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2008年04月22日(火) |
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Strawberry |
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女が買ってきたタルトを一切れ摘む。 イチゴの甘酸っぱい香が口いっぱい広がる。
「美味いね、これ。キルフェボン?」
女はにんまりと笑う。
「違う。ベリーストロベリーの。」
知らない店だった。
「横浜の東急ハンズの中にある店。そのイチゴ、あまおうなんだよ。」
女はトレーに乗せたカップをカチャカチャいわせながらリビングの低いテーブルに運ぶ。 ソファーには腰を降ろさず、フローリングの床にちょこんと座る。
紅茶もストロベリーフレバーの効いたものだった。 フレバーティーなんて気の利いたものは僕の家にはない。 きっと女が持参したんだろう。
付けっぱなしのテレビから11時のニュースが流れる。 チベット問題、来日中の要人の動向、イェメン沖での砲撃…。
一応終電の時間を告げようと口を開きかけたら、ついっと女が立ち上がった。
「歯を磨いてきます。」
女と入れ違いに洗面所に入る。 コップに歯ブラシがさしてある。 よく見るとコップの横には見慣れない歯磨き粉のチューブがあった。 イチゴ味、と書いてある。 キリンやライオンのイラストの入った子供用の歯磨き粉だった。
歯を磨きを終えリビングに戻ると、パジャマに着替えた女はフローリングの床で膝を抱いてテレビを見てた。
ストロベリーのプリントが可愛い。
「ねぇ。」
「何?」
「やっぱり下着もイチゴ柄?」
女はもう一度にんまり笑い言った。
「すぐにわかるわ。」
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2008年04月17日(木) |
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gate of heaven |
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サイという名の女の子がいた。 本名は別にあった。 いわゆるハンドルネームだ。 「砕、彩、sai…どれでもいいです。」 彼女のメールにはそう添えてあった。
何年か前、サイは自ら生きるのを止めた。 サイの最後の晩餐は、人気のない海岸に停めた車の中で食べた数百錠の薬を混ぜたヨーグルトだった。
別に、何度かデートしたからとか、キレイな子だったからとか、そう言うわけではないのだが、ふとサイのことを思い出す。
たぶん気圧のせいだろう。 低気圧が近づくと決まって頭が重くなり、取り留めのないことばかり考えてしまう。
サイの見た最後の夢はなんだったんだろう。
携帯で写したサイは口に薄い笑いを浮かべてる。写真の画素の低さが時間の経過を教えてくれる。
頭が重い。 夜には雨になるだろう。
こんな夜は決まって寝付けない。
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