恋文
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2005年06月30日(木) もの思い

雲の
わずかな
すきま

暮れゆく
空のいろ

森は
もう影だけに
なってしまった

ここではない
どこかを
見ている


2005年06月29日(水) 夕立のあと

雨をふくんで
夾竹桃は
うなだれる

しずくが
落ちる

ふと 花も
落ちる

いっしょに
光を
あびている


2005年06月28日(火) 沈む

あなたが
あなたの中に
沈んでいるだろう
ところ

夏になろうとする
陽は激しく照って

でも

あなたが まだ
あなたのまま
沈んでいると
思っている


2005年06月27日(月) ひとり

草も揺れない
灰色の空が
ひろがっている

時計の音だけ
響いている
部屋のなか

空の下にも
きっと
誰もいない


2005年06月26日(日) 夜にむかう

鳥の声だけ
聴いている
茜色の空


2005年06月25日(土) おとこ おんな

どこに
たどりつくのか

ねじって
まとめた髪を
ぐさりと
留める


2005年06月24日(金) 夜の雨

ぱたぱたと
音がして
いちめんに
しずくが
落ちてきた

草の匂いが
立ちのぼる

わたし自身の
匂いにも
似て


2005年06月23日(木) ひかり

ひかりは
いつも
まっすぐ
降りてくる

どうやって
受けようか

やわらかに
透けていても

くらく
陰になっても

ただ
かがやいていても

どれも
受けとめたものだ


2005年06月21日(火) 夏の匂い

土と
草と
水の
匂いがする

こんな真ん中に
倒れていたい

わたしも
解体されて

土になり
草を育み
水にかえる


2005年06月20日(月) たわむ

わたしの
むきだしの肩に
ふれる髪

あなたの
胸によせると
頬をなぜる

風が
たゆんでいる

そとの音は
かすかになる


2005年06月19日(日) 午後の食卓

窓の外
ポプラが
ゆっくり揺れ
生垣の木々も
ざわざわと
さざめいている

並んだ食器は
まだ ひとを
待って
音もしない


2005年06月18日(土) 午下がり

麦畑のなか
だぁれも
いない

あおい空
飛行機も
とばない

かたい穂は
まっすぐのびている

真空のなかに
いるみたい


2005年06月17日(金) たそがれ

だまって
つむぐ
きおくの
いと


2005年06月16日(木) さかなの記憶

いつまでも
暮れないときには
海のなかに
漂っている


2005年06月15日(水) 見とおし

先が見えない 
といって
なにが 
不安なのか

たいして 
見とおしても
来なかった 
じゃない

何も見えない
眠りの後ですら
朝がやってくる

朝がこなければ
それはそれで
もう見ることも
いらないね


2005年06月14日(火) 野にふる雨

こんな
みどりのなかに
座りこんで
しまいたい

重い葉から
沁みこんでくる

空からも
降りそそぐ

すっかり
濡れそぼって
いたい


2005年06月13日(月) 雷雨

雷の音が
遠くから聞こえ
いつか
雨になっていた

世界が灰色になる

窓を 開けよう
雨音を 聴こう
雷鳴も 轟く

娘が
嬉々として
外に出てゆくのだ

きっと出てゆくと思った
そう言ったら
笑っていた


2005年06月12日(日) 不実

今 ここにいる
このひとよりも

遠いあなたと
この景色を
見ていたいと
思った



2005年06月11日(土) 夕暮れ

ひとりでいる

鉢植えの 花が
揺れているのを
見ている

日は
だんだん
傾いて

芝草が
光っている

影が
揺れている

まだ
ひとりでいる


2005年06月10日(金) 重さ

あなたが
あずけてくる
からだだけ
ささえることのできる
やわらかな
わたしが
ほしい


2005年06月09日(木) 眼差し

あなたが
歩いてゆく
その場所

後ろ姿が
角を曲がってゆく

その先を
まだ
追っている


2005年06月08日(水) 変容

ふと
変われるのかもしれない
と おもう

その
次の瞬間に
目が覚める

からだを
探る

そのままの
すがた


2005年06月07日(火) 再生

少しづつ
欠けて
こぼれて
失ってゆく

少しづつ
育み
探し
与えられて

わたしがいる


2005年06月06日(月) ふりそそぐ

雨に
なっていた

黙って
歩く

花にも
草にも
しずくが
ひかる

わたしも
いっしょに
うけとめている


2005年06月05日(日) 遠いところ

麦畑に 風が
わたる

木々も
ざわめく

雲の下
飛行機が
よこぎって行く

空の
向こうを
見つめている


2005年06月04日(土) 昼下がり

雨は あがり
いつのまにか
青空が
ひろがっていた

開け放った
窓から
はいってくる

笑い声を
聴いている


2005年06月03日(金) かおり

わたしの
なかに
いれてよ

あなたの
その
かおり

わたしの
ものに
するよ

あなたの
なかの
わたし


2005年06月02日(木) 髪を いじるのは

いじけている
わたし

あまえたい
わたし

きっと
たどりつけない
わたし

まだ 追っている


2005年06月01日(水) れいめい

目覚めているのか
わからない

かすかに
感じる
光の流れ

からだを
まるめて
抱かれている


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