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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2013年05月11日(土)
lucky

酷い雨だった。
集団から飛び出したニーバリが落車。
ウィギンスも落車。
しかし、転んだ二人には悪いがレース自体は面白くなった。

テレビを消し、テーブルの上の皿とグラスを片づける。
熱心なロードレースファンというわけでないが、美しい風景や中世の遺跡が楽しめるジロやツールはついつい見いってしまう。

窓を開け換気をする。
湿度をたっぷり含んだ風にカーテンが膨らむ。
イタリアほどじゃないにしろ、明日の朝はきっと雨だ。

ゴミの袋の口を縛り、ビーチサンダルをひっかけ玄関の外に出る。
エレベータで一階まで降り、ゴミ捨て場にゴミを置きカラス避けのネットを被せる。
さすがにTシャツだけだと肌寒い。

手を洗い、歯を磨き、部屋の明かりを落とす。
キッチンの椅子に腰を降ろし、携帯の画面を眺める。

表示された電話番号、そしてメールアドレス。
君の名前。
ふと、自分がどんな表情でそれを眺めているのか気になった。



結局、行きつくところはそこだ。
かかってこない電話を、待ってるわけじゃない。
ただ、忘れたくないのだ。



君と過ごした時間はろくでもない時間だったけど、楽しかった。
今度生まれてくる時は、もう少し運のいい子に生まれてくるんだよ。



2013年05月01日(水)
Maia

不安定な大気によってもたらされた白くくすんだ大気が、街の輪郭を滲ませる。
頼りない日差し。
それでいて肌を撫でる南風は、昨日よりだいぶ優しい。

カーテンを閉め、部屋に干した洗濯物を眺めて鼻を鳴らす。
予報では午後から降ると言っているのだから、仕方がない。

玄関でwescoかred wingか迷い、結局Gore-Texのadidasに足を突っ込む。
降ると言っているのだから、仕方ない。

駅までのんびりと歩く。
時折、潮の匂いが運ばれてくる。
雲の隙間から一瞬のぞく太陽は確かに夏だ。
心がそわそわするのが何よりの証拠だ。

こんな日は、海岸で日がな一日過ごしたい。
適当な流木に腰を降ろし、名も知らぬ作家の短編など読んで疲れない本のページをめくる。
時々タンブラーのアイスコーヒーで喉を湿らせ、時々目の前の海で遊ぶサーファーの姿を追いかける。
犬を連れた女、老人とその孫であろう幼児、旋回する鳶、打ち上げられた海草の間を突いて歩くカラスたち。
時折空を銀色の飛行機が横切り、空に一本の対角線を作る。

そこまで想像してもう一度鼻を鳴らす。
予報では午後から降ると言っているのだから、仕方がない。

スタバの、コンセントのある席はもういっぱいだろうか。
iPadのバッテリーを充電してなかったことを少し悔やむ。
空は見上げる。
本当に降るんだろうか?
気に入りの靴じゃないと、一歩踏み出す足が重い。



五月の空は、君に似てる。
君の瞳も気まぐれに、曇ったり輝いたりする。
時々ぐずついて涙を流すところもそっくりだね。

恋してるから、仕方ない。
君だから、仕方ない。
仕方ない。



仕方ない。



やっぱり、海に行こう。
砂浜じゃwescoもred wingもadidasも関係ない。
どうせ裸足になるんだ。



予報では午後から降ると言っている。

仕方ないは、雨に濡れた後、言うことにするよ。


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