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2016年09月14日(水) 広島優勝の6要素

日本プロ野球(NPB)セリーグは広島が優勝。おめでとうございます。筆者の予想は4位だったから大外れ。広島球団及び同ファンに謝罪しなければなるまい。ただ釈明ではないが、筆者は昨シーズン、広島優勝と予想した。ところが実際は4位。15シーズンの結果と今シーズンのそれが入れ替わった。

広島優勝の6要素

広島の優勝要因についてはすでに多くの分析がでそろっていて、ここで繰り返すまでもないのだが、少しだけ触れておこう。

第一に、新井の2000本安打達成から黒田の200勝達成と盛り上がり、チームが勢いに乗ったことが大きい。「神ってる」という新語を生み出したのも、この「勢い」が根源にある。

第二に、田中、菊池、丸の打撃が好調だったこと。戦力面では、この3選手の活躍が昨シーズンと最も異なる点。

第三はレギュラーに故障者が出なかったこと。昨年の覇者・ヤクルトが主力の故障に泣いたのと比べるとよくわかる。

第四は、前田投手のMLB移籍がマイナスに作用しなかったこと。昨年までの広島の投手陣は、ジョンソンを別格として、前田を除くと、それほどいいとはいえない状態だった。今年、その前田が抜けたのだから、戦力大幅ダウンだと筆者は考え、広島4位と予想した次第。

ところが、今シーズンになると、だれが活躍したという記憶に残らないまま、広島の投手陣は安定度を維持したまま優勝までこぎつけてしまった。先発(ジョンソン、黒田、野村、横山、福井)−中継ぎ(永川、一岡、ヘーゲンズ…)―ジャクソン(セットアッパー)―中崎(クローザー)の方程式が崩れなかった。投手陣における新戦力の台頭を筆者は予想し得なかった。先発では福井が外れて、九里、戸田、中村がその穴を埋めた。終盤ではヘーゲンズ、薮田も先発に加わり福井も復帰。盤石な体制ができあがった。

第五に、緒方監督の采配が安定したこと。昨シーズンの緒方監督は、走塁面で無謀なサインが多く、アウトを簡単に敵に与えることが多かった。走者も暴走がめだった。今年は暴走が好走塁・積極策として実を結んだ。

そして最後に、このことは既に多くの指摘があるが、長期的に見て、完全ドラフト制度の実施がある。広島は伝統的に才能の発掘・育成がうまい。地道なスカウト活動で、甲子園、大学野球のスターではない無名選手を発掘し育てあげてきた。それでも、戦力面では読売、阪神には劣後し、リーグ優勝回数は、読売が45回、広島は7回にとどまっている。

25年間優勝できなかったのは、ドラフト制度に逆指名、指名枠といった合法的抜け穴制度があったこと。優秀な人材は人気球団に取られた。さらにFA制度が実施され、主軸の流出が相次いだ。完全ドラフト制度が実施され、広島にも優秀な人材が集まり、その選手たちが順調に育って優勝争いに加わるのに、四半世紀を要したというわけだ。

広島と対極的な読売――危機到来の前兆

優勝の自律的要因を挙げたが、他球団との関係も重要である。中で、読売が予想に反して弱かったことが最大の他動的要因の一つ。筆者のシーズン前の予想では、読売圧勝だった。読売が優勝を逃した要因は、広島の裏返しという見方も成り立つ。

読売の主軸は生え抜きでしかも完全ドラフト制度入団の坂本を除くと、FA入団者、外国人、逆指名入団者ばかり。長野、澤村、菅野はドラフト破り入団者。ところが、外国人の成績が上がらず、FA及び逆指名が高齢化し、しかも若手が伸びないという負のスパイラル状態を招いてしまった。自慢の投手陣も内海(逆指名)、大竹(FA)がシーズンを通して働けず、打線では阿部(逆指名)、片岡(FA)がやはりフルシーズン働けない。合格者は村田(FA)だけ。若手の野手は全滅だ。

広島が故障者を出さなかったのに比べて、読売は故障者が続出。分厚い選手層を誇る読売だが、勝負所で戦力を整えられなかった。それでも、2位をほぼ確定しているのだから、読売が戦力面においてセでは抜け出ていることがわかる。ただし読売の遺産も費えるころ。読売は根本的チーム改造に取り組まなければ、来シーズンは今年以上の成績は望めない。

なお、クライマックスシリーズについては、短期戦なので予想は難しいが、広島がホームで戦えるだけにその優位は動かない。



2016年09月09日(金) タイ戦「勝利の方程式」はこの先、通用せず

W杯アジア最終予選第戦、日本はアウエーでタイに2−0で勝った。初戦、UAEにホームで黒星発進した日本であったが、タイから勝ち点3を奪い、星を五分に戻した。

ハリルの選手起用(ボランチ、左サイド、ワントップ)が成功?

先発メンバーは以下のとおり。
GK西川周作(浦和レッズ)、DF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、森重真人(FC東京)、酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)、MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、山口蛍(セレッソ大阪)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、本田圭佑(ミラン/イタリア)、原口元気(ヘルタ)、FW浅野拓磨(シュツットガルド/ドイツ)

ワントップ(Cf)には、岡崎に代え浅野を起用。左サイド(Ls)に原口、ボランチ(Dm)には、UAE戦、不完全燃焼に終わった大島に代えてJ2の山口を入れた。原口と浅野がゴールを奪い、山口の守備力が光ったわけだから、ハリルの選手起用は結果的に成功した。

しかし試合後のハリルホジッチ監督のコメントは、「2人ともゴールというのは偶然だと思うが、それにしてもよい雰囲気をもたらしてくれた」というもの。このコメントからうかがえるのは、勝利をもたらした2得点とも、意図した結果ではないということを図らずも吐露したように聞こえる。監督が代役2人の殊勲者を絶賛していない。監督自身、勝つには勝ったが、チームは本調子でない、と思っている。

攻撃陣形のバランスを崩し続ける本田

この試合のあと、日本のネットにおいて、「本田、長谷部が戦犯」という記事が目に留まった。また、日本の攻撃の主軸といわれる、本田、香川、岡崎に対する辛口のコメントが散見された。それらの批判は大手メディアにではなく、ネットのサッカー専門サイトに掲載されたものだが、それらを再掲載したポータルサイトもあった。ようやく、本田、香川、長谷部ら海外組批判のタブーが破られつつあるのか。筆者はこうした傾向を歓迎する。

辛口コメンテーターが指摘しているように、アジア予選のスタート2試合の日本の状態は悪かった。日本の攻撃のかたちを見ると、Rsの本田が中央に入り込む形が多くなり、サイド攻撃の機会が減っている。窮地の日本を救ったともいえる先取点は、前出のとおり本田が中央に入り込んでそれにつられてタイのDFが真ん中によったため、日本の右サイドががら空きになり、Rsbの酒井宏がまったくのフリーで狙いすましてクロスを上げられたことに起因する。そのクロスがゴール前をスルーしてLsの原口がほぼフリーとなり頭で決めることができた。

この得点シーンについて、Rsb酒井宏の好判断と評価するか、得点者、Ls原口の決定力というべきか・・・まあ、何といおうとすべてが結果論。それがゴールというものだ。野球でいえば、ホームランを打った打者を褒めるのか、失投した投手、サインを出した捕手を責めるのか・・・というのと同じようなもの。

クロスを放った酒井宏、ゴールを決めた原口を評価しつつも、筆者はこの得点は日本代表の狙いではないと確信する。なぜならば、ある程度のレベルのチームのDF陣ならば、Rsbの前のスペースを自由に使わせるような守備はしない。タイのように、まったくのフリースペースをつくらせることはない。タイのDF陣が本田につられたのだから、本田が囮になったというべきだろうが、それはけがの功名というやつだ。

本田がRsを「職場放棄」し続けるため、日本は相手ゴール前中央にCfの浅野、Om(トップ下)の香川、本田の3人が塊となり、チャンスをつくれない時間が続いた。ただ、救いは、とにかく日本が先取点をとれたこと、タイのチャージが甘く、日本が自由にボールを奪えたこと――タイは日本にとって与しやすい相手だったこと――だ。先取点がとれずに時間が経過したら、日本はタイとスコアレスドローを演じたかもしれない。

この試合、その本田及び香川が決定機を外したため、日本はさらに試合を難しくした。救いは山口はじめ(本田と香川を除いた)各選手が、積極的に守備をしたこと。繰り返すが、タイは体格で日本を下回り、しかも、フィジカルが弱い。日本の圧力に抗しきれなかったことが救いだった。

日本は後半30分、長谷部のロングパスに浅野が反応して裏に飛び出し、ゴールを決めた。この得点は、Cfがその仕事をまっとうした結果である。敢えてシニカルに表現するならば、後半、極端に足が止まった本田がゴール前にいなかったから、浅野が自由にプレーできたともいえなくはない。それくらい、本田のポジショニング、ランニング、判断、フィニッシュの精度は悪かった。

香川も2試合とも不調、不発

本田に負けず劣らず、香川も悪かった。決定機を外したことももちろんだが、彼はOmとして機能していなかった。コンディションの問題なのか、ドルトムントで活躍していた香川の姿とは全く別人のようである。

海外組は下り坂か?

かくして、攻撃陣の軸といわれる、▽本田がUAE戦、タイ戦を通じて攻撃陣のバランスを崩し続け、▽香川も2試合とも生気がみられず、不調かつ不発、▽岡崎はUAE戦で不調、タイ戦がベンチ。▽その岡崎の代わりにタイ戦でCfに入った浅野が得点を上げ、▽同じく、本田の反対側のポジション(Ls)の原口が貴重な先取点を上げた。守備陣では、キャプテン長谷部にミスがめだつありさま。最終予選の2試合を通じて、日本代表の海外組、主軸といわれる選手たちが年齢的、体力的に下り坂に来たことの前兆とみられなくもない。

タイ戦の「勝利の方程式」はこの先、通用しない

タイ代表は成長著しいチームだが、日本代表にはやりやすい相手だ。日本の五輪代表をダウンサイジングした感じ。だから、日本がセカンドボールを支配できたし、相手ゾーンでボールを奪えた。

しかし、このような試合展開が残り7試合=オーストラリア(A・H)、イラク(H・A)、サウジアラビア(H・A)、もちろんUAE(A)との対戦でできるはずもない。欧州リーグが進展する来月以降、海外組といわれる本田、香川、岡崎、清武、長谷部らが調子を上げられだろうか。

筆者は、本田が最も難しい存在だと思っている。彼が16-17シーズン、ACミランで出場機会を得ることは難しいと感じているからだ。代表戦以外の公式戦に1年以上出場しない選手を主力と表現できない。試合勘、フィジカル等が劣化することは間違いない。本田に代わる選手はいるのだろうか。国内組の台頭は期待できるのか。この期に及んで新戦力をテストすることは困難であるし、さらに、日本の救世主が彗星のごとく出現するとも考えにくい。この先のアジア最終予選の各試合は、日本代表及びそのサポーターにとって、苦難の連続となりそうだ。



2016年09月01日(木) サッカー日本代表、ホームで黒星発進

日本のスタメンは、GK西川周作(浦和レッズ)、DF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)、吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)、森重真人(FC東京)、酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)、MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、大島僚太(川崎フロンターレ)、香川真司(ドルトムント/ドイツ)、本田圭佑(ミラン/イタリア)、清武弘嗣(セビージャ/スペイン)、FW岡崎慎司(レスター/イングランド)

大島僚太の抜擢は大失敗に

意外だったのが、中盤に起用された大島。大島は代表試合初先発。柏木の負傷欠場の代役らしい。だがその大島が「アンラッキーボーイ」となって、日本がホームでUAEに1−2で負けた。筆者は拙コラム(4.22)において、この試合は引分けだと予想したのだが、それどころではなかった。初戦、ホームで負けるというのは、最終予選の先行きに大いなる不安を抱かせる。

前出のとおり、敗因は代表初先発の大島。この程度の選手を大事な初戦に抜擢した代表監督(ハリルホジッチ)にすべての責任がある。Jリーグを見渡しても大島くらい力量の選手はいくらでもいるだろう。抜擢した根拠を知りたいものだ。U23五輪予選、リオ五輪をみていい選手だと思ったのかもしれないが、世界のサッカー界は五輪(U23)に重きを置いていない。そこで活躍した選手より、Jリーグで実践を積んだ選手を起用すべきだろう。

大島のポジションは長谷部と並んでのダブルボランチ(セントラルミッドフィルダー)。二人の役割を大雑把に言えば、長谷部が守備的で、大島は攻撃的――攻撃の基点となる組立と前線へのパス供給だと思われる。ところが、大島はそのどちらも全うできなかった。期待されたパス供給については、怖がって横パス、バックパスばかり。ボールを奪わることを恐れたためだろう。攻撃のイメージの共有という意味においては、サイドからなのか、それとも中央の本田に預けてペナルティーエリア内で勝負するのかが不明確なまま時間が過ぎた。大島の攻撃のイメージと前線の動き出しがシンクロせず、速さのある攻撃の回数が少なくなっていた。

大島は守備でも致命的ミスをした。後半9分、ペナルティーエリア内で大島がハマディに足をかけてしまいファウル。PKを与えてしまう。ハマディがキープしてファウルを誘っている状況で不用意に足を出すのは経験がないため。この得点が決勝点になったわけだから、大島の「アンラッキーボーイ」の極めのプレーだった。

ハリルの代表選手選考は疑問だらけ

初戦のプレッシャーを考慮すれば、ボランチには経験豊かな選手の起用が常識的。日本は伝統的にボランチにはいい選手がいたのだが、最終予選の初戦で大島に先発ポジションがまわってくることの方に奇異な感じを覚えた。日本サッカーのこの先が大いに思いやられる。さらに、ボランチの4選手が、長谷部、柏木、大島、山口蛍という選考がわからない。柏木が故障したら大島か山口とは・・・

大島ばかりに責任があるとは言えない。攻撃陣に冴えがみられない。本田は得点したが、流れの中からではない。香川、岡崎、清武はもちろんのこと、交代選手にも得点の匂いが感じられない。豊田、ハーフナーといった大型CFWの起用を考えた方がいい。

タイ戦に勝ち点1以下ならハリルは更迭

なお、主審の笛がUAEに有利だったという見解もある。主審のジャシムはカタール国籍。UAEとは同じアラブ同士。しかし、リプレー映像を見る限り、大島のファウルは明らか。むしろ、後半33分、途中出場のFW浅野拓磨のシュートが得点として認められなかったシーンのほうが微妙だった。リプレー映像ではゴールラインを越えたかのように見える。ゴール横に副審が立つようなルールだったら得点になったかもしれない、“微妙な判定”には違いない。だが、何度も言うように、日本の実力ならば、UAEに圧勝しなければいけないのだ。

この布陣のままタイでアウエーの試合を迎えるのだから、不安が拭えない。前出のとおり、筆者の4.22の拙コラムの予想は、「UAEと引分けなら、タイにも苦戦」というもの。悪い予感が的中しそうだ。タイから勝ち点3を取れなかったら、ハリルホジッチの更迭を考えなければなるまい。


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