長渕剛 桜島ライブに行こう!



10年前と変わらない日々ですか? (桜島ライブ30)

2004年09月29日(水)

『10年前と変わらない日々ですか?』−桜島ライブ(30)

                 text  桜島”オール”内藤





桜島のフェリー乗り場を降りてすぐのところにある、パチンコ・ロッキー。
たぶん・・・桜島唯一のパチンコ店?
僕はパチンコはやらないので入店を考えることすらありませんでしたが、
21日と22日はやっぱり千客万来だったのでしょうか?


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M-17  JAPAN −アルバム『JAPAN』(1991)−



第二部が始まるムードが高まってきて、
たまらず僕は立ちあがりました。

第一部が始まる直前を100とすると、
ツヨシコールなどの歓声は、
30くらいだったでしょうか。

とてもじゃないけど、
剛を迎えられる状態とは言い難い。
それでも、
ステージに灯がともれば爆発するさ・・・
と思いながら、
まばらなツヨシコールに合わせて、
僕らは手を叩いていました。

まだほの暗いステージに、
バンドメンバーらしい人たちが出てきて、
Aブロックの前方のほうではワーッと歓声が上がるものの、
やっぱり会場全体はシーンとしたもの。
もっともっとツヨシコールのボリュームを上げないと、
剛、出て来れないじゃんか・・・
と思ってステージをよく見ると!

その暗いステージのセンターマイクに向かって、
ステージ袖からフラリとあらわれたのは、
黄色いTシャツに身を包んだ

TSUYOSHI NAGABUCHI

その人ではありませんか!!

僕が気付いたのとほぼ同時に、
ドーッと大歓声!!
(A・Bブロックだけのように感じましたが・・・)

たぶん、照明がついてないので、
スクリーンには剛の姿は映らないはず。
後方ブロックはまさか剛がすでにステージにいるなんて、
まったく気付かなかったのだと思います。

「ツヨシーィ、遅いよーーっ!」

という、声援が象徴するように、
いや〜、待ったよ、待った。
長い休憩だった。

おとなしく出てきたところをみると、
第二部は、じっくりとやるのかな・・・
と思うやいなや


Wow Wow Wow
ジャパーーーーン!!
Where are you going!



び、びっくりした。
いきなり始まった!

しかも、おとなしく始まる雰囲気を漂わせておいての、

オリジナル演奏版『JAPAN』

はじかれるように、
ジャパーーーン!の大合唱に加わりました。

限りなくCDのアレンジに近い『JAPAN』だっただけに、
1992年の東京ドームを思い出した人も多かったはず。
いや、第二部のオープニングということもあって、
同じくオープニングを『JAPAN』が飾った、
1993年のJAPANツアーの方が近いか。

いずれにしても、
このオリジナルバージョンの『JAPAN』は、
あれから10年、ステージでは演奏されていないはず。
(間違っていたらごめんなさい。)
とにかく、懐かしい、この感じ。
あの、ほこりが渦のように舞っていた、
東京ドームのセンターステージが懐かしいよ!

俺たち この先 どこへ
流れていくんだろう

Wow Wow Wow
ジャパーーーン!
Where are you going!

Wow Wow Wow
ジャパーーーン!
What are you doing!

貫き通す 意地の 壊れたこの国で


それにしても、
こんな沈んだ雰囲気で、
第二部が始められるのだろうか・・・
と危惧していたのがむなしいほどに、
一気に息を吹き返した観衆。

じっとエネルギーをためこんでいたのもあるでしょうが、
やっぱり、僕がひしひしと感じたのは、
剛、絶頂期のアルバム『JAPAN』のタイトル曲の、
根強い人気でした。

間奏のあいだも、ひっきりなしに、
興奮した観客の歓声が渦巻いていました。
第二部のオープニングにこれを持ってきたのは、
かなり大正解かもしれない。

特に、大部分の観客から見ると、
ほんとうに、いきなり、
バーンと目の前に『JAPAN』を
叩きつけられた感じだったと思います。
暗がりから突然出てきたような。

休憩時間が長かったので、
剛、大丈夫かな・・・と心配しましたが、
声も出ているし、まだまだ余力十分な感じ。

僕としては、意外な選曲が嬉しかった。
時事的な歌ということもあって、
時間が経つとその意味合いも薄れるし、
やらないんじゃないかなあ・・・
と思っていたのですが、
剛が生で歌っているのをじっくり聴いていると、
なんか・・・

ぜんぜん、世の中、
10年前と変わってないじゃないか!


と思いました。
まったく、歌詞内容に古さを感じないのです。

それだけ、世の中はあいも変わらず、
同じような問題を抱えているということの証し。
湾岸戦争がイラク戦争に変わっているだけのことで、
いまだに『JAPAN』の歌詞がビンビンにリアルに感じられる。
喜んでいいのか・・・
悲しんでいいのか・・・

このように、見事な立ちあがりを見せた第二部。
『JAPAN』は、ほとんどCDと同じくらいの演奏時間で、
気持ちよくスパッと歌われました。
そして、10年前の日本の行く末を案じたこの曲は、
もうひとつの剛の社会派メッセージソングの
呼び水となるのでした。

人気曲『JAPAN』。
叫びやすい曲『JAPAN』。
しかしその内容はけして軽くない。

日本よ、何をやってるんだ!との苛立ちは、
静かなる絶望感のあの歌へ、
そして、生命をテーマとしたあの歌へとたどり着く。

第二部、派手ではあるものの、

じっとりと、重く、
草木も眠る真夜中のキックオフです。




続く



<次回予告>
『JAPAN』の後に続くのは、やはりこの曲しかない。
一部から評価が高く、ラジオ曲からは嫌われた、
静かなる「アメリカへのNO」を、今こそ桜島から発信。

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自分のブロックで観ましたか? (桜島ライブ29)

2004年09月28日(火)

『自分のブロックで観ましたか?』−桜島ライブ(29)

                 text  桜島”オール”内藤





Thank you Tシャツは終演後限定の販売。
グッズリストでもデザインはシークレットでした。


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一部ニ部間・休憩時間 その2



ようやくトイレ休憩から帰ってくると、
友人はおとなしくシートに座っていました。

「はやかったね。」

「混んでるところは混んでるけど、大丈夫。
 行ってきたら?」

おそらく混雑がいやで、
開演中に行こうと思っていたであろう友人も、
僕の予想外に早い帰還に、
トイレに向かう意欲が沸いてきたようでした。
それでも25分はかかっているのですが。

友人がトイレに行っているあいだ、
僕はまたリュックからカロリーメイトやら、
グロンサン内服液やらを出してきては、
エネルギーの補給に余念がありませんでした。

狭いスペースで横になることもできないので、
体育座りで夜食を済ませると、
立ちあがり、
ぐるっと360度、会場を見渡してみました。

休んでばかりいてはもったいない。
こんな光景、もう一生見れないかもしれません。
あきれるほどの人、人、人。
視界の上半分は夜空。
そして、下半分は、はるか彼方まで、
すべて人で埋まっている。
何度でも、眺めまわして、
何度でも、味わいたい。

静まり返っている会場でした。
物音すらしないわけではないのですが、
7万5千人が、静かに、じっとしている雰囲気でした。

BGMくらい流してくれないかなあ・・・

と僕は考えていました。
雰囲気が、あまりにも暗く感じたからでした。
このまま、第二部に突入できる雰囲気には、
到底、思えませんでした。

それでなくても、
これからはつらい時間帯に入ってきます。
拓郎のオールナイトでも、
眠っている人続出、という時間帯。

遠距離バスで到着した人、
当日、空路で到着した人は、
きっとかなり早起きして会場に来ているはず。
車内で睡眠が取れた人はまだしも、
一睡もできなかったという人は、
そうとうつらかったのではないでしょうか。

しばらく辺りを眺めて満足したので、
また、シートの上にしゃがみ込んで、
じっと静寂の中に身を置きました。

ふと、シートのすきまから覗いている地面を見て、

(ああ、桜島に来ているんだなあ・・・)

と思いつつ、地面を叩いてみたりしました。

それから、曲間に取ったメモを見ては、
第一部のライブのことを思い出していました。
日記に書くことを想定して、追記したりして、
時間を過ごしていました。

一番、印象に残ったのは『勇気の花』。
一番、感動したのは『逆流』でした。

『逆流』は、剛のMCと歌が、バッチリはまっていて、
第一部のベストパフォーマンスだったなあ・・・
参っちゃったよ、ほんと感動しちゃったもんなあ・・・
などと思ったりしていました。

『LICENSE』の最後でややテンションが下がったものの、
『しあわせになろうよ』のゲスト登場で、
いい意味で、何もかもが掻き回された感じでした。
あれよあれよというまに終了したことによって、
それほど気にならない記憶になっていました。

そんなことを考えながら、
要は、ひとりで何もすることもなく、
僕はぐだぐだしていたのですが、突然、

後ろからカップルが僕の前に出てきました。

男性が、僕らの前にいた観客(トイレに行っていて不在)のシートに、
女性が、僕の友人の座っていたシートの上で立ち止まり、
腰を降ろしました。
どうも、そこで第二部を見ようとしているみたいでした。
見ると、僕らとは違った色のリストバンドでした。

「あの、ここ、友人の場所なんですが・・・」

と言うと、女性は、何も言わずに、
連れの男性の前の狭いスペースに移動していきました。

もやもやした気持ちで二人の背中を見ていると、
やがて、僕らの前にいた観客たちが、トイレから戻ってきました。
なにやら、その観客たちが、出現したカップルに囁くと、
カップルたちは、またその前に移動していきました。

席が悪くても、きちんと自分のブロックで観ている人たちを、
トイレから戻ってくるときに確かめてきただけに、
相当に腹立たしい思いがしましたが、
なにしろ、そういう人たちがそこあそこに点在しており、
振り向けば、通路に何十人と座っているのだから、
そこらじゅう、ルール違反者だらけ。
ただただ自分の場所だけは、自分で守らねば・・・
と思うので精一杯でした。

そうこうしていると、友人が戻ってきました。
僕のときよりも、さらに5分ほど早く戻ってきたように思われ、
混雑が緩和しているように思いました。
きっと、トイレに行きたかった人たちがみんな、
ブロックに戻ってきているのでしょう。

時刻は1時15分でした。
友人と、第一部のライブのことをいろいろと話しました。

ここまでの曲数が少ないから、
第2部は弾き語りでテンポよく曲をこなしていくのではないか

ZEPPでやっていた曲で、まだ演奏されていない曲、
『碑』『待ち合わせの交差点』『愛してるのに』
『Hold Your Last Chance』『Good-Bye青春』
『裸足のまんまで』『−100°の冷たい街』
などが演奏されるのではないか

既に『勇次』が演奏されたことから『Captain・・・』があるのではないか

などなどなど。

「第二部はどんな歌が聴きたい?」

そう友人に尋ねると、友人は、

「懐かしい歌が聴きたい」

と、懐かしい歌を知りもしないくせに言うものだから、
僕は少し吹き出してしまいました。

「懐かしい歌って、例えば?」

「『Myself』とか、『Go Straight』とか」

「そのへんは新しい感じがするけどなあ・・・」

そんなとりとめのない話を延々としていました。
そういう時間も、なんだか楽しかった。

僕は、第一部が燃焼系だったので、
第二部はしっとりと、バラードをたくさんやって欲しい、
と思っていました。
『俺たちのキャスティングミス』のような、
ムード抜群のバラードの名曲をたくさんやって、
寝たい人は寝かせてあげて、聴きたい人は聴く、
そういうのがいいんじゃないかと思っていました。

それにしても、長い休憩でした。
もう1時間が過ぎていました。
開始時間が遅れたこともあって、
この長い休憩は、ちょっと気になりました。

30〜40分くらいならいいけど、
1時間を越えると、逆に剛にとっては負担となると思いました。
剛も観客も、完全に冷え切って、
また、ゼロからライブを盛り上げて行かなければならないからです。
すでに桜島は、クールダウンを通り越して、
仮眠状態に陥っているように感じました。

やがて、アナウンスが流れ、
まもなくライブが開始されることが告げられました。

それを聞いて、
ポツポツと、ツヨシコールが局地的に叫ばれていました。

70分〜75分くらいの長い休憩が、
終わろうとしていました。


続く


<次回予告>
剛、フラリと暗闇の中、あらわる!
唐突に始まった、第二部!
みどころ満載の第二部の口火を切ったのは、あの社会派ソング。

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入場ロードを歩いてみましたか? (桜島ライブ28)

2004年09月27日(月)

『入場ロードを歩いてみましたか?』−桜島ライブ(28)

                 text  桜島”オール”内藤





休憩時間の売店の様子。このずーっと奥がトイレ。
ありとあらゆる食べ物が販売されていました。
いったいいくつのテントが張られていたのでしょうか?
しかも、このようなエリアが、会場の左右両側にあったのです。


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一部ニ部間・休憩時間 その1



「オールナイトコンサート、
 お楽しみいただいてますでしょうか?
 これから休憩に入ります。」


暗い空。
暗いステージ。
その落ちついた暗さは、
真夜中の桜島にいることを、
これでもかと実感させてくれました。

深夜0時20分。
アナウンスの声だけが響き渡り、
最初の休憩時間に入ったことを告げました。

それからアナウンスは、
通路にいる観客に、指定のブロックに戻るよう注意しました。
思い出したかのように僕は、
AブロックとBブロックのあいだにいた、
他のブロックのリストバンドをした人たちの方を見ました。
一向に動く気配はありませんでした。

さらに、開演中に照明機材の鉄骨に登らないよう、
強く注意していました。
興奮した観客が、ライブ中に登ったのだと思われました。

僕は四つんばいになってへたり込みながら、友人に言いました。

「疲れた・・・飛ばしすぎた。」

友人は体育座りでシートに腰掛けて、
じっとしていました。
僕は水をゴクゴクと大量に飲みました。
いつ終わるかわからない、ライブの最中は、
極力水分は控えていました。
もちろん、途中でトイレに行きたくないからです。
もう、喉はカラカラでした。

それから、持ってきたパンやお菓子を食べました。
友人も一緒に食べて、水も飲んで、
とにかく、僕らは黙々と、10分くらい、
食べたり、飲んだり、ぼーっとして休んだりしていました。

トイレに向かう観客たちが、ブロックの出口で、
通路で、立ち止まっていました。
その混雑は、目で見える限り、
遠くの通路まで続いているように見えました。

アナウンスが、
会場内のグッズが完売したことを告げました。
それから、第2部の開始時間は追って放送すると言っていました。
開始時間がわからないことで、僕は迷いました。
トイレに行って、ライブが始まるまでに戻れるかどうか・・・
行くべきか・・・時間をずらすべきか・・・。

考えたあげく、僕は、トイレに行くことにしました。
いったいどのくらい時間がかかるか不安でしたが、
それでも、やっぱりライブ中は行きたくない、
と思いました。

一方、僕以上に混雑を嫌う友人は、
ライブ中にトイレに行っても構わないから、
ここで場所を守っていると言いました。
これは、すごくありがたかった。

二人で行って、帰ってきたら、もう場所が取られていて、
座るところがない・・・という事態は、
やはりゼッタイに起きないとは言い切れませんでした。
どちらかひとりがいた方が安心でした。

僕は、まったく人が動いているようには
見えないブロック出口には向かわず、
最短距離で到達できる鉄柵のところまで、
靴を脱いで靴下のままシートの上を進みました。
そして、鉄柵を越えて、通路に出て、
とにかく人が少ない方へ、
少ない方へと、進んで行きました。
右の休憩所でも、左の休憩所でも、
どちらでも構わないと思っていました。

そうやって進んで行くと、
どんどん後ろのブロックの方へ僕は移動してきていました。
通路の端には、まるでホームレスのように、
ビニールシートの上で横になっている人がかなりの数いました。
たぶん、ブロックに入れなかった人たちだと思います。

Dブロックあたりにくると、車椅子の観客用のスペースがありました。
車椅子で、ごつごつの通路を、トイレに向かう人もいました。
これは、なんとも大変なことだ、と思いました。

僕は、途中で人がつかえて進めなくなりつつも、
少しずつ、ステージ向かって右側の休憩所に近づいて行っていました。
さすがに、会場と休憩所を結ぶ通路は、大変な混雑でしたが、
どうにか抜けることができました。
思ったより、時間はかかりませんでした。
行きで30分も覚悟していましたが、15分ほどでした。
ここまで歩いてみて、
既に相当数のゴミが落ちていたことが、
ちょっと気になりました。

会場内は照明がけっこう明るいのですが、
さすがに休憩所は足場が暗く、
さらに会場内より火山岩でゴツゴツしていました。
何度か転びそうになりながらも、坂を下って、
テントが立ち並ぶエリアに到達しました。
ライブ前に行った逆側の休憩所は大変広く、
東京ドームのグラウンドエリアくらいの広さがあるように感じましたが、
こちら側は若干小さく感じました。

それでも、食べ物、飲み物、いろいろ売られていました。
やはり、お祭りかなにかのような風景でしたが、
僕が目指すのはトイレです。
迷わずズンズン進んで行きました。

トイレの前は、まるで、
ラッシュ時の新宿駅南口の改札付近のようでした。
人にぶち当たりながらも、たくましく、
進んで行かなければなりませんでした。

さて、いったいどれくらい並ぶのか・・・
との僕の心配をよそに、
2人ほどが出てくるのを待っただけで、
トイレを使うことができました。

男性ファンが圧倒的に多い剛のライブということもあってか、
かなりの数の便器があるように思えました。

無事、用を済ませた僕は、
来るときのルートを通らずに、
会場の一番後ろの方に回りこみました。
つまり、僕たちが会場に入場してきたあたりに出ました。
こちらの方が空いているかも・・・
という根拠のない期待を持ってそうしたわけではありません。
僕には、ふと、通りたくなったルートがあったのです。

Kブロックのあたり、一番後ろから、
剛がハーレーで入場してきた通路を通って、
Aブロックまで戻ってみようと思ったのです。

この会場のうしろを通る通路が、
なんとも混んでいて、たまりませんでしたが、
どうにか、剛入場ロードに出ることができました。
ここは、まったくといっていいほど混んではいませんでした。

なるほど、広めにスペースが取られた通路でした。
僕は剛が入場してきたように、
ゆっくりとステージに向かって下って行きました。

思ったよりかなりゴツゴツとしていました。
車で行くなら、乗用車じゃなくて、
ジープじゃなければ・・・という悪路。
ゆるやかな傾斜の坂でした。
剛が、ゆっくりゆっくり
バイクを進めていた理由がわかりました。
こんな道でスピードを出しては、非常に危ない。
整地されてはいるものの、もともとは、
ゴツゴツした火山岩があったところなのです。

他の通路に比べると、
シートをひいて座っている人はまったくいませんでした。
係員がそれを防ぐために、目を配っているようでした。
それを見て、おそらく、第二部でも、
この通路は使われるんだろう、と思いました。

後ろの方のブロックも、
けして空間に余裕があるようには見えませんでした。
みんな、それなりに狭いスペースで、
ぐったりとして横になったり、
体育座りで顔を伏せていたりしていました。
歌を歌って盛り上がっているような風景は、
どこを探してもありませんでした。

Cブロックのあたりまでくると、
また混雑に巻き込まれました。
とにかく、前に進んで、Aブロックにたどりつきました。
それから、横に移動して、A−5ブロックの、
僕らがいた付近の鉄柵まで戻ってきました。

靴を脱ぎ、それを持って鉄柵を越えて、
シートの上を歩いて、友人の隣に無事生還!

かかった時間は、25分くらい。
まだライブが始まる気配はなく、
無事トイレを済ませたことで僕は安堵していました。



続く



<次回予告>
かなり長かった休憩時間。
どんよりと鉛のような時間が過ぎて行く。
そして、前方ブロックへの侵入者たちとの・・・静かな攻防。

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聴きたかったのはどっちですか? (桜島ライブ27)

2004年09月25日(土)

『聴きたかったのはどっちですか?』−桜島ライブ(27)

                 text  桜島”オール”内藤





僕らが入場したときの観客席最後方からのフォト。
距離感がまったく写真というものに出ていないのがショックです。
ブワアーーーッという広さと距離感、こんなもんじゃない。


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M-16 しあわせになろうよ'04
      −アルバム『Hey ANIKI!』(2004)−



ZEPP2日目では、
アンコール前ラストに演奏されたこともあり、
これで第一部も終わりかと思われた『LICENSE』。
しかし、桜島ではこれで終わりではありませんでした。

ヒップホップ調のリズム音が流れたかと思うと、

「OH! YEAH!
 OH! YEAH!」


ステージに飛び込んできたのは、
トリビュートアルバム『Hey ANIKI!』のオールキャスト!
・・・マイナス ゆず岩沢。

ひときわ、派手なアクションで、
僕らの注目を集めたのは、ロングヘアーの男でした。

「ZEEBRA!」

剛の紹介でその名前を確かめると、
歓声を上げる人、多数。

「YEAH! YEAH!
調子どうだあーっ?
 YEAH! YEAH!
さくらじまーっ!?」


『LICENSE』のあとに、まさかラップが来るとは・・・

微妙な選択、『しあわせになろうよ'04』!

ZEEBRAのラップに飛び跳ねる人、少数。
呆然と立ち尽くす人、多数。
僕はというと、立ち尽くす組でした。
ラップのライブには行った事がなく、
いったいどうしていいかわからない状態。

しかし、そんなことおかまいなしに、
たたみかけるZEEBRAのラップ。

そして、ラップのパートが終わり、
メロディがサビに入っていこうとすると、
大歓声が・・・


出会ったころの ふたりに
もう一度 戻ってみよう
そして ふたりで 手をつなぎ
しあわせになろうよ



飛び跳ねていた人も、
立ち尽くしていた人も、
大合唱!

桜島で歌いたかったよ!この歌を。
しあわせになれる気がする、この歌を!

再びZEEBRAのラップを挟み、
剛が『しあわせになろうよ』の2番を歌う。
剛のあとは、キャストたちのソロパート。

In the Soupの中尾諭介、
the youthの中村雅俊、
間奏で般若の荒々しいラップ、
LISAの美しい歌声、
ア・カッペラーズ 、
ヒューマンロスト、
間奏では、押尾コータローのアコギが炸裂。

再び、観客も交えての、
しあわせの大合唱!


出会った頃の二人に
もう一度戻ってみよう
そして二人で手をつなぎ
しあわせになろうよ

初めて出会った場所に
もう一度戻ってみよう
そして青い空に抱かれ
しあわせになろうよ
しあわせになろうよ



ゲストを迎えることなどほとんどない、
剛のライブ。
それが、この桜島では、こんなにたくさんの、
剛を愛するミュージシャンたちが集まってきた。

歌の途中に割って入るように紹介していた剛。
慣れないことで、気もそぞろだったに違いない。
ゲストを呼んでライブでやる人ではないだけに、
いつもひとりぼっちで闘う人だけに、
『LICENSE』の後半、次の曲のことが気になって、
集中力が途切れたのだと思いました。

ファンの中には、
ラップが入ってくるバージョンではなく、
オリジナルの『しあわせになろうよ』が聞けずに、
落胆している人もいると思います。
実際、不満の声を漏らしている人も見うけられました。

この僕も、オリジナルの熱烈なファンです。
全編、剛の歌に合わせて、一緒に歌いたかった。
二度とない、大切なライブだからこそ、
ゲストなしで、一人でやってほしいとも思っていました。

でも、『しあわせになろうよ'04』の演奏が終わったとき。
これは、これで、良かったんだと思いました。
別に理由はありません。

ただ、これで良かったのだと、
思っているのです。

汗まみれ、満面の笑顔の剛がステージにいました。
2時間半、たっぷり、ライブ1本分、
歌いきり、演じきってくれました。

「また戻ってくるからなーっ!」

オールキャストたちと引き上げて行く剛・・・

剛と、そして、それと同じくらい、
ZEEBRAに対して、
たくさんの声援が飛んでいました。

そうです。
とうとう、とうとう、
第一部が、終わりました。

時刻は、22日の0時20分。
僕は、へたりこむように、
ビニールシートに座り込みました。



続く


<次回予告>
最初の休憩時間に突入。
大混雑必至の中、トイレに向かうことを決意。
往復30分の旅が始まる・・・

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気持ち、上手に伝えられますか? (桜島ライブ26)

2004年09月24日(金)

『気持ち、上手に伝えられますか?』−桜島ライブ(26)

                 text  桜島”オール”内藤





溶岩グラウンドで足止めを食らう僕らをあざ笑うかのように、
上空を旋回し続けるヘリ。
ライブ中もやたらと飛びまわっていたあのヘリは、
いったい何をしていたのでしょうか。
DVDの撮影・・・か?


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M-15 LICENSE −アルバム『LICENSE』(1987)−



『勇次』で熱狂の渦となった桜島の上空を、
ヘリコプターが旋回し続けていました。

そのヘリが遠ざかって行くなか、
アコギから流れる安らかなメロディ。
繰り返し、繰り返し、循環コードが、
あのバラードのイントロを奏でていました。

『勇次』でピークに、そして、珠玉のバラード。
その豪華な連係に、
僕は第一部の終演を予感しました。

「もう、心臓、バクバク・・・」

と剛。

ほんとうに・・・
こんなオールナイトライブの序盤戦って、
あっていいものなのか?

僕がライブに通いはじめたころ、
剛は最後に必ず、そのときのアルバムの最後の曲、
バラードを切々と歌って、
「また会おう!」
と言い残して去って行きました。

そのときのムードをたたえた剛でした。
次が第一部最後の曲か・・・
僕は時計を見ました。
既に日付が変わっていました。

剛が、歌い始めたのは、
両親を羽田に迎えにいく前日、
走馬灯のように蘇ってきた幼いころの思い出を綴った、
自伝的内容の名曲バラード、

万感迫る『LICENSE』!


幼いころ 俺はいつも 海が好きだった
バラック小屋に 4人暮らしで
とても しあわせだった
むき出しのプロパンガス 
コールタールの壁
壊れかけた雨戸
夕暮れの背中 あの路地口で
いつも 
お袋は泣いてた



歌詞の中には、鹿児島の風景の気配がありました。
その鹿児島で聴いていると、
ノンフィクションの『LICENSE』がひしひしと迫ってくる。

「オー、オーオーオー・・・」

間奏は観客のコーラス。
コーラスに合わせて、
両手を上げ、左右に揺らす。

視界に入る、A−5ブロックの前方、
そこだけでも、とてもきれいでした。
僕は、両手を揺らしながら
うしろを振り向き、
7万5千人の両手が揺れるのを見ました。
おびただしい数の人間の手が、
向きを乱すことなく、
ひとつになって、左右に揺れていました。

こんなにも淡々とした語り口。
こんなにも抑揚のないメロディライン。
それでもなお、こんなにも、
『LICENSE』が情感をたたえているのは何故だろう。


取ったばかりのカーライセンス
あしたーーっ、
羽田に迎えにゆくーーーーっ!



ピンスポットの中、剛が絶叫。
沸き上がる歓声と拍手。

延々と続く、長い長いエンディングでした。
そして、剛のメッセージ。

「久しぶりにみんなと集まってみて、
 やっぱりこの街を、
 そしてキミたちを、
 愛していることを実感してる!」


ちょっと・・・
用意してきた感じのするメッセージでした。
そのためか、
僕の心はそれほど動かなかったような気がします。

「幼児虐待とか、
 子どもが母親を殺すニュースとか、
 俺にとっては絵空事にしか見えない。」


続いて剛の口からは、
最近の陰惨な事件を嘆く言葉が発せられていました。

「年を取って、ふるさとがいいと言う。
 俺はそうは思わない!」


なんだか・・・変だ・・・
ふるさとって、いいと思わないの、剛?

「10代、20代のみんなが、
 おふくろが、親父が好きだ!
 姉ちゃんが好きだ!
 弟が好きだ!
 これ、最高よ!」


部分部分で言っていることはわかるのですが、
少し流れがイマイチなMCでした。
そのため、剛が何を言いたいのかが、
今一つピンときませんでした。

高く両手を上げて、左右に振りながら、
この日、唯一、演奏中に友人と話をしました。

「いまのMC、ちょっと変だったよね?」

「えっ・・・うーん・・・」

「なんか、変じゃなかった?」

「家族と鹿児島は素晴らしいってことじゃないの?」

「そういう・・・こと?」

僕は、剛は少しMCでパニクったと思いました。
無理せず、思ったことを素直に言えば、
もっと自然なMCになるのに・・・
ここまでずっと上がりっぱなしだったテンションが、
すーっと沈んで行くのを僕は感じました。

絶好調だったライブ、
まさかの、失速。


これは、僕だけの、いや、僕と友人だけの、
単なる思い過ごしでしょうか。
今思い出しても、僕はそうとは思いません。
一見感動的なメッセージを送っているにも関わらず、
観客からのリアクションがそれほどでもなかったのは、
このときのMCのまずさがあったと思います。

そう思いつつも、そのあとも、延々と、
僕らは声を上げながら、両手を左右に振り続けました。
僕はなんだかひんやりした気持ちになっていました。
いまの剛のメッセージ、良くなかったなあ・・・
と思いながらも、従順に周囲に合わせている自分に。
僕は自分自身に対して、なぜだか悲しくなり、
そして、ほんの少しイライラしていました。

剛本人も、うまく気持ちを表現できなかったと、
内心、唇を噛み締める思いがあったと思いますが、
それよりも僕が気になったのは、
この剛らしからぬミスが起きた理由でした。

第一部が終わることで、気の緩みが出たのか?
それとも、なにか気になることがあって、
集中力が落ちたのか?

そんなことを悶々と思っているうちに、
長い、長い、『LICENSE』が終わり、

「すばらしいよ!」

と剛が言いました。

僕には、その言葉が、なんだか、
吐き捨てるような言い方に聞こえました・・・



P.S. 

「MUSIC PRESS」での桜島レポートでは、
『LICENSE』でのメッセージを、
 かなりうまく加工処理したものが掲載されています。

「幼児虐待とか、
子供が母親を殺すニュースとか、
俺にとってはまるで絵空事に思える毎日だけど、
若い皆が、父ちゃんや母ちゃん、
兄弟が大好きだと叫べる世の中であってほしいんだ。
歳を取ってから言うんじゃない。
若い皆がそう言えること、
それが最高なんだよ!」




<次回予告>
『LICENSE』で終わりではなかった第一部。
ゲストが集団で続々登場!
歓声と戸惑いが交錯するライブ、最初のエンディングへ・・・。

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青春のクラッカーを鳴らしましたか? (桜島ライブ25)

2004年09月22日(水)

『青春のクラッカーを鳴らしましたか?』−桜島ライブ(25)

                 text  桜島”オール”内藤





フェリーに乗るのに、フェリー乗り場から逆の方向に歩いていく人たち。
はるか、はるか離れた乗船待ちの列に並ぶために・・・。
桜島フェリー乗り場の階段から撮影。


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M-14 勇次 −アルバム『Hungry』(1985)−



このライブは違う・・・。

いつものライブとは全然違う・・・。


そんなことは来る前からわかっていたことですが、
『くそったれの人生』が終わった瞬間、
耳をつんざく爆発音と共に、
耳慣れたキーボードの音色を聴いた僕は、
そのことをあらためて
目の前に突きつけられた思いでした。

最初は、なにかの間違いかと思いました。
似ているけど、別の曲ではないかと。
またはライブの熱狂で、自分自身、
わけがわからなくなっているのではないかと。

でも、そんな迷いを打ち消すように、
剛が叫びました。

「勇次、歌うぞーっ!」

紛れもなく『勇次』!

えーっ、ウソだろ!

そんな声が周りから聞こえました。
僕もまったくもって同感。

慌てて拳を突き上げた僕ですが、
頭の中はパニック状態でした。
このライブのハイライトで待っていると、
勝手に確信していたこの曲が、
まだ、2時間しか経っていないこの時間に、
朝まで続くオールナイトライブの、
日付も変わらないこの時間に、
なぜ演奏されているのかが理解できなかった。

いいの?
この曲、ここでやっていいの?
という感じ。

1989年、昭和ツアーの東京初日、
ライブで聞いた『勇次』が耳にこびりついて、
翌日、近所の新星堂に行った。
剛のアルバムのコーナーのCDを、
一枚、一枚、曲名を確かめながら手に取った。

あった・・・
アルバム名は『Hungry』。
剛がメークしてニワトリと写っているジャケット。
『勇次』を何度もリピートして聴いた。
何度聴いても、胸がしめつけられた。

それからずっと、
僕が通ったすべてのライブで、
一度も欠かさず僕らを熱狂させてきた『勇次』。
毎回、毎回、よくも飽きずに、
と自分でも思うけれど、
この桜島でもやっぱり、
『勇次』のイントロを聴いて、
胸の奥にしまっていた青春が騒ぎ出すのです。

そんな、
長年、剛のライブで圧倒的な輝きを放ってきた『勇次』。
アルバム『Hungry』以降、
誰もが認める、剛のナンバーワンソング。
当然、桜島でもそれにふさわしいポジションが、
用意されているはずだと思いました。

しかし、紛れもなく、剛は歌っていました。
まだ序盤も序盤の、このタイミングで、
『勇次』をいつものように、歌っていたのです。


勇次 あのころの
空を忘れちゃいないかい
勇次 あのころの
エネルギッシュな おまえが 
欲しいーっ!



やがて、曲は2番に移り、このとき、
剛は出だしの歌詞を忘れて

「#△X%$&^*のシアターっ!」

と大急ぎで言葉を探して歌っていました。

「ヒュー、ヒューッ!」

剛のミスをはやし立てる歓声も上がりました。
猿も木から落ちる。
思わぬ代表曲でのとちりに、
剛も笑ってごまかしていました。

そして、ライブの『勇次』の2番と言えば、
そう、クラッカー!

前日コンビニを何軒も周り、
どうにか調達して持ってきたクラッカーで、
僕も友人も、恒例のクラッカー鳴らしに参加。
実は、剛のライブにクラッカーを持っていったのは、
これが初めてでした。

幸運なのか残念なのかわからないことですが、
Aブロックにいたために、
クラッカーを鳴らした瞬間、
多く見積もっても1000人に満たない観客が鳴らす
クラッカーしか見れませんでした。
後ろの方では、いったいどれほどの、
壮観な光景が見られたのでしょうか・・・

全景を見ることは叶わなかったものの、
広い桜島の会場も、数万発のクラッカーから放たれた、
火薬の匂いで爆発しそう。

まだ第一部だというのに、燃えに燃える桜島。
その燃えたぎる勇気の花たちめがけて、
ホースで水をぶちまける剛。
Aブロックの前半分が、その水をかぶっては、
大騒ぎして喜んでいました。
僕のところまでは、ギリギリ届かない水でしたが、
その代わりに僕は自分の汗をまき散らしながら、
ちぎれんばかりに拳を上げて歌いました。

帰りたい!
帰れない!
青春と 呼ばれた 日々に


ふと見ると、
普段そんなに熱く燃えない友人も、
力強く拳を上げている。
これが『勇次』だ。

その『勇次』がなくても、
この先、6時間先まで、朝まで、大丈夫なんて、
スゴイことだと思いました。

ひとつには、『桜島』の存在を感じました。
ある意味、『勇次』を越える、強力な歌、
それが『桜島』です。
ZEPPの『桜島』の迫力は、ほんとに物凄かった。
あれがあるから、今『勇次』のカードが切れるんだ、
まずは、そう思いました。

でも、でも、それだけじゃないような・・・
そう、あの曲の存在。
誰もが待ち望んでいる、あの伝説の曲の存在が、
否応なしに迫ってくるようでした。

必ずやるはず!と願いつつも、
いまひとつ自信が持てなかったのですが、
『勇次』という切り札をここで出したことによって、
かなり確率が高まったように思いました。

燃焼系の拳上げも最高潮の中、
気がつくと、剛は、ステージ上にぶっ倒れていました。
以前の剛なら、『勇次』で力尽きたか!
と思ったかもしれませんが、今の剛が2時間程度のライブで、
力尽きるはずがない。

安心してステージに送るツヨシコール。
『勇次』で燃え上がった大観衆のコールが、
倒れた剛に降り注ぐ。

ぐったりと横たわり、顔を伏せながらも、
チラッと目を開いて、観衆のリアクションを確かめた剛。
頃合いを見計らって、うつぶせのまま、
体をまっすぐに伸ばすと、
拳をステージに立てて、腕立て伏せ。

「うぉおおおお!」

と盛り上がる大観衆。
10回ほどの拳腕立てのあと、立ちあがった剛。

「シャアアアアアアーッ!」

絶叫で、『勇次』に引導を渡す。

とにかく意外性満点。
白熱のライブはこのまま、
第一部エンディングになだれ込むのか?
と思わせました。
磐石に思われたライブ展開。
しかし、次の曲で、

やや、不可解な局面・・・あり。



続く


<次回予告>
絶好調のライブ、まさかの失速!
感動のMCとなるはずが、言葉に心が感じられない・・・
剛、どうしたんだ?

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群れから離れっぱなしですか? (桜島ライブ24)

2004年09月21日(火)

『群れから離れっぱなしですか?』−桜島ライブ(24)

                 text  桜島”オール”内藤





ホテルのロビーではありません。なんと、桜島フェリーの中の一部。
20日、グッズを抱えて、錦港湾を見下ろしながら、
ソファーに座ってアイスミルクティーを飲む僕らでした。


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M-13 くそったれの人生 −アルバム『昭和』(1989)−



メロウな『ファイティングポーズ』から一転、

「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」

ここ最近の剛のライブで、いつのまにか、
あたりまえのように聞かれるようになった掛け声が、
5曲目の『情熱』以来、
久しぶりに爆発しました。

『くそったれの人生』!

剛の歌に、自分の人生を投影して聴く人は多い。
僕も、剛の歌のここあそこに、
自分の姿を見つけては、
あるときは激を飛ばし、
あるときはいっしょに憤り、
あるときはいっしょに泣いてきたのです。


ほんとのことを言えば
きっと楽になれるさ
ほんとのことを言っちまえば
きっと自由になれるさ

あんちくしょうをぶっ飛ばし
とんずらしようか

だけど俺は この街を 
根城に生きて行こうと決めた
六畳一間の 闇に紛れ

腐った空へ 夢を突き上げても
呼べど叫べど 答えなし



「なんだ、この歌、
 まるでオレの歌じゃあないか!」

こう、心の中で快哉を叫ぶ人間が、
この桜島にいったい何百人いることでしょう。
ひょっとしたら何千人もいたりするかも。

くそったれ!とくすぶった魂が、
剛の歌に共振して、
ゴウゴウとうなりを上げているようだ。


群れから離れっぱなし
ずっと離れっぱなし
遠回りの くそったれの人生!
千鳥足で いつもの路地をーっ!



剛の歌は誰のためにあるのかと言えば、
くそったれの人生を送っている者たちではないか?
と思います。
毎日、毎晩、もがき苦しんで生きている、
誰にも見向きもされない人生を歩んでいる、
そういう、一般庶民のための歌だと。

僕もそういう一般庶民だから、
くそったれ!と思うことが多いから、
『くそったれの人生』が好きだ。

一番好きなアルバム『昭和』の、
オープニングナンバー!
昭和ツアー以来、ずっと演ってくれなかったけど、
2年前のバースデーライブ以来、
よく演ってくれるようになった。

剛が指示を出し、ギターの演奏がやんだ。
演奏がリズムだけになった。
僕らの叫ぶ

ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!

だけが、桜島にこだまする。
力強い叫び、くそったれの人生たちの叫び。

僕は叫びながら、
マフラータオルを空に向かって、
ぶんぶん振りまわしました。

剛、あんたも、
これだけ派手に成功しているのに、
くそったれの人生の匂いが抜けないね。

群れから離れっぱなし、
ずっと離れっぱなし、
派手に成功している分、
ずいぶん派手に浮いてるよ、
芸能界や音楽界から。

因果な人生だね。
でも、剛には僕らがいる。

くそったれの人生に、乾杯!



続く


<次回予告>
一瞬、何がなんだかわからなくなった・・・
このメロディがここで? そんなバカな!
誰もが予想しなかった、このタイミングでの代表曲の登場。

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<補足コーナー>

貴重な、桜島で徹夜した方からのお便り。
体験した人ならではの情報です。特別に拡大版で紹介します。


私達はA−4でした。
折角のA−4ブロック、努力すれば一番前で剛に会える!
妻の意見で徹夜する覚悟が固まりました。
以外にも溶岩グラウンドに並んでいる人は少なくて、
私達が着いた時点で、
Aブロックに並んでいるのは50人ほどでした。
このとき、全員がA−4でも確実に最前列はゲット!
と確信しました。

午後2時、ようやく移動が始まりました。
誰も居ない溶岩道路を皆で歩くのは気持ちの良いものでしたよ。
そしていよいよ会場のゲートをくぐると
広大な会場に巨大なステージ。
そしてブロックには誰もいない!
その「新品」とも云える会場をカメラに収めました。
誰もいない会場をA−4ブロックを目指して歩く。
その時、あの豪雨があったのです。

並んでいた溶岩第二グラウンドを出る時、
スタッフから説明がありました。
「この現在並んでいる順番で移動し、
会場に入ってからも歩いてブロックまで移動して下さい。
決して走って順番を狂わせる事の無いように」と。
じつは夜中にスタッフに言ったんですよ、
「皆が徹夜で並んでいるから、
この順番が狂うと並んでいる意味がなくなる。
子供も居るので走ったりしないような
会場入りの方法を考えてくれ」と。

そして当日にも並んでいる人達全員で
「割り込みも許すな」と固い決意で会場まで移動しました。
しかし、バカな奴が二人ほど居て
私の横を平気な顔して歩いていました。
私はどちらかと言うと「やんちゃ」な人間ですので・・・
「おい兄ちゃん!割り込みか?
俺ら徹夜で並んでこの位置を歩いてんねん、
自分の位置に戻れや!」
と言うと周りの仲間も「そうだそうだ」と一斉に攻撃!
これでは割り込んだ人も分が悪いと思ったのか
黙って下がって行きました。
37歳にもなって情けない気も致しますが、
誰かが言わなければ平然と割り込みされてしまう。
そうなればZEPPでの繰り返しになりますからね。
同じファン、誰もが近い位置で剛に会いたい。
その気持ちは十分理解できます。
ならば早くから並べば良いんです。
私達がそうしたように。

徹夜で並んだAブロックはこんな感じで会場入りしました。
入ってからも猛暑で疲れましたが、
剛の登場で飛んでしまいましたよ、そんな疲れ。
オール内藤さんが書いてたように
「自分の為のコンサート」でしたね。
生きていれば色々と苦労もあります。
私も様々な苦労をしてきました。
常に剛の歌声に励まされ乗り越えてきました。
そんな苦労を妻も知っていますので、
剛に掛かるお金については一切文句は言いません。
頭の下がる思いで一杯です。
世の中に長渕剛が存在していなければ、
今頃私は生きていないと思います。
剛に励まされ、妻に支えられ真っ直ぐに生きています。


(Yさんからいただいたメールを抜粋しています)


精一杯のポーズをキメましたか? (桜島ライブ23)

2004年09月20日(月)

『精一杯のポーズをキメましたか?』−桜島ライブ(23)

                 text  桜島”オール”内藤





これも、かなり買おうかどうか迷った剛うちわ。
とにかく、手ぶらがいいだろうと最終的には決断して買わず。
当日は短パンに白Tシャツ、ランニングシューズ、
マフラータオル、チケットホルダーwithメモとペンという出で立ちでした。
それから、食料と水を入れたリュック、ポケットには携帯カメラ。


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M-12 ファイティングポーズ
 −アルバム『Hold Your Last Chance』(1984)−



激しい『お家へかえろう』が終わるやいなや、
アコースティックギターが奏でたのは、
ミディアムテンポのメロディ。

アルバム『Hold Your Last Chance』から、
渋〜い選曲。

世界一いかした『ファイティングポーズ』!

剛の歌で僕がもっともしびれるのは、
情景の切り取り方。
まるで、そのシーンに、
聴いている自分がいるかのように感じさせてくれる、
剛のラブソングの情景描写に、
僕はしびれてしまう。

『ファイティングポーズ』なんて、その典型!


年をひとつづつ 取って行くたびごとに
とても 寂しがりやに なってきた
俺の部屋には ひとりの自由さと
脱ぎ散らかした スニーカーが転がっている

ピアノと椅子とギターと譜面とタバコで
昨日までの いきがってた人生を
歌ってみたって 寂しさは容赦なく
夜の真っ只中を つき抜けて行く



そのときの剛の部屋にトリップするような、
そして、自分が剛になってそこに存在するかのような、
リアルで生々しい描写。
詩の世界が自分の感情と共振する実感を噛み締める。


背中を焦がすほどの いかした俺の
ファイティングポーズ
一発で叩きのめすほどの 俺の
ファイティングポーズ
だけど鏡をのぞきこんだら
倒れそうな 自分がいたよ



そんな弱々しいファイティングポーズを演じているのは、
真っ赤なタンクトップの剛でした。
気付けば、このライブ中、
すでに何度もタンクトップを着替えていた剛でした。
すぐに汗だくになるからでしょうが、
ピンクや、青や、赤。いろとりどりの剛のタンクトップ。
そして、頭には、ニット帽。
特にこのニット帽が、この曲のイメージにぴったり。


今夜はなぜかロンリーナイト
だから今夜はなぜかロンリーナイト
だから今夜はもっとロンリーナイト
だから今夜はもっとロンリーナイト



剛の歌に合わせてコーラスが美しい。
いつの頃からか、剛のライブでおなじみになった、
コーラスの女性陣。
『ファイティングポーズ』の寂寥感を盛り上げる、
きれいな、きれいなコーラスでした。

僕は靴を脱いで、
シートの上で体を揺らしました。
すごく心地いい。
桜島の地面の感触が、
薄いシートを通して足の裏に伝わってくる。
あらためて、この場所にやってきて、
こうしてライブに参加している
しあわせを感じていました。


Fighting! Fighting!
Fighting! Fighting!
Keep on Fighting!



2年前のバースデーライブのように、
『ファイティングポーズ』を歌いながら、
剛はKeep on Fightingのフレーズを歌っていました。
アルバム『Keep on Fighting』のタイトル曲の、
元になった、あのフレーズ。

そして、歌いながら、筋肉ポーズ。
力こぶを盛り上げて、
桜島を焦がすほどのファイティングポーズ。

歌いながら、踊りながら、僕の魂は
『ファイティングポーズ』の詩の中に吸い込まれて、
桜島の空中を浮遊していました。
剛と同化して、薄明かりの中で踊っていました。

そうこうしているうちに、
時間は11時半を回っていました。
『激愛』を除いて、
ZEPPの前夜祭で演奏した曲で占められた、
桜島ライブの第一部。

疾風怒濤、驚きと失速の、
第一部エンディングへ向かって、
突き進もうとしていたことは、
まだ、知る由もありません・・・。


続く


<次回予告>
第一部ラストスパートの口火を切った、庶民の歌。
超名盤『昭和』のオープニングナンバー。
共感を超えた共感を呼ぶあの歌を、声の限りに歌いました。

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割腹自殺する夢を見ましたか? (桜島ライブ22)

2004年09月19日(日)

『割腹自殺する夢を見ましたか?』−桜島ライブ(22)

                 text  桜島”オール”内藤





買おうかどうしようか、迷ったタンクトップ。
結局やめて、白のTシャツを買いました。
タンクトップとはいえ、黒は日光を吸収するので、
当日桜島に向かうまでの間、暑いかなあと思いました。
結局、何を着ようと暑かったわけですが(^o^)。


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M-11 お家へ帰ろう −アルバム『JEEP』(1990)−



首から下げたハーモニカを、
ワンフレーズ、軽く吹き鳴らしてから、
剛が語りました。

「1990年に作った歌で、
 『お家へ帰ろう』という歌があります。
 最近テレビ見たりしていると、
 腹が立って、腹が立って、
 虫唾が走る思いでねえ。
 7万5千人で、
 けっ・・けっき・・・けけっき・・・
 はは、ゴメン、ゴメン。
 決起集会をするんだからと、、
 2004年版を作ってきたから。」


わーっと盛り上がるA−5ブロック。
そこだけじゃなく、後ろの方からも、
期待感にあふれた歓声が沸き起こりました。

噛み噛みでうまく言えなかった
「決起集会」
という言葉が妙に引っかかりました。

これって、決起集会?

という素直な疑問。
40代の剛らしい言いまわしではあると思います。
とにかく膨大な人が集まっている=決起集会という、
そういう連想をする最後の年代かもしれません。
とくに意味はないと思うのですが、
僕自身、

桜島ライブってなんだろう・・・

という疑問を抱えての参加ということもあって、
剛のこの一言は妙に印象に残りました。

まあ、それは置いといて、
ZEPPでも両日演奏し、インパクトを残した

『お家へかえろう』の2004年版!

4本のギターがかき鳴らされ、
弾き語りのまったりした空気が一変。
寝た子を起こすような、
ザラザラしたサウンドが闇夜を割く。
観客の8ビートの拍手がリズムを刻む。


ささくれ立った薄汚ねえ 古畳の上
割腹自殺する 夢を見た
昼間っからゴロゴロ ごろつきまわり
セブンイレブンで くさい女をはじく


冒頭の歌詞だけがオリジナルと一緒だけど、
それから先は2004年バージョン。
歌い込まれているのは、もちろん社会問題。


小泉さんちに飾ってある 
ブッシュとのツーショット
核爆弾の作り方を 聞きに行こう!

ああ、明日の朝! ああ、国会議事堂に行こう
ああ、ションベン ひっかけて
ああ、お家へかえろう!



ラブソングや自己鼓舞型の歌が主体の剛ですが、
ときおり、アジテーションや社会性を帯びた曲を発表しています。
『JAPAN』『親知らず』『静かなるアフガン』・・・
その中の一曲である『お家へかえろう』は、
この桜島で最初に演奏された社会派ソングでした。
これも、間違いなく、剛の歌の世界のひとつ。

別にそのまま歌ってもいいと思うのですが、
かなりの歌詞のリメークに剛が取り組んだ。
しかも、ZEPPの直前に、ホテルで・・・

ということは、それだけ、剛が今、
歌にしたい憤りがあったということだと思います。
社会や政治に対しての憤りを。

反・ブッシュの戦争
反・小泉政権
反・北朝鮮

そんな剛の立場が、歌詞から伝わってきましたが、
勇ましい剛のボーカルと、
幾重にも重なったギターの音を聴きながら、
僕は・・・

つい数分前までのやさしい弾き語りの剛から、
過激な歌詞をシャウトする、このときの剛へと、
すぐにシフトチェンジすることができずに、
クラクラする思いで手拍子を合わせていました。

いつものライブより、
一曲一曲に深く入り込んでしまう桜島の不思議な空気。
それだけに、目まぐるしく展開する、
多面的な剛の歌世界にグラグラと揺さぶられ、

こりゃあ、体力的だけじゃなく、
精神的にも油断のならないライブだ・・・


と、ますます身が引き締まる思いでした。

休憩が挟まれるとは聞いていましたが、
その休憩がいつ、何回あるのか、
まったくわかりませんでした。

目の前で繰り広げられているライブの第一部。
はたして、これがあと数曲で終わるのか、
それとも、まだまだ何時間も続くのか、
それさえも、まったくわからないのです。
ライブが何部に別れているのかすらわかりません。

2時間なり3時間で終わって、
そのあとアンコール、
そして、さようならまた来てね、で終わる、
通常のライブの常識。

そんなものは、まったくあてにならない、

ゾクゾクするような非日常的ライブ。

何が待っているのか予想のつかないライブ。
これが、これこそが、本物のライブなんだ・・・

そんな僕の思いだけが、
『お家へかえろう』を刻む剛のピックで、
激しくかきむしられていました。



続く


<次回予告>
メロウなメロディに合わせて体を揺らす気持ち良さ。
靴をぬいで、タオルを頭からかけて踊った。
熱い桜島も、いまだけはなぜかロンリーナイト。

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茶目っ気を持ち続けていますか? (桜島ライブ21)

2004年09月18日(土)

『茶目っ気を持ち続けていますか?』−桜島ライブ(21)

                 text  桜島”オール”内藤





かなり販促活動のアルバイトから勧誘された、剛カード。
僕も作りました、このカード。
保存版で普段はまったく使わないので、
ファンクラブの会費引き落とし専用カードです(笑)。


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M-10 ひざまくら −アルバム『逆流』(1979)−



向かって左のサブステージで、
『逆流』と『俺らの家まで』の2曲を披露。
だから、『夏祭り』のほかにも、
右のサブステージでも、もう一曲。

「これも知ってるかな?」

そういうと、イントロもほとんどなく、
剛はやさしく歌い出しました。

おまえの ひざまくらが とっても
おいらにゃ 心地よい から
しばらく このままで
いておくれ
優しさに 埋もれて いたいんだ


ゆっくり、ゆっくり、
言葉を置いていくように歌う剛。

叫ぶのではなく、
つぶやくのでもなく、
首をわずかに左右に揺らしながら、
自然と歌詞を口ずさむ観客。

今夜 眠るよ
おいら このままで
今夜 眠るよ
おいら このままで

落ちつける 場所は
おまえのーっ! ヘイ!


ひざ、まくら
ひざ、まくら


この曲でも、またまた大合唱。

間奏で、笛吹(うすい)さんのバンジョーが入ってきた。

「よく知ってるねえ」

剛の語り口の柔らかさ。
客席の暖かな雰囲気。
弾き語りの曲は、すべてがすべて懐かしい。
これが平成16年のライブの風景とは、
ちょっと信じられない。

剛に限らず、昔に比べると、
曲の長さとライブの長さは増加傾向にあります。
『ひざまくら』は昔の曲だけあって、短い歌です。
剛に合わせて気持ちよく歌っていたら、
あっという間に歌詞が終わってしまいました。

しかし、実は、このあと、
僕には楽しみにしていることがありました。
それは僕にしてはかなりマニアックな楽しみです。

剛はこの『ひざまくら』を、
ZEPPの前夜祭2日間でも両日演奏しています。

僕は2日目しか行けていないのですが、
1日目を観に行った知り合いにこう尋ねました。

「剛が『ひざまくら』のときに、
 なんだからしくないセリフを入れていたけど、
 初日はどうだったの?」

剛はこんな感じのことを話していたそうです。

「みんなが俺の歌を歌ってくれてるときが、
 ほんとに最高なんだよ・・・。
 今、ふと、歌っているときに、
 それ、言ってみようと思ったんだよ、
 ハハハ・・・・

 ・・・言ってみようかな。」


そう言うと、ほんとに、
最後のところから演奏とセリフをやり直したそうです。

「俺、こうやってみんなが、
 俺と一緒に歌ってくれるときが、
 一番しあわせなんだ・・・
 8月21日の桜島では、
 俺の声がつぶれたら、
 おまえらが、俺の代わりに、
 歌ってくれよォ!」


もう、物凄い大歓声で盛り上がったとのこと。

なるほど・・・
これを受けて、2日目の

「俺は、なんやかんや言っても、
 おまえらといるときが一番幸せだーっ!
 愛してるよーっ!」


という、文字にすると普通ですが、
実際にその場で聴くと、妙に芝居がかっていて、
しかも剛が半笑いという・・・
実に妙な(おもしろかったけど)セリフにつながったのです。

さて、そこで、マニアックな興味としては、
ZEPP二日間、事実上の桜島の公開リハーサル。
そこで、はっきりわかる形で進化してきた、
『ひざまくら』セリフ・インサートが、
本番でどのような完成形を見せるのか。

いよいよそのときがやってきました。
スクリーンを凝視していると、
剛、半笑いではないものの、
どうも表情に真剣味がない(^_^;)。

「僕はァ、キミといるときが
 一番、幸せなんだァ
 僕はァ、なんやかんや言ったって
 君たちの前で歌っているときが、
 一番、しあわせなんだァァ!」


と、ますます加山雄三化していました。
僕は、『ひざまくら』を聴いているのか、
『きみといつまでも』を聴いているのか、
わからなくなりました。(ウソ)

いたずらっ子みたいな顔をして、
こんなセリフをインサートして、
最後にとうとう笑い出した48歳目前男(当時)。

その、くさいセリフと言いまわしに、
僕もつられて吹き出していると、
僕よりちょっと前で観ていた女の子が、

「わたしも、シアワセーっ!」

と絶叫しつつ、泣きそうではないか。
剛・・・罪な男だ。

そんな、剛の茶目っ気もかいま見えた
『ひざまくら』が終わり、
剛がセンターステージに帰ってきました。

現金なもので、剛が見やすい位置に戻ってきたことで、
またまた、活気が戻ってきたA−5ブロック。

いつのまにか、ステージ中央では、
なにやら弦楽器部隊が、
椅子を並べてスタンバイ。

ZEPPでも見た、この光景。
あの曲の、2004年版だな・・・
と、確信しました。


続く


<次回予告>
桜島のための替え歌その1が、荒々しく届けられた!
常に何かに憤っている男、剛が、
最近のテレビや新聞を見て怒っていることとは?

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この歌の良さがわかりますか? (桜島ライブ20)

2004年09月16日(木)

『この歌の良さがわかりますか?』−桜島ライブ(20)

                 text  桜島”オール”内藤





剛ミネラルウォーターは、24本入りの箱でも発売。4800円。
一本200円は、かなりぜいたくなミネラルウォーター。


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M-9 夏祭り −アルバム『長渕剛LIVE』(1981)−



剛が、次の曲のコードのポジションの音を出して、
準備をしていると、
にわかに沸き起こる歓声。
僕にもバッチリわかりました。

「ちょっとポジション確かめただけで
 次の曲が何だかわかったの?
 間違えるとまずいからな。
 よく間違うんだよ、最近。
 まあ・・・夏だし・・・」


このヒントで、たいていのファンも気付いたらしく、
さらに歓声が飛んでいました。

「昔の歌、歌うのはね、
 恥ずかしいっていうのもあんのよ。
 だからさあ、
 みんなで一緒に歌おうな!
 ギター小僧はみんな、
 こぞってこの曲を勉強したはず。
 これが本家本元、
 スリーフィンガーじゃい!」


と、本人が腕前を豪語するだけあって、
心地よい、完璧なリズムのイントロ、ギターソロ。
おー、今日も調子いいなあ・・・
と思ったのもつかのま、突然、爪弾くのをやめた剛。

まさか、間違ったのか?
いや、そんなはずは・・・

「な〜んで、こんなにうまいの、俺?」

と、自分で自分のテクに感動してのストップでした。

カリスマなのか、近所の兄ちゃんなのか、
よくわからなくなってきましたが、
とにかく、剛の絶妙なリードのおかげで、
桜島にはハッピーな空気が満ち満ちている。

「剛、うまーい!」

「うまい!うまい!天才!」

観客から沸き起こる笑いと歓声に剛も応える。

「ゴメン!うまくてゴメン!」

まだまだ序盤戦のオールナイトライブ、
これから先、ひと波乱も、ふた波乱もあるに違いない。
弾き語りコーナーの、ひとときの安らぎ・・・。

ふたたび演奏をはじめて、
叙情たっぷりに

季節もピッタリ!『夏祭り』!

剛のスリーフィンガーに合わせて、
みんなも僕も歌いました。
夏の終わりのはかなさを感じさせるこの『夏祭り』。
同じ祭でも、過酷なオールナイトライブとは全然違う、
ちょっぴり切ない夏祭りの風景を切り取った曲。
きっと、7万5千人の剛ファンも大好きな曲のはず。

僕は『夏祭り』を聴く時、
いつも一瞬思い出す出来事があります。
桜島で『夏祭り』を聴いた時も、
僕は、何年も前のその出来事を思い出していました。

当時、僕の生活に大きな変化がありました。
住むところから、なにから、全部というくらい、
大きく変わった時期でした。
新しい友人がたくさんできていました。
その中のひとりだった大学生の女の子と、
僕は好きな音楽の話をしたことがありました。

僕は長渕剛が好きだ、という話をしました。
彼女は、剛の名前は知っていましたが、
歌はまったく知りませんでした。
その次に会った時、

「聴けば、僕がどうして、
 剛を好きなのか、すぐわかるよ」


そう言って、僕は、
ベストアルバム『いつかの少年』を、
彼女に貸してあげました。

アルバム『いつかの少年』の一曲目は、
『夏祭り』でした。
この、『夏祭り』から始まるというのが、
初心者の、それも女の子であるということを考えたとき、
ベストの選択に僕には思えたのです。

初めて聴く若い女の子なら、
きっと『くそったれの人生』や、『いのち』や、
『JAPAN』では重過ぎる、と思いました。
『夏祭り』なら、きっと、
無理なくすっと入ってこれる。
そう思いました。

それから数日後に、彼女に会ったときに、
僕は聞きました。

「アルバム、聴いた?
 ねえ、どうだった?」

彼女が言ったことはまったく予想外でした。

「ゴメン。最初の曲聴いたら、
 ああ、これ、つらいなあって思って、
 聴くのやめちゃったの。」


愕然としました。
まったく、彼女には『夏祭り』の世界はNGだった。

普段、彼女はBGMのような曲しか聴いていない。
ほとんど洋楽の、ヒットチャート物。
早口の英語で、何を歌っているのかわからないもの。
あとは、日本の若いバンドのピコピコした音楽。
歌の内容はまるで問題にならないもの。
それが、彼女にとっての音楽でした。

彼女には、剛の良さはまったく理解されなかった。
僕がいいと思ったからといって、
他人がそうとは限らない。
それは当然のことですが、
やっぱりちょっとショックでした。

桜島には、こころなしか、
普段のライブよりも女性の割合が多かったように思います。
僕のいたブロックにも、たくさんいました。

『夏祭り』を歌い、
『勇次』で拳を振り上げ、
『何の矛盾もない』に涙を流していました。

鹿児島、桜島の、
過酷なオールナイトライブにやってきた、
行動力も勇気もある女たち。
志穂美悦子のような、強くて優しい女たち。

僕は好きだね!

剛の歌で涙を流す女の方が。
この歌の良さがわかる女の方が。


いつまで こうして きみと
寄り添い 肩を並べて
来年の夏も 
せんこう花火 できるといいのにね
燃えて散るのが 恋ならば
このまま 消えずに
輝いてくれ・・・



剛、今は、ちょっとだけ、
古い歌が聴きたい気がします・・・


続く


<次回予告>
古き良き日の、弾き語り4部作、完結。
失われた昭和の恋愛風景を弾き語る剛。
そして、ライブはふたたびセンターステージへ。

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髪の毛はサラサラでしたか? (桜島ライブ19)

2004年09月15日(水)

『髪の毛はサラサラでしたか?』−桜島ライブ(19)

                 text  桜島”オール”内藤





野外ライブでは恒例となりそうな、剛ミネラルウォーター。
しかし、みんな食料と水は用意していったので、
あまり売れ行きはよくなかったようです。
ライブ終了後も、売り子が声を張り上げ販売していました。


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M-8 俺らの家まで −アルバム『風は南から』(1979)−



たぶん吉田拓郎がやったときの、
オールナイトコンサートは、
こんな雰囲気だったのではないか。

そういう、懐かしい気分に包まれていました。
経験したことはないけれど、
きっとこうだったのではないかと思っていた、
夢のオールナイトコンサート。

シートに体育座りをして体を揺らしている人、
立って拍手をしている人、
フェンスにもたれかかってリズムを取る人、
そして、『逆流』で目を赤くしている人(僕だ)。
弾き語りコーナーということもあり、
のんびりした雰囲気が漂っていました。

僕も、この日初めて、
持ってきた2リットルのミネラルウォーターで、
喉をうるおしました。

「おまえら・・・最高だな。
 愛してるヨーッ!」


弾き語りのリラックスした雰囲気の中、
剛の語りも、まるで小さなライブハウスで、
少ない客に語りかけるような、
気取らないものが増えてきました。

「みんな、ほんとに遠くから、
 大変な思いをして集まってくれた。
 この7万5千人のみんなには、
 俺のすべてを捧げるつもりでいるから。」


またしても、またしても、
剛の口から聞かれた、感謝の言葉。
こんなにも、繰り返したことはかつてないはず。
暖かい歓声と、ピーピーという口笛が、
剛に向かって飛んでいました。

「こんどは、楽しく歌おう!
 この歌も、俺がまだ髪の長いころの歌だよ。
 ファーストアルバムは、
 『風は南から』っていうんだけど、
 まだ大きいLP盤ってやつでね。
 知ってる人は知ってるかもしれないけど、
 俺、これでも昔は、
 フォーク界のアイドルって呼ばれてたんだ。」


「知らなーい!」と叫ぶ観客、
「今だって、アイドルや!」と叫ぶ観客、
いろいろです。

今も、アイドルって言えば、アイドルかもしれないけど、
ごっついアイドルだなあ・・・(^o^)。

「まだそのなごり、あるでしょ?」

「ない、ない!」

「ぜんぜん、なーい!」

と観客からツッコミが入る。

「髪長くてねえ・・・
 エメロンシャンプー使ってたしねえ。
 すごくきれいだったんだから。
 風は南から〜って(笑)。」


と、『風は南から』のアルバムジャケットのように、
斜め上を笑顔で見上げるポーズを取る剛。
これは、爆笑(^o^)。

「歯、出てるしねえ。へへ。
 きれいな歯だった。
 今もきれいだ、歯は。」


うまい。みんなを笑わせ、和ませる、MC。
みんな、一生懸命、剛の話に耳を傾けて、
楽しそうに笑っていました。

ハーモニカを吹きながら、
ギターを弾きながら、
まだまだ語りかける剛。

「その中に入っている歌を歌おう。
 ねえ、そっち、遠いけどさあ、
 みんなの声、聞こえるかーっ!?
 聞こえるなら、いっしょに歌おうよ!」


うしろのブロックの観客に、やさしい言葉を贈る剛。
そして、今度は左を向いて、

「そっちにもあとで顔出すからよお!」

と、もう一方のサブステージ側の観客にも、
心を配っていました。

ギターが刻む、その聴き慣れたメロディは・・・

『俺らの家まで』大合唱!

この歌も、けして欠かすことのできない、
剛、おなじみのナンバー。
なにしろ、ファーストアルバムの一曲目だ。

春の風が 表通りを
通りぬけて ゆくのに
知らん顔は いじわる
そろそろ 電話待ってる


「春の・・・」と歌った直後から、
大合唱がスタート。
ときおりライブでも歌われる、
『俺らの家まで』ですが、
この野外のリラックスした中で大合唱していると、
まるで、30年前にタイムスリップしたよう。
昭和の雰囲気満点でした。

A−5ブロックはけっこう歌っていたと思うのですが、
どうも、サブステージのあるA−3ブロックあたりは、
いまいちの合唱率だったらしく、

「歌えよ、おまえらあ!」

と剛に言われてました。
ものすごいくだけた雰囲気。
剛にはまったくかしこまった感じがありません。
まるでクラスメートに囲まれて歌っているみたいだ。

機嫌なおして・・・

ツヨシ!

お約束の掛け声に大きくアクションを取りながら、
笑顔を浮かべる剛。
たぶん・・・
この掛け声が聞きたい、
7万5千人に名前を呼ばれたい、
それだけのために、剛は、
この曲をやっているんだと思います。

演奏が終わって、
ハーモニカを投げ入れて、

「今度は向こうに行くよ!
 ゴメンね!」


と、僕らの前のメインステージを横切って、
逆側のサブステージに向かう剛。
A−6ブロックあたりは、
ツヨシコールでお出迎えしていました。

さっきのサブステージよりは、
若干近い距離でしたが、
今度は、人の頭で、ぜんぜん見えない。
肉眼はあきらめて、スクリーン鑑賞となりました。


続く


<次回予告>
まだまだ続く弾き語り。
音のポジションを確かめただけで、歓声!
夏だから・・・スリーフィンガーのあの名曲。

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一歩前の道を歩いていますか? (桜島ライブ18)

2004年09月14日(火)

『一歩前の道を歩いていますか?』−桜島ライブ(18)

                 text  桜島”オール”内藤





買おうと思ったけど、Lサイズオンリーだったので、
やめといた青Tシャツ。(僕はMサイズ)
ライブ当日は、かなり着ている人がいました。


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M-7 逆流 −アルバム『逆流』(1979)−



『激愛』で、すっかりクールダウンした会場。
でも、気温が下がったわけではありません。
暑苦しくはないけど、
汗まみれのTシャツがひんやりすることは、
朝まで、ついぞ、ありませんでした。

「そろそろ弾き語りでもやろうかな」

そう剛が言うと、わーっ!と歓声を上げた、
僕らのいるA−5ブロックでしたが、
向かって左のサブステージに
剛が向かおうとしているのを見ると、

「えーっ、剛、いかんといてーっ!」

と、ごねる声が飛ぶ。

「だいじょぶだよ。
 まだたっぷり時間あるんだから。」


と剛。
そりゃそうだ。

だいたい、ここまでの1時間、
最高の位置から剛のライブを楽しみました。
ブロックが良かろうと、悪かろうと、
みんな遠くから、全国から、
集まってきた剛ファン。
僕らだけがいい思いをしすぎては
バチが当たるというもの。

できるだけ、
いろんなところで演奏しておいでよ。
そんな気持ちでした。

さっきまで、表情まで読み取ることができるくらい、
近くにいた剛が、
あれよあれよと言う間に、
遠いサブステージに歩いて行きました。

ステージの横から、客席に向かって、
伸びるように突き出したサブステージは、
僕の位置から60〜70メートルくらいの距離でしょうか。
人の頭で剛の上半身しか見えません。
背伸びしながら、そして、
スクリーンで表情を確認しながら、
剛の姿を追いました。

逆に、剛が近くにきたA−3、4ブロックあたりでは、
ワーワーと歓迎の声を上げていました。

ここからはバンドは休憩時間。
剛だけの弾き語りコーナーです。
剛が遠くなったこともあり、
僕らはいくぶんリラックスした気分でした。

さあ、弾き語りの一曲目は?
ギターとハーモニカの音を確かめる剛。
ポジションを確かめる音を聞いただけで、
わかった!

約束どおりの、『逆流』!

ZEPPで、
「これ、桜島で歌おうか?!」
と言ったとおりです。

「俺のファーストアルバムから、
 ちょっとやってみようか。」


ヒュー!ヒュー!と、歓声が応える。

「逆流って歌、知ってる?」

知ってるとも!
『逆流』が入っているのはファーストじゃなくて、
セカンドアルバムだけど・・・(^_^;)

剛は、デビューする前から、
ずっと『逆流』を歌っている。
だから、収録したのはセカンドアルバムだけど、
ファーストアルバムに収録したような勘違いをしたのでしょう。

そんな些細な間違いなど、
剛のアコギの音色が吹き飛ばした。
ハンマリングオンとプリングオフが織り成す、
軽快な演奏が、桜島の夜空の下、なんとも心地よい。

「もっとギターの音、上げてくれる?」

剛の演奏位置が変わったので、
音声さんも調整が大変だ。

僕が ここを 出て行くわけは
誰もが 僕の居場所を
知ってたから あああ
優しさを敵に 回してでも
生きてる証が 欲しかった


ZEPPよりも、いい。
たぶん、剛から見て、
視界がわーっと開けているせいでしょう。
その気分が、演奏に乗り移っているように思いました。
声もすごく伸びている。

それに、僕の位置からは、
演奏する剛の背景は、桜島の夜空。
ぎっしりのおびただしい数の人の頭が、
剛の足下に敷き詰められ、
そこから浮き立つように、
ギターを弾きながら歌う剛が見えました。

なんていう印象的な光景・・・
『風の谷のナウシカ』で、
オームが作った金の道をナウシカが歩くシーンを、
僕は思い出していました。
ギターを持った剛が、ゆらめく人波の上を、
歌いながら歩いているようでした。

やつが ブーツのボタンを 
外していようとォ!
やつが人の生きざま
バカにしようともォ!

一歩前のォ! こーの道をォ!
行かな ければ
だって 僕は僕を 失う ために
生きて きたんじゃなーい!


この、サビの部分の感情の込め方、最高でした。
グイグイと引き込まれました。
剛はずいぶん遠くに行ってしまいましたが、
そんなのお構いなしに心をつかまれた。

もちろん、僕だけじゃない。
間奏のハーモニカのとき、
それほどベストのブロックではなくなった、
A−5ブロックの観客からも大歓声が上がりました。

ますます盛り上がる『逆流』。
最初に聴いたアルバム、
『Never Change』に入っていた、
セルフカバーの『逆流』を聴いて以来、
何度かライブでも聴いてきたこの曲が、
今、最高の輝きを放って、僕を感動させていました。

3回目のサビの繰り返しのあと、
演奏を止めた剛。
余韻を噛み締めるように間をおいて、
7万5千人に万感の思いをこめて叫びました。

このときの剛の言葉を思い出すと、
今でも胸が熱くなります。

「ねえ!
 俺、もう、涙出てるよォ!
 サイコーだよ、オイ!」


僕はその瞬間、喉元のあたりに、
なんともいえない感情がこみ上げてくるのを、
抑えられませんでした。

「だって、俺たち、
 信じて、一歩前の道を、
 ずっとずっと突き進んで生きてきたから、
 今、ここで、
 こんなことできてんじゃん!
 ねえ、違う?
 サイコーだよねえ!」


感動で震えた。
全身に電気が走った。
こんなに、説得力のある、MCは、
聴いたことがなかったから。
剛の言うことに、何の矛盾もなかったから。

感情のはけ口を探し求めるかのように、
剛はふたたび『逆流』を歌い出しました。

一歩前のォ! こーの道をォ!
行かな ければ
だって 僕は僕を 失う ために
生きて きたんじゃないー!


あんな感動的なMCのあとで・・・
反則だァ、剛。
必死で涙をこらえました。
危なかった・・・
友人がいたから、こらえたけど、
ひとりだったら、完全にやばかった。
今考えたら、別にこらえることなかったけど・・・。

「これ、俺がね、
 19歳のときに作った歌。へへっ。
 今もまったく変わんねえや!」


ほんとだよ。ほんとに変わらない。
この頑固者!
28年も変わらない、頑固者。

最高って、何度も安易に言わないよ。
よっぽどのことがないと、言わないよ。

サイコーだよ、剛。

30年近く前に作った曲、『逆流』・・・
何も変わらない、今の剛の『逆流』・・・
ほんと、サイコーだった。
ありがとう。


続く


<次回予告>
すっかりリラックスムードの桜島。MCも絶好調の剛。
フォークソングの王道とも言える、あの曲にすっかり癒されました。
気分は、まるで・・・70年代?

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直立不動で聴きましたか? (桜島ライブ17)

2004年09月13日(月)

『直立不動で聴きましたか?』−桜島ライブ(17)

                 text  桜島”オール”内藤





「MUSIC PRESS」。僕も今日買いました。
表紙だけじゃありません。
カラー15ページの桜島ライブ大特集!870円。


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M-6 激愛 −アルバム『昭和』(1989)−



「おおおおーっ!」

それを歌うのか!というニュアンスが入った、
感嘆の声が多くの観客たちから上がったのは、
スローテンポのイントロが流れた瞬間でした。

深く静かに地に潜って行くような、
そのメロディに、
『情熱』でざわめいていた客席は、
一気に静まり返りました。

振り上げる拳、ただのひとつもなく、
声援を飛ばすことなく立ち尽くし、
暗めのライティングで照らされたステージに目を向ける。
この桜島ライブで、初めて訪れる観衆の静寂。

『激愛』!

気持ちを切り替えるかのように、
イントロのメロディを、目を閉じて聴く剛。
ステージに両足を踏ん張り、
滝のような汗を吹き出しながら、
切々と、切々と、歌いました。

舌を噛み切った
絡み合う 唇のなか
二人はよじれ合い
激しく 揺れていた


お祭り騒ぎで上気した脳みそに、
冷や水をぶっかけるような、
あまりにも凄惨な歌詞の内容。
『情熱』で思いっきりハイに入れて、
『激愛』で思いっきりロー。
この揺さぶり・・・やるなァ、と思いました。

シングル『とんぼ』の大ヒットのあと、
リリースされたシングル『激愛』・・・。
当時は『とんぼ』でファンになった人が多く、
その流れで買った『激愛』の凄まじさに、
大変な衝撃を受けた人も多かったはず。

この僕も、
初めて聴いたアルバム『Never Change』、
初めて買ったシングル『とんぼ』、
そして、それに続いて『激愛』を買いました。
当時は、シングルCDではなく、
シングルカセットというものを買いました。

壁に頭をつけて、
おなかをすかせた子犬のような哀しげな目を、
カメラに向けた剛の写真。
それが『激愛』のジャケット写真でした。

家に帰って、そのカセットをかけ、
曲が始まってから、終わるまで、
身じろぎもせずに聴きました。

そのつもりではなかったのですが、
あまりにも、歌詞が物凄いので、
まるで金縛りにあってしまったように、
直立不動で聴くしかありませんでした。

こんな重い歌、世に出していいのだろうか?
と、そんなことを思ったことを覚えています。

『情熱』を間に挟んだものの、
『とんぼ』のあとに演奏されたこともあって、
当時受けた衝撃が、再び蘇ってくるような気がしました。

そんなことを考えて立ち尽くしていましたが、
ふと気付くと、まわりでは、
ビニールシートに座って聴いている人が多かった。
アップテンポでは立ち、
バラードでは座るという、
オールナイトライブであることを考えれば、
当然考えなければならないことではありましたが、
なぜか、座る気にはなれませんでした。

友人は、
『激愛』が始まるやいなや座っており、
体力温存に抜かりがない。

「座れるときは、座ろう。
 キャプテンで思いっきり燃えられるように」

と事前に何度も言っていたのは僕なのに、
結局、ライブ中はまったく座ることのないまま、
朝まで立ち続けることになってしまいました。

間奏に突入し、鳴き続けるギターの音だけが、
無言で固まる7万5千人の観客に、
大音量で降り注いでいました。

オリジナルに忠実な演奏でした。
前日のリラックスしたリハーサルから一転、
シリアス度100%の『激愛』。
時間はほぼ23時。
『激愛』の凄みが増す時間帯でした。

今聴いても、剛の歌の中で異彩を放つ『激愛』。
一貫して、生きることにこだわる詩を書いてきた剛が、
死をテーマにして書いたのが『激愛』でした。
このステージで『激愛』をメニューに入れた理由を、
剛の口から聞くことができる日が、
いつかくるでしょうか・・・。

歌っている剛だけではなく、
じっと立っている僕の額にも、
頭からの汗がいくつも伝っていました。
グッズのマフラータオルで拭いました。
『激愛』を聴いているあいだにも、
何度も何度も拭いました。

じっとしていると、
興奮しているときには気がつかなかった、
自分の体の疲れを実感するものです。
両足のふくらはぎが張っていました。
振り上げ過ぎた右腕にも疲れがありました。
昼まで睡眠を取っていたので、
眠気はまったく感じませんでしたが、
会場に来るまでの疲労と、
ライブ前半ではしゃぎ過ぎたのと・・・
それに、この日はいささか汗をかき過ぎました。

まだまだ始まったばかり、
気をひきしめなくては・・・

首に巻いていたマフラータオルを外し、
胴体に巻きつけて、ぎゅっと結びました。
おなかが引き締められて、気が入りました。
生まれて初めて、ふんどしを締める、
という言葉の意味がわかった気がしました。

ステージでは、静かに、
『激愛』のエンディングの演奏が流れていました。
待ちかねたように、拍手と声援が沸きあがりました。

いずれにしても、
アップテンポな歌だけを羅列するライブではないことが、
この『激愛』を演奏したことでわかりました。
いったい、この先、
どんな歌が用意されているのか・・・

公然の事実のように噂されていた、
80曲という演奏曲数。

演奏開始から1時間。
まだ、6曲目が終了したばかりでした。



続く


<次回予告>
ZEPPでも演奏した弾き語りのあの曲が、
意外にも、第一部のベストチューンになった!
涙腺をメガヒットする、剛のMC!
ここに来て・・・ほんとうに良かった!

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煮えたぎる情熱がありますか? (桜島ライブ16)

2004年09月12日(日)

『煮えたぎる情熱がありますか?』−桜島ライブ(16)

                 text  桜島”オール”内藤





グッズ売場の様子。もちろん、混み合っていない20日の売場です。
地元の元気なお嬢さんたちがアルバイトで販売していました。
僕が帽子を試着すると
「すごい似合ってますよ〜。長渕さんみたい!」
・・・って、どう見たって、まるで似てないよ!(+_+)


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M-5 情熱 −アルバム『Keep on Fighting』(2003)−



「まだまだ、これからやーっ!」

大阪から来たファンでしょうか。
『とんぼ』でひとしきり盛り上がった直後、
僕のすぐ斜め前の男性が叫びました。

言われるまでもなく、ライブは続く。
ZEPPのとおりかと思ったのもつかの間、
『とんぼ』が演奏されたことで、
どんな曲が演奏されるのかが予想できなくなりました。

そして、印象的なキーボードの旋律。

多くの新しいファンだけでなく、
僕ら古いファンにとっても、
大好きな、大好きな、あの曲だ。

縦ノリ気味に、揺れるA−5ブロック。

沸きあがる、『情熱』!

20年を越えるキャリアの剛が、
今もなお、昔の名前で食いつなぐことなく、
新しいファンを量産し続けるような、
こんな生き生きとした曲を生み出し続けている。

僕らの目と耳は、節穴じゃない。
最高のアーチストを選んで聴き続けてきた。
そんなリスナーとしての自信をくれる、
剛の最新アルバムの一曲目。
聴きたいのは古い曲だけじゃない。
新しい曲だって、聴きたいんだ。

くやしさをかきむしったら
涙が出てきた
とめどもなく 初めて俺
弱虫になっちまった

ふるえてきた、よ!!
ふるえてきた、よ!!
誰か 上等の優しさに 
すがらせてーくれ

ジョーネツ!!ヘイ!


この、サビのフレーズの繰り返しを呼び込む、
剛の「ジョーネツ!!ヘイ!」の掛け声。
CDには収録されていない、
ライブでときどき叫ぶ、この掛け声が、
僕は好きだ。

じょーねつ! じょーねつ! じょーねつ!
じょーねつ! じょーねつ! じょーねつ!
真っ赤に燃えたぎる あのときの
情熱は どこだあーっ!


まさしく、歌詞のタイトルのまま、
真っ赤に燃えたぎる情熱の渦の中でした。
今の世の中で、ほとんど死語の「情熱」。
恥らうことなく、夜空に叫ぶ。

この曲、スピード感をことさらに感じる曲です。
歌うことで、歌う楽しさを実感できる曲です。
歌うことで、僕の中に情熱が沸きあがってくる。
ハイウェイを突っ走っているような気分になる。

どんなに素晴らしい曲でも、
次のツアーになると、とんと演奏されなくなる。
剛の場合、そんなことが多い。
でも、『情熱』はぜひスタンダードにしてほしい。
定番にしてほしい。

『勇次』が『桜島』に、
『泣いてチンピラ』が『情熱』に、
『ステイドリーム』が『しあわせになろうよ』に、
変わってくれても構わない。

ほーら、沸いてきた、ぞ!
沸きあがってきたぞ!
人間の生きる情熱が 
煮え繰り返ってる
ジョーネツ!ヘイ!


剛の掛け声に弾かれるようにして、
繰り返し、繰り返し、叫びました。

観客の「じょーねつ!」のリフレインに合わせて、
ギターを荒々しくかきむしる剛。
『巡恋歌』の終盤を彷彿とさせる、
超高速ストロークのぶっとい音に、
客席は興奮のるつぼと化しました。

ステージと客席のあいだを飛び交う、
情熱の応酬を極限に高めたところで、
ピタッとストロークを止め、
客席をにらむ剛。

そして、エンディング!

「ジョー、ネーッツ!!」

剛の絶叫で幕を閉じました。

「ツヨシーっ!素晴らしいっ!」

興奮した観客たちの心からの拍手と叫び。

ファンは古い曲ばかり聴きたがって、
新しい曲を聴いてくれない・・・
そんな不満を、かつてのトップアーティストが、
テレビのインタビューで話しているのを見ました。

新しい曲をファンが聴きたがらないのは、
その曲に力がないからだ。

見ろ、この桜島での『情熱』の盛り上がり!

ベストやセルフカバーを除いて、
剛19枚目のオリジナルアルバム、
25年目の最新アルバム、
そのアルバムの一曲目が、
こんなにもファンの心を揺さぶっているぞ。

アーティスト、剛、
バリバリに生きてるなあ!


これからも、チャートの一位を取りまくれ!
どデカイ会場を満員にし続けてくれ!
しびれるような新曲を歌い続けてくれ!

情熱の違いを見せつけてやれ!



続く


<次回予告>
重厚な歌詞と演奏が、桜島の闇夜を鈍く打つ。
リハーサルでも聴いたあの曲の、
100%、シリアスバージョンに、
固唾を飲んで聞き入る観客たち。

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武者震いがしましたか? (桜島ライブ15)

2004年09月10日(金)

『武者震いがしましたか?』−桜島ライブ(15)

                 text  桜島”オール”内藤





グッズ売場にあった、剛のプリクラのデザインです。


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M-4 とんぼ −アルバム『昭和』(1989)−



「こんなイベント、ないよっ!
 世界中どこ見ても、ないよっ!」


剛の叫びが桜島に響き渡りました。
まったくもって、そのとおり・・・
こんなイベント、
もう、一生、出会えないかも。
マジで・・・

「本当に今日、みんな、来てくれたね!
 本当によく来てくれたね!
 ここが俺が生まれた場所でーす!
 ようこそ、鹿児島へ!」


さすがにこの日は、ライブ冒頭の
「よおーこそおーっ!」
だけでは物足りないのか、
何度も剛から感謝の言葉を贈られました。

こんな剛のMCもあったので、
ハイテンションで飛ばしてきたライブも、
ここで、一息つくかと思われました。

ここまでの3曲を聞いて、
きっとZEPPに行った誰もが思ったことは、
おそらくライブの前半は、
ZEPPでの前夜祭ライブの再現ではないか?
ということだったのではないでしょうか。

僕も、『孤独なハート』が終わり、
次の曲が始まるまでのちょっとした空白の時間、
ZEPPだと、次は確か・・・
『裸足のまんまで』か?
と思っていました。

剛がセンターマイクにギターを抱えて戻ってきました。

「ウーウーウー、ウーウウ、
 ウウウウ、ウー・・・」

文字で再現しようとすると、まったくうまくいきませんが、
剛が伴奏なしで口ずさんだメロディは、
剛ファンで知らない人は皆無のあの曲のイントロ。

えっ、それは、
ZEPPではアンコールでやった曲。
こんなに早く、ここでやるの!?

ということは・・・
あながちZEPPの再現ではないのか!

予想がつくより、つかない方がいいに決まっている。
さすが、剛。
考えているな、と思いました。

剛はメロディを口ずさむのを止めて、
マイクから一歩後ずさりしました。

じらさないで!と大歓声。

「今、武者震いがしたっ!」

と体をブルッと震わせた剛。
まったく、盛り上げてくれる。

ふたたびメロディを口ずさんだところで、

「いっしょに歌うかい!
 みんな、歌うかい!
 大きな声で歌うかい!」


ZEPPではバンドではなく、
弾き語りで演奏したと記憶しているので、
このままギター一本で演るのかと思いきや、
意外にも、バンドサウンドで始まった。

正調、『とんぼ』!

それにしても、
アンコールラストでやっても不思議じゃない、
剛の代表曲、ミリオンセラーの大ヒット曲、
誰でも知っているスタンダード曲『とんぼ』が、
まさかこんなに早く演奏されるとは予想しなかった。

昔、どこかのインタビューかなんかで、
剛がヒット曲のことを、
「名刺」だと言っていたのを記憶しています。

例えば昔だったら、

『順子』の長渕剛

と世間では言われる。

けして、

『久しぶりに俺は泣いたんだ』の長渕剛

ではないわけです。

だから、ヒット曲って、
アーチストにとっては名刺みたいなもんだよ、
と言っていたのです。

そうであれば、『とんぼ』は、
押しも押されもしない、剛、最大の名刺です。
それを惜しげもなく、
長い長いライブの4曲目に切るとは、
なんたる余裕。

逆に、これからの選曲に期待が持てました。
もちろん、『とんぼ』は『とんぼ』で、
僕らはバリバリに歌いました。

サビの部分は、自らは歌うのをやめて、
観客に歌わせながら、笑顔を見せた剛。


死にたいくらいに憧れた
花の都 大東京
薄っぺらのボストンバッグ
北へ 北へ 向かった



なんだか、その歌詞の出発点から、
歌っているような気がしました。

まるで僕自身がこの鹿児島から、
東京に死ぬほど憧れて、
ボストンバッグ一丁で電車に飛び乗ったような・・・

まるで歌っている僕自身が、
鹿児島にいたときの剛に重なるような・・・

そんな、なんとも不思議な気分。

鹿児島で真夜中に叫ぶ、

東京のバカヤローが!

もまた、格別だったよね。




そういえば、
ライブ前日の20日には、
桜島で「とんぼ」をよく見たなあ・・・
東京では、何年も見ていないけど・・・


続く


<次回予告>
ますます燃え上がる7万5千の情熱!
古い曲もいいけど、新しい曲だって聴きたい!
最新アルバムからの、あの曲だ!

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ひとりでライブに行きましたか? (桜島ライブ14)

2004年09月09日(木)

『ひとりでライブに行きましたか?』−桜島ライブ(14)

                 text  桜島”オール”内藤





日記でまだ載せていない剛トレーラーのフォトを。
グッズ売場に、ファンサービスとして置かれていた赤と黒のトラック。
前に赤の写真を載せたので、黒も掲載。かっこいいですね。


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M-3 孤独なハート 

−アルバム『Hold Your Last Chance』(1984)−



ステージを見ていて、
アレッ?と思ったのが、センターマイク。

剛の立ち位置に置いてあるマイクのことなんですが、
このマイク、実際は、置いてあるのではなく、
がっちりステージに固定されていました。

ネジみたいになっていて、
クルクル回しながらステージの床に固定するタイプだと思います。
第3部のライブ中に、剛が指示を出し、
ローディーの人がクルクル回して外していたのを見ました。

考えるまでもなく片付けにくいし、
なぜそういうマイクになっていたのかは、
いまでもよくわからないのですが、
ひとつ、役に立っていたと思われるのが、
今日の日記で振り返る第3曲目でした。

がっちり固定のマイクスタンドを片手で握り、
そのつかんだスタンドを支えに中腰になって、
まるでオープニングのハーレーに乗っているような格好で、
もう片方の手でアクセルをふかすアクションを取る剛。
体重をマイクスタンドにあずけるこのアクションで、
少なくとも、このマイクスタンドは役に立っていたのです。

曲のイントロでの、剛の掛け声。

「オーッ、オオ、オオー、オーッ!」

これに応えて同じように叫んで繰り返しながら、
あれ?どこかでやったような?この応酬・・・
と思ったら、
何度かパターンを変えて繰り返された後、
あのメロディに乗せた掛け声に変わりました。

「オーッ、オッ、オッ、オオオオーッツ!」

そうです。
ZEPPでもやったのでした、この掛け声の応酬!

『孤独なハート』

前日のリハーサルでも聴いていましたが、
何度聴いても盛り上がる。
これまでまったくライブで聴いてないから、新鮮。

「もっと来ーい!
 SAY、ウォーッ!」


もっと行くぞ、ウォーッ!とばかりに、
めちゃくちゃ盛り上がったAブロック!

「懐かしい歌だ!
いっしょに歌うぞ!」


バイクに乗っているかのようなアクションは、
この歌が主題歌だった、
ドラマ『家族ゲーム』のオープニングを
イメージしていると思いました。
(バイクでハイウェイを疾走しているような画面)

今の剛の声で聴くと、また、一段といい!
活力に溢れていて、まるで新曲のようだ。
サクソフォーン(YOJI HIRUTA)の音色が映える。


そういえば・・・
ちょっとライブの話からはそれますが、
『孤独なハート』つながりの話題を書きます。

思うに、今回のライブ、
遠方から、ひとりでやってきた人、
かなりの数、いるんじゃないでしょうか。

僕らがホテルに着いたとき、
僕らの前にチェックインした人も、
あとの人も、一人でやってきていた剛ファンでした。

ホテルのフロントの人が、シングルルームは、
ライブに行く人でいっぱいだと言っていました。
(ツインもいっぱい。満室ですから。)
ほとんどがシングルのお客さまという、
ビジネスホテルでしたから、
僕らの泊まったホテルはひとりで遠方からやってきた
剛ファンでいっぱいだったと言えるわけです。

それから、フェリーで桜島に向かうとき、
デッキチェアで友人のとなりに座っていた女性。
彼女もひとりで来ましたと言っていました。

会場に向かうまでの道のりを、
大きなリュックサックを背負って、
黙々と歩いていた青年。
彼も見るからにひとりでやってきた感じ。

溶岩グラウンドで桜島セットのバッグを抱えながら、
ずっと静かに待っていた女の子。
彼女も、ひとりで、剛に会いにやってきたのでしょう。

そして、ライブ前日、
リハーサルの音が聞こえるところで、僕らの近くで、
ひとりで座って聴いていた少年。

「ひとり旅です・・・
 友達に剛のファンはいないです。
 孤独なハートですから。」

ほんの少し前まで、
リハーサルで演奏していた『孤独なハート』にかけて、
そう言って軽く笑っていました。

いたるところで、
ひとりで桜島にやってきた孤独なハートに会いました。


今回の桜島ライブは、来る人を選んでいるライブでした。
鹿児島の人を例外として、
遠い、お金がかかる、夜を徹して行われる。
ファンじゃなければ耐えられない、
いくつかのハードルがありました。

自宅に近い会場なら、ちょっと友達を誘えば、
いっしょにライブを見に行けるかもしれない。
でも、桜島ライブは、基本的には、
そういう友達たちが来れるようなライブではありません。
東京からだと、10万円近くかかるのです。

僕も、たまたま、
ほんとにたまたま、
剛ファンの友達がたった一人いて、
だから、二人で思い出を作ることができたけど、
このたったひとつの偶然がなかったとしたら、
間違いなく、この日、ひとりで桜島にやってきたはず。

一人旅は、気持ちが自分に向かう。
僕も剛以外のライブには、ひとりで行くことが多い。
ときには、遠くのライブへひとりで出かける。
だから、ちょっとわかる。

ひとりで来た人は、ライブをひとりで受け止める。
そして、ライブが終わると無口になる。
ひとりで、ライブの記憶や感触を反芻しながら、
フェリーへ、ホテルへ、あるいは空港や駅に向かう。
フェリーから桜島を見て、胸がちょっと締めつけられる。
帰り道、きっと、悲しい気持ちになる。
電車で、外の景色をぼーっとながめる。
印象に残った歌を、何度も心の中で繰り返しながら・・・


桜島ライブの本番で、
剛の演奏する『孤独なハート』を聴きながら、
ふと、あの神戸の少年のことを思い出しました。

彼も、きっと、この広い会場のどこかで、
拳を振り上げ、歌っていることでしょう。
もちろん、ほかの孤独なハートたちも・・・。

二人で来るのも、めちゃくちゃ思い出になるよ。
友情がものすごく深まった。
でも、ひとりぼっちの桜島ライブも悪くないと思う。

ひとりで、剛に会いに来たんだよね。

めちゃくちゃ、”長渕”してる。

そう、思います。



続く


<次回予告>
まさか、こんなに早く、この曲を・・・・
剛、最大の名刺(ヒット曲)を、ここで切った。

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素晴らしいのは何ですか? (桜島ライブ13)

2004年09月08日(水)

『素晴らしいのは何ですか?』−桜島ライブ(13)

                 text  桜島”オール”内藤





ライブの前の日、20日に桜島のフェリー乗り場に貼ってあったもの。
本土側の乗り場ではなく、桜島の方です。


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M-2 泣いてチンピラ −アルバム『LICENSE』(1987)−



『勇気の花』でひと盛り上がりして、
2曲目を待つあいだ、万雷のツヨシコールかと思いきや、
Aブロックは意外と静かになっていました。
後ろの方からはコールが聞こえていましたが・・・。

もちろん、そこかしこで(僕も含めて)、
ツヨシコールをしている人はいましたが、
例えばZEPPのような濃密なコールには程遠く、
会場があまりにも広いがゆえに、
威力のある声援とはなりにくいことに気付きました。

果たして、剛を圧倒するような、
声援が送れるだろうか、
歌声が送れるだろうか、
ちょっと心配になりました。

そんなこと考えていると、
再びドラムソロがスタート。
剛が観客をあおります。

「Yeah! Yeah! Yeah-Yeah-Yeah!」

精一杯の声を張り上げて返すものの、
桜島の空に吸い込まれて、
例えばZEPPのときのような怒号は望むべくもない。

なんだ、おとなしいじゃんか、とばかりに

「もっと、こーい!」

と剛にハッパをかけられる始末。
ますます頑張って声を出す。
剛も返す。
またまたこっちも返す。

「いいじゃねえかよおーっ!
 俺がくたばるかお前らがくたばるか、
 どっちがくたばるか勝負だぞーっ!
 俺たちの拳で桜島から
 朝日を引きずり出すんだぞーっ!」


そして、何十回聴いたかわからない、
あのイントロ。

『泣いてチンピラ』

数限りないライブで、『泣いてチンピラ』は、
剛のライブを彩ってきました。

マンネリと思う人もいるかもしれないけど、
剛ほど曲を入れ替えてライブをやっている人を知らない。
ミリオンセラーになったシングル曲、
ファンでない人でも知っているヒット曲でも、
剛は、次のツアーになるとほとんどやらない。

そんな中、ほとんど、欠かすことなく演奏してきた
『泣いてチンピラ』は、
アーチスト長渕剛にとって、
とてつもなく大切な曲に違いありません。
僕にしても、あまりいろいろ考えずに、
条件反射的に体を動かすには持ってこいの曲でした。

聴きなれてるだけに、
もう、ただ身を任せていればいいや・・・
と、思っていたのですが、意外なことに、
大変印象に残る曲となりました。

気付けばいつのまにか剛は、
登場したときかけていたサングラスを取っていました。

(あっ、剛、サングラス、取ってる)

と思いました。
喧騒の中で頭が少しクラクラしていた僕でしたが、
剛の眼光を確かめることができました。
ギターを弾きながら、『泣いてチンピラ』を歌いながら、
剛はその肉眼で、ときおり客席を見まわしていました。

(どうだい、剛!?
 7万5千人もの人が、全員、
 剛を凝視している光景は!?)

果たして剛が何を思ったか?

間違いを恐れずに書きますと、

興奮しているように見えました。

『泣いてチンピラ』の前半までは、
汗まみれではあるものの、
極めて平然としていた剛。

7万5千人の観客を前にしても平常心か?
と、恐ろしい気さえしましたが、
何度も客席を眺めているうちに、さすがの剛も、
興奮を隠せなくなっているように見えたのです。

なんだか、嬉しかったですね。
剛から、一本取ったような・・・
変な言い方ですが、そういう気がしました。

おそらく感激したためだと思うのですが、
『泣いてチンピラ』は15分を越えたはずです。
100%の自信はありませんが、
僕の肌感覚では、あれは10分程度じゃない。
間違いなく、僕が今まで聴いた中で一番長い、
『泣いてチンピラ』だったからです。

「ガンバレ、ニッポン!ガンバレ、ニッポン!
 ウォウ! ウォウ! ウォウ!」

延々とリフレインが続いていました。
まるで、終わるのが惜しいかのように。

その『泣いてチンピラ』も、とうとう終わり、
僕が感じたことを裏付けるように、
剛が感情いっぱいに叫びました。

「ス・バ・ラ・しいよ!! オイ!
 今日、ス・バ・ラ・しいよ!!」


心から絞り出したような叫びでした。

そうだろ、剛。
これ、ぜんぶ、剛のファンなんだぜ。

剛こそ、

ス・バ・ラ・しいよ!! オイ!



続く


<次回予告>
オールナイトなのに、このままで大丈夫?
容赦のないハイテンション3連発。
もういい!先のことなど知ったことかと、
「ウォ〜ッ!ウォッ、ウォッ、ウォウォウォウォ〜ッ!」

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勇気の花になりましたか? (桜島ライブ12)

2004年09月06日(月)

『勇気の花になりましたか?』−桜島ライブ(12)

                 text  桜島”オール”内藤




ツアーグッズのバスタオル。
タオルとして使う気にはなかなかならない立派な作り。


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M-1 勇気の花 −アルバム『空 SORA』(2001)−



桜島の一曲目は何か?
その話題で何度、話をしたことでしょう。

あるときは
「やっぱり『巡恋歌』かなあ・・・

またあるときは
「『桜島』で、ドカーンと始めるかも・・・」

そのまたあるときは
「無難に『とんぼ』もありかな・・・」

ZEPP後には
「順当に考えれば『勇気の花』だよね・・・」

逡巡すること限りなく、
20日の夜にもホテルでさんざん議論しました。
そして、その一曲目のイントロのリズムを刻む、
ドラムソロが鳴り響く中、
まさしく一曲目直前、僕が抱いていた予想。

『明日に向かって』

やっぱり、なんといっても、明日に向かうわけだから。
オールナイトライブだし。、
ドカーンと盛り上がること間違いなし、
我ながら、なかなかの予想と思っていました。

ちなみに友人の予想は、

『情熱』

その理由は、
「新しい曲で始めることで、
 古い曲に頼る必要がない、
 俺は今の力で桜島ライブの口火を切る!
 ということをアピールするためだよ。」
とのこと。

負けた方が、22日夜、
しゃぶしゃぶ食べ放題おごり!
ということになっていました。
(両者ハズレで実現せず)

そんな何ヶ月にも渡る謎が解ける瞬間が迫っていました。
目の前には、ギターをぶら下げ、
マイクスタンドの前に立った剛がいるのです。
ドラムは8ビートのリズムを刻み続けていました。

それにしても、なんと素直にノレること。
自分で自分が不思議でした。
普通のツアーのときには、
こんなにはじけることはありません。
やっぱり、「場」というのは重要なポイント。

ほとんど異国という感じの、桜島という場所、
苦労してやってきたという特別性、
右を向いても、左を向いても、
前も後ろも、どこだって非日常。
なんどもくどいけど、ここは「島」だ。
この雄大な南の島を、この日は剛と僕らで貸しきって、
朝まで歌うというんだから、
もう、これが夢だったとしても、
納得するしかない、ってくらいの夢のような状況。

ちょっと極端かもしれないけれど、
被っていた人間の皮を引き裂いて、
自分が野生動物になったような、
そんな気さえするほど、興奮していました。

「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」

一晩中続くんだぞ、
セーブしなくていいのか、自分!
隣の友人が、
オイオイ・・・
という表情でチラッと僕を見る。
ほっといてくれ!
ていうか、お前も来い!
もう、準備オッケー、いつでもこい状態。
さあ、さあ、何を出す?剛!

しかし、そんなもんじゃ足りないぜとばかりに、
剛が叫びました。

「もっと、
 来やがれええーーっ!」


その声を合図に、一段階、声援のボリュームが上がりました。
そして、一曲目の主旋律が、
特効の爆音と共に流れ始めました。

『勇気の花』

曲名が明らかになり、ますます盛り上がる客席。
まさしく最高潮の観客席の中で・・・


正直に告白します。


わずかながら、僕は、

落胆の気持ちを抱いていました。


『勇気の花』・・・
アルバム『空−SORA−』の中で、飛びぬけて素晴らしい曲。
はっきり言って、大好きな曲です。
それにも関わらず、あのとき、
待ちに待った桜島ライブの一曲目だというのに、
僕の中に確かに存在していた小さな落胆。

その理由は、この一点でした。

ZEPPのライブと同じ一曲目だった、
ということ。


いろいろあった予想の中で、
前夜祭であるZEPPと同じ一曲目、との予想は、
一番つまらない予想に思えました。

そりゃあ、普通に考えれば、
事実上の公開リハーサルである、
ZEPPの一曲目、
それが桜島の一曲目である可能性はすこぶる高い。

だけど、だけど・・・
記念すべき、という言葉では足りないくらい、
特別な、二度とないライブだからこそ、
ZEPPに来たファンでも、オーッ、そう来たか!
と思わせて欲しいと思いました。
あれはあれで、ひとつのライブ。
桜島では、さらにひねったものを見せて欲しいと思いました。

ああ、だからZEPPのライブはやらなければよかったんだ。
もし、あのライブがなかったら、
この『勇気の花』でどんなにか感動したことだろう・・・。

拳を振り上げ、ヘイ!ヘイ!と叫びながらも、
頭の中では、そんなことを考えていたのです。

やがて、剛がマイクに向かって歌い出しました。

嘘くせえ 理不尽 
ごたくたれっぱなしの人の世で
ちぎれた 絆を食い散らかした 
青春 たちよ


どうしてだろう・・・
剛はどうして、この曲を選んだのか。
僕はこのとき、うつろな頭で、その理由を探していました。

でっかい 勇気の花は 
きみの 過去の栄光なのか
たとえ すっぱい 雨風に打たれても 
咲かせてきたのに


『勇気の花』の歌詞の中でもサビと並んで特に印象的な、
勇気の花は過去の栄光なのか・・・
の部分を剛が歌っていました。
コーラスの「Wooo・・・」が、
美しいハーモニーを奏でていました。

そして、この歌は、
この過去の栄光になりつつある勇気の花を、
もういちどでっかく咲かせてやれと歌うのです。

でっかい勇気の花
もう一度 咲かせてやれ
でっかい勇気の花
今こそ 咲かせてやれ


サビの部分を剛に合わせて歌いながら、
僕はこの歌を初めて聞いた頃のことを思い出していました。
(剛の曲をライブで聴くときの、僕の癖のひとつ)

2001年の夏。発売してしばらくしてから、
アルバムを手にして、一曲目でこの歌を聞きました。
暑い、暑い、夏でした。
まるで、今年の夏の暑さのように・・・

それから、「空−SORA−」ツアーがあって、
翌年、桜島ライブをやるって、剛が言ったんだよなあ・・・

そのとき、はっ、と思いました。

2002年に発表したってことは、最短でも、その半年以上前に、
桜島ライブの案が出ていたはず。
と、いうことは、おそらく、
アルバム『空−SORA−』の製作中、あるいはリリース後に、
桜島ライブというアイデアが生まれた可能性が高い。

思いつきと言えば、単なる思いつきに過ぎません。
しかし、僕はこのとき、
間奏で早くも汗を飛び散らせながら、
ハーモニカを吹き鳴らす剛の姿を追いながら、
かなり強い確信と共に、思いました。

もう一度咲かせてやれ、と歌った、
剛の勇気の花・・・
それは、この桜島ライブじゃないか?


剛は、そのとき考えていることを、そのまま歌にする。
剛は「きみの過去の栄光なのか」と歌っているけど、
あれは自分に向けての言葉だと僕は思っています。
だから、『勇気の花』を作ったとき、
剛は、こう考えていたと思うのです。

勇気をふりしぼって、栄光をつかんできた。
でも、それは過去の栄光に過ぎないのだろうか。
俺はもう一度、咲かせることができるだろうか?
でっかい勇気の花を咲かせることができるだろうか?

そう、自分に向かって、咲かせてやれ!と歌った歌。
それが『勇気の花』。
そして、一年後、桜島ライブを発表。

剛が2番の歌詞を歌い出した頃、
僕は勝手に確信していました。

剛の勇気の花、
今、僕も
その花になっているんじゃないか?

ここが、ここ、そのものが、
剛の勇気の花じゃないか?

でっかい、剛の勇気の花が、まさに今、
ここ桜島に、咲いているんじゃないか?


確かに、ついに始まったライブの最中、
いささかドラマチックに考え過ぎだったかもしれません。
でも、もし、こんな考えもあながち間違っていないとしたら、
これほど桜島ライブの一曲目にふさわしい曲が、
他にあるでしょうか。

落胆の感触は、落胆の感触として、
はっきり残っていましたが、
僕は十分納得していました。
「これしかない」と思っていました。
今でも、『勇気の花』以上にふさわしい、
一曲目が思いつきません。
あれが一番良かったのではないかと、
自分の落胆を棚に上げて思っているのです。

こうして長々と書いていますが、
そんなことを考えていたのは、ほんのわずかの時間でした。
『勇気の花』の後半では、
オールナイトライブの一曲目だというのに、
滝のような汗をほとばしらせて歌う剛の姿に、
僕はただただ感動していました。

剛・・・オールナイトライブの一曲目から、
剛みたいに歌うアーチストなんて、
世界中どこを探したっていやしないよ・・・

そんな僕の心のツッコミが、
剛に届くはずはありません。
滝のように吹き出る塩っ辛い汗を拭くことなく、
剛は記念すべき一曲目を歌い切りました。

でっかい勇気の花 もう一度咲かせてやれ
でっかい勇気の花 今こそ咲かせてやれ
花びらの色は 白か黒かのどっちかだ
花びらの色は 白か黒かの・・・


どおーっちかだーっ!

力いっぱい、叫びましたとも。
桜島の夜空高く。


続く


<次回予告>
サングラスを取った剛。2曲目にして時間オーバー?
興奮のあまり(?)15分に及んだ、史上最長の定番曲。

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ハーレーでの登場を予想しましたか? (桜島ライブ11)

2004年09月05日(日)

『ハーレーでの登場を予想しましたか?』−桜島ライブ(11)

                 text  桜島”オール”内藤





夜は暗くてわかりませんので、翌朝に取ったセットの全景。
ありえないバカでかさが伝わるでしょうか?


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スクリーンに映った剛の表情は、なんとも余裕しゃくしゃく。
待ちかねた観客の熱狂を楽しむかのように、
ゆっくりと、ゆっくりと、
ハーレーは傾斜を下って行きます。

ハーレーを使った登場の演出は、
ほんとにたまたまなんですが、
ほぼ一ヶ月前、横浜で開催された、
『ロックオデッセイ』の大トリで登場した矢沢永吉も使っていました。

僕は観に行ってはいませんが、ネットで見たレポート記事によると、

「紫でライトアップされたステージ、
スクリーンモニターには走るバイクの映像、
そしてエンジン音が。
すると!なんとステージ右端からハーレーが続々と登場してくる。
その数ざっと20台近い。
ハーレーがステージ上に勢ぞろいして照明が赤く染まったところで、
まっ白いスーツに身を包んだ矢沢が登場した。」


・・・という感じ。
同じハーレーを使った演出といっても、個性が出るものです。

ステージセットのように、20台ものハーレーを使うのは、
いかにもキング・矢沢らしい豪勢な演出。

一方、剛は、広い会場での移動ツールとして使っていて、
自分で運転しているし、アクティブで若々しい感じ。

考えて見れば、パンフレットでは、
ハーレーで桜島を疾走する剛の写真がたくさん載っていました。
勘のいい人はこれを見て、
ハーレーでの登場を予想したかもしれません。
僕はまったく気がつきませんでしたが・・・。

それに、リストバンドをもらったときに受け取ったチラシ。
その中に入っていたグッズリストには、
終演後だけ販売されるTシャツがあることが載っていました。
そのデザインは、やはり、ハーレーに乗った剛でした。

僕はまったく想像すらしていませんでしたが、ハーレーは、
桜島ライブの演出の中心となるキーワードのひとつでした。

そんなことを考えている間にも、
ゆっくり、ゆっくりではあるけれど、
確実に剛がステージに近づいてくる。
剛の周りが沸き立っているので、
実際には僕の位置からは、
剛の姿が見えると言うよりは、
周りの観客がなにやらバタバタとざわめいているところ、
スポットライトが前の方に移動してきているところが、
見えるだけでしたが、その分、
早くその姿を肉眼で捉えたいとの欲求が高まる。

ステージの向かって右の袖のところまで、
とうとうハーレーがたどり着いたように思えました。
ここでハーレーを降りて、
剛がステージに上がってくるかと思ったら・・・

なんと、そのまま、
ハーレーでステージイン!


どうやらステージの右袖は、
スロープのようになっていて、
そのまま地面から乗り入れられるようになっていたようです。
ハーレーは、ステージ中央で止まり、
それに乗ったまま、剛が観客の方に顔を向けました。

このとき、ようやく、肉眼で、
待ちかねた、その姿を捉えることができました。

黒の革ジャン、ZEPPのときと同じヘアスタイル、
なにやらいろいろ縫い付けてあるジーンズ、
サングラス、ピカピカの大型バイク。

その存在感は・・・
規格外の超大型ステージセットを上回っている。
人間ひとり、人間ひとり、
2メートルに満たないひとりの人間。
でも、その何万倍もの大きさのセットよりも、
バリバリに輝いて、オーラを放っていました。

その表情は気合満点、
ハーレーにまたがったまま、両手を合わせて、
ぎゅっと握り締めた。
この日、最高の大歓声が剛に浴びせられました。

いったい、どんな心境でしょう。
サングラス越しではありますが、
7万5千人が集まっている光景、
7万5千人が沸き立っている光景、
15万個の眼球が、
自分に向かって熱い視線を放っている光景。
剛しか、知りえない、その気持ちは、
とてもじゃないが、僕には想像がつかない。

時刻は、9時45分。
花火、ビデオ映像、登場と、
20分近い、オープニングの演出でした。

バイクを降り、マイクを持つ剛。
いつのまにか、バンドメンバーがスタンバイしている。
ここにきて、最大の注目は、
その第一声と、一曲目。

吉田拓郎は、初のオールナイトライブで、
日本音楽史に残るセリフ、

「朝までやるよーっ!」

を叫びました。
果たして、剛の第一声は?

「ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ!!」
 よおーこそおーっ!
 行くぞおーッ、
 今日は朝までーっ!」


拓郎は、俺たち朝まで演奏するよ、
という、ミュージシャンサイドに立ったセリフでしたが、
剛の場合、一言ずつ呼びかけて、
その反応を確かめながら叫んだセリフでした。

朝までいっしょに行くぞ!
俺だけが行くんじゃない!
ミュージシャンも観客も関係ない!
みんなで行くぞ!

という、剛の気持ちを読み取ることができました。
シンプルでしたが、剛らしい開幕宣言だったと思います。

剛の宣戦布告マイクが終わるやいなや、
ドラムソロがスタート、
ビートをもらって掛け声で後押しする観客。

「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」

ハーレーはステージ中央に置き去りにしたまま。
革ジャンを脱ぐと、ピンクのタンクトップ。
銀のネックレス、たくましい二の腕、
黒のアコースティックギターを受け取ると、
背中を見せて体全体でリズムを取る剛。
その姿は、
ZEPPでのオープニングを彷彿とさせました。

僕の注目は、一曲目の選曲に集中!
剛のキャリアのハイライトとなるライブの一曲目。
この選曲に意味がないわけがない。

果たして、その曲は・・・?



続く


<次回予告>
一曲の中でも、揺れ動く感情。
わずかな落胆、そして、これしかないとの思い。
多くを語らない剛のメッセージを受けとめたい。

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でっかい花火は見えましたか? (桜島ライブ10)

2004年09月04日(土)

『でっかい花火は見えましたか?』−桜島ライブ(10)

                 text  桜島”オール”内藤





桜島のフェリー乗り場に飾ってあった花火。
意味不明だったのですが・・・オープニングでわかりました。


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突如、暗転!

待ちかねた瞬間!

沸き起こる歓声!

爆発する剛コール!

来た!来た!ついに来た!
開始時間から遅れること約30分。
2004年8月21日、午後9時25分!

ついに、来た!

もちろん総立ちのブロック内。
振り向くと、エネルギーのかたまりのような、
そら恐ろしい人の海。

ぞぞぞっと鳥肌。
スゴイ、こんなの初めてだ。

すると、
ステージの骨組みの向こうに、

ヒュルヒュルヒュル〜・・・
ドドーン!!


花火が上がりました!

ワーッと上がる大歓声。
次々と打ち上げられ、大輪の花を咲かせました。
なんだか、なごみました。
ガーッと筋肉に最大の力を込めて、
フッと抜いたような、そんな感じ。

「いやー、そういや、
 今年の夏、桜島しか頭になくて、
 花火大会行ってなかったなあ・・・」

「あー、俺も行ってない」

なんて、会話をしたりして、突如、のんびりした雰囲気に。

僕らは「オーッ!」とか、「今のでっかー!」とか、
一瞬、何しに来ているのかを忘れて、
まるでこの日の数日後に予定されていた、
錦港湾花火大会にいるかのような会話をかわしました。

しかし、僕らのブロックからだと、
ステージの鉄骨の向こう側に花火が見えましたが、
正面にスクリーンがあるA−6ブロックとか、
B−6ブロックとかは全然見えなかったのでは・・・?
一方、後ろの方のブロックだと坂の上になるので、
よーく花火が見えたのではないでしょうか。

こうして、予想だにしなかった、
納涼桜島大花火大会に見とれていた僕らでしたが、
これが・・・かなり長かった。
10分にはかろうじて達していないと思うけど、
それに近いくらい続いていました。
そうはいっても、全然、不満ではなく、むしろすごく嬉しい。
すごい花火だから、早く剛を出せとは言いません。
まだまだこれからオールナイトで、
朝まで剛と盛り上がるわけですから。

お金の話をするのもなんですが、
夏の野外ライブなんかでよく使われる花火は、
正直言って、それほど高い花火ではないのです。
もちろん高いは高いんですが、
花火大会で使われる花火と比べるとぜんぜん格が違う。
花火がメインじゃないから、それでいいのですが。

しかし、桜島ライブの花火は、
ぜんぜん、そういうライブ向けの花火ではありませんでした。
花火大会クラスの花火がドンドンと上がっていました。

普通、ライブでこのレベルの花火は、
経費面から考えてもありえない。
そこは、さすが、鹿児島県をあげてのイベント。
きっと地元のあたたかいご好意で実現したのでしょう。
実に贅沢な花火大会でした。
ああ、今年もいい夏だったなあ・・・

・・・って、一瞬、本気で、
そもそも何の見に来ているのかを、忘れてしまいそうでしたが、
これは、桜島ライブのオープニングの一部です。
花火がどうやら終わったのに気付き、
我に返った観客たちがまた叫び始めました。

「つ・・・ツーヨーシ!ツーヨーシ!」

僕らも、我にかえって叫ぶ。
すると・・・
バリバリバリーッ!という轟音と共に、
ステージの向こう側(海があります)から、
ヘリコプターがステージを越えて飛び込んできました。
驚いた!そして、またしても大歓声。

一瞬、

まさか、ヘリから剛が!

と大興奮したのですが、さすがにそれはない。
ヘリは上空を旋回しているだけで、
ほとんど、

単に驚かしただけのような形に(^_^;)。

なんだなんだ?
ヘリからでもないし、
ステージ袖から普通に出てくる雰囲気もまったくない。
いったいどこから現れるのか・・・

すると、ステージの両側に添えられた
巨大スクリーンのロゴマークが消えて、
ハーレーダビッドソンのバイクが映し出された。

そして、

グラサンをかけた剛の姿が!

メーター振りきりの大、大、大歓声。
生中継している映像とは誰も思わないような、
作り込んだ映像であるにも構わず、
やっと見ることができた・・・
ようやく見ることができた・・・
ほんとうに会いたかった・・・
そして、
こんなところまで僕らを呼び寄せやがった・・・
なんとも人騒がせな張本人の姿を目にして、
沸きあがる興奮を抑えられませんでした。

「ツヨシーーッ!はよ、出てこんかーいっ!」

待ち切れなくなった観客が叫びました。

こんな声なぞどこ吹く風とばかりに、
ビデオ映像の中の剛は、
バイクにまたがり、エンジンをかける。
そしてバイクが桜島の道路を疾走する!

男はバイクに弱い、そして女も。
(僕はそうでもないんですが・・・)
ハーレーのエンジン音を聞いただけで、
僕らの隣にいた男達はしびれるような表情。

「剛、かっこいいぞーっ!」

と歓声を飛ばしていました。

この流れだと、おそらく誰もが、
バイクに乗って剛が登場するのではないか?
と期待するはず。僕も、確信しました。

お待ちかねで爆発しそうな7万5千人、
その気持ちをもてあそぶかのように、
じらすように続く、
桜島を疾走する剛のハーレー映像。
それも、やがて、終了。

そして、「Take It Easy」が流れる中、
なにやら後方からひときわ大きい歓声があがり、
A−5ブロックの観客たちがその方向に振り返る。
僕らもあわてて振り返り、
ゆるやかな傾斜の一番上、会場入り口付近、
朗々たる人の海の遥か遠く、
最後方ブロックであるKブロックの方に、
目を凝らしました。

そこははたして、
蜂の巣をつついたようにバタバタとざわめいて、
スポットライトを浴びていました。
あまりにも遠くて、
肉眼ではまったくどうなっているかわからない。

Kブロックの方向と、
ステージを交互にキョロキョロ見まわしていると、
スクリーンの画面に、

ハーレーにまたがった剛が映し出された。

剛を取り囲むガードを間に挟んで、
熱狂するJとKブロックの観客たちも、
その背後に映し出されている。

今度は、間違いなく、生映像!


花火から始まったオープニング、
場内が暗転したあの瞬間から、
すでに15分が経過していました。


続く


<次回予告>
いよいよステージに上がった剛。
その胸中に去来したものは何か・・・
そして、大注目の一曲目は・・・
でっかい勇気の花の謎が解けた気がした。

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居場所はありましたか? (桜島ライブ9)

2004年09月03日(金)

『居場所はありましたか?』−桜島ライブ(9)

                 text  桜島”オール”内藤





ピンぼけの写真ですが、
割りとゆったり一人あたりが座っているのがわかるでしょうか。
確かに詰めればもっと詰めれそうですが、
どうやら入れない人が出たのには、別の理由があるようでした。


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売店スペースからやっとのことで会場に戻り、
Eブロックから、Dブロックへ、
そして、Cブロックを抜けてBブロックへ・・・
まだまだ斜面を下ります。
ついに我らがA-5ブロックにやってきました。

すると、ブロックの入り口と思われるところから、
人の列が伸びているように見えました。
列のようにも見えますし、
通路で立っているだけにも見えました。

係員がバンドをチェックしているのかな・・・
と思って、列の前の方に行ってみたのですが、
どうも、そういう係員らしき人は見当たらない。

「このブロックの人ですか?」

と、並んでいるように見えた人に聞いてみると、

「ええ・・・入れないんですよ」

入れない!?

そう聞いて、もう一度ブロックの入り口のところに目をやると、
まさにその入り口に立っている人が、
キョロキョロとブロック内を見渡しては、
なんとも困ったような表情をしていました。

僕もブロック内に目をやると・・・
人で、いや、正確にはビニールシートが目に入るかぎり、
びっしりと敷き詰められていて、
土が見えているところはほとんどなく、
ましてや僕ら2人が座り込めそうなところは、
まったく見当たりませんでした。
大きなビニールシートが敷いてあったわけではなく、
それぞれが持ち寄ったシートがこまめに敷き詰められ、
空きスペースがない、という状態です。

もう開演時間が迫っているというのに、
あたりにはブロックに入らずに通路に立っていたり、
座っていたりする人がたくさんいました。
この人たちは・・・?
まさか、全員、入れない人では!?

まったく・・・
一難去って、また一難。
ようやく会場に、僕らのブロックにたどり着き、
ホッとしたのもつかの間、

まさか、そのブロックに入れないとは!

あせった。またしてもあせりました。
あせっても、入れないものは入れない。
時間だけが過ぎていき、
とうとう開演時間に・・・。

ステージ付近ではスタッフが開演準備に入りました。
通常、この動きがあると、すぐ、開演となります。
察するに、ほぼ定時開演を予定していたようでした。

しかし、どうやら、
ブロックに入れない問題は、
僕らのブロックだけの問題ではなく、
前方ブロックのどこでも起きていた問題のようでした。

女性のアナウンスが、
満員の桜島ライブ会場に響き渡りました。

「まだブロックに入れないお客様がいらっしゃいます。
 申しわけありませんが、少しづつ前の方に詰めて、
 入れないお客様を入れていただけないでしょうか?」


既に開演時間を過ぎていました。
おそらく、同じように入れなくて困っている人たちが、
係員をつかまえて、なんとかしてくれ!
とクレームしていたのでしょう。

しばらくして、ふたたびアナウンスが繰り返されました。
ライブが始められません、と言っていました。

ブロックに入れないのも困るが、
ライブが始められないのも困る。
おそらくスタンバイしていた剛のテンションも下がるはず。
もう、無理は承知でブロックに入るしかありません。

ブロックの入り口近くにスペースは見当たらないので、
フェンスに沿って移動しながら、
空いているスペースを探しました。
土の見えているところはありませんが、
広くシートを広げている人はいました。

「ここ、入れてもらえませんか?」

そう、フェンス越しに、
そのシートの持ち主の男性に声をかけると、

「シートに座ってくれていいから、入って!」

と言ってくれました。
よし!ありがたい!
僕らはフェンスを乗り越えて、
そのスペースまで人を乗り越え、荷物を乗り越え、

ようやくA−5ブロック入り!

もう、9時はとっくに回っていました。
それでも、放送では再三、
詰めてください!
と呼びかけていました。

先ほどまで僕らがいた通路に目をやると、
まだまだたくさんの人が立ったり座ったりしていました。
ほんとにこんなに入れない人がいるのか・・・?

ブロック内に目をやると、
各自あぐらをかいて座れるほどのスペースですが、
びっしりと人が入っていて、
オールナイトライブであることを考えると、
おそらくこれくらいの密度で人が入ることを
想定しているはずだと思いました。
つまりは、だいたいこんなものだろうと思われる数の人が、
きちんとブロックに入っているように見えたのです。
それにも関わらず、通路に人があふれている・・・
なんとも不可解でした。

場所を確保して、やや冷静になり、
いくつかの原因と思われることに気がつきました。

まず、違う色のバンドをしている人が、
周囲に何人か紛れ込んでいることに気がつきました。

今回、ブロックごとに違う色のリストバンドを付けています。
だから、Aブロック内では、
全員が僕と同じ色のバンドをつけているはずなのです。
ということは、違う色のバンドをしているということは、
後ろのブロックの人がAブロックに入っていることを意味します。

思えば、ブロックへの入り口には係員はいませんでした。
ブロックへの入り口で、
リストバンドのチェックはまったく行われていなかったのです。
第一、僕らだって、フェンスを乗り越えて、
誰にもチェックされることなく、
このブロックに入っているのですから。
(正しいブロックに入っているわけですが・・・)
つまり、自分のブロックで見る、ということは、
事実上、観客のモラルに任されていたのです。

かなりムチャな・・・
これでは、かなりの数がA・Bブロックにもぐり込んでいるはず。

そりゃあ、決まりを守る人の方が多いと思うけど、
守らない人なんて、いくらでもいるよ。
オークションで10万円出してでも前で見たいと思っている人が、
たくさんいるくらいなんだから。
多少の無理をしてでも前で見ようという人なんて、
それこそ、いくらでもいるはず。

そんなことを考えながら、悶々とした思いにかられていると、
通路の方で、

「ここ通路なんだから、自分のブロックにいけよ!」

という声が聞こえました。
その声の方に目をやると、どうやら、
BブロックとAブロックの間の通路にいる人たちに向けて、
Bブロックの前の方の人が放った声でした。

そのあたりの、通路に座っている人たちは、

ものすごく落ちついていました。

ブロックに入れなくて困っていた、
さっきまでの僕たちのようなあせりはまったくなく、
おそらくは自分たちに向けて放たれたであろう言葉に、
まったく反応を示すことなく、
ただただ動く気配もなく、じっと座っているのです。

どうやら、彼らも後ろのブロックのバンドをしているのでしょう。
完全に居直っているように感じました。
桜島ライブに来ている人にしては、あまり似つかわしくない、
死んだ魚のような目をしていました。

考えて見れば、
ここにいる人たちに共通しているのは、
剛ファンだということだけで、
あとは一般社会となんら変わりはないのです。

特別、ルールを守る人が多いわけではないし、
特別、他人に気を使う人がいるわけでもない。
世の中と同じパーセンテージで泥棒もいるだろうし、
同じパーセンテージで、いい人も悪い人もいるだろう。

それを考えると、少なくとも前方ブロックでは、
ゲートでのリストバンドチェックは必須だったのでは?
通路から離れない人は、
きちんと自分のブロックに戻ってもらうべきだったのでは?

それはそう思うんだけど、
そういう制御の利かない、まるで社会の縮図のような、
桜島ライブAブロック。
けして快適ではない。
けして気持ちのいいことばかりじゃない。
それもこれも全部飲み込んでの異次元空間、桜島。

ただじゃすまないと覚悟してきたはず。
ここで、しっかりと朝まで頑張らなくては・・・

そうこうしているうちに、
開演予定時間から30分近くが過ぎ、
とても全員がブロックに入りきれたとは思えませんが、
そう、いつまでも開演を遅らせるわけにはいきません。

あせりも、興奮も、緊張も、たくらみも、ズルさも、
すべてが混在する7万5千人の人間のるつぼ。
幕開け前からきしみを上げるイベント進行。
混乱の中、午後9時30分、
あの男がいよいよ姿を見せる。

長渕剛 桜島オールナイトライブ、
いよいよ開演!




続く


<次回予告>
でっかい花火が打ちあがる・・・
上がっても上がっても、まだ上がる。
10分近い納涼桜島花火大会、
桜島を疾走するハーレーのビデオ、
そして、剛、Kブロック後方より現る!

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7万の大観衆に震えましたか? (桜島ライブ8)

2004年09月01日(水)

『7万の大観衆に震えましたか?』−桜島ライブ(8)

                 text  桜島”オール”内藤




あきれるほどの人の数は写真では全く表現できていません。
ヘリからならいい写真が撮れるかもしれませんが・・・。


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7万人を超える人が来るとわかっていても、
実際にその人数が、なだらかな傾斜のついた、
広い、広い、ほんとうに広い桜島の広場を、
ぎっしり、みっしりと、埋め尽くしている光景。
それを目の当たりにして、
心が動かない人がいるものでしょうか?

まあ、壮観。
もう、壮観。
やれ、壮観。
それは人の集団だとわかっていても、
「なんだ、こりゃ・・・」
と言ってしまう。

これが全員、剛のファンという現実。
ファンといっても、

「ああ、長渕?いいねえ、
 俺も好きだよ、『とんぼ』とか」


という程度のファンじゃない。
ここは東京ではないのだから。
この人たち、全員、揃いも揃って、
わざわざ鹿児島の桜島まで、
しかもオールナイトのライブを見に来たという、
筋金入りのファンなのだから。

それにしても、
これだけの人を鹿児島まで呼び寄せるには、
いったいどんなことをしたらいいのでしょう。

「命懸けの闘いをするから、
 鹿児島桜島まで来て欲しい。」

そう、真剣に、頼んだとしても、
僕の願いを聞きいれてくれそうなのは、
家族と、親友数人というのが関の山でしょう。
こういうときには、親戚や同僚というのは、
まったくもって期待できないもの。
間違いなく誰一人来てくれないことでしょう。
結局のところ、
せいぜい7〜8人集まればたいしたものだと思います。

一方、この世の中には、同じセリフを言った時、

7万5千人が集まってくる人が存在する。

マンガの世界では、
例えば「サラリーマン金太郎」というマンガでは、
主人公の金太郎が声をかければ、
何百人という元暴走族が集まるという設定があった。

そういうことを考えると、
僕らの目の前に広がっていた光景は、
まったくもってマンガの出来事のようなものでした。
いや、マンガ以上に現実感のない光景。
僕らは、ただただ、静かに興奮していました。

ほんとうに、この大観衆は・・・
というか、僕らはどうしてここまでやってきたのでしょうか。
今更ながら、考えてしまいました。
それは、剛が、何年か前のライブで、
「桜島に来てくれよ!」
と叫び、
僕らも「行くぞー!桜島に!」と叫びました。
だから、来たのでした。
それで決まってしまったのです。

ほんとに行くのか?
などと相談することすら、ただの一度もなく、
気がつけば、こうして7万観衆を目にして、
ひたすら呆然としている僕らがいました。

呆然としながらも、ふと思ったことがあります。
全然論理的ではないのですが、

(ああ、桜島ライブは大成功したな・・・)

と思いました。

剛が命懸けで歌うと宣言し、
あの剛が命懸けで歌うなら見逃せないと、
7万人以上が集まった。
集めたということが、一番スゴイ。
だから、この時点でもう、
99%成功していると思いました。

チケットは完売なので、
その時点で成功と言ってもいいのですが、
やっぱり、生身の人間が集まっているのをこの目で確かめて、
大成功を確信したのでした。

もう、大丈夫。ライブは99%成功した。
おめでとう、剛。
あとは、ただ、命懸けで歌うだけでいいんだ。
一人で僕はそんなことを考えていました。

オールナイトで歌うこともスゴイですが、
ほんとうにスゴイのは、
これほどの人間を集めるというひとつの結果を生み出した、
剛の25年間の積み重ねだと思いました。
その25年に比べたら、

たとえ最後まで歌い切れなかったとしても、
歌詞を間違えたとしても、
演出を失敗したとしても、
どんな歌を歌ったとしても、
用意した曲がぜんぶ歌えなかったとしても、
そんなことは些細なことだと思いました。


桜島から朝日を引きずり出すことよりも遥かに、
全国から7万5千人を引きずり集めた事の方が、
ずっと、ずっと、スゴイ!
スゴ過ぎる。

しばしの間たたずんでいた僕らは、
そのあと無言になって、
まずはトイレに行っておこうと歩き出しました。
歩きながら、
あの、目がくらむような大観衆が集まったこと、
その現実の真っ只中に身を置いていることを、
自分の中で消化しようとしていました。

売店やトイレは、会場の両側にありましたが、
会場に面していたのではなく、
会場の隣に、これまた巨大なスペースが広がっており、
そこにたくさんのテントと、
さらにその奥にトイレが多数設置されていました。
これだけで、一つのイベントスペースかと思う大きさでした。

まさにトイレまで行くのも一苦労の距離でした。
まずは会場の横まで歩いていき、丘を超えるような感じで、
売店エリアにやってきて、
広いそのエリアを横切ってトイレまで歩きます。
人がまったくいなかったとしても、往復10分では帰れません。
もちろん人がいないどころの騒ぎではなく、
大きなお祭りかと思うようにごった返しているのです。
これは、30分かかる、と思いました。
ライブ中に何度も来るわけにはいかない、と覚悟しました。

こうしてどうにか時間に余裕を持って会場に到着し、
すっかり安堵していた僕らですが、
ここで、さらにもうひとつ困難が待っていたのです。
その困難は、僕らのブロックだけの問題ではなく、
そこら中のブロックで起きていたのです。

そのため、9時開演のライブは、
30分も遅れることになったのです。



続く


<次回予告>
自分のブロックに入れない・・・。
演出のために空けなければいけない通路に人があふれ、
剛が登場のスタンバイに入っているにも関わらず、
30分ものあいだ、開演ができない事態に・・・

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<補足コーナー>

東京のIさんより、以前の日記に書いた
「なぜグラウンドに長時間足止めされたのか?」
の理由に関しての情報をいただきました。


『おそらくですが、
後ろの方のブロックの人たちを入場させていたためだと思います。
私たちは5時半過ぎにツアーバスが桜島に付き、
そのままグランドを超え、グッズ売り場を越え、
溶岩ロードを歩きました。

私たちがグランドを通るときもスタッフの人たちが
「込み合うことが予想されますのでここで待機してください!」
とメガホンを使って呼びかけていました。
グッズ売り場は確かに込んでいましたが、
規制の必要があるほどぎゅうぎゅうというわけではなかったので
(既に売り切れのコーナーも多かったですし)、
変なこと言うなあと思ったんですが・・・。

溶岩ロードに入ってびっくり。
Fブロック以下の人が入場できずに延々と
右側の道路に列をなして座っていました。
グッズ売り場のすぐ前から1キロ以上は優にあったと記憶してます。
何時間もまたされているであろう人たちの中には、
それぞれ近くのギターをもった人を中心に合唱大会のように
盛り上げようとがんばっているグループもありましたが、
大抵はみんなぐったりしてました。
私は幸いDブロックでしたのでその横をスルスルぬけ、
最後の入場ゲート以外は比較的すんなり入場することができたのですが、
入ってみると後半ブロックは1ブロックに10人以下のがらがら状態。
前のほうはかなりぎっしり入っているのに・・・。
たぶん、4時頃降った雨のためにグランド整備など何らかの理由が生じ、
後半ブロックを入場規制し、
そこでたまった人たちを6時過ぎから入場させるため、
後から着いた人たちをグランドで
一時的に待機させていたのではないでしょうか。』

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