2015年04月26日(日) |
読売のフランシスコ補強はまったく無意味 |
26日、読売が緊急補強した外国人選手、フランシスコがイースタン・ウエスタン交流戦の阪神戦に3番一塁手で先発出場した。CATVの中継でフランシスコの日本デビュー戦を見た印象としては、守備については阿部よりうまいが、昨年まで読売に在籍していたロペス及び現在のレギュラー・井端よりは相当劣るように思えた。
打撃については、前評判では空振りが多い「三振王」というものだったが、低めの変化球のボール球を見極める選球眼をもっているように思えた。もちろん打撃はシーズンをとおりして結果が判明するものなので、わずか3打席で判断はできない。中継解説者のコメントでは、(まだわかりませんが、この試合の打席では、)変化球よりも速球に反応できていない――とのことだった。まったくそのとおりで、筆者も同じ印象をもった。
この先、フランシスコがどのくらい活躍をするのかしないのか、まだわからないが、この補強は無意味である。この程度の選手ならば、ロペス(現横浜)を自由契約にする必要はなかった。フランシスコがロペスより打撃面でいい成績を残す可能性は低く、しかも守備のマイナスで読売は試合を落とす可能性の方が高いとみた。
しかしそれにしても、読売の二軍は豪華である。2番に亀井、3番にそのフランシスコ、5番に大田、DHにセペタ、先発投手は大竹である。4番は売り出し中の和田恋、3塁手は「ドラ一」の岡本。さらに、レギュラークラスの矢野、堂上が代打で登場するのだから、このチームが一軍でこの日のナイトゲーム(ヤクルト戦)に臨んでもおかしくないくらい。
ただし、読売の欠陥も露わで、二塁手(和田恋・吉川)、三塁手(岡本)、遊撃手(辻)の内野陣と捕手(河野・鬼屋敷)のレベルが一軍に比して相当劣る。読売の二軍においては、一塁手を除いた内野陣及び捕手がいまのレギュラーを脅かかすまでに成長していない。読売がいくら豊富な外野陣を擁していようとも試合に出られるのは3人。前出のフランシスコを補強したが、たとえば、現在の内野手のレギュラー、村田・坂本・片岡・井端の一角が故障で崩れれば、読売の二軍が擁する戦力では補え切れない。フランシスコが三塁を守れれば別だが・・・
2015年04月18日(土) |
早くも、捕手・阿部は戦線離脱 |
(一)捕手・阿部は筆者の予想どおりの結果に
筆者が直近の当コラムにて、「阿部は近いうちに身体的疲労で極度なスランプまたは故障に悩まされる。つまり、阿部は一塁でも捕手でも使えなくなる。」と書いたが、そのとおり、17日の阪神戦で大腿部肉離れ(正式な発表はないが)で戦線離脱した。選手にとっての災厄なので予想が的中したことを喜べない。端的に言って、阿部は原監督に“潰された”。阿部は捕手に復帰して、わずか11日しかもたなかった。
◎読売球団にメディカルスタッフはいるのか?
阿部にとってのこの災難は、読売球団における選手のコンディション管理に係る杜撰さが根底に潜んでいる。この問題も以前当コラムにて指摘しておいた。2015年のプレシーズン、読売は多くの故障者を抱えていた。阿部もその中の一人だった。しかも阿部はメディア報道によると、捕手としての練習を一切していなかったという。そんな阿部を急きょ、「非常事態宣言」して捕手をやらせた監督も監督だが、球団のメディカルスタッフは何をしていたのだろうか。読売にはきちんとしたメディカルスタッフがいないのかもしれない。医療的見地から、選手を守る権限をもったスタッフの存在が・・・
当たり前に考えれば、阿部のキャッチャー起用は原監督の暴挙である。1)ピークを過ぎたベテラン捕手が一塁手にコンバートされた、2)プレシーズン、その選手は故障で一塁守備の練習を満足にしていない、3)もちろん捕手とは縁を切ったのだから、捕手の練習もしていない、4)そのような状態のベテラン選手を突如、捕手に逆コンバートしたら・・・
どうなるかについては、考えるまでもない。プロスポーツ選手ならば、故障するのが当たり前なのである。身体のメカニズムを甘く考えてはいけない。読売球団にスポーツ医療の知識をもっている者がいれば、そして、専門家の忠言を聞く耳を持った指揮官がいれば、阿部のケガは未然に防止できた。というよりも、阿部を捕手に戻すという暴挙は選択肢として出てこない。
◎現代のプロスポーツ界では医療スタッフは極めて重要
ケガや故障は人間なのだから仕方がない、という見方もある。もちろん、プロスポーツにあって、ケガ人、故障者を撲滅することは不可能である。だから、選手のケガ、故障を未然に防ぐために全力を注ぐのがチーム専属のメディカルスタッフの責務となる。彼らに課せられたもう一つの使命は、故障者、ケガ人を最短で現場復帰させることにある。
読売球団にあっては、世界の一流プロスポーツクラブが当然備えていなければいけない医療専門部門を、有していない可能性がある。読売球団は選手に「紳士であれ」と説教しているそうだが、プロスポーツクラブとしての備えのほうは、いかにも時代遅れのようである。
優秀なメディカルスタッフというのは、指揮官の選手起用について、適切なアドバイスをすることができる。指揮官はそれに従わなければならない。故障者を無理に起用して潰せば、球団(もしくは指揮官)に対して選手は訴訟を起こし争う可能性もある。そんなリスクを球団が避けるため、医療スタッフが重要な存在となる。選手は個人事業者であって、球団の奴隷ではない。日本のプロ野球界には、そんな意識は育っていないようだが。
(二)読売の「勝ちパターン」分析
さて、阿部が故障した試合、読売は阪神に3−2の僅差で勝利した。この試合は読売の勝ちパターンの典型だったので書き残しておきたい。
◎相手がミスを連発する
読売の先制機をつくったのは、1回ワンアウト後の2番片岡が、0−2という投手絶対優位から放った単打から。阪神の先発メッセンジャーの調子は悪くはなかった。しかし、本来ならばストライク勝負ではない場面でほぼ真ん中の絶好球を投じてしまった。不注意であろう。あるいは捕手のサインがストライク要求だったのかもしれないが、いずれにしても打たれてはいけない状況であることに変わりない。バッテリーのミスである。
続く三番は当たっている橋本。案の定、打たれて1塁3塁のピンチ。続く4番坂本は一塁ゴロ。阪神の一塁手ゴメスは、ホームに突っ込んでくる片岡を見ながら、バックホームせずベースを踏んでワンアウトを取ったが、片岡は当然ホームイン。先制点が入った。
阪神の守備位置は併殺狙いの中間守備。まだ初回なのだから、前進守備はない。坂本が放った一塁ゴロは平凡な打球で、楽々ホームでアウトが取れる。なぜバックホームしないのか。明らかなゴメスの判断ミスである。メッセにしてみれば、内野ゴロは三振と同じくらい“して、やったり”の投球である。にもかかわらずゴメスのミスでリズムが狂ったのか、メッセは以降投球が乱れ3失点した。
読売の勝ちパターンは多くが相手のミスに乗じたもの。読売の先発ポレダは2失点したものの、ブルペン陣が阪神の反撃を抑え、僅差で読売が試合をものにした。阪神の攻撃もいただけない。拙攻の連続で読売に白星を献上した感がある。こうした試合展開は昨シーズンの後半から続いている。
もう一つの読売の勝ちパターンは、相手にリードを許しながら、後半、相手チームの継投ミスから逆転するというもの。いずれも、先発及びブルペン陣が失点を防ぎつつ、相手のミスから勝利するパターンにかわりない。
◎名前で負けている相手選手
読売が「しぶとい」「勝負強い」という表現も間違ってはいないが、その一方、他球団の選手が「甘い」という表現もできる。筆者はもちろん後者だと感じていて、セリーグの5球団の選手がたいして強くない読売選手のネームバリューにプレッシャーを感じ、勝負所で力を出し切れないことにより、勝ちきれない結果だと思っている。
◎読売は大嫌い
読売の「強さ」は、何度も書くとおり、選手層の厚さにある。故障選手、不調選手を外しても、ファームからほぼ無尽蔵で有力選手が上がってくる。この試合でも、故障の亀井の代わりに上がってきた橋本が活躍した。前節の横浜戦では、ベンチだった金城が先発して決勝3ランを放って勝負を決めた。
筆者は、読売が嫌いである。その理由は、(1)若手を育てない、FA頼みの金満球団運営、(2)阿部の起用法にみられるように、選手を使い捨てにするチーム体質、(3)メディカルスタッフが機能しないような、非近代的球団組織体制――である。とりわけ2015年シーズンは、掲げたスローガンの「新成」をひっこめて、ベテラン頼みの打線を組んだばかりか、阿部のコンバートを貫徹せず、挙句は潰した読売に優勝してほしくない。もちろん、CSに出たとしても、日本シリーズには、行ってほしくはない。
読売にダメ出しができるのは、セの5球団が読売に勝つしか方法がない。だから、阪神もヤクルトも広島も中日も横浜も応援している。とにかく、読売にだけは優勝してほしくない。
2015年04月14日(火) |
原監督、今シーズン捕手で阿部を使い捨て |
プロ野球開幕後、4月12日で各チームの対戦が一巡した。注目の読売はホーム(H)でDeNAに2勝1敗(2−1)、アウエー(A)で中日に0−3、阪神に2−1(H)、広島に1−2(A)、ヤクルトに2−1(H)の通算7勝8敗の負け越しで、セリーグ4位となっている。いまの読売のチーム状態でこの順位なら「まあ、まあ」だろう。読売は各カード、ホームで勝ち越しているが、相手を圧倒したという印象はない。勝因は相手のミス(走塁、守備、采配とりわけ継投ミス)で白星を拾ったという感じ。
◎阿部は一塁守備が下手すぎて捕手に復帰
読売の掲げたスローガンは「新成」。その象徴が阿部の一塁コンバートだった。ところが、FAでとった相川の故障を機に、原監督は阿部をもとの捕手に逆戻りさせた。原はこの措置を「緊急避難的」とコメントしたようだが、真相はそうではなく、阿部の一塁守備があまりに下手だったことによる、と筆者は考えている。
阿部はキャンプ中に故障をしていて、一塁の守備練習を満足にしていない。そのため、内野としての一塁手に最低限求められるフットワーク及び野手からの送球捕球が満足にできない。阿部の一塁が続けば、読売は守備から破綻することは明白だった。
読売は、昨シーズンから顕著になってきたように、打撃で圧倒するチームではない。豊富な投手陣と守備力でセリーグを接戦で制してきた。とりわけ、内野陣は一塁(ロペス/横浜に移籍)、三塁(村田)、遊撃(坂本)、二塁(片岡・井端)の布陣でいずれも守備の名手たち。鉄壁に近かった。ところが今シーズン、その一角であるロペスが横浜に移籍し、その代わりに入ったのがコンバートされた阿部である。読売の守備力は数段劣化した。
開幕数試合で原監督は阿部のまずい守備に愕然とした。しかし、「捕手復帰は99%ない、小林を育てる・・・」と断言してしまった関係上、原は阿部を一塁から外すわけにはいかなかった。そのジレンマを解消したのが相川のケガによる登録抹消というわけだ。
◎阿部は「田淵」になれない?
原監督が阿部を一塁にコンバートした根拠は、強打者・田淵幸一のイメージがあったからだろう。田淵は捕手から一塁手(及びDH)転向して、自身の選手生命を伸ばした代表的存在だ。原は田淵の成功を阿部にオーバーラップしたはずだ。
その田淵の守備力だが、『がんばれ!!タブチくん!!』で漫画化されたことで明白なように上手ではなかった。しかし、筆者の記憶ではいまの阿部よりはましだったような気がする。
一方、田淵の打撃については、一塁手(及びDH)転向直後の80年にホームラン43本を放っている。以降、引退する84年までの本塁打数は、15本、25本、30本、14本を記録。打率こそ3割を超えなかったが、長距離砲の役割を果たした。ただし、田淵が一塁に転向したのは、パリーグの西武ライオンズ時代。田淵は一塁手のみならずDHも務めた。いま手元に田淵の純粋一塁手として打撃成績を示す記録がないのが残念だ。
いずれにしても、今シーズンは無理としても、この先、阿部が捕手から一塁手に徹したとしても、田淵ほどの成績を上げられる可能性は低い。田淵が転向した年齢は34歳、阿部は36歳(ともに大卒)。この2歳差が微妙なのだ。
◎阿部は近いうちに疲労で潰れる
そればかりではない。阿部を一塁にコンバートさせた張本人である原監督が、いまの守備力の阿部を一塁に戻すはずがない。阿部は、今シーズン中、捕手を続けるだろう。そうなると、阿部は近いうちに身体的疲労で極度なスランプまたは故障に悩まされる。つまり、阿部は一塁でも捕手でも使えなくなる。
もちろん原はそうならないように、例えば、〈火・水・金・土〉出場というローテーション起用で阿部を大事に使っていくだろが、それでも、前出のようにキャンプにおける練習不足及び激務の捕手復帰という二重苦によって、阿部は調子を崩す。つまり阿部は、原監督によって、今シーズン捕手として使い捨てられる
阿部が選手生命を伸ばす唯一の方策は、DH制度のあるパリーグ移籍だが、その実現可能性はまったくないので、今シーズンで引退するか来年はコーチ兼任捕手になるだろう。
◎新人投手がフルシーズン活躍できる保証はない
原監督の「新成」は意図とはずれて、投手陣で成功を見せたかのように思える。先発で高木勇人、田口麗斗、リリーフで戸根千明といった若手が台頭しつつある。うち高木と戸根は新人だ。しかし、この3投手がフルシーズン=長丁場にわたって好調を維持できるかは大いに疑問が残る。
◎厚い選手層で読売は3位確保か
読売の場合、それでも厚い選手層でこの先、盛り返せる可能性はある。現在の布陣を「読売Aチーム」とすると、「Bチーム」として、外野陣ではアンダーソン、橋本、大田、堂上が控えている。投手陣では内海、大竹、小山、西村、青木、香月がいる。内野陣と捕手は手薄だから優勝は無理だろうが、長いペナントレースにおいては、A⇔Bが交互に出てきて、5割を切る確率は低い。
総合的に考えて、読売は筆者予想の3位維持がやっとという条件ばかりが見えているのだが、他球団も読売に輪をかけて調子が出ていない。筆者が最下位と予想した中日がいまセリーグでもっとも安定しているという状況にある。筆者が優勝と予想した広島は、エルドレッドの故障の影響もあって、打撃陣がまるでだめ。阪神も外国人(ゴメス、マートン)が本調子ではない。ヤクルト、DeNAは投手力、とりわけブルペンが弱い。そんなわけで、セリーグは「貧打の応酬」のレベルの低い試合ばかり。
◎低めのストライクと飛ばない“公式球”
加えて、日本の主審が低めをきちんとストライクに取る傾向が強まった。ストライクゾーンは、「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」と定められている。
ここで重要なのは、“ひざ頭の下部のライン”と規定された「低め」だ。日本の主審が低めをきちんとストライクに取れば、日本のプロ野球の投手のレベルと打者のレベルとを勘案すると、単打するのがやっと。本塁打等の長打は激減する。
さらに今シーズン使用の“公式球”が「飛ばない」という噂が広まっている。低めのストライク、飛ばない“公式球”となれば、今年のプロ野球は「投高打低」となろう。一般的には「投高打低」は「強打の読売」に不利といわれるが、いまの読売――投手王国の――ならば優位となる。今年のセリーグはこれまでになく混戦となる。つまり、筆者がBクラスとしたヤクルト、DeNA、中日にもチャンスがあるということだ。
2015年04月03日(金) |
「脱本田」が今後の日本代表の最重要課題 |
31日、東京にて行われた国際親善試合、日本対ウズベキスタンは5−1で日本が大勝した。バヒド・ハリルホジッチは監督就任後の2連戦で2連勝と幸先の良いスタートを飾った。
◎チュニジア戦に似た展開
日本は前半に青山敏弘(広島)が鮮やかなミドルシュートで先制点。後半に入ると、岡崎慎司(マインツ)が27日のチュニジア戦に続く2試合連続ゴールを決めた後、交代出場した柴崎岳(鹿島)、宇佐美貴史(G大阪)、川又堅碁(名古屋)が加点し、相手を突き放した。
この試合は前回の親善試合チュニジア戦とよく似た展開だった。前半は接戦で推移し、後半は相手ウズベキスタンの足が止まり、動きが鈍くなったところで日本の交代選手が得点するというパターンである。
◎先発メンバーはチュニジア戦を反転させた形
ウズベキスタンはW杯アジア予選を見据えての東アジア遠征中。27日に韓国代表と国際親善試合を行い、1−1で引き分けに終わっていた。ウズベキスタンから韓国までの移動を含めて、5日間で2試合をこなす日程はきつい。2試合目の日本戦、彼らの足が後半になって動かなくなったのは仕方がない面もある。ウズベキスタンと日本の実力差は得点差ほど開いていない。だから、本番(W杯アジア予選)では油断しないことだ。
ウズベキスタン戦の先発メンバーは、前の試合(チュニジア戦)を反転させたような形だった。岡崎、本田圭佑、香川真司といったブラジル組が先発したが、得点は前出のとおり青山のミドルシュートによる1得点のみ。
◎本田依存ならば日本は世界で勝てない
とりわけ本田は、新生日本代表の早い縦の攻撃になじめず、戦力として機能しなかった。この試合の本田のプレーぶりをみて、彼がミラノでブーイングに晒されている理由がわかるような気がした。自陣でボールを奪った後、バックラインの選手が本田にボールを預けると彼はゆっくりキープし、いい形をつくろうとする。ところがその間に相手チームは守備ブロックを敷いてしまう。ミラノサポーターが望んでいる形は、本田がドリブルで持ち上がるか、彼を追い越す選手に素早くさばく速攻なのだろう。いまのACミランには本田を追い越す労力をいとわない選手がいないことが悲劇であり、本田もそれを志向していない。自ずと攻撃にスピード感がない。本田が速攻を身に着けるには、年をとりすぎている。新生日本における本田の位置は危ういものがある。アジアで本田はまだ脅威かもしれないが、W杯本戦では機能しない。逆に言えば、日本代表が本田に依存しているようならば、W杯では勝てないということになる。
◎チュニジア戦、ウズベキスタン戦で見えてきたもの
結論を言えば、新生日本代表の力は、チュニジア戦と同様、前半に示されたということ。つまり1−0である(チュニジア戦は0−0)。前出のとおり、日本の唯一の得点は守備的ミッドフィルダーが放ったミドルシュートからのもの(この得点を偶然とは言わないが・・・)。
2つの親善試合の結果については、日本が奪った得点(45分・45分)が1、後半の各45分はアトラクション、日本の戦績は1勝1分で、しかも、その1勝は辛勝――とまとめられる。
親善試合については何度も同じことを書くが、結果は参考程度。ブラジルW杯、アジア杯の惨状から回復し、実力が上がったわけではない。
ただ、2本代表のサッカーの方向性が変わったことは認められる。変化した点を挙げると、第一に代表選手に競争意識が芽生えたこと、第二に堅守速攻型のプレースタイルを目指そうとしていること、第三にフィジカル重視になってきたこと――である。その結果、若手のモチベーションが上がり、代表全体にパワーアップが期待できるようになった。
◎勝つためには選手のモチベーションがすべて
スポーツに限らず勝負事に勝つために必要なのはまずモチベーションである。何事かをなした者と、これからなさねばならぬ者とではモチベーションに差ができて当然である。本田、香川、長友、内田、吉田、森重、長谷部、遠藤(すでに代表から外れているが)らのブラジル組がロシアに向けて再び辛い思いをしたいとは思わないだろう。彼らに多くは期待できない。
ただし、ブラジル組の中でただ一人の例外は岡崎である。彼はいい意味で「サッカーバカ」である。彼は常に闘争心とチームに対する献身性を失うことがない。岡崎のようなアスリートは稀であり、彼が今後の日本代表の精神的支柱となることを願っている。
◎アウエーの親善試合なら日本の実力診断が可能に
日本の実力を親善試合で計るにはどうしたらいいのかと言えば、これも繰り返しになるが、日本代表がアウエーで多くの試合をすることに尽きる。相手は、欧州ならばトルコ、アイルランド、ポーランド、ロシア等、南北アフリカならばエジプト、アルジェリア、モロッコ等、サハラ以南のアフリカ諸国はどこでもいい。中東・アジアならば、イラン、サウジアラビア、カタール、中国、韓国といったところ。南北中米はどこでもいい。もちろん、今回来日したチュニジア、ウズベキスタンとの再戦もおもしろい。日本がアウエーで勝てるかどうかを試してみるといい。
一つのメルクマールとして、W杯地域予選で勝ち抜けなかったり勝ち抜けたりを繰り返している国々も参考となる。もちろん、アフリカ、欧州、南北中米のどこかとは、W杯予選グループで対戦国となるし、中東及び東アジアは予選で必ず対戦するのだから、そのいずれの国とアウエーで多くの試合をこなしていけば、フィジカル重視に方向転換した「新生日本代表」の実力がわかりやすいのではないか。
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