恋文
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暗闇を繋いで
身体といっしょに 動く冷気
空の低さ 北の国のような ある秋の日
花で染まった地面も 葉っぱで染まる
水の流れる 音を聞き
照りかえる 光を見て
空も青い
歩いているあいだに しっとり濡れる
傘の無力
雨のなかの わたしの無力
すこし ふくらんだ だけでいいから
すごく おちつけるのよ
冷たい 風の動きを感じる 朝になる
毎年の写真が 似かよっている 違う場所なのに
陰から 陰へと 渡ってゆく
水たまりに さざ波が立つ 落ち葉が揺れる
窓から 外を眺めているのがいい
風が 雨が 侵食してくる
午後の暗がり
雲が流れて行く 突然に波立つ 空の暗さ
夕方の影が 濃くなった
小鳥たちの囀りも 静まって
風で落ちて 雨で流されて
金木犀の川
台風が 連れてきた
風といっしょに 去っていった
アスファルトが 黒くひかる
半袖の腕が 冷たくなった
あら こんなところでも
香りのなかの 一日
夜の舗道が 静かに光る
影と影のあいだ
みんな 影のようになる
黒々と 佇む木を 見上げて 帰る
いつもの道を ふと 外れると どこでも 知らない町になる
レモンを絞る 香りに 染まる
雨の ちいさな粒で
わたしを 満たしてください
不意に かおる
忘れていた 記憶のように
見えないものは 見えないので いっそ 目を閉じてみよう
風に押されて 歩く 道すがら
ひんやり 濡れてゆく
規則的に こなしてゆく 一日が終わる
もの思いつつも
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