lucky seventh
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命が溢れて、 もう、戻らない。
「一緒に死にましょう。」
女は微笑んだ。 踊るように、舞うように、 その視線の先には何ものにも合うことなく。
「この世界と共に、終演を迎えましょう。」
女の存在はひどく、薄く。 色褪せたテープの中で、永遠に繰り返す世界を作る。
「この世界の永遠を一緒に夢見ましょう。」
夢見るように、 夢見たように、 女は幻のようにそこにあり続ける。
まわる、まわる、世界が回る。 ふわりとまわる、ふわりと揺れるスカートの裾、 ふわり花びらが、風とまわる。
楽園の花園の中で、女はいた。 それはまるで景色のように、一枚の絵のようにあった。 女はただ独り、そこで世界の真理を見た。 こぼれ落ちる命の赤い水に、手から溢れて落ちたそれに、女は人を見た。
女は自分が歯車の一部であったのを知っていた。 世界の真理を読み取ったその日から、 自分が此処から出られないことを知った。
命の砂が、落ちていく。
「アンシュ、クラジュ」
少女は笑った。 その先には、同じ顔の青年たちがいる。
「私は世界を渡るよ。 この世界でに役目を終えてしまったから」
少女の身体が光の粒子となっていく。 青年たちはただなすすべもなく、 その少女の声を一言一句たりとも聞き逃さないぬように、 その少女が目を放した度に消えぬように、見ていた。
「私は自ら、この世界の意志に従った。」
少女は朗々と詠いあげるように言う。 透き通る身体の向こう側に、見えないはずの世界が見える。
「この世界の意志は2つ。 異世界の少女の再来と、その少女の消失によって終わる物語り。」
それは定めと呼びに稚拙で、 語り継がれた伝承と呼ぶにはあまりにもお粗末な物語り。 光によって幾重に出来た影の物語り。 遠き昔に召喚された少女が、再び喚ばれ消えていく。
始まりも、終わりも少女のためだけにあった。
めぐる、めぐる、運命が巡る。 くるりとめぐる、くるりと流れる運命の輪、 くるりと輪が、運命とまわる。
運命の輪の中で、少女はいた。 定められた運命を導くも、壊すも少女次第。
第一話:霧の中で見た影
近付いてはならないと言われた。
好奇心は身を滅ぼすんだぞと楽しそうに言われた。
そう僕らに諭すふしぶしにそれは暗にあの人が行けと仄めかすような、 好奇心を刺激するような口ぶりに僕らなんて滅びてしまえばいいと 思う態度がありありと出ていて、 あの人の話しをドキドキしながら聞いていた。 僕らはあの人に嫌われていることに対して、少なからずショックをうけた。
「浅一(あそひと)」
茶色い髪の青年がその声にへらりと力なく笑った。 寝癖だか、パーマなんだか判別のつかない頭は今は土で薄汚れている。 あめ色の瞳にはどことなく疲労が伺える。
「よう蔵人(くろうど)の坊ちゃん」
皮肉気にそう言う浅一に、蔵人と呼ばれた青年は無表情に見やった。 漆黒の髪に同色の切れ長の目は、無関心だった。 けれど、やはり浅一同様に隠しきれない疲労が滲んでいる。
2005年03月16日(水) |
あの日逃げだした私から、君へ。 |
自分の非力に泣くのは、もうやめたんだ。
「久し振り。」
よくもまぁ、ぬけぬけと笑えるもんだと頭の端で考えた。 私は彼女の前から逃げ出したっていうのに、 そんな風に笑って挨拶できる自分に、神経の太さを感じる。
「元気してた?」
あの頃、自分の弱さに泣いた。 自分の言葉が彼女に上手く伝えられなくて、 伝われないことにもどかしさ感じて、どうしようもなく苛立った。
お年頃と言うやつだ。 悩み多き多感な時代。 そんな時代を共有していた。
その頃、私はまだ子供で、 子供なりに自分のスタンスとかスタイルとかあって、 それを押し付けあったりすることで自分の身を守ってきたように感じる。
相容れないならそのままでもよかったと気がついたのは後だった。 相容れないままでも付き合っていけると気がついたのも後だった。 そして、相容れないままのほうが分かることが多いんだと知った。
「私は元気だったよ。」
だからきっと、今は笑えるのかもしれない。 逃げ出した彼女の前で、あの日よりもたくさんのことを学んだ。 彼女の中ではあの日のままの逃げ出した私しか残ってないのかもしれない。 それでも、私は笑える。
ねぇ、君。 私は少しは成長したかな? あの頃、私は何かをたくさん悩んで1人で息詰まって 1人で足掻いていたけど、今ならありのままに受け入れられそうなんだ。
遅いかな?
それでも、まだ間に合うのならば君の事教えてよ。
自分の非力に嘆くことはもうやめました。 私は自分の非力を笑って認めてやることにしてみました。
愛しているというなら、その手で殺して。
長い、黒髪がゆれる。 歩く度、さら、さらと雨に濡れ雨を含み。
雨のせいでいっそう青味がかった黒髪に白い肌がはえる。 深みのある青いスプリングコート、中に来ているのは薄手の白いシャツ、 落ち着いた感じのピンクのスリットの入ったタイトスカート。 ひざたけの白いブーツは地面の水たまりを蹴散らす。
美しい女だった。 少女から女性へと変わっていく年頃の女だった。
ただ、腰に差した黒い日本刀だけが異様な空気を発している。 『村雨』 女はそうその刀を呼んでいた。
2005年03月02日(水) |
夜がコワイと泣くこども |
いつだって、救われているのは自分の方。 この手は、何一つとして作りはしないし壊しもしない。 ただあるだけ、躯にあるだけ…
あの頃は手の届かない闇に怯えていた。 明かりを消して、途端に広がる暗闇に呑み込まれそうで、 呑み込まれそうなほど小さい自分に、知らずのうちに恐怖する。
この頃は手の届く闇に怯えている。 明かりをつてけいても、突如として襲い掛かってくる暗い絶望。 もがけどもがけど、そこから這い上がることのできない自分。
恐い。 知らずに恐れていた。 知って、恐れている。
ただ、隣で眠る貴方に救われる。 背中に感じる人の体温。 それだけで救われる。
大丈夫。まだ私は独りではない。
人は幸せであればあるほど現状に不満を抱く。 幸せだからこそ気付けること。 考える余裕があるからこそ抱く。
退屈な日常に飽きて、非日常を求める。 それはその人の世界が平和な証。
だから大丈夫。まだ私はそこにいるのなら、 私は幸せだと分かるから。
そして、私はそれを大切にしていきたい。
ナナナ
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