lucky seventh
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男と男と女がいた。
ひとりは陸に住んでいて、
ひとりは空と海の交じるあおの中に、
そして、さいごのひとりはそのどちらでもあってどちらでもない処に居た。
・罪深き人々
それはそれは遠い昔の、まだ幸せだったころの物語り。
始まりはどこかの海の波打ち際に1人の女が倒れていたことから、 女を見つけたのは2人の男で、1人は『リクト』と言う名の陸に住む男、 もう1人は『カイリ』と言う名も空と海の中の男だった。 女は大層衰弱していて、2人は倒れていた女を甲斐甲斐しく世話をした。 そのかいあって女はみるみる回復していった。 女は名前を『渚』と言った。
その男は美しい男だった。 優しい面差しに、ちょっと気の弱そうな微笑みが女の保護よくをかき立てた。 子供のように繊細で、それでいてどこか一本気な心がたまらく 愛しかったんだ。と女は言っていた。
「カイリは(を)ね。 見捨てられなかったんだ。 この手を放したらもう2度と立ち上がれないと思った。 だってカイリは子供だから、だからね、大人の理屈は通用しないんだ。 けど、子供だけど大人になってしまったカイリはね、 きっと手を放したらおしまいなんだって思った。 ううん、どっちにしろ。私が選んでしまった時から終わってたんだ。」
「始りは終わりだった。」
男は言った。
「ナギサがリクトと思い合ってたのは知っていた。 だけど、ナギサが誰かのものになるのが嫌だったんだ。 だからナギサに言った。 ナギサが誰かのものになるなら、その誰かを殺してやるって… そうして終わりが始った。 分かってたんだ。 始めから、おとずれるこの物語りの結末を…」
また、男は言う。
「」
振り返って女は笑った。 髪の毛が日の光をうけて、さらさらと揺れる中 女は海岸沿いのコンクリートをバランスをとりながら歩いている。
「カイリは私の言うことはなんでも聞いた。 リクトには反抗ばかりしていたのにね。 だから、その手を引いた時も大人しくされるがままだった。 何も考えられなくて、ただ遠くに…離れなくっちゃって思った。
今、考えるとそれは誰のためだったんだろう?って思う。 恋しいリクト? それとも愛おしいカイリ?」
もうどちらでもいいんだけど。女は笑った。
その男は明朗快活、絵に書いたような好青年。 そんな男が羨ましかったと、男は言う。
「ナギサがリクトを選んだのは当然だった。 だからこそ、余計に悲しかった、辛かったのかもしれない。 リクトは同い年なのに兄貴分みたいでひどく可愛がってくれた。 ブラコン?っていうのかな?ナギサもいつもあきれてて 反抗期の子供と親かよって言われたこともあった。
うん。幸せだった。あの頃は…」
思い出はいつも綺麗なんだ。 男は言う。
「譲れなかった。 カイリがナギサのことが好きだってしっていた。 けど、それでもどうしても諦めきれなかった。」
目を閉じる。 壊れてしまった時間に思いをはせるように男は再度口を開いた。
「だから、追いかけた。 (追いかけて、追いかけた)その先にどんな結末が用意されているのかも 気付かずに…」
すべては終わったと男は言う。
誰に恋したかも分からずに、陸に上がったマ−メイド
失ったのは魅惑の声と、足となった妖艶な尾
愛を誓いあえねば泡と消える運命だけど、
それだけが彼女を待つ定めだから、
彼女は笑って受け入れるのでしょう。
マ−メイド
家への帰り道との引き換えに手にいれたのは、 誰かへと会いに行くためへの道。
導いた声と引き換えに得たのは、 導かれるための声。
陸にあがったマ−メイド、彼女は人になった。
2004年10月16日(土) |
永遠なんてないけれど… |
永遠なんてないけれど… ある不老不死の青年と その青年に育てられてる少年の会話
「なぁなぁなぁ」 最近(と、言っても時間感覚のなくなったこの身では いまいちよく分からないが、)拾った子供は遠慮と言う言葉を知らない。
(それともこれが最近の子供と言うものなのか?)
ゆったりと安楽椅子に座った男の膝の上に、膝立てになってなつくように 顔だけをのせた姿はどこぞの猫のようだ。 白い足が無造作になげだされている。 外でしんしんと降り続ける雪と同じ色合いの足に、 男は自分の羽織っているショールをそっとかけたやった。 もとより子供は色白だった。 さいわい床にはカーペットがひかれているせいで、 真冬だというのに裸足でいる子供の頬は暖炉の火も相成って、 ほかほかと温かそうに色づいている。 拾った当初よりも毛並みのよくなった子供に対して男は少しだけ笑って、 子供も自分にかけられたショールに嬉しそうにニッコリと笑った。
「あんなぁ…」
子供はニッコリと笑ったまま、男の膝になつくように顔をすりつける。 まるでマ−キングをしているようだった。
「あにぃはどうして僕を拾ってくれたん?」
男は子供の質問に目を丸くした。 遠慮知らずの子供がどこかそれを気にしていたのは知っていた。 ときおり浮かぶ、物言いた気な瞳がそう聞いていたから。 背けるように反らされた横顔に、まだ子供なんだなと男は思い いつか真正面からそう聞かされる日も遠くはないんだと自分に言った。
人が成長するのはほんとにはやい。 時が止まってしまったこの身には、 普通の人々よりもさらにはやく感じられる。 いままでもたくさんの人を看取ってきた。 それに堪えきれなくなった時もあった。 どんなに愛しても、 どんなに思っても、 通じ合うのほんの瞬きのような、そんなわずかな時。 人と関わるのを止めようと思った時もあった。 いつか訪れる別れが恐ろしく、何より悲しくて辛かった。 死ぬことはないけれど、それ以上に死んでしまいそうだった。
けれど、 けれどそれ以上に…
与えられた永遠が分からなかった。 すべてが愛おしかった。 今この手が感じる温もりがすべてで、何にも変えがたい現実。
「運命だったのかもしれない」
そう言うと、子供は顔をあげ不思議そうに首を傾げた。
(運命なんて言葉は好きではないけれど、 それでも、お前と出会えた意味がそれならば、それでいい。)
永遠なんてないけれど… けれど、いつかこの今が永遠になる。
2004年10月14日(木) |
そうして僕は魂を売った。 |
そうして弦が引き疲れるように、
弓なりに反った悲鳴を僕は知らない。
:そうして僕は魂を売った。
「消しゴムみたいなんだ。」 無感動に言う君に、私は泣きそうになった。 けれど泣くわけにはいかない。 それは彼に対する非礼になるから、私は歪みそうになる顔を堪えた。
君は言う。 「愛おしい、愛しい世界なんだ。」 その優しい優しい眼差しを隠すように瞳を閉じて、 ふいに浮かんだ綻ぶような口をぎゅっと引き締める。 彼の態度すべてが語っている。 愛おしい、愛おしいと。 あの頃、すべてを憎んでいた君とは、とてつもなく変わってしまった。 この世に生まれてきたことに、全身全霊で叫んでいた。 憎い、憎いと。 存在することに罪悪を感じ、また自ら命を絶とうにも これまで犠牲にしてきたものが多すぎて、償いきれず一歩を踏み出せなかった。 どれだけ多くの命を奪ってきただろう? 生きるために、それを行うのは悪ではないのだろうか? 問うた言葉に誰もかえしてはくれなかった。 食べた食物を吐いた。 自分を囲う檻のような家の中で、一生動物のように生きていくのか? そんな人生に彼は嘆いた。 そんな人の在り方に彼は絶望した。 そして、嘆いて気がついた。
君は何を手にいれたの?
愛おしい、愛おしいと。 彼は翳りを帯びて、何かを決めたように笑う。 この世界が憎いと言った。 この世界が愛おしいと言った。 いつのまにか同じ口が違うことを言っていた。
残ったのはいつのまにか儚くなった、君。
人は変わる。 思いも変わる。 すべてが流転し、流動する。 それは彼が触れた世界なのだろうか? それが彼が見つけた答えなのだろうか? 怨嗟の塊のようだった。 この世の復讐の鬼のようだった。 けれど、その中で絶えず彼の世界は回っていたのだろう。 きっと彼は変わっていく自分に嘆いただろう。 止まらない世界に悲鳴をあげのだろう。
そうして君は人である無力さを知り、 そうして君は人であることを君なりに覚ったのだろう。
どんどん、どんどん削られていく。 心が、思いが疲弊していった。
あぁ、これが生きるということなんだ。
君の声が聞こえた。
身を滅ぼすような彼の生き方に、それでも何も言えなかった。
母なる海の紋章
闇のながした涙でできた紋章は、
時代とともに名を代え、姿を変えて
時には聖なる泉の紋章として、
時には荒ぶるの滝の紋章として、
時には大いなる河の紋章として、
受け継がれることなくひっそりと歴史に存在を残した。
〜・涙の海・〜
「大河の一滴」
少女の声とともに、どこからともなく現れた濁流がすべてを呑み込んだ。 それはまるで少女の世界に伝わる古の書物に記された大津波にに似ていて、 少女は我知らず身震いした。
衣服包まれた己の身体の胸元には、この世界の創世に関わる闇の流した たくさんの涙によってできた希有な紋章が刻まれている。 それがこの大津波を引き起こしたのだと、少女はそれが分かった。
だが、少女はまだ知らない。 何故、自分がここにおいるのか? 何故、自分がこの紋章を宿しているのか?
そしてこれから自分が運命の一部に組み込まれたことを、少女は知る。
最近毎晩のように夢を見る。 サイレント映画のように繰り返し繰り返しフィルムのように流れる場面に、 私はいつもなすすべもなく眺めていた。
それはボロボロになって何かから逃げている少年だったり
それは手を胸元にあて握りしめながら泣き崩れる少年だったり
それは… 美しい翠の風をどこかの塔の上でまとう少年、 飢えたような金銀妖眼を持つ美しい金糸の髪の青年…、 フィルムを取り替えるように切り替わる膨大な映像に私は目眩がした。
(これは一体なんなのだろう?)
私は夢を夢と知覚しながら、それでもこの異様な状態に首を傾げざる おえなかった。 普通の人間ならばこのように毎回同じ夢を見続けるのだろうか? 夢の内容は何度見ても変わらない。 多少は背景や場面が変わったりするが、その中に必ずと言っていいほど 同じ登場人物達が出てくるのだ。 出てくる頻度が多いのは、 ベージュっぽい茶色の髪に、どことなく大人っぽい少年 黒い髪が綺麗で、どこか妖艶な少年 それと、金茶の髪に精巧な造型のような顔にはめたような翠の瞳の少年 そろいも揃ってめったに拝めないような美形の人々の面々で、 だけど、その顔には何か重いものを背負っているのを漠然と私は感じた。
「美しい人、あなたにそんな表情は似合わない。」
ちょっとカッコをつけながら、相手に聞こえないと分かっていても ついつい私は呟いてしまった。 このふざけた台詞は私の処世術。 真面目じゃなくて、ほんの少しの冗談を含めたこの物言いが 相手と自分の距離を推し量る上で一番いいものなんだと私は思った。 人によってはお節介なのかもしれないが。
「笑顔を見せて…」
2004年10月08日(金) |
glass heart |
殴られて、 蹴られて、
お前らみんな馬鹿ですか?
[glass heart]
冴えないフリをしてたわけじゃない。 ただ、1人にして欲しかったから私は自分をほんのすこし偽る。 どこにでもいるような、ただ流れているだけの
2004年10月03日(日) |
ふりほどいた手、いえなかった約束4(無色シリーズ) |
きみに会いにいくよ。
少年の叫びを風は囁く。
・ふりほどいた手、いえなかった約束・
もういられない。 闇はそう思った。 男はあまりにも彼の愛おしい召喚主に似て、 闇はそれに引きづられることに堪えられそうになかった。 ソレの世界は召喚主の少年ただ1人、だから闇は離れた。
月夜の戦いにまぎれ、夜の闇に同化した。
そこはソレのテリトリー 何ものも侵すことはできない。 だから、だれもソレに気付かない。
いや、私ってば今を生きてるんですよね?
オーケィ?
はい!?過去の蓮根?? 違う…あぁ、エンコンですか?
……それって、蓮根のお仲間ですか?
そう言った私に、目の前で紳士っぽいかんじの白い髭がダンディな お祖父様がこめかみを引きつかせていた。
MK5!マジで切れる5秒前ですか…?
そう呑気に感想を述べた私に、後ろでこれまた呑気にお茶をいれていた 助手のツトム君が微笑みを浮かべ、古いですね…と突っ込みをいれてた。 いやいや、ツトム君!私はまだまだ若いよ!! だから、自慢じゃないがお肌だってピチピチさ★ そう言うと今度は、それって死語ですよ!グッと親指をおっ立てた。 こりゃ一本とられたね★ はっはは。
ゴホン
そんな私と助手を横目に紳士がわざとらしく咳をたてて、私を見た。 その目線で人を射殺せるんじゃないでしょうかね? ツトム君が煎れてくれたお茶を飲みながらそんなことを思った。 優しいツトム君は多少態度が悪くても、ちゃんと紳士にもお茶を渡した。 助手の鏡だけど…あぁ、そのピクリとも動じない笑顔が末恐ろしいよ…。
ツトム君、黒いからね…
何ですか?ぽろりとこぼれた言葉に笑顔で返された。 ヒイィィッ、声にでてた!??スグルくぅ〜ん、カムバァーック!!
おっと、自己紹介が遅れましたね。 お前だれだよ!そう思いのお客さま、初めまして!! 私(わたくし)姓は天辻 名ははくあ と申します。 職業は一応私立探偵ってやつでしょうか? いや、株でもうけてしまいましてねぇ、でこっちが副業?みたいな? 本業は博打と占いです。 そこそこ当たるんですよ、一応。ちなみに自分だと百発百中ですがね!
今日は知り合いの華族さんの紹介で、ナイスミドル(見た目が)さんの 依頼を受けたんですがね、なんて言うか…ロミジュリ?ありがち… 察しのいい人ならこれで分かりますよね! ええ、カケオチネタです!! 勝手にやってろよと突っ込みたくりますよね…。 お家騒動ですよ(ほろり) ショックで奥さん(ナイスミドルの娘さん(イイ年))倒れて、 旦那は(婿養子なんで立場が弱く)胃をやられ、 祖父さんは頭に血がのぼって、祖母さんは我関せず! いやぁ〜実にいい華族ですね。まったく(怒)
怨恨だか、蓮根だか知りませんが!! それぐらい自分で何とかしろよ! てめぇらイイ大人がよぉ…アホですか?? 過去も未来も知りません。 こういう言葉があるんですよ(微笑) 今が一番大事!
これにて一件落着!
…あぁ、それにしてもスグル君早く帰ってきてぇ〜! ツトム君の笑顔がイタイよ!!
ナナナ
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