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2016年06月22日(水) 交流戦でパがセより強い理由

プロ野球交流戦の全日程が終了した。今季もパリーグが圧勝(パ60勝、セ47勝1分け)、セは7年連続で負け越した。上位6球団のうち、セは広島が3位に入ったものの、下位6球団のうち、最下位オリックス(パ)を除く5球団がセ。2005年から開始された交流戦だが、セが勝ち越したのは2009年のみ。通算で、パ925勝、セ821勝とパがセを圧倒している。

メディアにはパがセより強い適正な説明がない

さて、毎シーズン、この時期になると「強いパリーグ」とマスメディアが喧伝する。だが、その理由についてはこれといった解析がどこからも出てこない。DH制を強いているパリーグが投打において結果的にいい選手を育てている、という分析が多いが、納得のいく説明とはなっていないように思える。DH制は投手が打席に立たないから、接戦の場合、代打を送られての投手交代はない。それが好投手を育てる要因だという。確かにそれもなくはないが、セの野球で投手が代打で交代するのは終盤近く。投球数制限が一般化した今日の野球界において、どれほどの影響を与える要素なのか。また、パリーグがDH要員を抱えているから、DH制が採用されるパリーグホームゲームで優位だという説もある。だが、セのホームゲームではその選手が起用できないのだから、パの優位の説明にはならない。

パがセより強いのは、いい選手がパに集まっているから

交流戦におけるパリーグ優位の要因は、現象的かつ表層的な追及では説明できないのだが、実はきわめて簡単な要因によって、パがセより強くなった。セがパより弱いのは、「セにはパに比べていい選手が少ない」から。

たとえば、いまMLBで先発ローテに入っている日本人投手といえば、田中(楽天)、岩隈(楽天)、ダルビッシュ(日ハム)と、パリーグ出身選手ばかり。セからは、今季、前田がドジャースに入団したが、何シーズン活躍できるかは不明である。リリーバーで上原(読売)が活躍中だが、上原の読売入団(1998年ドラフト)は逆指名。つまり、現行のドラフト制度が当時施行されていたならば、彼が読売に入団できた確率は低かった。

現在もっともMLBに近い存在といえば、大谷(日ハム)、菅野(読売)の2投手だろう。その菅野だが、2011年ドラフトでは日ハムが指名権を獲得していた。ところが、菅野が日ハム入りを拒否して浪人。翌年のドラフトで、伯父のいる読売が単独で指名権を得たことは記憶に新しい。つまり2011年ドラフトが厳正に実施されていたなら、菅野もパリーグに入団していたことになる。

パにいい選手が集まる理由

(一)パのほうがクジ運がいい

日本におけるMLBクラスの投手がことごとくパリーグに入団しているのは、パ球団の“クジ運”がセを上回っている結果であって、セの球団がアマチュア選手を見る目がないためではないだろう。だが、セリーグが即戦力を求めて、完成度の高いアマチュア選手を高順位で指名する傾向が強いという指摘はうなずける。セ球団は、東京6大学リーグ、東都リーグ、関西6大学リーグの「スター」を求める傾向があるように思う。

(二)育成システムがパのほうが優れている

育成システムにおいて、パがセを上回っている――という指摘も当たっている。現在最強といわれるソフトバンクが三軍制度を採り入れ、それを読売が真似たというのがそのことを象徴する。

(三)FA制度がパの若手を育てた――読売の事例

FA制度の導入でセ(とりわけ読売と阪神の人気球団)にいい選手が集まると思われたが、長期的視点でみると、パリーグではベテラン選手が抜けて若手にチャンスが出て、若い才能が花開いた、という皮肉な結果を招いた。そのことを象徴する球団がセの人気球団である読売。以下、読売の実情を眺めてみよう。

読売の現在の主力選手は、(1)過去、逆指名及び自由枠ドラフトで読売が集めたアマチュアの実力選手。阿部、内海が代表的だ。(2)長野(09年)、澤村(10年)、菅野(12年)のように、「ドラフト破り」に近い形で読売に入団した選手、(3)FA入団(村田、片岡、杉内)、(4)外国人(ギャレット、マイコラス、ポレタ、クルーズ、マシソン…)。

読売は、これらの古参が厚い層をなしていて、若手の台頭を阻んできた。

(四)ドラフト指名の失敗――読売の事例

読売におけるドラフト(D)上位指名及び育成で育った主力といえば、2005年の育成Dの山口(投手)、2006年の高校生Dの坂本(遊撃)くらい。最近のドラフト上位(1〜3位)をみると、13年=小林(捕手)、田口(投手)、14年=戸根(投手)、高木(投手)がレギュラーだが、野手に限定すると、13年の和田(内野)、14年の岡本(内野)、15年の重信(外野)、山本(外野)が頭角を現さない。それ以前のD上位野手は討ち死に状態(大田、中井等)

逆指名、自由枠がなくなった完全Dの下、2005〜2015まで、坂本を除いた野手で球界を代表する選手が不在なのだ。人気球団の読売といえども、D制度がある以上、実力アマチュア選手を一方的に集めることはできなくなった。さらに、入団したとしても順調に育成できるかどうか。若手に適正な指導を施せるコーチがいるのかどうか。読売は、現役時代に実績を上げた野手が打撃コーチの職を得るが、彼らの指導力が問われることはない。

セの人気球団における読売のドラフト指名の失敗事例を見たが、セの広島を除く4球団が読売と同様の傾向を見せているように思われる。広島は伝統的に育成型球団として実績を上げている。

結果論として、セリーグにはパリーグと比較して力のある選手が集まっていない。育成にも失敗している。その穴をセの球団がFA制度及び外国人で補おうとしながら、逆にパリーグに力のある外国人選手が集まり、FA制度でベテランが抜けた穴を逆にチャンスとして、パでは若手が伸びた。かくして、パリーグはセリーグより強くなったのである。



2016年06月12日(日) キリン杯は「気の抜けたビール」

サッカーキリン杯決勝は日本(FIFAランク53位)が1−2でボスニア・ヘルツェゴビナ(同20位)に逆転で敗れ優勝を逃した。

日本は初戦、戦う意欲のないブルガリアに大勝したものの、決勝戦ではボスニア・ヘルツェゴビナの二軍に競り負けた。そもそも、この大会、来日する外国チームはA代表を名乗っているが、主力選手はいない。しかも日本が戦った2チームとも、ユーロ予選に敗退したばかりで、戦うモチベーションは失われている。一方の日本代表はほぼベストメンバー。決勝戦は本田(初戦も欠場)、香川が欠場したが、ホームなのだから負けてはいけない。

敗因はあいかわらずの守備の不安定さ。2010年の南アフリカ大会後、それまで日本代表のCBとして奮闘していた闘莉王、中沢が代表から退いた。以来、このポジションの人材が前任者を上回ることがない。2014年のブラジル大会は今野、吉田、そして、2年後のいま現在のレギュラーが森重、吉田。2大会継続してCBを務める吉田は明らかにスピードに難がある。抜擢された森重は総合的に世界レベルから遠い。今秋から始まるロシア大会最終予選までにこのポジションにおける欠陥を補修することはほぼ不可能。

つまり、日本代表はCBに欠陥を抱えたまま、アジア最終予選を戦う。アジアのレベルの低さに助けられてW杯予選を乗り切れたとしても、本戦での活躍はまったく期待できない。つまり、2012年以降、2018年まで、日本はCBの人材に恵まれなかったままということになる。

筆者は若手CBの積極起用を書いたけれど、〈U…〜五輪代表〜A代表〉という飛び級を認めない年功序列が浸透している日本サッカー界、若手は無視された。日本が2002年の日韓大会の成功体験に拘泥している間、世界では10代、20代前半の若手が世界的スーパースターになるのが当たり前になっている。日本と世界の差は広がるばかりだ。

そんななか、日本代表を世界に近づけたと大宣伝されてキリン杯が再開された。しかし、内容も意義も時代遅れ。代理店主導のイベントであって、代表強化にはほど遠い。そういえばスポンサーはビール会社だったっけ。その味わいぶりは、まさに気の抜けたビール。


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