに、泣きたい気分になるから。
声に出すことで貴女が癒されるならそれでいい。それだけでいい。貴女が泣くのを見るよりは、貴女を鳴かせたいから。
銀の檻を溶かして薬屋探偵妖綺談/高里椎名/講談社ノベルス 1999 NDC913 278p 18cm ISBN4-06-182059-1
淋しいのと悲しいのは違うのだろうか。ただ言葉の違いだけなのだろうか。理解しない言葉を話してはいけないというのなら、それならば言葉を語ることなど無意味ではないか。
他人を傷つけたいと願うたびに、己の中が毀れていくような気がする。
何もかも燃やしてくれればいい。
甘い甘い菓子に癒されるような気がする。甘い甘い口唇に癒されたいと思う。 貴方を無理矢理にでも己のものに出来るならどれほどに幸せだろうか。 狂い咲きの薔薇。 同じくらいの後悔をその身に秘めて、それでも貴方が欲しい。
閉じ込められてはいない。何処へでも自由に行けるだろう。己の作った檻の中に閉じこもっている。ただ自分が何処へも行きたくないだけ。 怖いから。恐ろしいから。外界は酷く寒くて冷たくて、己を守る盾も無く、唯独り歩いていかなければならない。
あなたを支えているふりをして、本当は支えられているのだから。
沈んでいくその浮遊感。 抱きとめてくれる腕が欲しい。
酔っているような感覚で眠り続ける。宙に浮いているような、深く沈んでいくような不思議な感覚。
目覚めて、貴方が居て、もう他に何もいらないと思えた。貴方を幸福にするのが己であればいいのに。
三千世界の鴉を殺し6/津守時生/新書館ウィングス文庫 イラスト 古張乃莉 2002 ISBN4-403-54050-3
感情なんか必要ない身体の繫がりがほしい。
毀れたいとは思わない。 その言葉に憧れを感じるけれども、毀れたいとは思わない。
どうして重いのだろう。こんなにもこんなにも苦しくて辛い。軋む身体も、歪む精神も、耐えられない。重くて重くて仕方が無い。 威圧感、圧迫感。 無意識の圧力。重圧。
耐えられないのは己の弱さか。 而して何故耐えねばならないのか。
嘲笑うか、己が弱さを。 嘲笑うならその前に矛盾に気付くがいい。その場限りの付き合いでしかない、それなのに将来を語る。その矛盾に気が付くがいい。 論破する為の言葉も技術も持ち合わせてはいない。 感情に走れば己が敗北を味わうのみ、そしてその感情に己自身が潰される。
愛しいと想う気持ちも、すべては貴方の作り出した幻想だろうか。
定まった心が欲しいと思った。何にも揺るがされない意志が欲しいと思った。痛みも、苦しみも、辛さも、何も感じ取れないのにどうして同調してしまうのだろう。流れる涙は何の為のものなのか。それさえも解らないまま無駄な行為を繰り返す。咽喉の奥に何か痞えているかのように、渇いた咳だけを繰り返す。 痛いのは何故なのか。 苦しいのは何故なのか。 そう思うのは何故なのか。 考えなければならない。答えなければならない。何故答えなければならないのかというその理由をも。
2002年05月22日(水) |
Alles ob Nichts |
人は何かを求めなければ生きていけはしないのだろう。
貴女を占有してしまいたい。貴女自身からも奪って、己だけのものにして、閉じ込めて、縛り付けて、何所へも行かせない。 全てか無しか、ただそれだけ。 半端なものなんて己だけでいい。
寒くて冷たくて、人が恋しくなる。その肌が、その温もりが哀しいほど、恋しくなる。
2002年05月21日(火) |
支離滅裂、試行錯誤。 |
慌しい。そんな感じ。
他人の考えを盗み読みして、納得したり、喜んだり、共感したり、反発したり…他人であるということは考え方も生き方もまったく違うわけで、己に無い物を見つけて羨ましく思い、それから色々勝手な決意する。 支離滅裂な思考、冷静な感情。
誰にも言えない、会ったことも無い貴方を好きかもしれないなんて。大体において勘違いだから、言うつもりも自覚するつもりも無い。その可愛さが己には無いもので、それに惹かれているのだと解っているから。
2002年05月20日(月) |
bad dream... bad condition |
抱かれたくて、抱きたくて。 どちらの性をも選びきれない、優柔不断な心。
疲れの所為なのか、酷く躰が重い。頭痛と寒気。弱々しく掠れた声に愕然として、己の顔を見る。青ざめて、浮腫んで、死体のよう。 精神が退行して、後ろ向きで真っ暗になって、捻くれてしまった分、子供よりも始末に悪い。
奇妙な夢を見た。小さな醜い顔の猿、それに寄生した黒色の蜘蛛。襲いかかってくる。怖かったのだろうか、恐ろしかったのだろうか、それとも哀れだったのだろうか、羨ましかったのだろうか。己のようで目が離せなかったのかもしれない。
2002年05月19日(日) |
LOVE NOTES |
偏見なんていらない。
こういう人もいるんだと変に感動してしまった。驚いくよりも呆れるよりも何だか感動さえしてしまった。目から鱗が落ちるというその意味を知ったような気持ちだ。…良くも悪くもこういうことはあるのだと思う。
いつまでも他人を頼ってはいられないのだということを痛感する。それと共に開放感に満たされる。無意識の支配から抜け出して、己自身を作り出せる悦びの、甘くて苦い自由の口唇。
疲れている。快い眠りが欲しい。 彼らの曲のような快感、陶酔、安堵、そういったものを与えてくれる人はいないのに、己一人であるということを時々忘れそうになる。言い聞かせて、間違えないように。
自己陶酔の海、砕ける波が呼び起こす感性。
LOVE NOTES/The Gospellers/kioon
その腕で抱いて下さい、強く強く。
自己満足でいいと思っていたのに、他人から認められたい欲求が昂まって、そういう自分が嫌で、哀しくなる。割り切ってしまいたいと思うのに、それが出来ない。どうして己自身を見つめられないのか。 欲望に弱くて、痛みに弱くて、どうしようもない己の姿。 「何も変えようとしない」から己は己を否定する。突き放すことが出来なくて、傷を舐めながら、涙を流しながら、それでも固定された意識の中に留まっている。
数字の移り変わりを嬉しいと思ったり、そんなものに一喜一憂する自分を情けなく思ったりする。その温さが己自身であることを認めざるを得ないけれど、無いものねだりと言われようが、己の中に強さだとか傷つかない心とかが欲しい。
少年は卵の中だ。己も卵の中に居るのだろうか。育ちすぎて巧く殻を破れない。押し込められたまま、卵の中で死んでいくのだろうか。 否、「押し込められた」のではない。殻を破ろうとさえしなかったのだから、それは当然の結果なのだ。殻を破らなかったのは己自身。「何もしない」という選択。
卵の中の少年。その白い肌から血の気が失せていく。刻一刻と、その躰が冷たく固くなっていく。凍りついた後ではもう手遅れだということに早く気付くがいい。 震えるほどの旋律で、何もかも壊してしまえばいい。
花迷宮/久世光彦/新潮文庫 1991 ISBN4-10-145622-4
体調の悪さの所為だろうか、奇妙に捩れている感覚だ。何処かで囁かれる言葉が、耳に残る忍び笑いが、精神を苛む。 誰かに縋りつきたい。 傍に居て、抱きしめて、優しく頬に触れて。嘘でもいいから愛してると囁いて。 弱い己を曝け出して、得られるものなんて何も無い。優しい言葉なんか要らないから、強く在りたい。
これは思い込みだと、己に思い込ませた。恋だとか愛だとか名付けてまうと壊れそうで、これは思い込みなんだと己に言い聞かせた。 論破することの出来ない主観を盾にして、貴方を慕う理由にした。
純粋なる欲望で己を作り変えてしまえ。
届かない涙/berry
無駄遣いをやめようかと思った。自分にとって有益であるならば、「無駄」ではないと思うのだけれど、虚しく感じるならばそれは無駄なのかもしれない。それは単に金を使うということに対して慣れがないせいだろうか。 おそらくは求める所が何かということなのだろう。体を満たすことなのか、心を満たすことなのか。そのどちらも欲しいと言うのは、やはり求めすぎだろうか。
満たされない衝動、眠れない夜、冷えた躰、蕩けだす思考。
騙し絵が在って、それは貴婦人のようにも、魔女のようにも見えるのだと言う。貴婦人しか見えなくて、魔女なんて何処にもいなくて、言われてやっと気がついた。確かにそこにあるものが、今までそこになかったのだ。思い込みとは酷く恐ろしい。何も見えなくなってしまうのだから。それから離れられなくなってしまうのだから。 もしかしたら道なんて幾らもあるのかもしれない。ただ見えていないだけなのかもしれない。凝り固まった精神が、澱んだ視界が、それを阻んでいる。 見えないものを見ようとし、見えるものを見逃しているのだろうか。
自分が如何に馬鹿かということを知り、もしかしたら世の中金が全てじゃないかと思い、少なからず寝苦しかった夜。
誰かの側で眠りたいと思った。
人は何処まで行けばいいのだろう。何処まで行けば幸福になれるのだろう。永遠無限のものなんてないのかもしれないけれど、その距離は永遠で無限かもしれない。
貴方に触れないのは畏れているから。そう思ってきたけれど。 もしかしたら、たぶん、きっと、触れてしまえばもう二度と抜け出せないことが分かるからかもしれない。貴方を求めて、貴方に溺れて、そうして己さえ見失ってしまいそうだから。貴方に恋しているのかもしれないと錯覚しそうになるから。
忙しい生活。自分が一体何をしているのかさえも、把握できないような多忙。余裕が無いわけではなく、単に頭の回転が鈍っている。単調でそれでいて奇妙な生活。何処かで嘲笑う声がするのは気のせいだろうか。
愛よりはやく撃て 1995 香港 原題:狂野生死戀 英題:A Touch of Evil 監督:区丁平(トニー・オウ) 主演:梁家輝(レオン・カーファイ)、関之琳(ロザムンド・クワン)、王敏徳(マイケル・ウォン)
目覚めた時にいるはずの人がいない。ひどく不安な感じ。 それは此処に誰かいるというそのことにあまりにも慣れすぎてしまったから。 貴女が側に居るというそのことにあまりにも溺れてしまったから。
眠りというものをそれほど重要視してはいなかったと思う。確かに惰眠を貪るのを常としているけれども、それでも覚醒と睡眠は分かたれてはいなかっただろうか。 自問自答してみる。夢の感触は夢のものに他ならず、それ以外の何物でもなかったはずなのに。 夢の中に堕ちて行く感触は、酷く苦しいものではないのだろうか。それとも意識を失うというのは、実は快感なのだろうか。 不意に覚醒した己の感触を確かめる。どうしようもない気だるさのその感触。
2002年05月10日(金) |
sacrifices |
食べ物を貰うという行為は何となく懐かしい。母親を思い出させる。 母親のあの甘さ。常に「味方」であるという確信。刷り込まれたものでしかなくとも、逆らうことなど出来ない。
怒らないのは怒ることさえも出来ないということ。貴女の腕を放したくないということ。貴女の腕を解くのが恐ろしくて淋しくて堪らないということ。 何処へも行かないでほしいと願う。その儚さを嘲笑しながら、その愚かさを哀れみながら、それでも願わずにはいられない。
誰よりも幸福なふりをさせて。
眠りがもたらす効用は、麻薬のそれに似ていると思う。 夢は白い花の香を放ち、それは人を捕らえて放さない。忍び寄る魔性はいつまでも包まれていたいと思わせる。その誘惑に永遠の眠りを夢見る。 痛みのない世界の花は、美しくたおやかに咲いている。儚さをたたえたままの久遠。 奇妙な感覚。それでもその場に留まりたいと願い、すべてを捨てて花になる。
現実的な話。現実の話。 どうして気がつかないのだろう。感情ではなく理論で看破できる穴を、何故見つけられない。 抜け道はある。でなければ逃げられない。 知らない、分からない、ただそれだけで、欺かれる。 知らねばならない秘密、知らねばならない表情、知らねばならない手管。 くるくると旋回りながら、墜ちていく感覚。 己自身を保つことさえも苦しくなる。
貴方の指に触れられたい。 きっとそれだけ。 恐くて触れられない貴方のその指が、触れる。 こんなに近く、それ故に遠く、それでも側にいたいと思う。 愚かしさに嗤い、嘆き、それでも精神が抑えられない程震える。 貴方だけに。
2002年05月07日(火) |
sleeping doll |
この場所になぜ自分がいるのか、時折分からなくなる。 何故、何の為に。 ただ日々を消化して、それだけで生きているのなら、それは傲慢。
無駄に日々をいきるよりは死んだ方がマシだろうかなどと、甘い夢を見ているわけではないけれど、それでも時々思うのだ。 この生命を他の誰かに引き渡して、私は永遠の眠りがほしい。
貴方の前で、言葉さえも色彩を失う。服従以外の何も出来ないでいる。 掠れる声で甘く囁かないで。
自分が誰かの愛や幸福を願うように、誰かも自分の幸福を願っていると思えないのなら傲慢だといわざるを得ないだろう。 不幸な顔をして、「あなたは幸せになって」なんて言われてもどうしようもないのだということに何故気が付かないのだろう。「あなたの幸福がわたしの幸福」だと言われてしまったらどうするのだろう。
ただ己を慰めるための言葉なら、云わないでいるほうがいい。それがたとえ誰を傷つけても、己にとっての真実だと思い込んでいる以上、変えようのないものなのだから。
2002年05月04日(土) |
moonstruck |
だから消え失せて。
関連付けることで記憶は保たれている。記憶したことは、不意に思い出されることがある。全く思いもかけないような瞬間に、思いも寄らない出来事を思い出す。 その記憶が消えない。 忘れようとするほど残ってしまう。 口に入ってきた砂か何かのようだ。 消えない、取れない、いつまでも。
「物質」は残ってしまうから。言葉のように消え失せないから。 例えば贈り物だったり、ノートの切れ端だったり、それが己の一部と化して己を苛む。その共有された時間が己の記憶を叩き起こす。 必要なものなんて、本当はもっと少ないはずなのに、貪欲に飽くことなく手に入れ続けてきた「物」達が記憶を残して、残滓を残して、いつまでも消えない。
声を発するということ、それが与えるものは没頭と陶酔とそれによる忘却ではないだろうか。詩を追い、音声にし、それを聞く。ただそれだけに浸って、他の何もその中に入ることは出来ない。眠りよりも深く、静かな場所。
「ゴメンナサイ」も「アリガトウ」も、云えない気がする。 「ダイスキ」も「アイシテル」も、声に出すだけ空虚になる。 言葉は酷く無力で、感情も感覚も何一つ言葉に出来ない。
とどまることが出来ないでいる。 進むことが出来ないでいる。 愚かにも、ただ同じところをめぐっているだけ。
言葉を借りるなら、恋とは「身体の中で勝手に作られ」、「脳細胞をとろかし」てしまう「ジャンキーよりも始末が悪い」ものらしい。 脳内麻薬物質の見せる幻覚。ならば恋は、本来はその場に存在しないものだ。 そのないはずのものを、麻薬でとろけた脳が見つけ出してしまう。
この無限ループから、どうしたら逃れられるのだろう。
石の刻シティ/大原まり子/徳間文庫 1992 ISBN4-19-577146-3
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