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2014年10月19日(日) 阪神、無傷の4連勝で日本シリーズ進出―凋落読売、来季はどうする

読売がCSファイナルにおいて阪神に4連敗。日本シリーズ進出を阻まれた。筆者はリーグ戦、阪神優勝と予想していたので、読売が敗退した結果に満足している。

◎豊富な戦力が機能しなかった読売

拙コラムにおいて何度も書いてきたことだが、読売のリーグ戦優勝の主因は豊富な戦力にある。ところが、短期戦では豊富な戦力の見極めは困難であり、監督としても思い切った選手の入れ替えは勇気がいる。

ペナントレースでは豊富な戦力を頻繁に入れ替えて消耗戦にもちこみ、勝負所で勝ちを拾ってきた読売だが、短期戦はリーグ戦と同じ戦い方はできない。読売の豊富な戦力が逆に余剰感をもたらす。もちろん、シーズンでは、同一チームに同一球場で4連敗するというケースはまず、あり得ないこと。3連敗したところで相手も場所も変わるし、移動日がある場合が多い。そこで流れを変え、持ちなおすこともできた。しかし、CSのような短期戦ではそうはいかない。流れをつかんだ方が有利になる可能性が高い。

それだけではない。読売の豊富な戦力に翳りも見えていたのだ。2013年日本シリーズで楽天に競り負けたときにも、読売の危うさはうかがえた。読売は今回のCSで同じ結果を繰り返した。

2014シーズンの選手個人記録を見ると、読売の打者でタイトルをとった打者はいない。規定打席到達者における3割打者もいない。阪神はマートンが首位打者、ゴメスが打点王。読売のチーム打率はリーグ5位と低い。シーズンでは相手投手が読売の打者の名声に気圧され、勝負所で痛打を浴びて試合を落としていたが、つまるところ、読売は投手力のチーム。ところが、CSではその投手陣が阪神の勢いに押されて総崩れした。内海、杉内の衰え、菅野、大竹の故障による不在、山口、西村の勤続疲労が響いた。投打における阪神の勢いが読売を上回った。

◎短期戦で好循環した阪神

それにしても、筆者が優勝候補とした阪神がペナントレースでこのような戦い方ができなかったことが悔やまれる。2014シーズン、攻撃面では福留、西岡の元MLBが絶不調。新井兄弟も不振。鳥谷、ゴメス、マートンのクリーンアップトリオは強力だったが、三塁と外野の人材不足が際立っていて、読売の戦力を下回った。レギュラーが不調に陥った場合、あるいは故障した場合、それを補完する選手がいなかった。

守備面では正捕手が定まらず、各試合、投手陣をうまくリードしきれなかった。投手陣は、先発陣のメッセンジャー、岩田はほぼ安定していたものの、能見、藤波が節目で力を発揮できず、第5の先発投手も出てこなかったため、5本柱が確立できなかった。抑えは呉が奮闘したが、中継ぎの人材は読売に劣った。

ところが、CS(短期戦)においては、攻撃陣のクリーンアップはもとより、脇役の1番、6番で元MLB(西岡、福留)が好調を維持して要所で爆発した。この二人の復活により、阪神の攻撃陣は迫力が出た。

投手陣は藤波、メッセンジャー、岩田、能見が不振の読売の打者に助けられたとはいえ、結果を出した。鶴岡捕手のインコース攻めも読売の打者に恐怖心を与え効果的であった。かくしてすべてが、好循環したのである。

◎来季以降、ますます苦戦が予想される読売

読売は、投打にわたって調子を落としたまま、回復に至らなかった。シーズン中に見られた原監督の思い付き采配もことごとく裏目に。とりわけ、セペタ起用は疑問符が付く。

しかし、読売のチーム力については豊富だけれど、落ち目にある。2014シーズン優勝したのは奇跡に近い。交流戦と中日が読売を助けた。

読売の凋落傾向を代表する打者は、4番阿部(の不調ぶり)。筆者が唱えてきた「阿部限界説」を裏付けた。もっとも阿部に限らず、主力の高齢化(村田、井端、片岡、亀井、矢野、高橋、ロペス、セペタ・・・)は目を覆うものがある。FA制度に依存したチームづくりに限界がきた。主力打者で20代は坂本、長野だけ。成長著しいと言われる橋本、太田はCSで結果を出せなかったし、この先、橋本、太田にチームの主軸が担えるとは思えない。

投手陣についても、繰り返しになるが、内海、杉内、大竹、山口、西村、マシソンの下落傾向に歯止めはかからず、沢村の伸び悩み、シーズンでは好調だった小山も精神面の弱さを露呈した。リリーフ陣のスクランブル体制が何シーズンも続くはずもなく、いまの投手陣を追い越す人材が育っているとはファームを見る限り、とても思えない。2015シーズン、菅野、大竹がシーズンを通してローテーションを守れる可能性も低い。若手の中からだれをどう育てていくかといった方針も見えてこない。

2015シーズンを目指して、読売はなりふり構わずFA制度を使って他チームの主力選手を手に入れるだろう。外国人も枠を無視して大量に入団させるのではないか。日本プロ野球界、読売以外に選手がいなくなれば、読売は絶対に優勝できる。金満読売が目指す「補強」に今後は注目したい。



2014年10月17日(金) 日本代表選手は才能不足を闘争心で補え

サッカー日本代表はシンガポールにおいてブラジル代表と親善試合を行い、0−4で惨敗した。ブラジルの4得点はエース、ネイマールがあげたもの。試合展開等はすでに報道されているのでここでは書かない。

それにしてもお粗末な試合だった。北京で宿敵アルゼンチンと戦ったブラジルと、ホームでジャマイカと戦った日本なのだから、明らかに日本にコンディションで分があったはず。それでも歯が立たないのだから、日本は相当弱い。ネイマールをマークしてほかの選手に点を取られたのならばわからないでもないが、相手のエースに思うようにやられたのでは、みっともなくて話にならない。

アギーレジャパンが相当弱いことについては、直前の拙コラムに書いたばかり。ホームのジャマイカ戦では辛勝したが、ブラジルは甘くはない。「収穫」やら「経験」やら「課題」やら、御託を並べている暇はない。闘争心をもって真剣に闘わないと、ますます日本は弱くなる。

◎日本サッカー界に訪れた人材払底のサイクル

結論として、先のW杯で明らかになった世界との差は、ますます広がるばかりと言える。「パスサッカーからフィジカル重視」といったトレンドを論じるよりも、いま、日本人フットボーラーのなかで人材払底現象が見受けられることが怖い。ロシア大会に希望をつなぐ才能、資質を感じさせる選手が見当たらないのだ。

◎モチベーションを失ったブラジル組

いまの日本代表が弱体化している主因は、第一にブラジル大会代表レギュラークラスがモチベーションを失っていること。海外組のFW本田、FW香川(ブラジル戦では故障によりベンチ外)、DF長友、GK川島、国内組ではDF森重だ。海外組には欧州からの移動という疲労もある。だから、ブラジル戦を休ませたのだろう。ジャマイカ戦でも短い時間の出場にとどまったFW柿谷(ブラジルでは控えだった)も、代表サッカーにおけるモチベーションはかなり低いように思える。ブラジル大会に選ばれたことで満足したのか。そんな中、唯一闘う姿勢を貫いているのがFW岡崎だ。

◎学生アルバイト(武藤)に代表を奪われるJリーガーの無力

第二は、前出のいわば「過去の人」を追い抜くだけの新戦力が育っていないこと。そのことを象徴するのが「今売り出し中」のFW武藤の存在だ。武藤は大学在学中だという。Jリーグのトップクラスが大学生アルバイトとは情けない。Jの選手はいったい何をしているのだ。学生アルバイトが代表に選出される現状を「プロ」が許しているとは論外。それとも学生とは名ばかりで、勉学の方はサッカーで免除されているのか。もしそうならば、武藤が通っている大学も問題だ。文武両道とは聞こえはいいが、世界のサッカー界ではまず、あり得ない。もっと言えば、この現状を異常だと思わないメディアがそもそも異常だ。大学生がアルバイトでJリーガーとしてやっていける日本のサッカー界のレベルとは・・・

武藤はネイマールと同年齢だという。ネイマールはブラジル代表のキャプテンをはっている。プロフェッショナルスポーツのアスリートは年齢も学歴も関係ない。その分野でとにかく一流であることだ。武藤が代表で「輝いている」現実が、日本のサッカーの最高峰リーグであるJリーグの低レベルを象徴している。だから、武藤に続く、MF柴崎、MF森岡、FW小林、DF塩谷のレベルも押して知るべし。

◎アギーレのここまでの功績は、日本代表が弱いことを白日の下に晒したこと

それにしてもアギーレは正直な人物のようだ。かつての代表監督ではできないような選手起用を行っている。ブラジル戦で明らかになったことは、いや、アギーレが明らかにしたことは、日本代表の惨状にほかならない。日本のサッカーファン、いや日本代表に期待する日本国民に対して、日本代表のレベルの低さを明らかにした。日本のみなさま、日本のサッカーの実力はこの程度ですよ、過剰な期待をされては困りますよ、世界レベルとは、こんなにも開きがありますよ――というわけだ。これまでの代表監督は、サッカー協会、広告代理店(TVメディア)、スポンサーの手前、この事実を隠し続けてきた。

◎岡崎中心の日本代表をつくるしかない

では、惨状にある日本代表をどう再建したらいいのか。これはかなり難しい。とは言え、アジア杯は目前に迫り、そこで結果を出さなければ先に進まない。

方策として、奇策、奇手はない。現状の駒のなかで最強チームをつくるしかない。まず考えられるのは、前出のとおり、フィジカル的に強く好調を維持し、しかも高いモチベーションをも維持しているFW岡崎を攻撃の中心、というよりも、チームの中心とするしかない。彼の闘争心、諦めない姿勢、運動量の多さをもって、チームを引っ張るしかない。岡崎の性格にキャプテンシーが備わっているか否かについては、会ったことがないのでわからないが、いま日本代表に必要なものすべてもっているのが岡崎であることだけは間違いない。

戦術的には、岡崎をワントップとするかサイドにおくかが第一の選択。筆者の見方では、アギーレが4−3−3を貫くと仮定して、ワントップにハーフナーをおいて、高さを武器としたい。長身選手が少ないアジア相手ならば、ハーフナーの高さは機能する。本田はイタリアで結果を出しているのでそのまま右。岡崎は左となる。アンカーは「守備の職人」と言われる細貝で鉄板。

課題は細貝の前列。どうもここが人材難のようだ。柴崎、森岡、田中、小林には情熱が感じられない。彼らに頑張ってもらうか、新たな戦力を探すしかないのだが、思い浮かばないのだが、強いて挙げれば、米本拓司(FC東京)か。香川がこのポジションで真価を発揮するとも思えないので、香川は4−2−3−1に変化するまで控えになる。

SBは左が長友、右が内田。内田が代表引退ならば酒井高で仕方がない。酒井高のクロスの精度は問題だが。

◎最大の弱点CBは、カテゴリーにこだわらず若手に切り替えろ

SBは森重、塩谷、鈴木、水本らをそろそろ見切る必要がある。年功序列を排して、A代表に西野貴治(G大阪)、岩波拓也(神戸)、植田直通(鹿島)らを早く合流させたほうがいい。U21、U23、五輪といったカテゴリーにこだわりすぎるのは、日本サッカーの悪弊である。ブラジル戦の経験を彼らにこそ積ませたかった。

ブラジル戦で明らかになった日本代表の惨状。ここから立ち直るには、ディスパレートな精神力をもった選手を代表にできるだけ多く呼ぶことだ。



2014年10月12日(日) 弱すぎるアギーレ・ジャパン

サッカー日本代表がホームでジャマイカ代表と親善試合を行い、1−0で勝った。日本の得点は相手のオウンゴールによるもの。決定機は何度かあったしシュートも多数放ったが決めきれず、歯がゆい展開に終始した。アギーレが日本代表監督に就任して初勝利とはいうものの、とても手放しで喜べる試合内容ではなかった。

◎細貝、抜群の守備能力を証明

この試合で最も目立ったのはアンカーを務めたMF細貝。ミッドフィールドの潰し役に徹し、ジャマイカの攻撃の芽をことごとく摘み取った。モダンサッカーに求められる守備的中盤の役割を見事に果たした。ブラジルW杯において細貝が選出されていたら、日本代表の戦い方も変わっていたに違いない。細貝を代表から外したザッケローニが恨めしい。

GK西川、初めてコンビを組んだ塩谷、森重のCBは相手を完封したのだから合格と言いたいところだが、ジャマイカの攻撃陣が時差ボケで眠っているような試合だったので、この試合だけで合否を判断することは難しい。

◎時差ボケ海外組攻撃陣

攻撃陣に目を転じると、海外組のFW岡崎、FW本田、MF香川、SB長友はコンディションが悪いのだろう。本田は決定的得点機会を見事に外した。そんなわけで、これまた長旅で調整もままならないジャマイカの守備陣から得点を奪えないという恥ずかしい内容。前半は右SBの酒井高の攻撃参加を軸にしてそれなりに形をつくるものの、フィニッシュに至らなかった。いま売り出し中のFW武藤はシュートの正確さを欠いた。

唯一の得点は国内組のMF柴崎のゴールのようなもの。後半になると左に本田がまわり、左SBの長友が積極的に攻撃参加を繰り返したものの、得点には至らなかった。4−3−3のインサイドハーフに入った香川はこのポジションに適性はなく、香川をどう使うかは今後の日本代表の課題となりそう。

長旅でコンディションの悪いこの相手に、こんな試合内容ではとても期待できないアギーレ・ジャパン。イタリアで得点を量産しているという本田も日本代表では輝かない。ドルトムントで再起したという香川も居場所がない。ドイツの得点王という岡崎も決められない。海外組というだけで代表に選出されたFW田中、FW柿谷は海外に「いるだけ」の旅行者のようなもの。

ブラジル戦では日本代表に復帰したハーフナーに期待したい。それとも、Jリーグで結果を残している宇佐美を急きょ招集するしかないか。

◎アジア杯優勝は“ノルマ”ではない

アジア杯の日本の戦績を振り返ってみる。

1992日本大会=日本優勝(オフト監督)
1996UAE大会=日本ベスト8(加茂監督)
2000レバノン大会=日本優勝(トルシエ監督)
2004中国大会=日本優勝(ジーコ監督)優勝
2007インドネシア他大会=日本4位(オシム監督)
2011カタール大会=日本優勝(ザッケローニ監督)

日本のW杯の成績を振り返ってみる。

1998年フランス大会(加茂→岡田武史監督)は一次リーグ敗退
2002年日韓大会(フィリップ・トルシエ監督)はベスト16
2006年ドイツ大会(ジーコ監督)は一次リーグ敗退
2010年南アフリカ大会(オシム→岡田武史監督)はベスト16
2014年ブラジル大会(アルベルト・ザッケローニ監督)は一次リーグ敗退
 
1996年当時は、日本の最大の目標といえばアジア地区予選突破であった。1994年のW杯アメリカ大会予選では「ドーハの悲劇」をもってW杯出場の道を閉ざされた日本。そこから代表再建に向かった第一歩が96年アジア杯であり、その成績はベスト8どまりだった。日本代表再建の困難さを象徴する成績である。しかし、アジア杯ベスト8どまりということは、日本代表がそれまでの主力選手から世代交代もしくは代表選考の見直しがあって、代表チームの完成度が未熟であったことを意味するようにも思う。

1998年W杯フランス大会で予選敗退した日本を引き継いだのがトルシエ監督。トルシエは98年の代表チームを解体し、新メンバーを中心とした代表チームをつくり直した。その結果、2000年アジア杯優勝を果たし、かつ、そのチームが2002年W杯日韓大会ベスト16入りという快挙に直結する。ホーム開催の利もあるが、W杯予選敗退からアジア杯優勝、そしてW杯予選突破という、ほぼ理想的道筋を示した。
〔W杯予選敗退→アジア杯優勝→W杯予選突破〕

2004年のアジア杯は前監督のトルシエの遺産を引き継いだジーコ監督がW杯代表の主力を率いてアジア杯に優勝したものの、代表選手を固定して2006年W杯ドイツ大会に臨んだため、W杯では予選敗退の苦杯をなめている。
〔W杯予選突破→アジア杯優勝→W杯予選敗退〕

2007年のアジア杯は、代表監督に就任したオシムの初仕事がジーコジャパンの解体だったことから、チームづくりが難航した。オシムは応急措置として、アジア杯代表に千葉で監督を務めた往時の教え子を送り込んてアジア杯を乗り切ろうとしたが、アジア杯は甘くなかった。結果、ベスト4に沈んだ。
〔W杯予選敗退→アジア杯ベスト8→W杯予選突破(代表監督は岡田に途中交代〕

2011年のアジア杯に臨んだザッケローニは、2010年W杯南アフリカ大会の主力をそのまま送り込んで優勝をしたが、そのとき以来、主力メンバーの固定化による硬直化が常態化し、2012年W杯ブラジル大会では予選リーグで敗退している。
〔W杯予選突破→アジア杯優勝→W杯予選敗退〕

W杯→アジア杯→W杯の連動を見直してみると、W杯で不成績だった代表チームの解体過程にあるアジア杯では、良い成績が残せないことがわかる。一方、W杯で予選突破を果たしたチームを受け継いでアジア杯の臨むとアジア杯では良い結果を残すものの、肝心の3年後のW杯では予選敗退する確率が高くなっている。

アギーレ・ジャパンの場合はザッケローニ・ジャパンの解体からスタートしているので、オシムのサイクルに該当する。オシムもアギーレも新戦力の摸索が最優先の仕事である。日本代表の資格をもつ全サッカー選手のうち、W杯ロシア大会に向けて予選・本選を勝ち抜ける資質・才能を持った選手を見つけ出すのが最初にして最大の仕事ということになる。

アギーレ監督のここまでのところ、W杯ブラジル大会で代表になれなかった細貝を中盤の守備の要として見出している。このことは筆者が再三拙コラムで指摘していたことだ。細貝はアギーレ・ジャパンのポイントとなる選手の一人だろう。

最重要課題の一つであるCBは、ブラジル大会メンバーの一人である森重、新戦力として塩谷が注目選手である。今回、選考されなかったリオ五輪代表となりそうな岩波らも当然、A代表としてマークしていると思われる。

攻撃陣では、前出のとおり、FW武藤、FW宇佐美、MF柴崎らが新戦力であるが、MF香川、FW本田、FW岡崎、SB長友らを主力としてどこまで引っ張るか。新旧交代が今後の課題となる。



2014年10月05日(日) 読売の優勝と菅野の故障について

日本プロ野球(NPB)、セリーグは読売が、パリーグはソフトバンクがペナントレースを制した。筆者の予想はセが阪神の優勝、読売2位、以下、DeNA、広島、中日、ヤクルト、パリーグはソフトバンク、ロッテ、西武、オリックス、楽天、日本ハムであったから、1位は当たったものの、それ以外はまったくだめだった。シーズン前、オリックスには注目していたが、首位争いに絡むとは思えなかった。

阪神優勝の予想は筆者の願望であった。読売の優勝は、何度も拙コラムにて書いてきたとおり、豊富な戦力にある。読売は他の11球団と比較するならば、概ね2球団分の戦力を備えている。長いリーグ戦の場合、この戦力の豊富さがものをいう。2014シーズンもまったく同様で、レギュラーが不調、故障すると、代わりの選手がファームから上がってきて結果をだす。このことは原監督の手腕というよりも、ただただ、選手層の厚さゆえである。

読売の補強は有力戦力を自軍に入れてしまえば、他球団の戦力にならないという哲学に基づく。ほぼ2球団分の戦力を保持できるのは、それを支える財力の裏付けがあってのこと。かつてサッカースペインリーグのレアルマドリードが銀河系軍団と呼ばれたことがあった。有力選手を集め世界選抜と呼ばれたクラブはレアルマドリードだけではないが、レアルの場合、度を越して有力選手が集まったため、宇宙規模とまで評された。

読売の場合は、MLBに及ばないから日本に限定された話だが、日本選抜に近い選手構成である。それでも、シーズンは順風満帆ではなかった。9月の勝負所で阪神、広島を突き離し、驚異的な月間勝率でペナントを制した。それを可能にしたのは阪神、広島を上回る選手層の厚さである。

読売は、シーズン優勝、CS、日本シリーズの結果を問わず、FA制度を利用して他球団の有力選手を集めるだろう。とりわけ先発投手陣は駒不足。ファームから有力な新人が上がる予兆はまったくない。若手の伸び悩み、才能不足ははっきりしている。ならばFAで即戦力を集める以外に方法はない。読売の財力を駆使した選手集めを批判しても始まらない。読売の手法が自由主義経済と競争原理に基づくプロフェッショナル・スポーツ業界の常道なのだから。

読売の投手陣はシーズン最初から故障者続出だった。シーズンを通してローテーションを守ったのは杉内のみ。先発陣では前半、小山、沢村、内海、西村が故障、中盤に来て菅野、大竹(は2度)が登録を抹消され、再登々録された大竹が9月後半に、そして10月に入って菅野が「右肘靭帯の部分損傷」で戦列を離れた。菅野の場合は優勝を決めた後のアクシデントであったが、15日からのCSファイナルS、日本シリーズに進出した場合の登板も絶望的となった。

主力投手の故障の穴を埋めたのは、セドン、今村、江柄子、笠原、久保、香月、西村、田原、青木らのスクランブル登板だった。

そうこうしているうちに、沢村、内海、小山が復調。なかで小山は抜群の安定度をみせて読売の窮状を救った。CS及び(日本シリーズに進出できた場合)のローテーションは、杉内、内海、小山、沢村の四本柱が決まっているが、先発五枚は成立しない。
 
ブルペンは、山口、マシソンが本調子ではなく、マシソンは終盤、しばしば抑えに失敗している。

シーズン前、筆者は、(一)阿部限界説、(二)内海限界説、(三)山口・西村勤続疲労説――を唱えて、読売の優勝はないと予想した。結果は限界とは言い切れないが、その兆候は見え始めているので、筆者の予想が見当違いだったとは思っていない。

菅野については、彼の投球フォームを初めて見たときから、将来の故障の危険性を指摘しておいた。以下、当該コラムの原文を引用しておこう。

2013年02月22日(金)「読売・菅野智之投手のフォームに問題あり」

先般、菅野智之(読売)の紅白戦登板がCATVで中継された。練習試合の結果はともかくとして、印象としては、肘が下がっていて、ボールの回転が悪いように思えた。最近の松坂のようだ。
(略)
菅野の場合、ブランクの問題もあるが、なによりも問題なのは、投球フォームだ。フィジカル面の素質は高いと思われ、1〜2年は10勝前後稼ぐことができるかもしれない。しかし、このフォームでローテーション入りして投げ続ければ、30才前後に故障が起こる確率が高い。おそらく、彼の野球人生は短命で終わる。

読売のコーチ陣がフォーム改造を指示するかどうかだが、おそらく、何もしない。監督の甥を壊したらたいへんなことになる。ならば、彼自身がフォーム改造に取り組むか否かだが、そこそこの実績が邪魔して、それもしないだろう。1〜2年、いまのままのフォームで投げ続け、過剰な自信が慢心を招き、いずれ肘に疲労が蓄積し、パンクする。フィジカル的には逸材なだけに惜しい結果に終わらないことを祈るのみだ。


筆者は30歳前後に故障が起こる可能性を指摘しておいたが、故障の発覚は意外と早かった。医学の進歩により今回の故障が投手生命を終わらせるとは断言できないが、肘の故障は投手にとってやっかいなことだけは間違いない。早期の完治・再起を祈るのみだ。


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