2008年06月23日(月) |
日本は世界の90位以下 |
(3/26/2008/マナマ) GK サイド・サブト・アッバス モハメド・ハサン アブドゥラ・マルズーク アブドゥラ・ファタディ アブドゥラ・アルワダエイ アラー・フバイル モハメド・サルミーン イスマイール・ハサン サルマン・アリ アブドゥラ・オマール サイド・フセイン
(6/22/2008/埼玉) GK:サイド・モハメド・ジャファル モハメド・フセイン アッバス・サイード・アヤド サルマン・イサ サイド・モハメド・アドナン ハマド・ラケア・アルアネジ サイド・マフムード・ジャラル・アルワダエイ ファウジ・ムバラク・アイシュ マフムード・アブドゥルラフマン アブドゥラ・イスマイール・オマール イスマイール・アブドゥルラティフ・イスマイール
まずもって、事実を知ってもらいたい。日本のスポーツ・マスコミ、とりわけ、中継するテレビ局はまったく事実というものを報道しない。テレビは、日本のサッカーファンを馬鹿にしている。
マナマと埼玉両方のバーレーン代表の先発メンバーを示した。筆者は勉強不足のため、バーレーンの個々の選手の実力を適正に把握していない。だが、予選進出を決めていない段階のホームの日本戦と、「消化試合」のアウエーでの日本戦のメンバーを比較して、後者が前者より力のある選手であるはずがない。バーレーンは、22日に埼玉で行われた日本戦に、メンバーを落として臨んだ。雨の中、日本代表と試合をした「バーレーン代表」は、バーレーン代表ではない。つまり3月26日、日本がマナマで負けた相手ではない。
説明するまでもなく、アジア3次予選の結果が出た後のこの試合は、「消化試合」だ。日本が勝って1位通過したところで、FIFAからなんらかのアドバンテージをもらえるわけではない。1位通過と騒いでいるのは、中継するテレビ局と、リベンジを誓う岡田監督だけだ。「消化試合」にバーレーンが2軍を送り込んでくることを予見したうえで、岡田監督は、この「消化試合」を「プライドを賭けた戦いだ」と位置づけた。実際は、負けてはいけない試合ではなく、負けるはずのない試合のはずだった。バーレーンが非難されるはずもない。テレビが絡んでいなければ、日本代表だってもっと自由にテストができたはずだ。普段出場機会のない選手や試したい選手を試合に出せたはずだ。
筆者は、岡田監督のこの“必勝”発言をまったく信用していなかった。本気で“必勝”を期す決意をしていたとしたら、代表監督としてというよりも、人間として頭がいかれていると考えるべきだ。岡田監督は、中継するテレビ局、代表スポンサー企業、チケット販売等を考慮して、本当は「消化試合」だけれど手を抜くのではなく、バーレーンの2軍と真剣にファイトして勝ちますよ、といいたかったのだと思う。予選通過が決まってしまった最終試合、高いチケットを購入する人は、かなりマニア的な日本代表サポーターくらいしかいないし、チャンネルを合わせてくれる視聴者も少ないと見るのが自然だ。
岡田監督はこの試合、建前とは裏腹に、警告が出ている主力選手を休ませた。また、大久保(神戸)が3試合出場停止で最終予選初戦に出場できない現状を考慮して、長らく代表を離れていた佐藤寿(J2広島)を、また、松井の代替要員として、本田(VVVフェンロ)をいきなり先発で起用しテストした。本気で必勝体制をとる気ならば、警告リーチは無視するだろうが、そんなことはあり得ない。
岡田監督の建前の犠牲者は、故障の中村俊だった。中村俊を休ませれば、建前の“必勝”は崩れてしまうし、中村の出場を望む代表サポーターから、批判を浴びる可能性もある。建前の本気度が、中村俊の強行出場によって担保された。
筆者は、岡田監督が本音を隠し、「プライド」という建前を前面に出し、「消化試合」を“必勝”と煽った言動を批判しようとは思わない。サポーターは、岡田監督の建前と本音を織り込んで、日本がバーレーンに快勝してくれればいい、最終予選に向かって大勝のお祭りサッカーで締めくくってくれればいい、苦しかった3次予選の最後を大勝(せめて快勝)で飾って、有終の美を飾ってくれれば、それで満足するつもりだったのだと思う。日本の代表サポーターは、懐もあたたかいし、気持ちもあたたかいのだ。
ところが、ところが、そんな有難いサポーターに冷水を浴びせたのが、岡田ジャパンだった。繰り返すが、世界ランキング90位程度のバーレーンが日本に送り込んできた「代表」の実態は、控え組だ。国際試合の経験が少なく、しかも、アウエー。当日のコンディションは大雨――バーレーン内で雨中の国際試合を経験した選手は少なかっただろう。
結果については、すでに多くの報道があり、サッカー評論家諸氏がコメントしたとおりなので、繰り返さない。日本は3次予選を突破してアジアで10位以内を確保したけれど、世界ランキング90位程度のバーレーンの控え組と、ホームで互角の実力であることが証明された。
日本がアジアで勝てる相手は、日本の高さが武器となる東南アジアの一部の国だけ。同じアジアでも、オイルマネーが潤沢で、強化に余念のない湾岸諸国、イラク、イランとなるともう危ない。さらに、東アジアでも、日本よりパワーのある北朝鮮、韓国には苦戦するだろう。
岡田監督のチームづくりはJ2方式だと以前、当コラムに書いた。J2からJ1に短期間で昇格するには、高いDFで固く守り、攻撃は、ブラジル等の外国人の代表経験者に任せるやり方だ。まさか、ブラジル国籍の海外選手を代表に入れるわけにはいかないから、岡田監督は元海外組の高原、そして現役海外組の中村俊、松井らを外国人選手に見立て代表に入れたが、元海外組、現海外組の攻撃陣はブラジル人代表経験者のような決定力がない。オマーン、タイまでは有効だったが、バーレーンには通用しなかった。
最終予選進出を決めている日本(2組)を除く9カ国とは、オーストラリア、カタール(1組)、バーレーン(2組)、韓国、北朝鮮(3組)、サウジアラビア、ウズベキスタン(4組)、イラン、UAE(5組)。アジア地区といっても、オーストラリア、ウズベキスタンは白人系で身長が高い。カタール、バーレーン、サウジアラビアはアフリカ系選手が多いので、身長が高い。イランもペルシア系で身長が高いので、日本の高さは通じない。さらに、苦手の北朝鮮、対戦成績で負け越している韓国の東アジア勢には苦戦が予想される。勝てる可能性が高いのは、UAEくらいか。
バーレーンの2軍を相手に、ホームで、しかも、日本はほぼレギュラークラスを揃えて勝ちにいったが、89分間得点を奪えず、終了1分前に相手GKのミスに救われ辛勝に終わった。この悲惨な結果をどう総括すべきなのか。(本音では、)勝負にこだわってませんでした、テストは失敗でした、と舌を出して済ますのか。そうなると、二枚舌の岡田は信用できない、どころか、人間性に問題ありだ。
建前と本音の使い分けは、プロスポーツであたりまえ、だから、何でもいいんだ、というのでは、モラルハザードがおきてしまう。政治家でも企業経営者でも、二枚舌を使いわけながら結果を出さなければ、指導者の適正を疑われる。結果が伴わない二枚舌が日本(の代表)のトップ(監督)でいいんだろうか。というよりも、いまの強化方針と選手選考では、日本は南アフリカに行けないどころか、長期停滞を招く。
2008年06月15日(日) |
日本をリスペクトしすぎたタイのチャンウィット監督 |
サッカーW杯3次予選、日本は闘莉王、中澤佑二、中村憲剛のゴールでタイに3−0の圧勝。日本は6月の苦しいアウエー2連戦を1勝1分けで乗り切った。
気温30度超、湿度60%超という気象条件の中、日本が苦戦を強いられる、という筆者の予想は外れた。筆者が意外に感じたのは、タイの消極的作戦。タイのチャンウィット監督は、日本代表をリスペクトしすぎた。チャンウィットの作戦は、前半引いて守って日本に点を与えず、後半、スタミナの切れた日本に速攻を仕掛け、勝機を見出すというイメージだったのかもしれない。ところが、前半早々、日本に押し込まれ、セットプレーで2点を献上してしまい、計算が狂った。
後半、タイが前半見せなかったロングボールを前線に当てる作戦をとり、攻撃の形ができ始めた。前半からこういうサッカーをしていれば、日本はもっと苦戦しただろう。後半開始から15分以降、日本の動きが一段と悪くなり、中盤と最終ラインに大きなスペースができ始めた。タイが前半から攻めていれば、日本選手の体力は、もっと早く失われていたはずだ。
この試合、タイの悪い面が出た。具体的には、守備の甘さ、とりわけ、高さに弱いこと、不用意なファウル、自陣での細かいパスへの無用なこだわり等が挙げられる。ピッチを広く使い、後方から走りこむ動き、裏をとる動きを増やせば、日本のDF陣は混乱したと思う。タイのすぐれた足技は、ペナルティーエリア内のすばやいワンツー、スルーパス等で使ってこそ有効だ。スピードのない日本CBが慌ててミスをする場面も増えたに違いない。
さて、同日行われた日本と同じグループ2のバーレーン対オマーンは1−1の引き分けに終わり、この結果、日本とバーレーンの同組2位以上が確定した。最終戦を待たずに両チームの最終予選進出が決まった。日本とバーレーンは1位通過をかけ、22日に埼玉スタジアムで対戦する。とにかく、日本はアジアで10位以内を確保した。
最終予選進出を決めた国は、日本、バーレーン、ウズベキスタン、北朝鮮、韓国、サウジアラビア、オーストラリア、イランの8カ国。残り2カ国は、グループ1のカタールとイラク、グループ5のUAEとシリアが2位争いを継続しており、最終的には10カ国が最終予選に進む。
最終予選の組み合わせ抽選会は27日にクアラルンプールで行われ、10チームが2つのグループに分かれ、9月6日から来年6月17日にかけてリーグ戦を行う。各グループ上位2チームまでが、W杯本大会への出場権を得られる。3位同士はプレーオフを行い、その勝者はさらにオセアニア地区1位との大陸間プレーオフを戦って、W杯出場を目指す。
ワシントンが帰ってくる――といっても、浦和と再契約するわけではない。筆者は今週、CSTVでリベルタドーレス準決勝4試合の再放送をチェック。南米サッカーの熱気の一端に感じ入った次第。
ご承知のとおり、浦和にいたワシントンがフルミネンセ(本拠地:リオデジャネイロ)の一員として、リベルタドーレス杯決勝進出を決めた。決勝の相手はエクアドルのLDUキト。キトはメキシコのクラブアメリカに勝ってファイナル出場を勝ち取り、フルミネンセはボカを破っての決勝進出だ。フルミネンセVSキトの勝者が、「クラブW杯」出場の権利を得て、南米代表として日本にやってくる。
ボカは昨年の「クラブW杯」に来日したものの、中心選手・リケルメが出場できず、ACミランに完敗した。ボカには新鮮味が感じられず、筆者にとっては、あまり魅力がない。筆者は、元Jリーガーが主力を固めるフルミネンセに日本に来てもらいたいと思っているのだか。
準決勝のボカとの第1レグでは、フルミネンセは劣勢だった。リケルメを中心としたボカが中盤からの鋭い寄せでボールを支配し、5点くらいとられてもおかしくないくらいの試合だった。ところが、終わってみれば2−2の引分。ボカがホームで勝ちきれなかったのは不覚というか、不思議というか・・・
第1レグ、フルミネンセを窮地から救ったのが、仙台にいたチアゴネーヴィスの一発だった。チアゴが放った強烈なボレーシュートはボカのGKカランタの真正面。カランタはシュートの勢いに押されてパンチングをミスし、体に当ててボールを後方にはじき、ゴールを許した。ミスともいえるが、とにかくフルミネンセが同点に追いついた。期待されたワシントンだが、一度だけ決定機があり、シュートを放ったがGKの正面をつき、得点にはならなかった。ゲーム終了近く、ワシントンに代わってドドー(元大分)が出場した。
第2レグも、事実上勝たなければ決勝に進めないボカが優勢。前半は0−0だったが、後半早々、ボカがパレルモの頭で先制した。その直後、フルミネンセはワシントンがFKを決めて同点、さらにボカのオウンゴールで逆転し優位に立った。なんとしても2−2(PK戦決着)に持ち込みたいボカが猛攻を仕掛けるが、フルミネンセのGKエンリケが神がかり的セーブを連発し、ボカに点を与えない。そして、タイムアップ寸前、途中交代で出場していたドドーがボカDFのミスをついて追加点を上げ、3−1(合計5−3)で決勝進出を決めた。
ボカとフルミネンセの準決勝に限れば、ボカが不運、フルミネンセの幸運といえるかもしれないが、フルミネンセのGKエンリケが最高殊勲選手に選ばれておかしくない。それにしても、第1レグでチアゴネ−ヴィス、第2レグでワシントンとドドーと、フルミネンセの総得点(トータル5点だがうち1点はOG)4点中3点を元Jリーガーがゲット。元Jリーガー、大活躍の準決勝だった。
Jリーグで活躍したブラジル人選手が南米代表として「クラブW杯」世界一決定戦に凱旋することは喜ばしい。彼らのチームメートの日本人Jリーガーはもちろんのこと、敵として戦った日本人Jリーガーにとっても、彼らの「クラブW杯」出場は誇りだろう。
Jリーグの強化・発展に貢献したブラジル人選手は数え切れないが、ブラジルと日本を行き来し、現役でしかも南米選手権を制覇し、日本で開催される「クラブW杯」に凱旋帰国するというのは、とても痛快な話だ。彼らは欧州王者のマンチェスターUに対して、どんな戦いぶりを見せるのだろうか。
さて、そのフルミネンセの元Jリーグ勢の前に立ちふさがるのが、エクアドルのLDUキト。準決勝ではメキシコのクラブアメリカを相手に実にしぶとい戦いぶりで勝ちあがってきた。ホーム、アウエーの2試合で3人の退場者を出しての決勝進出だった。スーパースターは不在だが、粘り強くそして結束力の強いチームだという印象をもった。
フルミネンセも、つかみどころのない不思議なチーム。リベルタドーレス決勝戦は、南米のしたたかな強豪クラブ同士の厳しい戦いになると思う。2試合とも、おそらくイエロー、レッドが飛び交う、荒れた試合になると思われる。筆者の予想は、フルミネンセに勝ってほしいけれど、LDUキトが1勝1分で優勝するのではないか。もちろん、この予想が外れてくれることを祈っている。
2008年06月13日(金) |
OA枠は絶対に使うな |
北京五輪日本代表がカメルーンと親善試合を行った。結果は引分。筆者は試合を見ていないのでコメントしない。この時期、五輪サッカーで話題になるのは、オーバー・エイジ(OA)枠の行使か否かだが、筆者はOA枠行使に反対だ。
五輪サッカーは世界のサッカー選手の通過点。FIFAは年代別の世界大会を設けていて、結果については既に決着がついている。OA枠というのは、OA枠をつくって大物選手を参加させ、サッカー人気を利用して、五輪大会の人気を煽る作戦だ。OA枠は興業的目的に過ぎない。
五輪が通過点である以上、日本サッカー界における五輪の目的は、若い選手に経験を積ませることに尽きる。苦しい予選を戦ってきた選手が本戦出場の栄誉に浴す。五輪大会はサッカーにおいて、決してメジャーなものではないものの・・・。予選から五輪大会に向かう自然な意識づけによって、五輪という舞台が若い選手を伸ばす一助になればいい。
筆者は、OA枠候補として取りざたされている遠藤や大久保が加わった五輪代表チームに、なんの魅力も感じない。彼らが加わって多少の戦力アップが果たされたとしても、チームの結束力にマイナスが及ばないかと心配する。彼らの経験を利用するというのは、若手育成という戦略から外れている。経験の少ない若手選手たちが、だれの助けも借りずに、一つの大会を乗り切る経験をすることのほうが重要だと思う。
賢い親獅子は、自らの子を敢えて、谷から落とす。
2008年06月09日(月) |
タイのほうがオマーンより手ごわい |
横浜におけるオマーン戦の予想(当コラム・08/06/02)は外れてしまったけれど、マスカット(アウエー)におけるオマーン戦(08/06/07)の予想として読み替えていただければ、かなりの部分、適正な内容だったと思う。スコアレスドローではなかったが、現在の日本代表がアウエーの場合、オマーン代表と比較して、力の差があまりないことがお分かりいただけたと思う。
さて、14日に開催されるバンコク(アウエー)におけるタイ戦とて、このような状況は変わりない。というよりも、現在の日本代表にとっては、オマーン代表よりタイ代表のほうが手ごわい。
まずもって、アウエーの地・バンコクの気候・風土について簡単におさえておこう。バンコクの6月は雨季。終日高温多湿で、昼間は晴れて気温は30度を超える。そして、夕方になると必ずといっていいほどスコールがある。スコールは概ね30分程度でおさまることが多い。日が暮れれば、気温は下がるが、高温多湿に変わりない。ピッチはスコールの影響でスリッピ−なことが多い。
タイのサッカーの実力は年々、向上している。昨年のアジア杯では共同開催の一国として健闘した。タイ代表はホームの利を生かし、グループ予選において、優勝国イラクと引分け、オマーンに勝ち、オーストラリアに負けて勝点4でオーストラリアと並んだが、当該チーム同士の成績で、惜しくも決勝トーナメント進出を逃している。
タイ代表の特徴は――これはすべての国に当てはまることだけれど――アウエーで力を発揮できないことだ。ホームの力を10とすると、アウエーではその6割も発揮できていない。このギャップの大きさが、タイ代表の特徴といえる。国際試合の経験不足がその理由だろう。
ところが、アウエーで弱いはずのタイ代表が直前のバーレーン戦(08/06/07)において、日本代表が負けた相手にマナマで引き分けている。タイ代表は、逆にホーム(バンコク)で行われたバーレーン戦(08/06/02)は2−3で惜敗した。バーレーン代表を相手にホームで2得点を上げたタイ代表の攻撃力に注意を払う必要がある。
筆者の印象にすぎないが、タイ代表のプレーの特徴として、(1)伝統的に巧みな足技から繰り出す正確なトラッピングを土台とした早いパスワーク、(2)相手DFの裏を取るスピード、(3)守備からカウンター攻撃に移るスピード、(4)体格の割に強いミドルシュート――を挙げておく。
タイ戦はオマーン戦と同様、酷暑の中で行われる可能性が高い。オマーン代表はホームでありながら、日本代表より体力・耐久力で劣ったが、タイ代表に限れば、ホームで日本代表に走り負けることはない。
タイ代表の弱点は守備力。中で「高さ」に難がある。であるから、日本代表には、コーナーキック、ゴール近くのフリーキックが得点機会となる。セットプレーから日本代表が得点を上げる確率が高い。中村俊、遠藤の正確なキックに、闘莉王、中澤の頭、さらに、大久保が出場停止ということで、矢野又は巻の頭も日本代表にとって武器となる。
日本代表における懸念材料は、アウエー(マスカット)からアウエー(バンコク)への移動に伴う、肉体面・精神面の蓄積疲労だ。オマーン戦の引分で日本代表はオマーン代表に引導を渡せなかった。しかも、酷暑の中とはいえ、日本代表がゲームを支配したとはいえない。筆者の見方では「負け試合」だった。相手のPK失敗、大久保の退場に伴うゴタゴタでオマーン選手も一人退場になったことで、幸運にも負けは免れたが、オマーン代表に勝点3が入ってもおかしくない内容だった。
日本代表が試合を決められなかった理由がフィニッシュの甘さだと指摘されているが、シュートに持ち込む場面が少ないのであって、決定機を外しているわけではない。決定機がつくれていない。玉田、大久保の2人のFWと、中村俊、松井、遠藤、長谷部を含めた4人の中盤と、SBの2人が、有機的に連動していない。コンビネーションに難があるのだ。
日本代表ホーム(横浜)のオマーン戦では、遠藤、長谷部の2人が前目となり、2ボランチの一方を攻撃の基点として大量得点(3点)の結果を得た。ところが、アウエーのオマーン戦では、PKによる1点止まりだった。PKは玉田の個人的ドリブル攻撃に対して、オマーン守備陣があわてた結果だ。日本は、攻撃面に関してまだまだ改良の余地がある。
タイのホームでボランチ2人が無媒介的に攻撃参加するという選択は、危険極まりない。カウンターで思わぬ失点をする場面が想像できる。バンコクでは、ホームのタイ代表に走り負けることは確実だ。
バンコクでは、タイ代表の攻撃を封じる守備力が問われている。先のオマーン戦(08/06/07)においては、足の故障の癒えない闘莉王がマークを外して慌て、相手選手を倒してPKを献上した。幸い、相手キッカーのミスで得点にはならなかったが、タイ戦では、より素早い相手の攻撃陣を相手とするわけだから、あのような軽率なミスは許されない。アジリティーにおいて日本代表を上回る相手だ。スピードに劣る中澤、闘莉王がミスをすれば、日本代表はたちまち窮地に追い込まれる。
アジア地区3次予選の相手で四苦八苦となると、最終予選は更なる苦戦が予見される。アジア予選を突破できても、他国開催のW杯でのベスト16はもとより、初勝利を上げることすら難しい。タイ代表との試合は、日本代表がいま以上の“のびしろ”を持っているかどうかを見極めるいい機会だ。“のびしろ”がないとなれば、岡田体制の継続は、この先、日本サッカーの長期停滞を招来する。
タイ戦は大げさに言えば、日本サッカー界の未来を見通すという意味で、極めて重要な一戦となる。
2008年06月08日(日) |
過酷な条件下、レベル低い試合内容 |
サッカーW杯アジア3次予選、灼熱のオマーン、マスカット。40℃を超える熱砂のなか、日本は辛うじて危機を脱した。試合展開はご覧とおり。日本はオマーンに先制を許したが、PKで同点。同点に追いつかれたオマーンが今度はPKを得たものの、日本のGK楢崎が止めてリードを許さず、そのままタイムアップ。日本はオマーンのミスに助けられて、勝点1をゲット。単独2位をキープした。内容的には負け試合。勝点1はラッキーだった。日本はW杯予選に限れば、幸運に恵まれている。勝負の女神が「ドーハの悲劇」の埋め合わせをしてくれているのかもしれない。
40℃を超える気温の中でサッカーをやるということがいいのか悪いのか――この議論は別として、日本はアジアの3次予選レベルでも、アウエーでは簡単に勝てなくなった。バンコクでもアウエーの洗礼が続くだろう。
ホームの利を生かして攻勢をとったオマーンが勝ちきれなかったのはなぜか。筆者は日本とオマーンの差を、プロフェッショナルフットボール運営の期間の差、選手の経験の差、国民のサッカー体験の差、一言で言えば、プロフェッショナルフットボールの歴史の差だと確信している。この差は、翻って日本と南米、欧州との差に通じている。
さて、消耗戦というに相応しいこの試合――技術的、戦術的に見るべきものは何もない。サッカーが体力と忍耐力に還元されただけの試合。曖昧な主審の判定、理解を超えた暴力による退場・・・アジアのサッカーの質を向上させるためには、選手のパフォーマンスを上げる仕組みをつくらなければだめだ。こんな試合がW杯予選であることが悲しい。
サッカー日本代表のイビチャ・オシム前監督(67)が4日、日本サッカー協会のアドバイザー就任の記者会見に臨んだ。集まった報道陣は100人以上。オシム氏への関心の高さを証明した。
今後は、アドバイザーとして〈1〉指導者の養成〈2〉ユース世代の育成〈3〉海外の情報を収集して日本協会に還元―に務めるという。
まず、オシム氏の回復を心から祝福したい。今後も日本サッカー界に貢献してくれることを心より、祈念する。
さて、会見で記者から岡田ジャパンについて聞かれると、「親しくないあなた(記者)と、そんな話はできない。私が質問に答えると思いましたか」とかわしたらしい。
オシム氏に限らず、前任者・後任者についてあからさまに批判するような人物は世界のサッカー界に存在しない。その反対に、儀礼的な賛辞も送らない。おそらく、それが世界のサッカー監督業界の流儀なのだろう。もっとも例外はジーコ氏で、彼は前任のトルシエ氏をぼろくそにけなしたことで知られている。
たくさんの報道陣が集まったということは、やはり、「オシム語録」への期待の表れだと思う。報道というのは、「言葉」が命の業界だ。気の利いた「一言」で新聞が売れることも多い。
オシム氏の言葉への報道陣の期待とは、サッカー発展途上国・日本の現状を端的に表している。オシム氏のもろもろの言葉から、日本人がサッカーの楽しみ方を学んでいるのだ。たとえば、オシムがひねり出した「ポリバレント」という一言で日本中が沸騰した。日本人の多くが「ユーティリティー・プレーヤー」という概念を知っていた。いうまでもなく、多くのポジションをこなせる多能選手のことだ。だが、サッカーにおけるその概念の重要性がわかっていなかった。オシム氏がポリバレントという概念をもち込んで以来、日本代表でDFを務める阿部の存在がクローズアップされるようになった。そして、社会においても、そのような多能型の人間の重要性を認識するようになった。
岡田監督にはそれがない。就任当初、多弁だったのだが、核心をついたものではなかった。バーレーン戦の敗戦以降は無口になった。ユーモアもなければ生きた言葉もない。いまの岡田監督は、むっつりとした、傲慢な官僚のように見える。それが日本代表の暗さに通じている。希望のなさに通じている。
サッカーファンは日本代表が試合に勝つことをもちろん望んでいるけれど、それだけではない。日本のサッカーが文化としてこの国に定着することの必要性を認識している。世界のプロサッカーが100年以上の伝統をもっている一方で、日本のたかだか15年の歴史の短さがサッカー文化の貧困に陥らないためには、サッカーについていろいろな楽しみ方ができる指針を必要としている。その1つの存在がオシム氏だった。オシム氏こそがポリバレントなのだ。
オシム氏の会見の一部をTV映像でみたとき、筆者はほっとした気分になり、自分の顔が和むように思えた。岡田監督の顔をTV映像で見たときには、こんな気分になれない。筆者は岡田監督に個人的恨みがあるわけではない。サッカーに勝つこと負けることは重要なことだけれど、サッカーはそれだけで終わらない。
オシム氏の回復した姿を見たとき、人々がサッカーに求めているものが、希望であることを改めて認識した。儚いけれど、そしてささやかな、つかの間の希望を共有することだと。
2008年06月02日(月) |
外れました、スイマセン。 |
W杯アジア地区第3次予選[グループ2]・日本vsオマーンは、日本が3−0で快勝。先日、当方が「想像」した、スコアレスドローとは大きく違った結果となってしまった。
試合経過の詳細は省略するものの、得点経過を一応記しておこう。日本が前半10分、遠藤のコーナーキックを中澤がヘッドで決めて先制。22分には、中村俊から出たロングフィードを闘莉王が落とし大久保が押し込んで、2点目。後半4分には、中村俊が相手DFをドリブルで交わして右足でミドルシュートを決めて3点目。
試合開始から、オマーンは自陣に引かず、DFラインを上げてきた。これは筆者の予想どおりだ。ところが、オマーンの中盤がまったく日本にプレスをかけず、TV中継の解説者・原氏が再三指摘するとおり、ボランチ遠藤をフリー状態にした。その結果、遠藤が中盤の攻撃の基点となり、正確なパスを右の中村俊、左の松井に供給し、日本は攻撃の形を自由に構築することができた。
この試合のオマーンは、これまで日本と対戦してきた中で、最も出来が悪かった。こんな悪いオマーンを見るのは初めて。DFラインを上げながら、日本の攻撃の基点=遠藤を最後までマークできず、日本に中盤を完璧に支配され、DFラインの裏をつかれたのでは勝てない。オマーンがここまで調子を崩した理由が筆者には分からない。
さて、この快勝で日本は3次予選通過のめどが立ったと言えるのか――というと、そう簡単にというか、すんなり予選通過とは思えない。オマーンがホームのマスカット(6/7)でこのような試合をするということはまず、考えられない。当然、横浜の敗戦のリベンジに燃え、相当激しくくるだろう。
日本が属している〔グループ2/バーレーン/日本/オマーン/タイ〕は、それぞれ3試合を消化したわけで、折り返し点だ。本日、バーレーンがタイに3−2で勝って勝点を9に伸ばし単独首位をキープした。日本はタイ、オマーンに勝って、バーレーンに負けているので勝点6、オマーンが3、タイが0となっている。
日本は2位以内をキープしたが、マスカットで日本が負けると、オマーンに2位以内の可能性が出てくる。そうなると、〔グループ2〕は、バーレーンがぶっちぎりの1位通過となり、2位争いが混沌としてくる可能性が強まる。
不気味なのが最下位のタイ。日本はオマーン戦の後、タイのホーム(バンコク)で戦うことになっている。タイはバーレーンに負けたものの、ホームで2点とった。日本がアウエーのオマーン戦で負けると、心身ともに疲労困憊の状態で酷暑のバンコクに乗り込まなければならなくなるわけで、そうなると、プレッシャーがきつい。つまり、同じアウエーでも、消耗度の少ないマスカットでは負けられない。まだまだ、予断は許されないのだ。
2008年06月01日(日) |
日本はオマーンに勝てないかもしれない。 |
明日、アジア地区第3次予選、日本代表の正念場――6月決戦がホームのオマーン戦によって火ぶたがきられる。
筆者は残念ながら、オマーン代表の実力が分からない。名前を知っているのは、監督は元ウルグアイ代表のフリオ・セザール・リバス、主力選手では、俊足のFWエマド・アルホスニと、イングランドの名門ボルトンで今季スタメンに定着したGKアリ・アルハブシくらい。
これまで日本はオマーンに負けていないが、勝ちはいずれも日本の辛勝。結果的に日本に勝利が転がったが、日本が負けてもおかしくない内容の試合があった。つまり、日本はオマーンを得意としているわけではない。
リバス監督は、選手たちにはまずもって、日本の攻撃を封じる作戦を伝授するだろう。予選で格上の日本が相手ならば、アウエーの引分は勝ちに等しい。
勝敗は神のみぞ知るところ。相手を知らない以上、予想はできない。せめてもの想像力を働かせて明日の試合展開に思いをはせてみると・・・日本が相当苦戦するのではないか・・・その根拠というほどの分析ではないものの。
岡田が代表監督に就任してから、日本代表は南米勢と親善試合で2試合戦って、いずれも得点を上げられなかった。最初の試合(08.01.26)の相手はチリ代表で、来日したチームはチリ国内の若手で構成されていたという。試合の一週間前には来日し、アウエーとはいえコンディションを調整して日本戦に臨んだらしい。2試合目(08.05.27)が先のパラグアイ戦で、パラグアイはコートジボワール戦から中4日間あけて日本戦に臨んでいて、これまたアウエーとはいえ、中1日の日本よりは余裕があった。
チリ、パラグアイの南米勢に共通しているのは、守備に対する意識の強さだった。肝心なところではゆっくりボールを持たせてくれない。中心選手に対しては、複数人でつぶしにかかる。それでも、イエローは2、3枚出るかでないかで、Jリーグの試合よりは少ない。
チリ戦で点が取れなかったので、日本代表のFW陣に対する風当たりは強くなった。チリ戦の先発FWは、先のアジア杯でいい動きを見せた高原と巻の2トップ、大久保、矢野が控えで、4人のFWが出場したが無得点だった。この試合では無得点だったものの、当時は高原に対する強い期待があった。
パラグアイ戦では、巻の1トップだったが、巻が仕事をする場面はなかったし、後半交代で出場した高原は相変わらず不調で得点の雰囲気すらなかった。(今回、高原は代表から外れたが)
オマーンは事前に韓国合宿をはり周到な準備をして来日している。時差ぼけ、長旅の疲労はない。もちろんアウエーだから、ホームのように体は動かないだろうが、キリン杯のように来日2日目で試合をするような親善試合とは違う。日本代表が直近の南米勢と戦った2試合で無得点という結果を考慮すると、いまの日本代表の攻撃力は、ホームであっても、オマーンからは簡単に得点が奪えないと考えていい。
逆に、オマーンが自陣に引いて専守防衛に徹するようであれば、日本に勝機が出てくる。オマーンのリバス監督は南米ウルグアイ人だから、日本代表が無得点に終わった南米勢のチリ戦、パラグアイ戦のVTRくらいは見ているだろう。筆者はだから、オマーンは引いて守ることはなく、序盤から日本に強いプレスをかけて、ボールを奪いにくるに違いないと思っている。さらに、中東勢の深いタックル、イエローすれすれすれの強い当たりで日本の中盤に脅威を与えると思う。中村俊が削られる可能性も高い。
そこで、日本代表が精神的にびびって、中盤の選手がボールを後ろに回して無用なポゼッションに入れば、オマーンのペースとなる。相手のプレスを恐れず、速いパス、ワンツーなどで相手をはずすことができれば、日本に得点が生まれる可能性もあるが、チリ、パラグアイ相手ではできなかった。
日本がポゼッションに入り、だらだらと時間を浪費していても、サッカーだから、相手のミスもあり、1度か2度くらいのチャンスはあるだろうが、英国プレミア・ボルトンの正GKアリ・アルハブシがファインセーブでピンチを救う。結局、日本は相手のプレッシャーに負けて仕事ができず、スコアレスドローで終わる・・・
というのが筆者の想像だ。もちろん、この想像が外れることを祈っているのだけれど、その反面、ドローで岡田の進退問題が浮上してくれることを望んでいるのも事実。岡田の更迭が早まれば、再び、南アフリカ行きの希望がわいてくる。
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